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異世界魔法の物理学  作者: のん
第一章
24/42

23. 原子や分子についての講義

今回のお話は、次へのつなぎのためのようなものです。内容も中学生理科のような範囲です。


12時くらいに1話投稿しているので、そちらの読み飛ばしにはご注意ください。

あれから練習して、単語による魔法発動は、発動キーだけでの発動にも成功した。

今日は安息日だ。お父さまも休みの日である。

お父さまが休みの日は、わたしが物理学の講義をお父さまにすることになっている。

せっかくの安息日なのにお父さまは勉強漬けでいいのかと思うが、お父さまは新しい知識を得られることが大変うれしいらしい。

最近はお母さまやカリーヌ先生も出席するようになった。

我が家 (とカリーヌ先生) は知識欲の権化らしい。


今日は、原子や分子についての講義をしていた。

わたしは小さな黒板に、物体を二つに割る図を描いて、説明をする。

この黒板は、わたしが物理学の講義を始めるにあたってお父さまが買ってくれたものだ。


「世界には物があふれていますが、これらの物を半分に割っていって、どんどん小さくしたらどうなるでしょう。実は、物には最小単位があります。これを原子と呼んでいます。その大きさは、直径約0.1 er(エルランデ)とされています。この世界の物体のすべては、この原子がたくさん集まってできています」

「我々人間も、その原子でできているというのか?」

「ええそうです。原子には種類があって、これを元素と呼びます。元素一種類でできている物質を単体と呼び、複数の元素でできている物質は化合物と呼ばれます。例えば、剣などに使われている鉄は、元素のひとつです。これは、不純物などもあるので厳密には違いますが、単体と言えます。一方、木や紙は、ひとつの元素でできてはいませんので、化合物となります。化合物は原子が複数組み合わさって、ひとつのまとまりになったものです。これを分子といいます」


わたしは黒板に円を描き、その中にaに相当する文字を書いて、その横に原子と書いた。この世界には原子という単語はないから原子を意味するatomをこの世界の文字で書いている。英語にしたのは、この世界の言葉がヨーロッパ系の言語に近いから。

その横に同じ円が複数集まった図を描き、単体と書く。

また、別の円の中にa, b, cなどと書き、これらが組み合わさったものを描いて、その横に分子、と書いた。


「分子は、原子の組み合わせで無限に作ることができます。そのため、世界には様々なものが存在します。人間は、ほとんどが炭素を含む分子と、水分子でできています」

「しかしその原子という粒の集まりということは、ある時にバラバラになってしまうということはないのか?」

「原子や分子同士には引力が働きます。この引力で、物体は形を維持できます。でも、例えば包丁で食材を切ったりすると、食材は二つに分かれますよね? これは、包丁で食材の分子に働く引力が働かなくなるまで遠くに離してしまうことで切る、ということが可能になっています」

「なるほどな」

「クレアちゃん、元素というのは無限にあるのかしら?」

「カリーヌ先生、いい質問です。元素には限りがあります。正確には、人為的に元素を新しく作ることはできますが、これにも限りがあって、原子として存在できる元素は173種類だと言われています。このうち、天然に存在するのはおよそ90種類ほどです」


前世の世界では、天然に存在する元素でもっとも原子番号が大きいものはウランだった。もっとも、ウランの崩壊でネツプニウムなどの超ウラン元素も微量には存在するようだが。


「わたしたちが吸っている空気ですが、これも分子の集まりです。気体は、分子の持つ運動能力、つまり運動エネルギーが分子間に働く引力よりも大きくなって拡散した状態です。温度を冷やしていけば運動エネルギーは小さくなっていき、ある温度で液体、固体となります。水が凝固点で固体、氷になり、沸点で気体、水蒸気になるのはご存じだと思います。空気に含まれる分子は、主に窒素、酸素です」


この世界の空気の成分は調べる方法がないので、まだわたしの方でも調べられていない。


「以前の講義で酸素というものが人間の活動に必要だと聞いた。酸素も分子だったのか」

「えぇ、酸素分子は酸素原子2個でできている単体です。酸素はいろいろな物質と結びつきやすく、特に重要なのが燃焼です。原子や分子同士が組み合わせを変えて別の物質になることを化学反応といいますが、酸素との反応を酸化といい、特に反応が激しく熱と光を発するものを燃焼といいます。燃焼には酸素だけではいけません。酸素と反応するための、可燃物が必要になってきます」


ここでわたしは、灯火の魔法に関する自らの新しい発見を述べることにした。

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