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転生ダラダラ冒険記  作者: 猫頭
第一部 第二章 【冒険編】(仮)
37/39

24 暴きましたよ




 最深部(コアルーム)の奥にある通路、おそらく聞いていた外へ続く一方通行なのだろう。俺達は急いで通路に入るとそこは上り坂になっていた。


 地下五階とはいえ一階層あたりの高さと階層間の厚みもあった為だろうか地上までの距離は長い。しかも坂は一定の角度ではなく急な部分と緩やかな部分が織り交ざりそれが九十九折になっていた。


 何処の峠道だよ! あれか、こんなダンジョン作らされた事への(ささ)やかな仕返しか何かか?


 後ろを走る気配に距離を感じて振り返って見ると、メイドの二人が限界なのか歩く様な速度で登っていた。


 ちょっ、お前等諦めるなよ! 慌てて戻ると二人を両脇に抱えて駆け上り、前を走っていたアリッサを追い抜いた瞬間


 「あっ、ズルイです~」


 そう言って背中に飛び乗り背後から首に掴まって来た。おまっ、ふざけんなよ。苦しいっつか……


 「(流石に三人は)(おめ)ぇ」


 「あ~っ! それは女性に対して禁句なんですよ~」


 若干怒り気味に抗議の声を上げるがそんな場合じゃない。取り合えず今は時間が無いので文句は後回しだ。



 少し走った所で出口らしい光が見えてきたのでスパートを掛けて外へと出ると、両脇のメイドを下ろしその場に腰を落として体を休ませる。


 後ろを確認すると出口が消えているのは一方通行だからなのか時間ギリギリだったのかどっちだろうな。取り合えずここから入り口は見えない訳だが……


 「ったく、出口(こっち)側に見張りが居ないとかどんだけザルだよ。よくギルマスになれたな、無能にも程があるだろう」


 疲れている所為か普段なら表に出さない悪態がついでてしまったが、メイド達は気にしてる様子は無い、アリッサの方を向くとアリッサが『えっ』とか『はぁ?』とか空を見上げながら呟いている。


 ……コイツついに脳までやられたか? って、違うだろうな。


 「もしかしてコアからか? 俺にも聴こえる様に出来るか?」


 どんな説明なのか気になるので聞かせて欲しいが、果たして可能なのか。


 「あ、聞いてみます~。……出来るそうですよ~」


 『サブマスターに設定された事により通話権限が与えられました』


 おぉ! 何かアナウンスが聴こえるようになった。――って、ちょっとまてー!サブマスとか勝手に任命してんじゃねーよ!


 そんな俺の心のツッコミを他所に長ったらしい説明が続いているのだが、音声が棒読みちゃん(ゆっくり)に似ていて気が抜ける。


 大体が予想通りの説明も終わるとアリッサにギルドカードを確認させる。それは種族がダンジョンマスターに変わっていたり、スキルにダンジョンメイクなんて書いてあったら後々面倒だからな。


 ついでに自分のも確認したが幸い俺もアリッサもカードに変化は無かった。


 この事は秘密にしておきたいので手早く打ち合わせを済ませ口裏を合わせられる様にしてから入り口側のメンバーと合流する事にした。


 合流後、街への移動中にギルマスに中で何があったのかの説明を求められたので掻い摘んで説明をし始める。


 コアは暴走していなかった事、召喚された魔物の強さ、世話係の魔物を保護して連れ帰った事、そしてマスタールームでの事、これは打ち合わせした嘘報告になるのだが詳細はこうだ


 安全の為に俺一人でコアルームに入り二体の魔物と交戦(最初の報告が二体だったので問題は無いだろう)、そして一体の魔物を倒すともう一体がコアを抱えて逃げようとした所で放送が流れた。


 どうやら倒した方がマスターだったのだろう。そしてもう一体に切りかかったが倒すまでには至らなかった。ただ、そのとき魔物がコアを落として割ってしまう。魔物はそのまま逃げたので俺はアリッサ達を呼んで急いで出口から脱出した。


 と、まぁこんな所だ。これなら放送の事もコアの破壊がカードにカウントされていない事へも言い訳になるだろう。


 もっとも、この男(ギルマス)に勘ぐるだけの頭の切れがあるとも思えないのでこの説明でも大丈夫だろう。アリッサ達には『呼ばれて入った時には魔物は倒されていた』と言う様に指示したある。嘘ではないのでボロが出る事も無いだろう。


 普段から仕草等が怪し過ぎるアリッサが不安だったが、この時はサラリと答えていた。コイツ嘘は得意なのか?


 魔物の四人は取り合えず代官と相談して結果が出るまでは俺預かりとなったが、住人の不安を避ける為になるべく出歩かない様にとの事。


 軟禁に近い形になるが宿屋で大人しくしてもらうしかないだろうな……。




 そんなこんなで宿屋に着いた訳だが当然取ったのは隣り合わせで男部屋と女部屋の二部屋、今は一階の食堂スペースで夕食を取りながらの雑談タイムだ。


 と、ここで今更ながらコイツ等の名前を聞いていない事に気付いたが元から名前が無い事が解った。


 「――じゃあ、ネームドモンスターとして召喚されると消費ダンジョンポイント(以降DP)が多くなる為に一般モンスターとして召喚されたと」


 この辺の詳細はあの時コアが説明してたな、一番DPが少ないのが使い捨てとなる一般モンスター、次が倒されても一定時間で復活するリポップモンスター。一般は経験を積む事で強くもなれるが初期能力が弱い、リポップも成長は出来るが死ぬと復活時にリセットされて初期値に戻る。


 これらにDPを追加する事でスキルを持たせたり、通常の倍以上のDPを使って強化するガーディアン型やボス型なんてのもある。消費するDPによって無制限に強く出来るのだが強くするにつれて消費するDPの振り幅が大きくなるので理論上無制限でも実質的に限界があるとか何とか……


 ネームドモンスターは通常より成長率が高い他、統率力が有り他の魔物達の指揮が出来るんだとか。


 彼等(彼女等)は一般モンスターではあるが冒険者の世話係として戦闘に関係の無いスキルを持って召喚されたそうだ。


 「なら冒険者には何て呼ばれていたんだ?」


 「私はじいさんと呼ばれていました」


 そう答えたのは初老の紳士を思わせる燕尾服を着たダークグレーの髪の男だ、続いてもう一人の浅黒い肌をした青年風の男が『にいちゃん、と言われてましたね』と答えた。


 後は『(わたし)は姉ちゃんでした』と答えたのはパッと見人間と変わらない外見で身長は160cmくらい、紺色の髪をショートカットにしたややキレ長な目をした平凡な顔立ちの女性だ。


 ちなみにバストは推定A……いや、かろうじてBか? ここは彼女の名誉の為にスレンダーな女性と表現しておこう。


 最期に『(あたし)は譲ちゃんと呼ばれてました』そう答えたのは140cm無い感じのちっこい女性だ。赤茶の髪をツインテールにしたロリ巨乳だ。もう一度言う、ロリ巨乳だ。


 いや、別に俺が巨乳好きという訳では無いが、この女性陣(アリッサも含む)の中では一番大きいだろう。


 ――っと、話が反れたな。酒場なんかで聞く『よう、姉ちゃん○○くれや』的な呼ばれ方だったんだろうな。


 それはいいとして今後は名前が無いと不便なので適当に思い付いた名前を挙げていって気に入ったのを選んでもらった結果


 じいさん→バラム。にいちゃん→ラグ。姉ちゃん→クレア。譲ちゃん→ルルナ。に決まった。


 名前が決まった所で注文していた料理が届く。主食として適当に頼んだ数種類のオカズとスープとパンだ。


 このパンは他所の固いパンとくらべてモッチリとして柔らかく比較的前世のパンに近い。


 ちなみにこのパン【愛情が産んだ柔らかパン】という名前が付けられているのだが、以前パン捏ね作業中に奥さん(当時新婚ホヤホヤ)とイチャラブに夢中になってたら生地が膨らんでいて焼いてみたら柔らかくなったんだとか……。偶然丁度いい発酵具合になったんだろう。


 俺はそのパンを数枚ほど15mくらいの厚さで切って焼いてもらった。


 バターが無いのは残念だけどトーストっていいよね。機密性の高い容器に乳を入れて振ってれば出来るらしいから今度やってみるか……


 そうだ、バターは無いけど蜂蜜なら持ってるじゃないか! 兄様の所を出る時に平民向けと貴族用のを其々数個ずつ瓶に入れて貰ってたの忘れてた。折角だ貴族用の質の良い方を使うか、俺は懐から蜂蜜を取り出してパンに塗った。


 『ハニートースト』流石に声には出さなかったが心の中で某青狸口調で蜂蜜の塗り終わったパンを掲げると口に運んだ。


 旨い、パン独特の焼いた小麦の香りもいいが蜂蜜の香りが加わると更にいいな。


 流石に気になったのかアリッサが『良い匂いですね~、何ですか~』と食べたそうな顔をするのでハニートーストを一枚渡した。


 気分がいいので他の四人にもハニートーストを御裾分けすると、予想以上に受けが良かった。


 おいしそうに食べる四人をほっこりと眺めていたら、いつの間にかアリッサが瓶を片手にスプーンで直接蜂蜜を舐めていた。


 「ちょ、これ高いんだぞ! そんな勿体無い食べ方すんな、お前はクマか!」


 ”高い”に反応したのかアリッサはビクリと反応して固まった。が、直ぐに手と口だけが動き始めるのだが、本人の思考はいまだ固まったままのようだ。どんだけ蜂蜜好きなんだよ。


 俺が瓶を取り上げると、ハッっと我に返るが既に瓶の中身は1/3にまで減っている。……こんなに舐めやがって。


 我に返ったアリッサは『な、何でクマだって解ったんですか~』と恥ずかしそうに聞いてきた。


 って、そっちに反応したんかい! そんなの見た通りなんだが、種族を特定されるのがそんなに恥ずかしい事なのか? ちょっと聞いてみるか。


 「いや、見たまんまだろ。何で恥ずかしがってんだ?」


 「うぅ~、確かにクマですよ~。でも他の仲間と違くって昔はそれでからかわれてたんです~」


 ほぅ……でも、この反応からしてハブられていた訳では無さそうだよな。普通にからかわれてたって事か? 『他と違う』ね……


 「何だ、尻尾が白いとか言うなよ」


 まさかな、いくらなんでも大熊猫(パンダ)って事は無いだろう。


 とか思ったらイスから跳ね上がる様にして尻を両手で押さえながら『見たんですかっ!』とか叫ばれた。




 ――マジかよ……






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