表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ダラダラ冒険記  作者: 猫頭
第一部 第一章 【誕生~旅立ち編】 
11/39

11 セクハラ?しましたよ (兄の過去編2)




 翌朝、父様の書斎に入るとそこには弟のエルドニアもいて、なにやら書類を見ていた。何をしてるか気になったけど、先ずは謝らないと。


 「父様申し訳ありません、昨日のお茶会で伯爵家嫡男と揉めてしまいました」


 深く頭を下げて父様の言葉を待つ。


 「何か理由がありそうだな、そこに座って聞かせてくれないか」


 怒った様子の無い、いつもの口調で着席を促されたので、それに従い昨日の事を話した。


 話し終わる頃、エルは口笛を吹いてサムズアップしていた。こっちは怒られるのを覚悟で報告してるのにと思っていると父様が『良くやった!』と嬉しそうに褒めてくれた。


 「……何で? 伯爵家とその取り巻きの貴族達を怒らせたんですよ?」


 「その位なら問題無いから大丈夫だ、もう気にする事は無い」


 格上を怒らせたんだ大丈夫な訳無い。きっと父様はボクに心配させない為に嘘を言っているに違いないんだ。


 何故か悔しさが込み上げてきて、強くこぶしを握り”でも”と言おうとした時。


 「父様、それでは言葉が足りないと思いますよ」


 エルはそう言って言葉を続けた。その内容はボクの不安が見当違いだと告げる。


 「まず相手に非が有るので親に告げ口は出来無いのでこれ以上問題が発展する事はありません。確かに相手は伯爵で、うちは男爵ですが、それは兄様の側から見た男爵家なんです」


 【側から見た】ってどっから見ても男爵は男爵じゃないか? と、首を傾げる。


 「そうですね……、例えば騎士や平民などが功績によって賜る勲爵士などは爵位が男爵より低いとされてますが、功績の内容によってその威光は伯爵を越える場合があります。


 外側から見た(うち)も同じで現国王より直々に幼名を賜った名誉ある家名を持つ男爵でもあるんです。ですから喧嘩の売り方によっては、国王様の不評を買う恐れもあるんですよ。


 それから、父様の実家とは”表向き”絶縁となってますが、別に勘当された訳でもないですし、実際手紙のやり取りもあります。この状態で伯爵が侯爵家の息子や孫に喧嘩は売れませんよ。


 何よりドイトン伯爵の領地はレイグラート侯爵領の隣ですから尚更です。だからと言って横暴な振る舞いをすれば破滅しますけどね。安心しましたか?」


  つまり伯爵だからってビビる必要は無いって事なのか。まぁ、威張るつもりも無いし、安心といえば安心なのか。……よかった。



 『でだ、お前はそこで何を調べてるんだ?』最初に疑問に思っていた事を父様がエルに尋ねた。


 何でも最近街中を散歩してる時にお菓子を貰える頻度が上がったらしく、気になって調べてるとか何とか。


 お菓子貰えたらラッキーでいいんじゃないの? 何を気にすんだよ?


 父様も首を傾げながら置かれた収支報告書や輸入出関税帳をパラパラと見る。


 「個々で見ても解り辛いですよ、丁度纏め終わったのでコレを見ながら説明しますね」


 ……うわっ! 見ると数枚の紙にビッシリと数字が並んでいて、思わず眉間に皺を寄せて一歩さがってしまった。こんなの良く書けるな。


 「まずコレが過去二十年間の民税と人口増加をグラフにしたものです」


 あ、こっちは数字が少なくていいな。


 「人口の増加以上に税収が上がっています。これは平民の平均年収が増えている証拠です。二十年前のおよそ3.2倍ですかね。貯蓄が増える事は一概に悪いとは言えませんが、お金の流れが滞らない為の工夫はすべきかと。


 物価は食料品で25~30%下降、雑貨で15~25%下がっていますが、年間消費量は上がっていて平均1.68倍です。現状、供給過多になりつつあります。


 食料品の生産量と輸入量ですがどちらも上がってはいますが輸入量の方が伸び率は高いです。ですから食料自給率は51.3%と二十年前より35.9%減っています。これは移住者内の農民率が低い所為です。年間約1.8%減ですが、このままなのは問題あるかと……」


 ここまで聞いて頭が痛くなってきた。結局何なんだよ、お金が増えて品物が安いなら良いじゃんか。お菓子ももらえて嬉しくないのかよ。


 エルが視線をこちらに向けてボクの顰めっ面を見たので慌てて顔を逸らして父様の方を向くと、難しそうな顔をして何かを考えている様子だった。


 「まず貯蓄の問題ですが一般家庭の年間出資率より年収の伸び率の方が勝っています。貯蓄が増えると聞くと良く思えますが、三ヶ月働くと残り九ヶ月遊んで暮らせると考えたらどうでしょうか? 暇を持て余した人が街中に溢れれば治安も悪くなります。


 貯蓄がこのまま増え続けた場合ですが、こちらの資料とあわせて説明します。


 食糧生産の下降がこのまま行くと十年しないうちに食料自給率は30%台まで下がりますが、その頃に食料物価も下降限界を迎えるでしょう。


 現状供給過多で物価が下がっていますが、仕入れ値と売値がほぼ同額になり、かつ関税を考えると儲けが出ず商人達からの輸入は止まってしまう事で不安が広がります。結果として各家庭での買占めによる供給不足が始まると思われます。


 そして食糧自給率の低さが供給不足に拍車をかけ物価が高騰しだします。最初は貯蓄が有り余っている事から物価の高騰は天井知らずになるでしょう。ですが最高値まで上がり、貯蓄も無くなった頃には今度は物価が高すぎて高所得者意外は働いても生活出来無いような事になると思われます。


 そうなれば窃盗や強奪などの犯罪が増加します。そこで各物品の販売価格の設定と義務化、農耕地拡大の検討をしてはいかがでしょうか? 次に……」


 長い話がやっと終わった。お菓子の話が何でこんなになるのかと不思議で仕方無いが、弟の頭の中の方がもっと不思議だと思う。


 その後も何やら対策を父様と煮詰めていくそうなので頭の痛いボクはここで退席する事にした。


 外の空気を吸おうとベランダに行くと、マリアが洗濯物を干していた。たまには手伝ってもいいかなと思いカゴの中の洗濯物に手を掛ける。


 それは女性物の下着だった。小さいから妹のだろうか? あの娘(ラピス)もこんな下着を穿いているのだろうか?


 思わす見入ってしまっていると凄い勢いで下着をマリアに持っていかれた。どうやらマリアの下着だったようだが、あんな小さいの穿けるのか?



 それから数週間後、不思議な事が起こった。ボク宛の手紙と荷物が届いたのだ。それも間を開けて三軒も。


 一つはドイトン伯爵から男性物の装飾品が。一つは取り巻きだった騎士伯からで特産品らしい食材と短剣が。どちらも手紙には簡単な挨拶と『これからも宜しく』みたいな言葉が添えられていた。


 父様によると貴族は簡単には謝れないらしいのでこの様な手紙と贈り物をしたんだそうだ。面倒臭い事するんだな。


 そしてフォローム子爵からお礼の手紙と何やら筒みたいな物が送られて来た。


 エルが『遠眼鏡か、いいね。細い方から外を覗いてみなよ』というのでそうしてみた。


 ……すっ、凄い! これ凄いぞ! 遠くの物が大きく見える!


 それから遠眼鏡はボク一番の宝物になった。何処へ行くのも持ち歩いたし、子分にも自慢をした。羨ましがられると気分も良い。


 上機嫌で遠くを見ていると子分の一人から『高い所から見たらもっと凄いんじゃないですか』と言われ、それからは高い所がお気に入りの場所にもなった。


 ある日の昼休み、学校の屋根から遠くを眺めるとエルが街の外を歩いていた。


 あいつ、勝手に街から出てる。……父様に言うか? でも告げ口は卑怯だよな。遠眼鏡でもよく見えないが野草を摘んでるみたいだな。オカズにでもするのかな?あの野草ボクは苦くてキライだけど父様達は美味しそうに食べるんだよな。


 見るのを止めようとした時、森の中からコボルトが出てきた。学校にいる父様に伝えようと思ったけど何故か目が離せなかった。


 そこでボクは信じられないものを見た。エルが素手でコボルトを退治したのだ。今迄ボクはエルより強いと思っていたし正直下に見ていた。でも、エルは勉強も出来て父様と難しい話もしてる。強さまで負けたらボクには何も無いじゃないか!


 悔しくて遠眼鏡を叩き付けそうになった。なったけど、あの娘(ラピス)の顔が浮かんで手を止めると。そのまま下に降りて家に向かって走り出した。


 家の前の木にはいつも剣の変わりに振り回してる木の枝が立て掛けてあって、それをみた時いい気になって振り回していた自分を思い出して余計に悔しくなった。


 くっそう! くそっくそっ! 木の枝で何度も木を叩き続けていると、枝が折れたので折れた枝を投げ捨てて部屋に鍵を掛けて篭った。


 ……何でボクには何も無いんだ。遠眼鏡を抱えるようにしてベッドに蹲った。


 遠眼鏡を抱えてあの娘(ラピス)の事を思い出すと胸の真ん中が少しだけ熱くなって、悔しさが和らいだ気がする。


 あれから子分達とは遊んでいるが、政治経済や礼儀作法などの授業は真面目に出ている。『長男としての自覚が……』とか言われてるけどそうじゃ無い。もしも、跡取りの座までエルに取られたら本当に何も残らない事が怖いからだ。だから跡取りだけはどうしても譲れなかった。


 それと、遠眼鏡を使う事は無くなった。けれど何時も持ち歩いている。ボクにとっての一番の宝物なのは変わらない。でも、もっと大切になった気がする。


 そしてあの娘(ラピス)の事を考える時間も増えた気がする。このあいだもマリアの髪から花の様な香りがしたので思わず手に取って匂いを嗅いであの娘(ラピス)もこんな匂いがするのだろうかとか、どんな匂いが似合うのかなんて考えたり。


 マリアの手足を触っては柔らかさを思い浮かべたりしている。……最近、マリアや妹の【俺】を見る目が変わった気がする。止めた方が良いのかな?


 そうそう、最近【俺】になった、理由は二つ。エルが自分の事を俺と言ってるのにボクが【ボク】と言ってる事が何か負けてる気がしたからと、あの伯爵家のバカ息子も【僕】と言っていた事を思い出してボクと言うのが嫌になったからだ。




 ――あれから数年、心も落ち着いた頃にザンと名乗る従者が遣って来た。






経済については素人なので”かなり”いい加減です。

ツッコミ所満載だと思いますがそこは広い心で流してやって下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ