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異世界魔法の物理学  作者: のん
第一章
19/42

18. 魔法はイメージが大事

ブックマークありがとうございます!励みになります。


今回は、これまでの復習みたいなお話です。

結構難産で、いろいろ書いていたら長くなってしまいました。

兄弟の話も出てきます。

その日は事前の打ち合わせ通り、歴史の講義と魔力属性の測定で終わった。

夕食時、カリーヌ先生からお父さまたちへ報告が行われた。

衣食住を保証するということで、カリーヌ先生も夕食に同席している。


「ジャック様、魔力属性の測定をしたところ、クレアさんは四重魔法師であることがわかりました」

「四重か。さすがはレティシアの娘だな。私は火の単一だから、レティシアの血が強く出たのだな。素晴らしいぞ、クレア」

「ありがとうございます、お父様。参考までに、お兄さまとお姉さまは何重なのですか?」

「シャルルは火と風の二重、サラは火と水と風の三重だ」

「ありがとうございます。やっぱり属性って遺伝で決まるところがあるのでしょうか」

「そうね、ほとんどの人の属性は遺伝で決まるわ。たまに遺伝と関係ない属性を持って生まれてくる子どももいるようだけれど」


なるほど。まぁ、血液に属性が乗っていると考えれば、遺伝で決まるというのはなんとなく理解できる。血液型だって親からの遺伝で決まるのだから。

親の属性を受け継いでいない人は突然変異的なものなのだろうか。


「クレアさんは将来宮廷魔法師として大いに活躍できる素質を持っています。あたしの指導が終わったら、しかるべき時に王立魔法学院へ入学させるべきかと」

「うむ、そうだな。シャルルは男だったし属性も二重だったから騎士学院へ入れたが、サラも三重魔法師として魔法学院へ入れたし、否やはない。むしろそうすべきだろう」

「クレアさんは魔法の研究にも興味があるようです。基礎的なところを教えたら、あたしの研究を手伝ってもらおうかと思っている所存です」

「わかった。クレアの知識はきっと魔法の研究にも役に立つだろう。何せ私たちにもさっぱりわからんほどクレアの知識は高度なのだからな」

「クレアさんのいう物理学や科学という知識は、寡聞にして知らないのですが、ジャック様やレティシアも知らないのですか? 一体どのようなものなのでしょう」

「あ、それは……」

「それは、クレア自身から聞くとよいだろう。むろん、クレアの信頼を得てからだがな」


ほっ、さすがに前世の記憶があるなどおいそれと他人に言えるものではないから、お父さまが秘密にしてくれて助かった。

しかしどうも褒められすぎるきらいがあるなぁ。前世ではなかなか褒められることもなかったので、少し面映ゆい。


その後は、魔法とは関係のない話も織り交ぜつつ、和やかに食事が進んだのだった。




翌日。

わたしとカリーヌ先生は、魔法の練習をするため、庭へ来ていた。


「それじゃあクレアちゃん、まず今までの復習ね。まず魔力は感じることはできたのよね」

「それが先生。わたしはその魔力を感じるというのがよくわからなくて、呪文を使って魔力を生成していました。これは正しいやり方なのでしょうか?」

「初めて聞く方法ね。とりあえずやってみてくれる?」

「わかりました。」


わたしは手を前に突き出し、血液を魔力へ変換する呪文を唱えた。


「《右手手のひらの血液2 dOを魔力に変換せよ》」


2 pgの血液を消費して魔力を生成する呪文だ。以前と同じように魔力が手のひらに蓄えられ、すぐに手のひらがほのかに温かくなった。


「たしかに手に魔力が生成されているわね。でもすぐになくなってしまったみたいだけど」

「はい。魔力が生成されるのは一瞬だけで、すぐに熱になってしまうようなのです」

「う~ん、呪文の内容も気になるけど、魔法を使うために魔力を生成する魔法を使う必要があるなんて非効率的ね」

「教本に載っていた魔法を使うときには、この呪文は使わなかったですが、特に問題なく魔法を使うことができました。なので、わたしには魔力を感じる工程が必要なのかよくわかっていないのです」

「魔力が感じられないと、魔法に指向性を持たせることができなくなるわね。呪文である程度は解決できるけど、細かく指定しようとすると呪文が煩雑になるわ。あとは、無詠唱魔法ができなかったり、自分の魔力量がわからなかったり、いろいろと不都合はあるわね。そうね……、あたしがクレアちゃんの魔力を引き出してみるから、ちょっと手を握ってくれる?」

「はい」


カリーヌ先生の手を握ると、先生は「いくわよ」と言って合図をしてくれた。

すると、頭の中に体全体のイメージが想起され、"つながった"感覚があった。

そして、体から"何か"がほんの少しなくなる感覚とともに、手のひらに魔力が宿った。

今度は、熱となって逃げずに手のひらにとどまっている。


「どうかしら? 今手のひらに魔力が集まっているけれど、魔力は感じられているかしら」

「はい。ほんの少しの喪失感とともに、魔力が生まれたのが感じられました。これがイメージするということなのですね」

「そうね。魔力を発現する際には、クレアちゃんが言った通り何かがなくなる感覚があるけれど、魔法研究者の間ではこれは血液だと考えられているのよ」

「やはりそういう考え方はあるのですね。わたしも魔力の生成には血液が必要だと考えています。今魔力は手のひらに集まっていますが、これがそのままなのはなぜですか?」

「それは、あたしが手のひらにとどまり続けるようにイメージをしているからよ。魔法はイメージすることが大事なの」

「なるほど。わたしも試してみます。先生、一度手を離してみてくれませんか?」


一度感覚がつかめてしまえば話は早い。

魔力が霧散しないように、手の中でとどまるイメージをしながら、カリーヌ先生に手を離してもらう。

すると、いつもは熱になってしまう魔力が手の中にとどまっているのが分かった。

イメージを放棄すると、すぐに熱になっていった。


「なるほど。だいたいわかりました。魔力がとどまるようにイメージすること。これが大事なのですね。魔力が熱となって手を温めるのは、当たり前のことなのですか?」

「そうね。イメージを固めないで魔力を生成すると、熱となることはわかっているわ。これがなぜなのかはまだ分かっていないのだけれど」


ふむ。

熱エネルギーは、エネルギーの中では質の低いものとされている。なぜならば、均一になった熱エネルギーからは、仕事を生み出すことができないからだ。熱の移動がない系では仕事が発生しないということだ。

そのため、魔力という質の高いエネルギーが何も制約を受けない場合、熱エネルギーとして捨てられてしまうのかもしれない。

逆に魔力を熱以外のエネルギーに変換させることができれば、それは魔法となって発現する。その発動キーが、イメージの力で、呪文はそれを補助する役割があるのだろう。

わたしが具体的なイメージなしに魔法を発動できたのは、ひとえに呪文の補助があったからにすぎないのかもしれない。


「考えているところ悪いのだけれど、あなたが魔力を生成したときの呪文について聞いてもいいかしら? 魔法語で血液を魔力に変換すると言っていたけれど、クレアちゃんはもしかして魔力がどうして生まれるかに予測がついているの?」

「えぇ、はい。魔力とは、血液という質量をエネルギーの一形態として変換したものだと考えています。このことについては、物理学の内容になるので、今の魔法理論とはかけ離れていると思いますけど」

()()()()()、ね。初めて聞く言葉だけれど、それはいったいどのようなものなのかしら?」

「基本的には、物体に仕事をさせる、誤解を恐れずに言えば動かさせる能力のことですね。ある力で物体を動かしたときに発生するのが仕事です」

「これはいろいろと教えてもらわなくちゃね。魔法の勉強、さっさと終わらせて一緒に研究しましょうね」

「その発言はあまりいいものとは思えないですが……、そうですね。わたしも早く研究したいですし、頑張って魔法を覚えます」


これは、相当頑張って魔法の勉強をしなくてはいけなさそうだなぁと思うのだった。

シャルルは15歳の兄、サラは12歳の姉になります。

dOは、以前も出てきましたが、「デン オルマイト」と読みます。ピコグラムのことです。


この宇宙を閉鎖系とみると、私たちは質の高いエネルギーを質の低いエネルギーに変換してその差分として仕事を得ています。いずれはすべてのエネルギーが均一な熱エネルギーになって、この宇宙は熱的死を迎えるという説もあります。それは、大変遠い未来の話だとは思いますが。

魔力もエネルギーなので、いずれは熱エネルギーとして捨てられます。この世界の人間も、食物などからエネルギーを得て、それが血液などを生み出し、血液は魔力として変換され、最終的には熱エネルギーとなります。


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