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 過去編『華恋』



                            

  これは俺の幼馴染、華恋と俺と敦志が幼馴染で仲良し三人組みから、幼馴染で一生の付き合いになるであろう親友三人組になった話だ。


 さきに言っておくが、これは正直後味がいいものではない、これからさきの話に支障はないのでみたくないものは見なくてもいいものだ。


 しかし俺は華恋と仲良くなっているので、これは語らなければいけないことだろうから、語る。


  俺たちが知り合ったのは5歳のときだった、俺たちは家が近くて、というかむしろ隣に三つならんで住んでいた、俺と敦志は親父同士が元々親友同士でよく遊びに来ていたから


 おそらく初めて会ったのは0歳とかだろう、俺と敦志は親同士が仲良くなって成り行きで仲が良くなった感じだったから、お互い一歩引いた状態で遊んでいた。


 砂遊びで山を作る時も作業をこなすように機械的に行い、ブランコもある程度の会話をしながらただただ漕いでいる。


 まだそんな遠慮とかが続いていたころの5歳の夏、俺と敦志は公園でいつものようにあそんでいた、いや、遊んでいるフリをしていた。


 そんな時だれかが俺たちに話しかけてきた


「おい、お前ら邪魔だからどけよ」


 女の子の台詞とは思えないような台詞を放ったのは一人の長袖のTシャツをきたかっこいい女の子だった、


 俺と敦志は元々気が強かったわけではなかったので、すぐにどいて別の遊具で遊んでいるとまたさっきと同じ女の子が話しかけてきた


「おまえら、邪魔なんだよ」


 おれらは、おとなしくどいたが何度どいても3分もたたないうちにこっちにきて、俺たちを威嚇してくる。


 砂場に場所を移動したところでさすがにその子の行動に違和感を覚える。


 その行動の意味を理解するのは簡単だった、多分俺らと遊びたいんだ、敦志もその思考にいたったようで次にきたときに話しかけてみる。


「一緒に遊ばない??」


 そういうとその女の子は顔を真っ赤にしていった


「華恋…よろしく…」


 俺と敦志はその女の子……華恋の変わりっぷりに少しの間声がでなかったがすぐに持ち直していった


「そっちの山にトンネルを作るから手伝ってよ」


「わかった」


 そういって作業に参加し始めた


 それが俺らの出会いだった……


 俺と華恋、敦志と華恋はすぐに仲良くなった。しかし華恋は俺と敦志の間にある距離に不満を抱いていた、月日がたっても縮まらない距離を華恋が


 起こしたある事件で一気に縮めてくれた、


 物心ついたころから、仲良くすることを強制されているような感覚があったため、本当の意味で仲良くなることができなかったんだ、だからケンカもなければ、笑いもなかった……


 しかし長年付き合っていればお互いのことはほぼ完璧にわかるようになる、正直俺は敦志と本当の意味で仲良くなりたかった、敦志も同じだっただろう、しかし長年で染み付いた


 距離は簡単には縮まらない、そこで華恋は俺らにの距離限りなくゼロにしてくれた。そのときのことはまたおいおい話そう……


 おかげで俺と敦志はすぐに親友になった、お互いのことはお互いが一番わかる、その辺の兄弟よりも永く一緒にいるのだから当然だろう。


 しかし俺と敦志の距離が縮まっても華恋はそれを見て楽しんでいる、そんな感じだった……


 それまでは俺と敦志の距離が目立っていたために気がつかなかったが、華恋は俺と敦志から、いや、それ以上に他人から一定の距離を置いている、そしてこれはただの違和感だが


 華恋はどんなときでも絶対に長袖、長ズボンだった、プールに行ったこともなければ海にもいかない、というか彼女の腕という部位と足という部位を見たことがなかった


 そしてもう一つ、俺は彼女のとなり、敦志は華恋の隣の隣に住んでいながら、俺たちは一度も華恋の家族と会ったことはなかった。


 情報は聞いている、華恋の母はもう亡くなっており、住んでいるのは、華恋の父と、祖父と祖母、そして父親の兄弟4人というまさに男ばかりのところだった、


 母方の祖父や祖母の情報はない、なくなっているかも知れないのでとくには聞かないでいる。


 ちなみに父親は大手会社の社長をやっていて、兄弟たちはみんなそこの幹部だそうだ、だから忙しくて会えないのかもしれないとずっと思っていた―――。


  中学三年になったときのことだった……


  夕暮れの教室、ホームルームもとうに終わり、寝ている華恋以外教室にはいないじょうたいで、俺と敦志は先生からの説教を受けて教室に戻った。まあなんで怒られてるのかってのは


 気にしないでくれると助かる……びっくりするくらいガキっぽいから……。


  ずっと華恋のことに疑問を感じていた俺らは、彼女が学校で寝ている隙に足をそっと見てしまった、そして――俺らは絶句した……。


 恐怖と心配が俺らの間にいきかっていると不意に華恋が起き上がり、いった


「見えたでしょ??つまり……そういうことよ……あたしが強くなったのも理由があったってこと……」

 

 そう……彼女の足は傷だらけだった……。正確に言うと、傷跡、そしてつい最近ついてしまったであろう傷もかなりの量存在していた……。


 それは、もう、腕のラインがボコボコになってしまうほどに、隙間なくあり、むしろ、傷跡のついていない部分を探すほうが難しいほどであった。


  彼女は唖然とする俺たちを一瞥すると教室をでていってしまった。最後に見た彼女の顔はすべてが終わったかのような、絶望もなければ希望もない、感情そのものがない


 表情をしていた……。


  その日の俺と敦志は、ほとんど無言で帰宅した、あの傷を見ればわかる……彼女はDVというやつをうけている……いや……あの傷の量はそんなものの比較にはならないかもしれない…


 足がそうだったんだ、おそらく腕も体もそうなんだろう……


 俺は変な怒りが体中を駆け巡っていた……


 どうして教えてくれなかった……


 どうしてあんなになるまでやられているんだ……


 そして最後は……彼女の家族に対する怒りだった。どうして……華恋を、俺の親友をあんな目にあわせたんだ!!


 俺はその怒りは溜めておこうとおもった、絶対に華恋を救うと心に誓った……


  翌日俺と敦志は学校をサボり、華恋の家の近所の何もない、周りにはなぜか高さ5メートルほどの壁で囲まれているという怪しい


 公園にきて、ある人物を待っていた、俺はまず最初に、そいつへの怒りをぶつけないと気がすまなかったからだ、敦志も同じことを考えていた、


 やっぱり俺たちは似ている……


「来たぞ」


 敦志はそう告げてそいつに顔をむけた


「あたしに挑戦するなんていい根性してるじゃない」


 そういって現れたのは華恋だった、そう、俺と敦志は華恋に挑戦状を送りつけてこの公園に呼び出した。中身はこうだ


『敦志と和人、例の公園にて待つ』


 意味不明だが封筒に果たし状と書いておいたのでわかったのだろう。


 俺はやってきた華恋を睨みつけていう


「俺らが勝ったら一つ条件がある」


「なに?なんでもいってごらん」


 そういった華恋は高圧的だったが俺はかまわずにいう


「お前の抱えている問題を、すべて教えてくれ」


 そういったとたんに、一気にこの当たりの気温が下がったような気がした


「あんたら……そんなことのために……」


 華恋は怒りでプルプル震えている……


       ≪殺す≫


 そういった華恋の声は今まで俺たちが聞いたことのないものだった……


 まずは俺から攻める、武器は使わない、それが師匠への礼儀だ。


 そう思い、俺は華恋の元に走っていき右足で上段蹴りをかますが華恋は俺の攻撃を受ける直前に視界から消えた、瞬間!!


 俺の体が変な浮遊感に襲われた、気がつくと俺は地面に転がっていた、軸足にしていた左足のふくらはぎに激痛が走る、おそらくかがんでよけて、足払いをされたのだろう、


 間髪いれずに華恋の靴の裏が俺の顔に襲ってくる、俺はそれを体を転がしてかわしてその勢いで立ち上がったその瞬間、華恋の拳が俺の目の前にある、俺はそれをわざと顔にもらいながら


 いきおいよく膝を走らせるが、またもや俺の太ももに激痛が走った、見てみると華恋は俺の膝蹴りを肘でブロックしていた、攻撃が全くあたらない、でも……諦めてはいけない


 しかし華恋は攻撃を休めてはくれない、そのまま俺の顔に当ててあった拳を振りぬかれて体制が崩れたところに間髪いれずに蹴りが飛んでくる、俺はそれを腕をクロスしてガードするが


 体の芯に響く、俺は体制を整えたが華恋はため息をつきながらいう


「前よりは全然強くなったけど、まだまだあますぎる」


 それは師匠としての声音だったが


「ふたりまとめてかかってこいよ!!」


 そういった華恋の声は圧倒的な迫力があったがそのなかに若干の悲しみが見て取れた。


 敦志はその一言で参戦してくるが二人合わせても傷一つ負わせられない……


 もう何度顔を殴られた……


 もう何度腹を蹴られた……


 それすらもわからないくらい、二人ともボロボロになっていた、それでも諦めてはいけない、絶対に……


 その意思だけをもって歩いて向かうと急に華恋が叫びだした、


「もう……もうやめてよ!!あたしに関わらないで!!傷を見られてもう終わりだって思ってたの……


 なのに……なのにどうして!!どうしてあなたたちはそんなにあたしのことに一生懸命になってくれるの!?!?


 お願いだから……もうあたしに希望をみせないで!!あたしはあなたたちが仲良くやっているところをみていられればいいのよ!!」


 ただひたすらに、なんの恥ずかしげもなく、ただただ涙を流しながら、ときに声を震わせて、叫んだ


 でも俺はいう、伝えなければならない、希望を、俺の、俺たちの怒りを、やさしさを、気持ちを、言わなければならない


「華恋は俺が…俺たちが絶対に守る、何が敵になってもだ!!絶対に守って見せるから、こんなに弱くても……


 いつか…いつか絶対お前よりも強くなるから!!俺たちにも……お前が抱えてるもん分けてくれよ……」


 そういった俺の目からも涙が溢れていた、敦志も同様だった、顔中に泥、血、涙がべっとりついてぐしゃぐしゃだった、それでもおれと敦志は


 ゾンビのように華恋に一歩一歩近づいていき、力ない拳を振り上げ、打ち付ける、華恋も顔は涙で溢れていてよけることさえしないが、俺の攻撃は華恋にとっては全く効かない、


 肩を軽く押したときのように一瞬引くがすぐに戻る、もう体力なんてない、それでもひたすらに拳を振り上げて、打ち下ろすだけの作業を続ける。


  そのままどれくらいたっただろう、ついに華恋が膝を着いた、それはダメージによるものではなく、俺たちの根性が勝ったのだ。


 膝を着いたままの華恋を俺はそっと抱きしめる、同様に敦志も俺の体ごと華恋を抱きしめた、その瞬間俺の腕のなかで華恋は泣き出してしまう、


 その姿は俺たちが今まで見たこともないほど女の子らしく、また見たこともないほどかわいらしかった……


  泣きやんだ華恋は俺と敦志にすべてを話してくれた、その内容はドラマなどではよくあるが、現実では絶対にあってはいけないことだった……


 華恋は本当は父親の本妻の娘ではないようだった、彼女の本当の母親がなくなられて孤児院に引き取られるところを、今の父親が引き取ったそうだった、しかし


 父親が引き取ったのはやさしさではなく、華恋の口止めのためだった、華恋は母親から父親が大手会社の社長であることは聞いてしっていたため、将来世間にそのことを


 知られるのが怖かったそうだ、その口封じのために彼女は引き取られた。扱いはペットよりもひどかったそうだ、ひどいときは一日水しか食べ物をあたえてもらえず、


 なにもしていないのに家族の会社での鬱憤を晴らすために、拷問器具のようなもので体を痛めつけられたそうだ、ムチでたたかれるのなんて日常茶飯事、ナイフで腕や足を切られる

 

 こともあったそうだ……華恋が本気になれば負けないが幼いころから染み込んだ恐怖はきえなくて見られるだけで体が硬直してしまうらしい……


 そんななかで唯一華恋の味方になってくれていたのが華恋の義理の母、今の父親の本妻の方だったそうだ、本妻の方も体に異常があり、子供を


 産めないことがわかった途端に家族からの態度が変わったそうだ、長年華恋の味方でいてくれた義母も数年前に行方不明になってしまったそうだ。


 実は華恋が俺たちと遊んでいることは家族―――いや、もうこれからは『やつら』とよぼう、『やつら』は全く知らなかったんだ、華恋は『やつら』出かけている間に


 こっそり抜け出して俺たちと遊んで、帰るころに家に帰って待っている、やはり子供の浅知恵では限界があり、すぐにばれてしまったが、それは義母の力添えで門限が厳しく


 つけられる条件で俺たちとのみ、遊ぶことを許されたそうだ、そして義母が行方不明になってからはやはりもっとひどい目にあったという、暴力の回数も倍以上になり


 最初はわたしに向けられるのは憎しみや、怒りだったが、最近ではみんなが笑いながらやってくるそうだ、華恋をいたぶることで快楽に浸るらしい……


  俺はそのすべてをきいて今までにかつてないほどの怒りを感じていた、≪今すぐにでも全員殺してやりたいほどに≫―――――――――。


「華恋……俺の家にこい……」


 気がつくと俺はすごいことを口にしていた、しかし曲げる気はない


「一緒にすむんだよ、俺が何とかしてやる、多分やつらは華恋の捜索願いは出せない」


「どうして??」


 華恋は不思議そうにしているが、敦志はわかったようだった。


 俺がどういったものかと考えていると、敦志が解説してくれる


「華恋にやっているDVは警察には知られたくないはずだ、ってことは家出人捜索願なんて出せない、仮に出したとして華恋が警察に発見されれば理由を聞かれるだろうからね、


 誰よりも世間体を気にする彼らは確実に出さないよ」


「そういうことだ、だからこい」


 そういうと華恋は最初は渋ったが最後には頷いてくれた


 その日から、俺と華恋の二人暮らしが始まった。(ちなみにこのときには俺はもう一人暮らしをしていた)










  

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