16. 魔法の歴史について
ブックマークが10人になっていました。本当にありがとうございます。とても嬉しいです。
今回は、主人公の魔法の勉強の方針と、魔法の歴史についてです。
カリーヌさんが到着して、ひと悶着あった後。
いったん応接室に移動して、今後の方針を話し合うことになった。
「クレアちゃんはまだ6歳だから、基本的には実技は初級魔法のみで、後は座学で教えることになるわね」
「そうですね。魔力の使い過ぎで死にたくありませんし、わたしもそれでいいと思います」
「今日は初日ということで、魔法に関する歴史と、魔力属性の測定のみで終わろうと思います」
「魔力属性、ですか?」
「ええ、レティシアから何も聞いてないのかしら? 魔法には4つの属性があるけれど、人間側が属性を持っていないと、その属性の魔法が使えないのよ」
やはり適応属性という概念はあるのか。
「ということは、属性を1つも持っていなくて、魔法が使えない人もいるんですか?」
「えぇ、いるわ。ただ、ほとんどの人は何か1つの属性を持っていて、使えないって人はあまりいないけど。事前の連絡でクレアちゃんは水属性を持っていることは知っているわ」
「そのことですが、一昨日風の初歩魔法を試したところ、成功しましたよ」
「そのなのね。ということは、二重魔法師ということなのかしら。才能があるのね」
「二重魔法師?」
「えぇ。魔法に秀でた人は、複数の属性を持っていることがほとんどなの。2つ持っていれば二重、3つなら三重、全部なら四重ね。もっとも、四重魔法師なんてこの世にほとんどいないけど」
「なるほど。四重魔法師ともなればどんな職業でもやっていけそうですね」
「ほとんどは宮廷魔法師として活躍するわ。どこかの誰かさんを除いて、ね?」
そう言ってカリーヌ先生はお母さまの方を見る。
まさか……
「お母さまって、もしかして四重魔法師なんですか?」
「まぁ、そうねぇ。でも結婚する前はちゃんと宮廷魔法師として仕事してたのよ?」
「すぐに辞めたじゃない。あれでどれだけ大騒ぎになったことか」
「だって結婚したんですもの。カリーヌも早く結婚して幸せになった方がいいわ」
「大きなお世話よ。あたしは一人で魔法の研究をしてる方が性に合ってる」
この世にほとんどいない四重魔法師が宮廷魔法師になって数年で退職……。それはそれは大騒ぎになったことだろうな……。
「じゃあカリーヌ、クレアちゃんのことよろしくね」
「わかったわ。じゃあクレアちゃん、まずは魔法の歴史から始めましょう」
「はい、カリーヌ先生。よろしくお願いします。」
そして魔法の歴史の講義が始まった。
魔法の歴史は比較的浅い。我が国は建国して約1000年経つが、魔法の歴史はその半分の約500年だ。
魔法は流浪の民によってもたらされたとされている。その民族がどのようにして魔法を発明したかについては、いまだ不明だ。何せその民族はすでに滅びており、流浪の民ゆえに文献も残っていない。これでは研究が進まないのは仕方がない。
その民族は各地方に散り、この世界のほとんどの国や地方に魔法を教えたという。そのため、教会はかの民族を神の使いだと考え、魔法は神によりもたらされたものだと説いているらしい。
各国に魔法が伝わり、それまで剣や槍などによる物理的な攻撃のみであった戦争は、魔法を主体とした砲撃戦に変化した。当然、面を制圧できる魔法は戦争を激化させ、一時期はこの世界の人口が著しく減ったこともあるという。
現在は我が国においては戦争も落ち着き、平和な時代が続いているが、地方によっては小さな紛争がなくならず、現在も魔法による人的被害は大きい。
魔法の歴史はほぼ魔法語の歴史でもある。なぜならば、無詠唱魔法を除き、魔法の発動には呪文が必要であり、呪文は魔法語で記述されるからである。
今でこそ魔法語の辞書があるくらい魔法語の翻訳は進んでいるが、魔法がもたらされた当時は本当に探り探りだったようだ。
この世界の言葉はほとんどが同じ文法で記述されており、魔法語もそれにならっている。おそらく、魔法をもたらした民も、同じような文法を用いていたのだろう。
魔法語と我々が話す言語との翻訳作業がほとんど魔法の研究となっており、魔法自体の研究はあまり進んでいなかったのが現在の状況の理由らしい。
魔力と血液の関連性についても、戦争で人死にがでて初めて分かったくらいなのだ。魔法自体の研究は相当遅れている。
そもそもこの世界には科学という概念がない。わたしが血液=魔力という仮説を立てられたのも、科学という知識があったからだ。
わたしの知識をカリーヌさんと共有することで、もしかしたら魔法の研究が大いに進むかもしれないな。
そして、歴史の講義は終わった。
次は、いよいよ魔力属性の測定だ。
なんとレティシアさんは全属性扱える四重魔法師でした。相当優秀なお方です。
本当は今回で魔力属性の測定まで終わらせる予定だったんですが、結構文字数が増えてしまったので切りました。次回、主人公の魔力属性測定となります。
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