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2014年/短編まとめ

背中にkiss

作者: 文崎 美生

彼はいつも別の女の人の匂いをまとっている。


いつもいつも違う香水、シャンプーの香り。


ねぇ、私は貴方の何ですか。


今日も貴方からは別の女の匂いがする。


「…どうした」


優しい手つきで私の髪を梳く。


本当に本気で心から心配していると言った表情。


貴方は誰を愛していますか。


そんな問いかけも出来ずに私は笑う。


「何でもない」と言いながら。


黒い瞳は私を見つめて抱きしめる。


私は知らない女の香りに包まれるのだ。


なだれ込む行為、そこに愛はありますか。


………スッと意識が戻り目を覚ます。


横では貴方が子供のように眠っていた。


起こさないようにゆっくりと起き上がる。


隣で眠る貴方からは知らない匂いはせずに、私と貴方の汗の匂いがした。


寝返り打たれ大きな背中が露わになる。


広い背中…。


私はそっとキスを落とす。


他の匂いをまとっていても関係ない。


この時私が同情するのは他でもない、貴方が遊んでくる女の人達。


私の体中に散りばめられた赤い華。


それと同じ華が貴方の背中にも咲く。


貴方が帰って来る場所は私のところ。


否、これが愛なのだ。

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