14. 家庭教師の決定と、風魔法
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家庭教師が決まりました。
ちなみに、レティシアは宮廷魔法師になって数年で結婚したので、あまり人に教えるということは得意でないという設定があります。
魔法の発動に成功し、その発動原理について考察を行った日から数日経った。
今日は安息日だ。この世界も週という概念があり、なぜか7日間だ。休みの日は週の最後の安息日のみ。
近衛騎士であるお父さまは、安息日でも仕事に出かける日も多いが、今日に限ってはお父さまもお勤めはお休みだ。
朝食を済ませ、わたしたちは食器が片付けられた食堂で話をしていた。
「クレア、お前につける家庭教師が見つかった」
「本当ですか、お父さま!」
「あぁ、もともと王立魔法学院で非常勤講師をしていた人間で、学生からの評判も良かったらしい。今はやめて魔法の研究をしているとのことだったが、その個人的な研究を続けることと、住み込みで働くことを条件に快諾していただいた。名前はカリーヌ・ラプラスだ」
「カリーヌはわたしの知り合いでもあるのよ。変人だけど、腕は確かだわ」
「へ、変人ですか……」
大丈夫なのかな……。
「それで、いついらっしゃるのですか?」
「明後日の午後には到着するとのことだ」
「それじゃあその日はうんと着飾らなくっちゃね!」
「え……」
「楽しみだわ~。クレアちゃん、前世の記憶を思い出してから魔法の練習とか科学の実験のことばかりであまりかわいいお洋服を着てくれなくなったんですもの」
「あ、あの、普通の、今着ているような服でも十分失礼にはあたらないのでは……」
「そんなことないわ! 第一印象は重要よ! かわいいお洋服を着ていればカリーヌのやる気も上がるというものだわ!」
「カリーヌさん、かわいい服でやる気が上がるような方なのですか……」
「クレア、おとなしくあきらめた方がいい。サラも通った道だ」
どうやら抵抗しても無駄らしい。
お姉さまもお母さまの着せ替え癖の被害者だったのか。
当日はおとなしく着せ替え人形と化すとしよう……。
さて、食堂をお暇したわたしは初級魔法教本とノートを持って庭へ来ていた。
明後日にはカリーヌさんが来るとのことだったから、それまでにもう一つの属性くらい覚えておいても損はないだろう。前回は水魔法だったから、今回は風魔法に挑戦してみよう。
初歩の風魔法のページを開く。
呪文はこうだ。
「大気よ、集まりて我が手の前に小さな旋風となれ、ね」
旋風、つむじ風は回転する上昇気流のことだ。大型のものは竜巻と誤認されることもあるが、両者は異なる大気現象らしい。
正直この魔法に関しては発動する前からなんとなく発動原理はわかる気がする。
風は空気の移動で発生するから、空気の分子に運動エネルギーを与えればいいわけだ。
小規模ならば空気の質量も小さくて済むだろうから、それを移動させるのに必要な運動エネルギーも小さくて済む。消費する魔力量、つまり血液もほんの少量でいいはずだ。
そういえば、水魔法の呪文にも風魔法の呪文にも血液を魔力に変換する文言がない。
いや、そもそも血液=魔力という考え方がないから、当然といえば当然なんだけど。
今まで何も考えず呪文には血液を魔力に変換する機能があるんだろう、とか思っていたが、その辺もちゃんと考察した方がいいのかもしれない。
呪文に血液―魔力変換ができる機能があるなら、最初に魔力を感じることが課題になることもないような気がするし。
もっとも、血液=魔力というのはわたしの予想であって、もしかしたらとんでもない勘違いをしているかもしれないのだが。状況的にそうであってもおかしくないよね、というだけで。
何はともあれ、風魔法を試してみよう。
「《大気よ、集まりて我が手の前に小さな旋風となれ》」
すると、周囲から風が集まり、目の前につむじ風がふく。
成功だ。なぜかぽんぽんと魔法を成功させているけれど、これは普通なことなのだろうか。
元の世界の創作では、魔法に属性があるのだったら、使用者にも適応する属性があって、適応しない属性の魔法は使えない、とかよくあるけど……。
そういうことも、きっとカリーヌさんに教えてもらえるだろう。お母さまに聞いてもわかるだろうけどね。楽しみは、取っておきたいものだ。
わたしは、着せ替え人形になるという地獄から目をそらして、明後日の家庭教師の到着を楽しみに待つのであった。
カリーヌはフランス人名です。ラプラスはフランスの物理学者、ピエール=シモン・ラプラスからとっています。ラプラスの悪魔やラプラシアン、ラプラス変換で有名ですね。
旋風は、地上付近の大気状態が原因で、晴天の時に発生するらしいです。逆に竜巻は上空の大気状態が原因で、荒天の時に発生するものだそうですね。
主人公は、魔法に関して予測を立てているだけで、実証できているわけではありません。なので、本文でもあいまいな表現にとどまってしまいます。