19. 初めての魔法発動失敗
今日はすでにお昼に1話投稿しているので、読み飛ばしにはご注意ください。
決意をあらたにしたわたしは、ひとつの疑問をカリーヌ先生にする。
「先生、魔法には4つの属性がありますが、わたしの血液を魔力に変換した魔法はどの属性に属するんでしょうか?」
「そうねぇ、血"液"なのだから水属性な気がするけど、呪文の起句って属性を表す言葉が入るのよね。水魔法なら、"水よ"とか。それが入ってないのに魔法が発動したのは、純粋に不思議なのよね。もしかして、今まで当たり前のように起句を入れていたけれど、実は不要だったりするのかしら」
何度も言うが、魔力もエネルギーだ。エネルギーは相互に変換できる。
水球生成魔法の原理は気体分子に運動エネルギーを与えることによる断熱膨張で説明できたように思う。これは、魔力を運動エネルギーへ変換したのだ。
旋風を起こした魔法もそうだ。これも気体分子に回転するための運動エネルギーを与えていると思う。
ならば、ほかのエネルギーへ変換することもできるはず。
そう、たとえば、光エネルギーとか。
初級魔法教本には、光を発生させる魔法は載っていなかった。
光を発生させることができれば、生活が格段に便利になるにも関わらず、だ。
これは、"光"というのが4つの属性のどれにも当てはまらないから考えられていないからなのではないだろうか。
夜、通路や部屋を照らしているのは火を使ったランプだ。
光を発生させる魔法があったらそういう魔法具があってもいいはずだ。
「先生、ひとつ考えたんですが、光を発生させる魔法はないんですか?」
「研究途上よ。光なのだから火属性のような気がするんだけど、火を燃やす以外に光を発生させる方法が分からなくて、それだとただの燃焼魔法と変わらないから、光そのものを発生させる魔法は開発されていないわ」
「わたしにひとつ案があります。」
光はその波長または振動数に関連したエネルギーを持っている。
魔力を直接光エネルギーに変換してやれば、少なくとも燃焼魔法よりかは無駄な廃熱のない光を作り出せる、はずだ。
わたしは魔法語の辞書を引きながら呪文を構築していく。
まずは簡単に、単純に光を生み出す魔法を作ってみよう。
血液から魔力へイメージの力で変換し、右手に集中させる。
魔法はイメージだ。右手から光子が飛び出す様を想像しながら呪文を唱える。
「《魔力を光へ変換せよ》」
「何も起こらないわね」
何も起きなかった。やはり即興では無理か。
起句を入れていないとはいえ、こんな程度のことはすでに誰かが試しているだろう。
多分、エネルギーに該当する単語が必要だ。しかしこの世界にはエネルギーという概念がないので、新たに魔法語を模索しないといけない。
なかなか難しいことだが、そう悲観的になるほどのことでもない。
魔法語はこの世界の人が作ったこともあり、基本的にはこの世界の言葉に準じたところがある。前世の世界でいえば、ヨーロッパ系の言語は相互によく似ているのと同じだ。エネルギーという言葉は、この世界ではわたしの作った造語のようなものだが、きっと近い文字配列で対応する魔法語があると思う。
今日の夕食後は、それを探すとしよう。
幸い、魔法語が作られた後にできた単語だってあるので、造語に関する魔法語の規則もある程度存在する。
「とりあえず、今は失敗しました。もう少し考えてみようと思います」
「そうね。クレアちゃんなら何か起きるかもと思っていたから少し残念だけど、今は初級魔法の練習をするとしましょうか」
「はい」
そして、4属性の初歩魔法を一通り試して、すべて発動できることを確認して今日の練習は終了となった。
土魔法の土塊生成や、火魔法の灯火の発動原理に関しては、また今度考察するとしよう。
そう簡単にはいきません。
土魔法と火魔法の発動原理はちょっと考え中です。
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