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第六十五話

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。


第二章、最終話です。

 ナックとミーナの勝負、それはナックの勝利という形で終わりを迎えた。

 ミーナの系統強化を無理やり行使しようとした等という事もあったが、結果としてはナックの治癒魔法も元の形に戻り、尚且つ彼自身の問題の解決に繋がったと思ってもいいだろう。

 本当はもっとこの都市で彼の成長を見てから出て行きたい、そう思ってはいるけどナックとミーナの戦いの翌日に僕、犬上先輩、カズキ、ウェルシーさんはグラディスさんに呼び出された。


「まずお礼を言わせて貰うわ。ありがとう、ウサト」

「へ?」


 呼び出された学園長室で突然に頭を下げられてしまった。

 おろおろしながらカズキと犬上先輩に助けを求めようとすると、それよりも早く訳知り顔なウェルシーさんが微笑み、話しかけて来る。


「グラディス学園長はこの学園の生徒の意識を変えてほしかったんです」

「はぁ……?」

「魔法は生まれながらの素養、つまり才能に依存している。そういう思想を持つ子が学園に増えていたのです」

「自らの力を高める事を諦めて、全てを才能のせいにする現状は好まないものだった。それを貴方……いえ、貴方とナックが覆してくれた。方法は違えど、才能という壁に真正面から立ち向かい打ち壊してくれたナックの姿を見て心境の変化があった生徒は少なくないわ」


 ……あまり自覚はないけど、僕の行為はこの都市の学生達に少なくない影響を与えてしまったということか。


「そして私たち教師の意識も変えられた。もう貴方の実力も疑う者もいない、そんな強い貴方達でも苦戦を強いられた魔王軍を誰が弱いと言えるでしょうか」

「! それではグラディスさん! 書状の決定は……っ」

「ええ」


 カズキの言葉に頷いたグラディスさんは僕達全員を見回した後に口を開く。


「ルクヴィスはリングル王国と協力関係を結びます」


 僕はその言葉を聞き、嬉しくなると同時になんだか少し悲しい気持ちになった。

 ルクヴィスと協力関係を結んだ事に悲しくなったんじゃなくて、この都市で仲良くなったキリハ達に別れを告げるのが悲しくなったからだ。


「学園長、感謝致します。では、私達は今日の内に……」


 書状の返答が出てしまったのなら僕達の目的は次の国へ書状を渡すことに移っている。

 だから、ここから出なくてはいけない。






 グラディスさんに別れを告げ学園長室から出た僕は、学園の入り口にまで来てくれたカーラさんとハルファさんに見送られた後、一旦先輩達と別れた。

 一人別行動の僕はアマコを待たせているキリハ達の居る寮の方へ向かう。

 模擬戦の翌日という理由で今日一日は学園の方は休みなのでキリハ達が居るのは分かっている。そして昨日、疲労で倒れたナックもキリハ達の寮で寝ているから、彼もそこに居る。だから別れを告げる事も無く出ていくという心配はないのだけど、気持ちが重いことには変わりない。

 重い足取りのまま寮に辿り着き、迎え入れてくれたキリハ達に今日帰る旨を説明する。幸いナックも目を覚ましていたようで、僕の話を黙って聞いていてくれた。


「そっか、今日出て行っちゃうんだね」


 寮の前に出てくれたキリハ達に申し訳ない気持ちになりながらも言葉を返す。


「うん、いきなりごめん」

「いいさ、大事な任務なんだろ?だったらしょうがない」


 残念そうに肩を竦めるキリハ。

 そんな彼女を見て、此処に来る前にウェルシーさんに持たされた布袋を団服のポケットから取り出して、彼女の前に差し出す。


「これ、此処に泊めてくれたお礼。僕が用意した訳じゃないけどね」

「え、いや悪いよ。そこまで大したことしてないし」

「僕が言うのもなんだけど凄い助かった。ナックも泊めてくれたこともあるし、何より僕自身、君達との一週間はとても楽しかった」


 お世辞でも誇張でもない。

 少し慌ただしい一週間だったけど、楽しい時間だった。


「はぁ、アンタが頑固なのはもう分かり切っている事だからね。諦めて受け取るよ……」

「助かる」


 流石にただ飯食って何も返さずに出て行くのは忍びないからね。


「本当に変な人間だったよ、アンタは……」

「当然、何せ私と一緒に来てくれる人だもん」


 アマコ、その言い方はちょっと酷いと思うのだけど。

 それに誇らしげに言う事じゃないよね?


「フフ……、確かにそうなんだろうね」

「否定してくれよ……」

「否定するも何もその通りじゃないか。そのおかげで私達はアンタと知り合えた、そう考えるとそれほど変ってのも悪くないと思う」


 最初に会った頃よりも幾分か柔らかくなった笑みを向けてくるキリハに苦笑する。

 本当に色々あった、この一週間がとても長いものに感じられる程、僕は此処に居た気がする。


「最初はどうなるかと思ってたけどよ。なんつーか、お前とこうやって会えて……また人間を信じてみるのも悪くないって思った」

「キョウ……君は……」

「だからといってそう簡単に心を開く訳じゃねぇよ。でも、お前みたいな俺達にも普通に接してくれるような奴がいればっていう話だ」


 仏頂面のままそっぽを向いたキョウがそう言葉にする。

 そんな言葉に思わずクスリと笑みを漏らしてしまうと、顔を真っ赤にさせた彼がこちらに顔を向け怒鳴って来る。


「わ、笑うなよ!! 俺だって臭いこと言ってんのは分かってんだよ!!」

「やっぱりキョウは照れ屋さんだね」

「うっせぇーよアマコ! もうこんなこと二度と言わないからな!! クソ、何でこんなこっぱずかしい事言っちまったんだろうなぁ……畜生……」

「……もしかして泣いてる?」

「ッ誰が泣くか!!」


 不貞腐れる様に後ろを振り向くキョウにごめんごめんと謝ると、今度はサツキが無邪気な笑顔を向ける。僕は彼女の目線に合わせる様に身を屈めると、両の拳を握り、目を輝かせた彼女はたどたどしく言葉を紡ぎ始めた。


「ウサト!! 旅が終わったらまたここに来てよ!! そしたらもっと凄い変な話を聞かせて!! 後、スズネとカズキにまた会おうって!!」

「ああ、ちゃんと伝えるよ。でも、あまりキリハとキョウを困らせないようにね」

「うん!」


 ピョンピョンと楽しそうに跳ねるサツキの言葉に頷く。

 君は本当にテンションの幅が凄まじかったね、最初はもっと物静かな子だと思っていたよ。

 お世話になった獣人の三人から別れの挨拶を受け取ってみれば、書状を渡すという目的を差し引いてもやっぱり此処に来た価値はあると思える。


「ナック」

「……」


 そして、最後にさっきから頷いているナックに声をかける。

 俯いたまま動かない彼だが、名を呼ぶとゆっくりと顔を上げる。


「ウサトさん……俺は、正直貴方の訓練が辛くて辛くてしょうがなかったです」

「うん」

「最初はなんて頭のおかしいことをする人なんだろうと思いました」

「……う、うん」

「本当は治癒魔法じゃなくて何か恐ろしい魔法を使っている化物だと思っていました」

「おう待てや」


 あ、あれれー。

 これ別れの言葉じゃなくて僕への愚痴じゃね? 何か僕から愚痴られるローズの気持ちが分かった気がするけど、できれば分かりたくなかった。


「でも今になって言えるのは、無駄なことなんて一つも無かったってことです。辛い訓練も、治癒魔法も、貴方に教えられたことも、ミーナに勝利する為には必要不可欠なものでした」

「ナック……」

「もっと強くなりたい。もっと強くなって貴方のようになりたい。ウサトさん、俺は見つけたんです。家族にもミーナにも、何者にも縛られない生き方を」


 昨日の勝利を以て彼は今までのしがらみから解放されて新たな道を歩めるチャンスを手に入れた。そのチャンスを生かすも殺すも彼の自由だ。

 でも僕みたいになりたいって言われると少し恥ずかしいものがある。


「俺、リングル王国に行って、救命団に入ります!! 今以上にツライ訓練にだって耐えます!! 罵詈雑言だって受け止めます!!」

「……僕は未熟だ。身体能力も団長の理想としたものに至っていないし、系統強化だってまだまだ未完成。正直、団長と比べればまだまだの一言に尽きる……それでも、君は僕のようになりたいと思う?」

「俺の師匠は貴方で……俺の追いかけるべき背中です!!」


 ……そっか。

 なら僕もこのままじゃ駄目だな。今以上に体を鍛えて、ナックの目標でいられるように今以上の研鑽を続けなくてはならない。

 団服のポケットに入れておいた手紙を取り出し、ナックに差し出す。

 長方形の封筒に入れられた手紙、その右下には少し歪んだ文字で『団長へ』と短く書かれている。


「この手紙を渡せば大丈夫だと思う。僕と同じ団服を着ていて肉食獣のような気配を出しているのが団長だ。ま、一目で分かると思うよ」

「はいっ!!」


 手紙を大事そうに受け取ったナック。

 彼が救命団の訓練をやっていけるか、というよりローズの理不尽さに平静を保っていられるか心配だけど、まあ今のナックなら大丈夫だろう。

 ……そろそろ行かなくちゃな。

 犬上先輩とカズキ達を待たせているので、アマコにそろそろ行くように促す。こくりと頷いたアマコはキリハ達の方を見て、スッと息を吸う。


「キリハ達とまた会えて良かった。今日まで、ありがとう」

「私も元気なアマコの姿が見れて良かったよ。寂しくなったらうちに来な、アマコなら何時でも大歓迎さ」

「……うん」


 嬉しそうに口元を綻ばせるアマコだが、僕に笑う顔を見られるのが恥ずかしいのか斜めを向く。

 サルラさんの家と同じようにまた一つ君に帰る場所ができた。

 良かったね、と内心呟きながら、今度は僕が四人の方を向く。


「キリハ、キョウ、サツキ、三人とも元気でね。ナックは……さよならは必要ないだろうから……また会おう、という言葉を贈らせてもらうよ」

「ウサトもね。ま、近くに来たら寄っていってくれよ。私達も当分はここにいるから」

「アマコの母ちゃんをちゃんと助けてみせろよ」

「またね、ウサトっ!」

「先にリングル王国で待っています!!」


 それぞれに言葉を送られて僕とアマコはキリハ達の居る寮を後にした。

 別れは悲しいけど、また会えない訳じゃない。








「行ってしまいましたね」

「ああ、行っちまったよ」


 ウサトとアマコ、並んだ二人の背中を見送りながら呟いたナックの言葉にキョウが答える。

 あっという間の一週間だったけど、これ以上なくあたしにとって有意義な時間だったと思う。人間と友達になりたいという忘れていた気持ちを思い出させてくれたし、何より初めて人間の友達、というものを作る事が出来たのだ。


「直ぐにリングル王国に行くのか?」

「……そうしたいのはやまやまですけど、まだやる事があります」


 他に何かあるのか?

 疑問に思いつつ、ナックの方を振り向くと彼は手に持った手紙を大事そうにポケットに入れながら、遠慮気味に口を開く。


「両親に別れの手紙を出して……学校をやめて……後は、ミーナに最後に会っておこうかなって……」

「止めた方がいいと思うよ」

「ああ、何をされるか分からない」

「私もそう思う」


 あたし、キョウ、サツキが一斉にナックを止める。

 昨日の勝負の後にミーナに会うとか危険すぎる。下手をすればその場で魔法をぶつけられてもおかしくはない。

 でもナックは分かっていたとばかりに困った風に頭を搔く。


「確かに何をされるか分かったもんじゃない。……ミーナが俺にしてきたことは簡単に許せるものじゃない。だけど、許す許さないは別として、俺は……」

「俺は……?」

「話を、してみたいと思ったんです」


 あの勝負の最後、暴走するミーナを間近から見ていたのはナックだけ。あの場に居た誰も彼女の顔も声も聞こえない場所に居た。

 でも、獣人の私の耳に届いたミーナの声は、自信に満ち溢れたものではなくまるで、遠くに行ってしまう誰かを呼び止めるかのような縋るようなものだった。そこを考えるならば、ナックが気になる気持ちも分からないでもない。


「ナックの好きなようにやりな。あ、でもここを出て行くときは此処に寄っていきなよ。ちゃんと見送ってあげるから」

「勿論です。むしろここで一番親しい人たちはキリハさん達しかいませんから」

「獣人の俺が言うのもなんだけどよ、それも結構変だと思うんだけどなぁ……」


 確かにね。

 ……なんだかんだウサトが連れてきたナックとも普通に喋れる間柄になってしまった。最初はウサトを介して会話しているような感じだったけど、何時の間にかそうしなくて普通にも会話できるようになっていたからね。

 本当に、何時の間にかって話だった。


「変なのはしょうがないですね。なんていったってウサトさんの弟子ですから」

「ハッ、言うじゃないか」


 茶化すように笑うナックの背をおかしそうに叩くキョウを見て、自然とあたしとサツキも笑う。

 人間と獣人は本当に仲良くできるのかと疑問に思い悩んでいたあたしだけど、こうやってお互いが歩み寄ればこんなにも簡単だった。


「……っ」


 不意にこみあげて来る感傷を押しとどめながら、もう一度ウサトとアマコが行ってしまった方に体を向ける。

 彼等とはいつ会えるか分からない。

 それでも、二度と会えないかもしれないとは考えられなかった。アマコにはウサトが居るし、ウサトにはアマコが居るから何も心配は要らない、そう思えたからだ。


「フフ、次に会う時が楽しみだ」


 でも、次に会う時にはアマコのおかあさんも助けて、ウサトの旅も終ってそれで……あたしが今よりもう少し素直になってからがいい。

 それまでは、あたしもあたしなりに今までの自分とは違う事をやってみようかなと思う。









 キリハ達に別れを告げ、外へ通じる門へ移動した僕とアマコ。

 そんな僕達を待っていたのは、犬上先輩とカズキとウェルシーさん、それと騎士さん達だった。

 出発にあたって僕達は三つのグループに分かれる為、各々の騎士さん達が準備を進めており、僕達と一緒に同行してくれるアルクさんは、一頭の馬に荷物を載せていた。


「アルクさん、その馬は……?」

「旅の関係上、些か大荷物になるんでこいつに運ばせようと思いましてね。少し年老いていますが良い馬です。それに賢い、きっとこの旅の足手纏いにはならないでしょう」

「そうですか……よろしくね」


 少し黒がかった茶色い毛並みを撫でつけると気持ちよさそうに鳴いてくれた。

 馬とか触った事ないけど、すっごいさらさらしてるな。ブルリンとはちょっと違う。

 ……さて、何時までもアルクさんにばかり準備を任せていられないな。


「手伝います」

「いえいえ、私は大丈夫です。それよりウェルシー様から出発に先立っての大事な話があるというのでまずはそちらを優先させてください」


 ウェルシーさんからの大事な話?

 何だろうか、とりあえず行ってみるか。


「分かりました。アマコ、ブルリンを連れて来てくれないかな?あいつ多分まだ寝てると思うから」

「うん、分かった」


 アルクさんとアマコに準備を任せて、僕はウェルシーさん達がいる馬車の近くにまで移動する。

 見る限り、まだ大事な話をしている雰囲気ではない。僕を待っていてくれたのかな?そう思いつつ、声を掛ける。


「すいません遅れました」

「それほど待ってないけど、ちゃんと別れは言えた?」


 先輩の言葉に頷き、サツキからの伝言を先輩とカズキに伝える。


「……そっか、うん、伝えてくれてありがとう」

「また会えますよ」

「ウサトの言う通り、今生の別れって訳じゃないからきっとまた会えます。サツキちゃんだってまた会おうって言っていたんですし」

「……それもそうだね、全部終わらせたらまた会いに来よう。その為にはこの旅を成功させなくちゃね」


 僕とカズキの言葉に気を取り戻した先輩。

 その様子を黙って見守ってくれていたウェルシーさんが、頃合いを見計らって口を開いた。


「全員揃ったようですね。貴方様方は、ここルクヴィスで様々な経験をしたと思います。ですが、ここはあくまで旅の序盤でしかありません。ここから長い旅が始まるのです」


 僕達はウェルシーさんの声を聞き漏らさぬように沈黙を保つ。


「スズネ様は北、カズキ様は西、ウサト様は東。私どもとしては非常に不甲斐ない話ですが、リングル王国の……否、この大陸の危機を知らせる為に皆様に頼らなければなりません。でも貴方様方はそんなことも関係無しに私達に力を貸してくれようとしています……」


 僕達に頼りきりという事実が悔しいのか言い淀む彼女だが、ゆっくりと深呼吸すると優し気な表情で微笑んでくれる。


「スズネ様、カズキ様、ウサト様、どうかご無事で。皆さんが無事にリングル王国に帰ってきてくれることを切に祈っています」

「ちゃんと帰って来るさ。何せ私とカズキ君は勇者で、ウサト君は不死身の救命団だからね!!」

「僕は不死身ではないですけどね……」


 明るい声でウェルシーさんにそう言った先輩にツッコむと、今度はカズキが一歩前に踏み出し力の籠った瞳で目の前の彼女を見る。


「この世界の俺達の家はリングル王国にある。帰りを待ってくれている人たちも沢山いる。だから待っていてください。俺達は書状渡しも他の国に協力を得る事も、全部成功させて帰りますから……」

「……はいっ」


 カズキのその言葉に目を潤ませたウェルシーさんは、最後に一礼して僕達から離れて行った。離れていく彼女を見送った僕達は顔を見合わせる。


「先輩、カズキ、大変な旅だと思うけど頑張って」

「おいおいそれはこっちの台詞だぞ、ウサトが一番大変なんだから」

「そうだよ。君は獣人の国へ行かなくちゃいけないんだから……」


 危険なのは分かっているけど、もう決めた事だからね。

 それにキリハ達との交流を通じて、獣人の国に関しては少し前向きな考えになっている。


「まあ、成る様になりますよ。ここでキリハ達と仲良くなれたから希望が無いって訳じゃありませんからね」

「成る様にって……はぁ、君は本当に大雑把なのかそうじゃないのか分からない。本当に気を付けるんだよ? もし危ない目に合いそうだったら私がどこからでも駆けつけるから」


 駆けつけるって、この人がそう言うと冗談に聞こえないからどう反応していいか分からない。


「それなら俺も駆けつける」

「カ、カズキ……」

「当然だろ。ピンチに駆けつけるのが友達である俺の役目だ。魔王軍との戦いの時、死にそうになっている俺と先輩のピンチに駆けつけてくれたウサトみたいにな」

「……うぐ、それを出されたら否定できない……」

「フフフ、私もカズキ君も君に命を救われた身だからね。君の助けになりたいって思うのは当然さ」


 ……全く、二人は僕に恩を感じ過ぎだ。

 でも、助けに来てくれる、そう言われて嬉しい自分がいることは確かだ。

 だから―――、


「辛気臭く別れるのはやめにしましょう」

「そうだねっ。ここは笑顔で互いを見送ろう!!」


 旅の成功と再会を願って、お互いを見る。


「……さよならは言わない。だから、また三人で……!」

「「はい!!」」


 自信に満ち溢れた犬上先輩の不敵な笑顔と優しさと温厚さを感じさせるカズキの笑顔。

 そんな二人に釣られて笑ってしまった僕は、三人で再会できることを願って犬上先輩の言葉に応えるように返事を返すのだった。




「ウサト、もういいの?」


 二人と別れ、準備を進めているアルクさん達の元へ移動した僕にアマコがそんなことを聞いて来た。


「うん、これ以上の言葉は必要ない。アルクさん、出発の準備は?」

「できています」


 背に旅の荷物が載せられた馬の手綱を引くアルクさん。

 先輩とカズキは数人の騎士さんが一緒に同行することになるけど、僕にはアマコ、アルクさん、ブルリン、そして黒みがかった茶色い馬だけ。

 でも、走るにしても歩くにしても僕にとってはこの人数が丁度良い。

 準備を済ませた僕達は門の前まで移動し、先に並んでいた先輩とカズキの二組の隣に並ぶ。すると、僕達の前の大きな扉が徐々に開いていく。


「出発だな……」


 門が完全に開ききると同時に、僕達以外の二組が先頭のカズキと犬上先輩の声を合図にして歩き始める。

 それぞれの道に進んでいく二人に手を振り見送った僕、後ろを振り向きアルクさん、アマコ、ブルリンを見てからもう一度前を向く。

 ……ルクヴィスでの長いようで短い時間は終わりを迎えた。

 カズキと先輩はそれぞれ違う道を往き、僕も新しい仲間と一緒に旅をする。

 不安が無いと言えば嘘になる。でもそれを含めて、正直僕はワクワクしている。リングル王国以外の国、魔物、人、景色。犬上先輩じゃないけど、未だ見ぬファンタジーが待ち受けている。


「さあ、行こうか!」


 昂ぶる気持ちを言葉にして、僕は力強く地面を踏みしめ歩き始めた。


一月中は予定が立て込み更新できませんでしたが、休暇に入ったのである程度更新できると思います。


次話から第三章が始まります。

第三章は、ウサトの治癒パンチが効かない敵が現れたりします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 面倒臭いタイプのツンデレだったw
[良い点] 凄く面白いです!感動をありがとう!
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