1. ある大学院生の最後
なんと0を投稿してから4年もたってしまいました。
最近急に執筆意欲がわいてきたのでまた気が向いたときにちょこちょこ執筆しようかと思います。
「結局こんな時間になってしまった……」
午後11時。
僕は誰もいなくなった研究室のパソコンの前で一息ついた。現在執筆中の論文がようやく一区切りついたのだ。今は12月、卒修論の時期で博士後期課程に進んだ僕にとっては実験や後輩の指導もしながらの作業であり、執筆は遅々として進んでいなかった。
「明日はあの実験をして、後輩の指導もして、いろいろやることあるなぁ……。でも今日は終わりにしよう。論文はとりあえず明日ボスに投げるか」
こんなスピード感で本当に博士号が取れるのか不安に思いつつも、徹夜続きでぼんやりした頭で帰り支度をする。今は大学の近くで下宿生活なので、こんな時間でも家のベッドで寝ることができるのはいいことだ。
帰り支度を終えた僕は今日の夕食を何にするかぼんやりと考えつつ、席を立った。
ぐらり……
「あ、あれ……」
急激に襲ってきた立ち眩みで、僕は床に倒れ込んでしまった。
暗くなる視界、感覚のなくなっていく四肢。
こんなことで倒れてるようじゃ博士号なんてとれそうにないなぁ、と僕は薄れゆく意識の中で独り言ちた。
―――桜井透、享年25歳。
とある大学の博士後期課程に進んだ学生は、過労により、この世を去った。