背中にkiss
彼はいつも別の女の人の匂いをまとっている。
いつもいつも違う香水、シャンプーの香り。
ねぇ、私は貴方の何ですか。
今日も貴方からは別の女の匂いがする。
「…どうした」
優しい手つきで私の髪を梳く。
本当に本気で心から心配していると言った表情。
貴方は誰を愛していますか。
そんな問いかけも出来ずに私は笑う。
「何でもない」と言いながら。
黒い瞳は私を見つめて抱きしめる。
私は知らない女の香りに包まれるのだ。
なだれ込む行為、そこに愛はありますか。
………スッと意識が戻り目を覚ます。
横では貴方が子供のように眠っていた。
起こさないようにゆっくりと起き上がる。
隣で眠る貴方からは知らない匂いはせずに、私と貴方の汗の匂いがした。
寝返り打たれ大きな背中が露わになる。
広い背中…。
私はそっとキスを落とす。
他の匂いをまとっていても関係ない。
この時私が同情するのは他でもない、貴方が遊んでくる女の人達。
私の体中に散りばめられた赤い華。
それと同じ華が貴方の背中にも咲く。
貴方が帰って来る場所は私のところ。
否、これが愛なのだ。