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記憶

 俺は、華恋に今までのことを説明した。


 サヤカとはどうやって出会ったのか、なぜうちにおいているのか、などなど……。


「そう、なんだ…なんか…ごめん」


「気にすんな、あれはあれで面白かったし」


華恋は親父のことを知っている、そしてその親父が夢に出ていることも知っている、だからすべてを包み隠さずに話すと、謝られてしまったので少しおどけておく。


そしてまた少しの沈黙が流れる、華恋といると結構まめに起きるのであんまり気にならない。


 その沈黙を切り裂くようにサヤカが眠い目を擦りながら起き上がって一つ伸びをすると不思議そうな顔で華恋のことを見つめていた


「おはよう、あたしはこいつの幼馴染の華恋だよ、よろしく」


一般的な挨拶をした華恋にサヤカは少し首をかしげてから「にゃぁ?」といった


「うっ…!!」


俺はそのがかわいくてつい悲鳴を上げてしまった。すぐに我に帰りおそらく冷たい目で見ているだろう華恋に視線を向けてみると華恋はこっちを向いてはいなかった


「……いい…」


「え?」


「…わいい…」


「は?」


「可愛い!!!」


華恋は急に叫ぶとサヤカに飛びついて体中をまさぐるようにしてじゃれている寝起きで状況を把握できていないサヤカは「ほえー!?」とか「な!?」可愛い言葉で現状の謎さを


あらわしていた。


そーいやこいつ猫とかそういう類のみるだけで人格かわってマタタビをみた猫のレベルで触って酔いまくるからな…俺はこんなに可愛いのに一度もされたことないけどな!!


まあされても困るからいいけど…さすがにサヤカが可愛そうになってきたので俺は華恋を少しなだめながらサヤカから引き離す


「はうー……」


そんな可愛い顔してもだめだろ…。俺は泣きそうになっているサヤカの頭に手を置いた


「まあ、こういうやつだけどよろしくしてやってくれよ」


俺がそう言うとサヤカは一瞬寂しそうな顔をした、その表情は俺の知らないサヤカの表情だいつもニコニコしていてなににでも好奇心をむけて子供のようにはしゃいでいるサヤカには


あまりに似合わない、触れれば壊れてしまいそうなほどはかなげだった。俺はサヤカがなぜそんな顔をしたのかはよくわからなかったがすぐにサヤカは正気に戻って


枕を抱きかかえて壁を作るようにしながら華恋をみる


「よ、よろしく」


サヤカがそういうと華恋はまたも飛びつこうとしたので俺は華恋の首根っこを掴む


「やめとけ…」


「…なんでよ」


そういうと華恋にひどく睨まれるというか恨めしそうな目で見られたが俺はサヤカを見てみろとあごで示唆する。華恋がすっとサヤカを見るとその視線の先にはおびえきっていて


枕を抱いて震えながら涙目でこっちをみているかわいらしいサヤカがいた。それを見て諦めたように華恋が一つ息をついてゆっくり立ち上がりサヤカに手を伸ばす


サヤカは「いいの?」みたいな目で俺を見てきたから俺も目だけで「どうぞ」と返事をするとサヤカはもう一度華恋を見てからその手をとって握手する


どうやら落ち着きはとりもどしたらしく華恋はやさしい表情をうかべる


「じゃあこれで友達だね、これから少し遊びに行かない、ぶっちゃけ和人よりサヤカと遊びたいな」


軽くひどいなこいつ…サヤカは俺に目で見てきたのでまた俺も目だけで「おう」と返事をするとサヤカは華恋に向かって一度うなずいてからこの場で着替えをはじめようとした。


当然あわてて止める華恋。甘いな…この程度で驚いていてはこいつと遊ぶことなんてできないぜ…


そんなことを思っていると華恋はサヤカの服を必死で抑えながら俺のことを睨んだ。その瞬間今の状態のまずさを知った…止めてないってことは慣れてるってことになってしまう。


言い訳しようとしたが華恋の冷たい目をみて諦める


「ごめんなさい…じゃあジュースでも買ってくるよ」


そういってとりあえず家を出て最寄のコンビニへ向かう、着替えの暇つぶしなのでそこそこ時間をかけてジュースを選んだ、サヤカにはあいつが好きなコーラで華恋はまあ無難に


しろはすでいいだろ、俺は微糖の缶コーヒーでいいか。その三つの飲み物を買い求めてゆっくり家に帰る


 家につくとサヤカは着替え終わっていて華恋にさっさと仕度するように言われてしかたなく仕度をすませて家をでる


「で…どこにいくわけ??」


俺は華恋に視線をむける、すると急に得意そうな顔になった。得意そうな顔とは決して徳井のようなイケメンになるわけではない。ってか徳井ってマジでカッコいいよね!!


そんなことはおいといて…


俺は目だけで華恋に行き先の提示を求めるとそれに答えた


「じゃあ今日はカラオケにいこう!!」


「またミーハーな…」


「なんか文句あんの!?」


「よし!!カラオケに行こう!!」


「おう!!」


俺が反論するとものすごい目で睨んできたので


ひるんでつい話に乗ってしまった…


俺はサヤカが気になったのでそっと目を向けるととても楽しそうにしているので安心した。


「なにニヤニヤしてんの?気持ち悪い…」


「別にニヤニヤしてねー…よ…」


言いながら自分の顔を触ってみる…ニヤニヤしていた…


 そんな他愛無い会話をしながらカラオケに向かった。


 ちなみにこの町にあるカラオケは白桜駅の目の前にある一つだけだ、駅の位置は和人の家から学校に行くのと真逆に進んで10分ほど歩いた位置にある、


ほかに歩いていける駅がないため俺の通っている白桜高校ははっきりいって立地がかなり悪い、そのため通っている生徒の9割が自転車か歩きで通学できるという


中学校気分な高校である。


 カラオケに向かっていると茶髪で短髪のいかにもサッカー部って感じのやつが前からおそらくアイスが入っているだろうビニール袋をもってこっちに歩いてきた、俺は気が


ついたが敦志はまだ気がついていない、昨日の一件があり少し気まずいから話しかけようか迷っていると華恋が敦志に気がついた


「あ!敦志じゃん!!」


その声に敦志がこちらに気がついて俺と目が合って立ち止まって無言で俺を見つめてくる、俺も同じように立ち止まって見つめる、お互いの視線に敵意は全くない、ただ相手の存在


を確かめあうだけの行為が長引いただけだった、俺はそれに違和感を覚えてなぜか笑いが込み上げてきた、耐えようともせずに笑った………。


 全く同時に敦志の顔も破顔する。そして二人して笑い出した、サヤカはそれを不思議そうな顔で見つめていたが華恋は呆れ顔だった。


そう俺たちのケンカはの仲直りはいつもこうだ、ケンカしてその日はお互い譲れずにケンカしたまま帰るが次の日に会えば目をあわして大笑いする、これが俺たちの儀式みたいな


ものだった…お互いが意地っ張りでさきにどちらから謝るかでケンカしたときもあったほどだったため誰がなにをいったわけでもなく自然にそうやって解決してきた


俺たちは多分どんなことがあったって縁は切れないだろう


 ひとしきり笑い終えたところで敦志がこちらに一歩踏み出したとき、サヤカが急に俺に飛びついてきた、それを見て敦志が目を丸くする


昨日のことは今ので解決したがさすがにこれは気まずい…おれはあわててとりつくろうとしたが敦志はすぐにもとの表情にもどったが


「おう!!久しぶりだな!!」


なんてことをいいだした、その言葉を受けてサヤカがビクッとしたがすぐに敦志が取り繕った


「あれ…??すまん…俺今わけわからんこといった…」


そういって敦志は難しい顔をしていたが華恋に「それはいつものことでしょ?」と言われて「そっか!」といって流れた


そして華恋が無理矢理さそったらしく敦志もカラオケに来ることになった


「はやく行くよ」


そういって俺とサヤカを残して先に歩きはじめてしまったので俺はいまだに抱きついたままのサヤカをゆっくりと引き離し華恋に追いついた、そして今度は敦志のサヤカに対する


自己紹介から始まって雑談が始まるが俺だけはまださっきの言葉が頭にうずまいていたが華恋に「だよね?」と話を振られてしまったのでその違和感は頭の隅に封印して


おいた…その台詞がサヤカの正体と俺たちのこれからにおおきな関係があるのはそのときは全く知らなかった…













                                    






 それから4人でカラオケに行った。


真っ先に歌いだしたのは華恋その次が敦志、次が俺と歌ってサヤカの順番が回ってきたがサヤカは全く歌おうとしない、


「どうしたの??」


「あたし演歌しか…歌えない…」


「「え!?!?」」


全員の声が重なってカラオケの個室に響き渡った、


「だからあたしが歌ってもみんな楽しくないと思うの…」


「…」


「…」


「そんなことねーよ」


俺と華恋が軽蔑ではなくまだ驚いていると最初に持ち直したのは敦志だった


「まあそうだな!!びっくりはしたけど演歌が嫌いなわけじゃねーし。ってか俺の親父が聞いてたからどっちかっていうと詳しいかもしれないぞ!!」


俺はおどけていってみせたがサヤカの表情はしたをむいてしまたのでよく読み取れない


「大丈夫だよ!!あたしも結構すきだし!!」


華恋も俺に続いて言うと、サヤカは覚悟を決めて歌い始める…


「「…ッ!!」」


その場にいた三人は息をのんだ、それは単に聞きほれるほどうまいだけの理由ではない…


三人がもっととも知っている曲だったからだ、それは俺の親父が大好きだった曲…


俺の家に遊びに来ていた二人は遊びに来るたびに家に流れているから耳がタコになるほど聞き覚えのある歌だったのだ


俺たち三人はサヤカの歌に耳を傾けた、おそらく全員が一度も意識をはずさなかっただろう、それほどまでにうまかった…


 歌い終わった後サヤカは真っ赤な顔で俺たち三人の顔を順番にみる、終わってからも俺たちはほうけた顔をしていが誰からともなく拍手がはじめる。


「お前うめーなー!!」


その言葉を発したのは敦志だ


「ちょっと悔しいかも…」


訳わからん対抗心を燃やしているのは華恋。


俺は声がでなかった…


 なぜか…


 その歌声を無性に懐かしく感じた…


 二人の声を受けたサヤカは俺のほうを上目使いで見てきた、感想を待っているらしい。俺は無言で近づいていってサヤカの頭の上に手を置いた


「よかったよ」


俺は人生で一番といってもいいほどあたたかな声音でいった、それを聞くとサヤカは満足そうに微笑んだ。


「あ、ごめん俺トイレ行ってくる」


急に言い出したのは敦志だ。


「あ、あたしも!!」

そういって華恋もそれにのったなぜか変なことに気を使わせてしまったらしい。


「おなか痛いからじかんかかるかもしれないなー」


としらじらしいことをいいながら部屋を出て行こうとした、俺はまあ二人になったところでいつも部屋で二人なんだけどなーとか思っていると


「行かないで!!」


急に叫んだのはサヤカだった


一瞬の静寂をやぶったのは華恋だった


「やっぱりあんた二人だとなんかしてんの??」


すごく嫌な目でみられた引かれているっていうよりは最早敵意があった。いやホント怖いからやめてくんないかな…


「なにもしてねーって!!それよりどうしたんだ??」


俺は最初に華恋にごまかしてからサヤカに視線を向けると


「べっ別になんでもない…ごめん!!ちょっと行っちゃうの寂しいなって思っただけだから」


そういって笑ってごめかした


「まあ俺のトイレは本当だから、ちょっと行ってっくるよ」


気を取り直したのは敦志だった


「じゃああたしはやっぱりのころうかな」


そういった華恋はサヤカに近づくとサヤカと次はどの歌を歌うかなどを話し始めた


こいつ…


サヤカのこんな薄っぺらい笑顔を見たことがなかった、こいつはこんな大人な顔もできるのかと知ったときだったがなぜか少し安心もした。


それはサヤカの正体が人間ではないところからきているのだろう、そのことに俺は不安を感じ始めていた、一般的に考えてサヤカの精神年齢は幼すぎる…


アニメやマンガじゃないんだそんな人間は普通じゃない、今までもサヤカは人間ではないことを裏付けるヒントはたくさんあった…


車に轢かれてもかすり傷ですんでいたこと、最初にあったときイヤホンをしていたのに声が聞こえたこと、そして今もまだ違和感をのこしているあの台詞…


必ず突き止めると誓ったはずなのに、いつの間にかサヤカとの暮らしに満足して、目を背けていたことがたくさんあった、ヒントは常にあったんだ


俺はサヤカといたいサヤカをもっと知りたい早くしらないといけない気がする…


俺の根拠の全くない予感が告げている、サヤカは俺の前からいなくなると…


 敦志が帰ってきたのは本当にすぐ、五分ほど経過したときだった、敦志はドアを開けるとサヤカを見て一瞬立ち止まった


「あれ??その…子…あ!!なんでもないなんでもない!!おそくなってごめん」


最初はなぜかわけわからん反応ではいってきた


「あんたどうしたの??」


華恋がいぶかしんできくと


「いや…俺なぜかトイレ行ってるあいだサヤカちゃんのことがすっぽりぬけちゃってたんだよねー」


「あんた忘れっぽすぎだよーボケた??」


「うるせー…」


その後も「おかしいなー」などといっていた、俺はそのことをあまり気にしていなかったが俺の中にまた違和感ができた


なにか重大なヒントを見逃している気がする…そう思いサヤカを見るとサヤカと目が合ったがすぐに俯いてしまうなにか隠し事でもあるかのようだった


そう思って声をかけようとしたが


「次和人の番だよ」


と華恋に言われてマイクをわたされて、途切れてしまった


 それからは俺が歌い華恋が歌い敦志が歌いと特に順番があるわけでもなくたまにサヤカが歌うが歌える曲は一つしかないらしい、それでも何度きいても飽きない歌後を4回ほど


披露したところでカラオケのフリータイムが終わった、外にでて時計を見ると午後7時になっている、五時には帰るつもりだったがサヤカが気を取り直してからは楽しそうに


していたのでそれはそれでよかったことにしよう


 四人で和人の家まで家の前で別れる二人の家はもっと進んだところのあの石橋よりも先に進んだところにある。前にもいったが和人も昔はその辺に住んでいた。


別れるときにサヤカはなぜか「さよなら」とも「また」とも言わなかった。単に別れを言うのがさみしいのだと思った…いや言い聞かせていた、自分が一つの可能性に気がついて


いること目を向けずに…

















 翌朝、俺は電話の音で起きた、シングルの布団に寝ているのは俺とサヤカ、初めはなんどとなく一緒に寝るのを回避しようとしていたがどこで寝ても


起きると隣で寝ているので観念して一緒に寝ることになったのだ。


「うぅぅ…」


俺は眠い目を擦りながら携帯をとりディスプレイ画面をみる、


「華恋か…」


サヤカに会いたくてかけてきたのだろうか、だとしたらなぜか嬉しかった。それは子供に友達ができるような感覚とは少し違うよろこび…


自分の好きな人が気に入られる感覚の嬉しさだ。


やっぱり…俺は…。そこまで考えたが電話がきれてしまうのででた


「もしもし」


「あんた今日暇?」


電話越しに声が聞こえる。


確か今日は何もなかったはず…


「ああ、暇だけど…どうした??サヤカがそんなに気に入ったか??」


ちょっと得意げに言ったが


「は?だれそれ」


…………………え?


「なに…いってんだよ…」


「は?だれそれって言ったの聞こえなかったの!?」


俺の中では今までにあったいろんな記憶が繰り返されていた…


二度目にサヤカにあったときにサヤカがいったひとこと…


華恋と敦志がトイレにいこうとしたときのサヤカの異常な反応…


そして…トイレから帰ってきたときの敦志の反応と台詞…


『いや…俺なぜかトイレ行ってるあいだサヤカちゃんのことがすっぽりぬけちゃってたんだよねー』…


その三つが支配していたそれと同時に昨日行き着いた一つの結論にたどり着く…


ひとつ深呼吸をして落ち着く、多分俺は自分で思ってる以上に同様している、だがら冷静にならなければ


「はぁ…」


頭から血が降りてきてあがった体温が徐々にさめていくのがわかる…


30秒ほどそうしているとようやく落ちついて頭がまわるようになって来た、そのあいだも電話口からは「もしもーし」とか言う声が聞こえ続けている


俺はなにも言わずに電話をきってサヤカをみる


そして寝ているサヤカのでこにやさしくキスをした…サヤカの苦しみが予想できてしまったのはきっかけでしかない…


俺は自分の気持ちにも気がついた…


その瞬間目の前が暗くなってく、世界から光が消えるのではなく…自分から光が消えていくような…そんな感覚だ…




 世界が一度暗くなったあと気がつくと真っ白な空間にいた、ここには前にも着たことがある…


「和人…」


聞いたことのある、やさしい声が聞こえた


「親父…」


俺は問いかけると


「ああ…そうだ」


おかしな状態のはずなのに頭がさえる…


自然と言葉がでてきた…


「つまり、俺に話してもいい情報が増えたってことでいいのかな…」


そういうと親父は一瞬目を丸くしたがすぐにいつもの微笑みに戻った


「やっぱりお前は頭がいいな、俺にそっくりだ」


「自分でいうのもすごいと思うけどな」


お互い微妙な笑みを交し合ったあと親父がしきりなおしと咳をひとつついて切り替える


「お前は今起きている状態をあらかた把握はしているな?」


「まあ一応は…サヤカは他人の記憶に干渉する存在ってところかな…理由とかなぜサヤカがいるのとかは全くわからないしなぜかサヤカの過去に疑問を抱かない…」


「そこまでわかっているなら話ははやいな、あの子には生まれるまでの経緯が存在しないんだよ…


 だから誰も過去に疑問を持たない、


 持たない存在としかいえないんだよ


 今いえるのは…それだけだ」


そういってだんだん親父が遠くなっていく…


「お、親父!!それだけかよ俺が聞きたいのはそんなことじゃねーんだよ!!」


少し取り乱しても状況はかわらない、どんどん親父から離れていく…


親父がはなれていってるわけでもなければ俺が遠のいているわけでもない俺と親父のあいだの空間そのものが引き離されていっているような感覚だ…


そんななか親父はささやくようだけど強い意志のこもった言葉を言った


「負けるなよ…」


最後のほうは聞こえなかったが親父の意思がわかり、これからやるべきことはきまった。


負けるな…親父はなににたいして負けてはいけないのかはいっていなかったが俺にはわかる気がする…


だが…


果たして俺のやろうとしていることはサヤカのためになるのか…??


ただの自己満足なんじゃないのか…??


なにもできない自分を許せないだけなんじゃないのか…?


…俺のやろうとしていることは実験でしかない…


なら…


おれは…


どうすればいい…??








 


 世界は残酷だ…



誰しもが劇的に死ねる訳ではない…



誰もが望んだ死に方をできるわけがない…



この世に出ている物語で最後に人が死んでハッピーエンドな物語など存在しない、最後にやりたいことをできて死ぬことがハッピーだとは思わない、



結局それも死んだやつの自己満足に過ぎないのだから…



死んだやつはいいかもしれない、



自分のやりたいことができたのだから…



だが残されたひとはどうなる…



その人を必要としている人間は無視なのか??



最後に主人公とヒロインが結ばれなくても…生きてさえいれば勝ちだ。



だから俺はどんなことをしてでもサヤカを勝たせる、皆が存在を認めるサヤカにしてみせる…



サヤカの物語を幸福なものにするために…



たとえどんなに俺の心が痛もうと…



この世ある奇跡は世界人口の0、000000001%にもみたないのだから…



 






 そんな決意を固めて夢から現実に帰る。


目の前が暗いが微妙に赤っぽい、どうやら顔に日が射しているらしい、今日は枕が妙にやわらかくて心地いい。


そうおもって目を開けるとサヤカの顔が目に前にある。


「和人??起きた??」


俺と目が会うと笑顔になる、俺にはその笑顔が痛ましく見えた


しかし俺はそんなことも言っていられない、おれはゆっくりと体をおこしてサヤカをみる


「サヤカ、話がある」


「わかった」


真剣な思いが伝わったのか、サヤカは真剣な顔こそしないものの表情を少し引き締めた


「お前は…」


そこまで出掛かってやめる…


自分がなんなのかしっているのか??お前はなにものなんだ??聞きたいことはたくさんあった…


だが。


聞いたらサヤカがいなくなってしまいそうな気がする…


だからこれは俺が考えて答えを見つけなければならない…


だから…


「お前は、記憶のことはわかっている…のか…?」


俺は聞くのが苦しかった…でも…サヤカは少し顔に笑みを乗せて答えた


「うん、知ってるよ」


少しの嫌味も自嘲もない笑顔、俺はその笑顔に胸が苦しくなった、でも…言わなければ…


「俺は一つの可能性にかけたいと思っている、何度忘れられても敦志たちに会って欲しい…何度でも仲良くなって欲しい


いつか記憶なんてものじゃなくて魂にサヤカって存在が刻みこまれるまで…」


自分で何を言っているかわかっていた、サヤカはトイレに行くことすら嫌がるほど忘れられることを恐れているのに…


俺はサヤカにその苦しみ何度も受けろといっている…


最低だ…


サヤカは小さな声でなにかいった、俺の聞き間違えでなければ「やっぱり似てる」と


 サヤカはなぜか嬉しそうな顔をして言った


「うん、やろう、なんどでも、なんどでも…


 あたしには…和人がついてるから…」


そういったサヤカの顔はとてもおだやかだった…


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