I need your love tonjght
夢ばかり見ていた。
夢ばかり追いかけていた。
それが十代なら救いがあったのかもしれない。
僕は二十歳を越え、もうすぐ27回目の夏を迎える。
右手に持ったアコースティックギター。
これが今の僕が持っているものの中で、一番高価なモノだ。
僕はうたうたい。
毎週土曜日、田舎からバスと電車を乗り継ぎ、この街にうたいに来る。
普段は田舎の親類の工場に勤務し、その給料で六畳一間のアパートに住んでいる。
勤務って言っても正社員じゃなくて、お手伝い程度のアルバイトといった感じだ。
ただ勤務時間は8時~17時なので、正社員と大して変わらない労働時間だが、アルバイト契約ならあまり縛られないし、休日出社も早々ない。どうしてもの時は勿論出社するが、幸いそれほど忙し工場ではないので、アルバイトの僕に休日出社が回ってくる事は殆どない。
おかげで、好きな事に時間を費やす事が出来る。
ただ最近焦りを感じはじめていた。
手の中で握っている小銭。これが今の全財産。
これじゃ、明日を夢見る事さえできない。
この街にはチャンスが沢山転がっている。十代の頃の僕の目にはそう映っていた。
でも現実はそう甘くない。
いくつものオーディションをうけ、いくつもの会社にデモテープを送った。
けど、結果はご覧の通り。僕はまだここにいる。僕はまだここから進めていない。
学生時代から付き合っている彼女。
何も言わずにいつも応援してくれているが、溢れるほどの夢ばかり持ってたって、それだけじゃ彼女の喜ぶ顔なんか到底見えやしない。
今日も遅くまでうたを歌っていた。
僕の歌に足を止めてくれる人達もいるが、ただそれだけ。
久し振りに同級生に会った。
彼はネクタイを締め、スーツ姿だった。
彼は言った。そろそろ現実を見た方がいい。
いつまでもこんなところにいたって、新し風なんかふいちゃ来ないさ。
帰り道、ふと見上げた空。
汚れた街のこの空には、願いを呟く星さえ見当たらなかった。
電車に乗って街から戻ると、最終バスには間に合わなかった。
アパートまでは徒歩だと40分。
どうやらここには星が出ているようだ。
街はビルやネオンライト、工場から出る煙などに邪魔されて、星を見つける事が出来なかったのだが。
僕の住む町はビルも無ければネオンも少ない。
だからこうして星を見つけることが出来る。
いつもはバスや電車に揺られ、あまり考え事をする事なんてないんだけど、久し振りにあった同級生の言葉がグルグルと回っている。
わかっている。わかっていたけど、受け入れられなかった。
僕は暗闇の中でもがき続けていたんだ。
明日の行方を手探りで探していた。
そんな僕のたった一つの光。
彼女は僕を照らす月明りだった。
その月明かりの中、明日の行方をずっと探していた。
すぐそばにあったのに。気が付くことが出来なかった。
アパートが見える坂道までくると、二階の隅の部屋を見る。
僕の部屋に明かりが灯っていた。
僕は本当に大切な事がそこにある事に気が付いた。
早や足でアパートへ急ぐ。
新しい風が吹く場所。そこには彼女が待っていてくれるから。




