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異世界魔法の物理学  作者: のん
第一章
10/42

9. 魔力を感じてみよう

ブックマーク件数が5件、評価も入ってました。とても嬉しいです。ありがとうございます!


主人公はとりあえず魔法を学ぶことから始めるようです。


今日は前に3話投稿しているので、読み飛ばしにはご注意ください。

大泣きしながら前世の記憶があることを両親に打ち明けた日から数日。

わたしは新品の魔法教本と振り子を手に入れていた。

お母さまには、魔法を練習するときは危ないから庭でやってね、とのお達しを受けている。

そんなわけで今は庭のベンチに座りながら魔法の教本を読んでいる。

振り子の実験はお父さまも見たいとのことだったので、今は自室にお留守番だ。


「魔法の基礎はまず魔力を感じること……ね」


わたしは血液が魔力に変換されると予想している。

しかしながらその変換の仕方がわからない。

当たり前だ。普通、人間の体内で質量―エネルギー変換を起こせるなんて考えるわけがない。

核爆弾じゃあるまいし……。


唐突に魔力を感じることと言われても何が何やらなわけだ。

教本によるとこうだ。

1. 魔力は人間の血液の流れに乗って全身をめぐっている

2. 体の一部分、例えば手のひらなどに意識を集中する

3. すると魔力が手のひらに集まるのでそれを感じる

とのことである。

また魔法はイメージすることが大事だという。

いかにもこの世界らしい、ざっくばらんとした説明だ。

魔力の研究が進んでいないのがよくわかる。


とりあえず、手のひらに意識を集中させてみたが、何も感じられない。

これはあれだろうか。前世の知識とかが逆に作用しているとかだろうか。

そんなわけがないと先入観を持っているからとか。


そういえば、アニーは魔法具を使うとき呪文を唱えていた。

あれは魔法の発動キーだとお母さまが言っていたが、血液―魔力変換にも応用できないだろうか。

アニーは魔力を流してから呪文を唱えると言っていたので順序が逆だとは思うけど……。


こういう理屈はどうだろう。

実はあの魔法具に刻まれているのは水と火の魔法陣だけではなくて、血液を魔力に変換する魔法陣も刻んであるとか。

それか、そもそも魔法陣の構成自体に血液―魔力変換を行う工程が含まれていて、手を触れることをキーにその工程が発動しているとか。

お母さまは刻んである魔法陣は水と火だと言っていたから、後者の可能性の方が高いかな?


そうとなれば実験だ。呪文には魔法語を使用するので辞書がいる。

幸い、お母さまが元宮廷魔法師だったこともあり、家にはこの世界の言葉と魔法語を翻訳する辞書もある。

なぜ初級の魔法教本がなかったかというと、お母さまが結婚したのが宮廷魔法師になった後だからだ。宮廷魔法師が初級の教本なんて読むわけないよね。


―――家の書庫から辞書を持ってきて該当する単語を探す。

あった。早速試してみよう。

使う単語には細心の注意を払う。例えば単純に血液を魔力に変換しろって言って血液全部持ってかれたら嫌だからね。


「《右手手のひらの血液2 dOを魔力に変換せよ》」


すると差し出した右手の手のひらに何かが蓄えられた感覚があった後、すぐに手のひらがほんのり温かくなった。


「あ……。これが、魔力なのかな?」


手のひらに蓄えられた"何か"がおそらく魔力なのだと思う。しかし魔力はエネルギーで、エネルギーの使い先を指定しなかったからすぐに熱エネルギーに変換されて捨てられたのだろう。

ちなみに、2 dO (デンオルマイト) とは2 pg (ピコグラム) のことだ。

血液の量を2 pgに設定したのは人体の比熱である3472.72 J/kg⋅Kから温度が約2 ℃上がるような設定にしただけだ。


驚くべきことに、この世界にはきちんとした基準のもとに作られた単位系がある。さすがに前世のように物理量から定義するといったことはしていないが、メートル原器のようなものを作って単位の基準にしているようだ。元の世界でメートル法が策定されたのって確か18世紀末じゃなかったっけ……?


それはそうと、呪文で血液―魔力変換ができることはわかった。

おそらくこの世界の人間、はたまた生物には、脳ないしいずれかの器官に血液―魔力変換を行う機能が備わっているのだろう。魔法語を使うことから脳か声帯かのどちらかだと思うが、無詠唱魔法なども存在するらしいから多分脳なんだと考えられる。

こればっかりは脳の解剖をしてみないとわからないし、わたしは解剖は専門外だ。わたしが魔法の解析を進め、知識として世に広まった後、しかるべき専門家が行うことだろう。

今は、魔力を感じられたことを喜ぶとしよう。


とりあえず、第一関門突破、ということで。

単位系は正直悩みました。でも、元の世界と同じ単位系だとおかしいだろうなぁと思って適当に作ってみました。

MKS単位系はメートルmetre (m)、キログラムkilogram (kg)、(セカンド)second (s)ですが、この世界では、ランデrande (r)、オルマイトOlmeit (O)、(ユリート)ylite (y)となります。ROY単位系とでも言いましょうか。kgはグラムgに1000倍を意味する接頭辞kを付けた単位ですが、この世界ではkg=Oとなっています。kgが基準です。

主人公の頭の中では基本的にMKS単位系を使うので、それほど使用頻度は高くないと思いますが、話の中とかでは出てくると思いますので、出てきたら適宜後書きなどで補足しようかと思います。

単位系に使用している文字がアルファベットなのはさすがにどうしようもなかったです。新しい文字を作りたくても表示できませんからね。そこはこの世界の言葉が日本語で表されているように、アルファベットで表されている、ということで。


人体の比熱に関して: 人体の比熱はググった数値を使いました。そこから6歳女子の平均体重約20 kg、血液2 pgから得られる静止質量エネルギーを用いて計算すると、だいたい2.5 ℃くらいになります。平熱36 ℃として、だいたい手のひらが38.5 ℃くらいになった感じでしょうか。実際は空気中にも熱エネルギーは逃げているので、もう少し低いです。


下の評価ボタンを押していただければ、星いくつでも筆者非常に喜びます。


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