表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

I need your love tonjght

作者: 東京 澪音
掲載日:2016/05/30

夢ばかり見ていた。

夢ばかり追いかけていた。


それが十代なら救いがあったのかもしれない。

僕は二十歳を越え、もうすぐ27回目の夏を迎える。


右手に持ったアコースティックギター。


これが今の僕が持っているものの中で、一番高価なモノだ。


僕はうたうたい。


毎週土曜日、田舎からバスと電車を乗り継ぎ、この街にうたいに来る。


普段は田舎の親類の工場に勤務し、その給料で六畳一間のアパートに住んでいる。

勤務って言っても正社員じゃなくて、お手伝い程度のアルバイトといった感じだ。


ただ勤務時間は8時~17時なので、正社員と大して変わらない労働時間だが、アルバイト契約ならあまり縛られないし、休日出社も早々ない。どうしてもの時は勿論出社するが、幸いそれほど忙し工場ではないので、アルバイトの僕に休日出社が回ってくる事は殆どない。


おかげで、好きな事に時間を費やす事が出来る。


ただ最近焦りを感じはじめていた。


手の中で握っている小銭。これが今の全財産。

これじゃ、明日を夢見る事さえできない。


この街にはチャンスが沢山転がっている。十代の頃の僕の目にはそう映っていた。

でも現実はそう甘くない。


いくつものオーディションをうけ、いくつもの会社にデモテープを送った。

けど、結果はご覧の通り。僕はまだここにいる。僕はまだここから進めていない。


学生時代から付き合っている彼女。

何も言わずにいつも応援してくれているが、溢れるほどの夢ばかり持ってたって、それだけじゃ彼女の喜ぶ顔なんか到底見えやしない。


今日も遅くまでうたを歌っていた。

僕の歌に足を止めてくれる人達もいるが、ただそれだけ。


久し振りに同級生に会った。

彼はネクタイを締め、スーツ姿だった。


彼は言った。そろそろ現実を見た方がいい。

いつまでもこんなところにいたって、新し風なんかふいちゃ来ないさ。


帰り道、ふと見上げた空。

汚れた街のこの空には、願いを呟く星さえ見当たらなかった。


電車に乗って街から戻ると、最終バスには間に合わなかった。


アパートまでは徒歩だと40分。

どうやらここには星が出ているようだ。


街はビルやネオンライト、工場から出る煙などに邪魔されて、星を見つける事が出来なかったのだが。

僕の住む町はビルも無ければネオンも少ない。


だからこうして星を見つけることが出来る。


いつもはバスや電車に揺られ、あまり考え事をする事なんてないんだけど、久し振りにあった同級生の言葉がグルグルと回っている。


わかっている。わかっていたけど、受け入れられなかった。

僕は暗闇の中でもがき続けていたんだ。


明日の行方を手探りで探していた。


そんな僕のたった一つの光。

彼女は僕を照らす月明りだった。


その月明かりの中、明日の行方をずっと探していた。

すぐそばにあったのに。気が付くことが出来なかった。


アパートが見える坂道までくると、二階の隅の部屋を見る。

僕の部屋に明かりが灯っていた。


僕は本当に大切な事がそこにある事に気が付いた。


早や足でアパートへ急ぐ。

新しい風が吹く場所。そこには彼女が待っていてくれるから。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ