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異世界魔法の物理学  作者: のん
第一章
25/42

24. 灯火魔法の考察 ★

前回の説明を受けて、灯火魔法を考察します。この話をするために原子や分子の説明が必要だったのです。


12時と13時頃に1話ずつ投稿していますので、読み飛ばしにはご注意ください。

「ここで、少し物理学とは離れてしまいますが、火の初歩魔法である灯火魔法について、新しい知見が得られたので説明します」

「知見?」

「はい。灯火魔法で発生する火からは、煤が発生していました。このことは、灯火魔法が火を直接無から生み出しているわけではなく、可燃物となる物質を生成し、それを酸素と反応させていることを示唆しています」

「そんなバカなことがあるわけがないわ。クレアちゃんは、無から物質を作るのには莫大なエネルギーがいると言っていたじゃない」

「そこには抜け道があるのです。空気中の成分を原料に可燃物を生成するのです。そうすれば、無から物質を作るわけではないので消費魔力は抑えられます」


わたしは、灯火魔法は空気中から可燃物を生成し、そのうえで酸素と反応させていると思う。

空気中から生成されるということは、炭化水素が考えられる。

空気中にある二酸化炭素と水蒸気から炭化水素を生成するのだ。

元の世界では阿呆といわれるようなことかもしれないが、この世界には魔力というエネルギーがあり、魔法という不思議を起こせる力がある。

灯火魔法に使用されていると思われる炭化水素は気体であるだろうことと、無臭であることからおそらくプロパンガスだ。


「先ほどお話した元素は、記述を便利にするために記号を当てます。元素記号と呼ばれます。灯火魔法に使用される可燃物は無臭で、おそらく気体だと考えられますから、プロパンというガスが当てはまると思います。プロパンは炭素と水素の化合物で、炭素の記号Cと水素の記号Hを用いてC3H8と表されます。つまり、炭素原子3つと水素原子8つでできた分子ということです」


わたしは説明を続ける。


「空気中には、先ほど言った窒素や酸素の他に様々な成分が少量含まれています。例えば生物が息を吐くときに多く含まれる気体として二酸化炭素があります。これは炭素原子1個と酸素原子2個からなる気体分子で、CO2と書きます。あとは、水蒸気です。水蒸気は水なのですが、これは水素原子2個と酸素原子1個からなる分子です。元素記号を用いると、H2Oと書かれます。この二つを使ってプロパンガスを魔力によって生成します」


黒板に元素記号を書きながら、わたしは説明した。

しかし、やはりいきなりプロパンガスといっても伝わらないようだ。

この世界には天然ガスは多分使用されていない。主要な燃料は石炭だろう。


「プロパンという気体のことは全くわからないが、ひとまず置いておこう。説明を続けてくれ」

「わかりました」


やはりいきなりプロパンガスのことを話しても難しいだろう。炭化水素のことは、また次の機会にでも説明しなければ。


「説明を続けます。まずは原料となる二酸化炭素と水蒸気を空気中から集めます。これは、二酸化炭素分子と水分子に選択的に運動エネルギーを与えることで解決します。二酸化炭素と水蒸気からプロパンガスを生成する化学反応は、このような方程式で示されます」


わたしは黒板に式を書いた。


挿絵(By みてみん)


「これは熱化学方程式と呼ばれる式になります。左辺が反応に必要な原料、右辺が生成された反応物とそれで発生する熱量です。この方程式では熱量が負になっていますから、この反応は吸熱反応、エネルギーを吸収する反応となります。この熱量を生み出すのに必要な質量は23 dO程度です。そのあとこの反応の逆反応を起こすことでプロパンが燃えるわけですが、一度生成したプロパンを燃やすにはエネルギーを与える必要があります」

「なぜだ。そのプロパンを作るのはエネルギーがいるわけだからそう簡単には反応が起きないのはわかるが、逆反応なら放っておいても燃えるんじゃないのか?」

「結合エネルギーというものがあります。一度プロパンという分子として結合したものを開放するためには、一度エネルギーを与えてあげないとその結合を断ち切れないのです。例えば、紙は火をつければ燃えます。これだって発熱反応です。でも、火をつけなかったら燃えないでしょう」

「なるほど、理解できたぞ」

「ありがとうございます。この反応に必要なのは、結合エネルギーですから、これを計算します。ここで計算するのは少し面倒ですから、計算してきました。6,495 kJになります。これに必要な質量は約72 dO程度です。このエネルギーを生成したプロパンと酸素に与えればプロパンと酸素の結合が切れ、反応が始まります。そして、燃焼が始まります。実際には煤が発生していることから不完全燃焼をしていますので、もう少し小さいエネルギーだとは思いますが、おおむね間違ってはいないはずです。また、ここで出てきた熱量は1 mol当たりの熱量なので、実際に使われているプロパンガスの体積を考えると多分もう何分の一くらいの量になるかと思います」


わたしはいったんここで息をついた。

ここからが本番なのだ。

熱化学方程式が出てきました。高校化学の範囲ですが、筆者は高校の頃化学は得意だったので特に詰まらずに理解できていましたね。プロパンの燃焼熱は、ググったのを出しています。

結合エネルギーとは、分子の化学結合を切るために必要なエネルギーのことです。

こちらも、ググった数値を計算して出しました。


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