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第五十九話

お待たせしました。


二話ほど更新します。

 ナックの訓練一日目の成果はまずまずのものだった。

 まず体力面での問題。これは残りの四日間でどうにでもなるし、どちらかというと彼には速さは求めていない。継続して動き続けられるだけの忍耐と耐久力、最終的にその部分を伸ばせればいいと思っている。

 そして彼の体を作る上で最も重要な部分、治癒魔法について。

 走りながら治癒魔法を行使するというのは慣れていない魔法使いにとって難しいことのようで、当のナックも四苦八苦していた。僕の場合、走る作業と魔力を感じる作業を並列してやるように強制的に体に覚えさせられたけど今になってその意味が分かった気がする。ある程度治癒魔法に慣れている彼にとっては走りながらの行使というのはとてもやりにくいのだろう。


「ま、それも慣れればある程度なんとかできるか……」


 訓練二日目の早朝、ルクヴィス学園訓練場の端に立ち、ブルリンに追いかけられているナックを見据えた僕は現状の訓練の成果と改善点について考えていた。

 ナックを見据えている僕の隣には外套のフードを被って地面に座っているアマコ。この数日ずっと厩舎で騎士さん達と一緒に居た彼女だが、ブルリンが訓練に駆り出され流石に暇になったのか僕とナックの訓練を見に来ていた。


「最悪、ローズ式訓練強制継続鬼畜治療魔法を使う、か……でもあれを使うのには良心の呵責が……」


「名前からしてまともな感じがしないのだけど……」


「ははは、まともな訳ないじゃん。だって団長だよ?」


「それを最後の手段で使おうとしているウサトもまともじゃない……」


 失礼な、あの人は魔法の魔の字も知らない僕に昨日以上の訓練をしたんだぞ。つまり治癒魔法で疲労も治せない状態で気絶を繰り返して延々と足を動かし続けたということだ。

 あれと比べたら僕なんて優しいほうだ。

 立っている僕の隣で座りこんでいるアマコは、何故か可哀そうな人を見る目で僕を見る。


「ナックとウサトを一緒にしちゃ駄目」


「おい、まるで僕が魔法を覚える前からおかしかったみたいな言い方やめろ」


「そんな無茶な訓練を最終的に乗り越えた時点で元からおかしかったとしか思えない」


「………」


 え、あれ、僕っておかしくないよね。

 でもあの時は死に物狂いで訓練していて少し記憶がおぼろげだし、それに結構荒んでいた気がする。

 ……ま、まあそれは置いといてナックの方に切り替えよう。未だに可哀そうな目で見てくるアマコの視線から逃れるように走っている彼の方に視線を戻す。視線の先には荒い息を吐きブルリンに追いかけられているナックの姿。

 ナックは徐々にペースが落ちているな。ブルリンはナックが目に見えてペースが落ちたのを見て、わからない程度に速度を落として楽をしようとしている。

 いけないな、これはいけない。訓練の敵は楽をすることだ、ナックはともかく正式な団員といっても過言ではないブルリンに怠慢は許されない。


「ナック、ペース落ちてるよー…………ブルリンッ!!お前は楽してんじゃねぇよ!!魔獣ならそれらしいところ見せろ!!」


 ナックへの注意と共にブルリンへ怒声を飛ばす。

 すると何故か優しく注意した方のナックがその目に涙を貯め荒い息のまま走る速度を一気に上げた。一方のブルリンは「はいはい分かりましたよー」とばかりに呑気な鳴き声を上げてナックと同じ程の速さで駆け出した。

 最終的にどちらも全力に近い速度で走ることになったのだけど、ブルリンはともかくナックは何故……?

 首をかしげていると、耳を抑えるように頭に手を置いていたアマコが全力で走るナックを見て呆然と呟く。


「正直引いた。凄い引いた。ウサトは優しくしているつもりだけどナックからしたらアレが自分に向けられる可能性があるから必死になるのは当然……。流石はウサト。この旅で何度私を驚かせば気が済むの」


「どんな納得のされ方!?」


 うんうんと頷かれてしまった。

 ……でも結果的にナックのやる気を起こすことができたから良しとしよう。

 最悪どんなペースでも走ることには問題ない。フェルムとは違ってナックは治癒魔法使いだから最悪気絶しようとも彼の場合、無意識に治癒魔法を発動させて治してしまうだろう。彼を取り巻く環境を考えるのならばそう言う風に成長してしまうのは当然かもしれないが、オートで作用するだけじゃ駄目だ。


「あくまでこの五日間で求めている成果は体力の強化と治癒魔法の行使を同時行使できるように慣れさせること。……アマコ、君は走りながら予知をすることができる?」


「一応は。でも私の場合集中力が重要になる魔法だから、できてもほんの少し先しか見えない」


「僕は走りながら魔法を行使できるように鍛えられたから、そこのところは分からない。だから教えてくれ。今、僕がナックに求めている訓練は間違っているか?」


「………」


 ナックから視線を外さずにそう問うた僕にアマコは悩むように唸る。


「正直、前例のないことだから分からない。でも私が言えることは……治癒魔法使いが、戦うはずのない魔法使いが戦うための訓練をするなんて間違っているということだけ。でも、ウサトのやり方は厳しくて理不尽で頭がおかしいものだけど求めている成果は理にかなっている。……理不尽で頭がおかしいけど」


「二度も言わなくていいわッ!!」


 前からだけど結構辛辣だよね君。

 それにしても前例がない、か……出来た試しがないと言われないだけ十分だ。

 それならどんどんやっていこう。鍛錬は決して自分を裏切らない、それを一番理解できているのは他でもないこの僕だ。


「さて、僕は僕で頑張らなくちゃな」


 訓練場という丁度良い場所に居るんだし、ナックの方に気を配りながら昨日から考えていた治癒魔法の応用を試してみよう。


「何をするの?」


「治癒魔法を飛ばせるかどうか試してみようかなと」


 昨日のカズキのように縦横無尽に魔力弾を操って相手を攻撃するようなものではなく、ただ純粋に魔力弾を飛ばせるようにできるか。

 治癒魔法の光を飛ばせるようになってどうするんだと思われてしまうが、その問いに対する僕の答えは、僕なりの治癒魔法の使い方を模索してみたいという一言に尽きる。


「無系統の魔法で、魔力の球を投げるものがあるけどウサトがやろうとしているのは似たような事?」


「そんな感じ。僕は何時も体に治癒魔法を覆うような形で展開しているからね。必然的に誰かを治すときにはある程度近づかなくちゃならない。それならある程度魔力を飛ばせる技を磨けば色々手札が充実すると思ってね」


 僕が治癒魔法で現状していることは、今走っているナックのように全身に治癒魔法を纏って体の疲労を逐一治癒させているというものだ。一転して今からやろうとしている試みは、恐らくローズが教えようとは思ってはいなかった……又は現状の僕に教える必要は無かったものだろう。

 ここにローズが居れば的確なアドバイスが貰えるかもしれないけど、彼女が居ない現状は僕自身の力で模索していくしかない。

 瞳を閉じ、ゆっくりと掲げた右腕に治癒魔法の光を放出させる。魔力の扱い方は他の人よりは巧いと自負している、纏わせている魔力をそのまま掌に集め、そのまま球体状の形を作る。

 放出は治癒魔法を行使する時と同じだ、後はそれをどれだけ自分のイメージする球体に近づけるか……。


「……」


 犬上先輩は、手の平から放電するように電撃を繰り出した。

 カズキは、周囲に光の魔力の球体を作り出した。

 僕がイメージするのは綺麗な緑色の球体。系統強化のような魔力の継ぎ足しなんて必要ない、ただ集めた魔力を徐々に継ぎ接ぎするようにつなげていくだけ―――。

 掌に確かな魔力の感触を感じる。

 そのまま瞳を開け、手の平を見れば……。


「意外と簡単だな……何か拍子抜けだ……」


 イメージ通りの球体が僕の掌にふわふわと浮かんでいた。

 思ったより難しくなかった。あれ?もっと手古摺ると思ったのに……。疑問に思う様にアマコの方を向くと彼女は呆れたようにため息を漏らした。


「当然でしょ……魔力の球体を手元に作るのは魔法使いとしての基本。人間だって私達獣人だってその基本は変わらないよ……。逆に今の今までそれをやっていなかった方がおかしい」


 基本ぶっ飛ばすのは治癒魔法の基本ですから……。

 アマコから目を逸らしながら手元の球体を見やる。フワフワと浮いているそれは僕の手の動きについてくるように動く。

 ……よし。


「っ!?」


「チッ」


 バレたか。

 試しにアマコに治癒魔法の球体を使ってみようと試みたが球体が触れる直前に飛び退かれてしまった。僕から距離を取ってこちらを向き驚きの表情を向けて来るアマコ。


「今、私にそれを押し付けようとした……?」


「なんのことやら。僕が君にそんなことをするとでも?いや、ありえない」


「明らかに舌打ちしたし、突然私の体を緑色に発光させる未来なんてウサトの治癒魔法以外に誰ができるの……っ!?」


 体が緑色に光る……?

 成程、当たったら込められた魔力の分だけ回復するのか、これは便利だ。放射するタイプの治癒魔法よりは回復する魔法の方が治る速度が速いかもしれないけど、こっちの球体は蓄積しているから回復量も一定だけどその分応急処置程度の治癒魔法を一瞬で全身に施すことができるのか。


「あれれー、ごめん。何時の間にか手の中の魔法がアマコの方に飛んで行っちゃったみたいだ」


「むぅ……っ」


 とにかくアマコに一泡吹かせるという心に決めた仕返しも一応は成功したので応用に移らせて貰おう。久しぶりに元の世界の悪友達とのノリを思い出せたから個人的には大満足だ。

 うむむむっと唸りながら僕を睨むアマコの視線を笑いながら受け流して、十メートルほど離れた場所にある的を見据える。


「まあ、魔力を弾けるように動かせば飛ばせるでしょ」


 そして手の平を突き出し掌に生成した魔力の球を放つイメージで打ち出してみる。所詮、魔力の操作はイメージと感覚と慣れだ。何時もと同じように操作すれば魔力を打ち出すくらい訳ない筈。

 目論み通りにパァァンッ!と特徴的な破裂音と共に放たれる魔力弾。

 掌から中々の勢いで放たれた魔力弾に思わず感嘆の声を上げてしまう。


「おおっ……ぉう?」


 驚きの声を上げたのも束の間、勢いよく放たれた魔力弾はある程度離れるとそのまま減速し的に届く頃にはかなり遅くなってしまった。

 何度か試してみても結果は同じ、発射と同時に減速し光と共に消えてしまう。


「………何故に?」


「ウサトは魔力を放つのは得意じゃないみたいだね」


「得手不得手とかあるの、これ……」


 ここにきて致命的な欠陥が露見してしまった。

 僕は魔力を飛ばすのはそこまで得意じゃないらしい、確かに最初の勢いだけは凄かったけど……というより最初の勢いは腕を突き出した勢いで早くなっただけではないか?何だそれぬか喜び過ぎる……。


「待てよ……」


 最初の勢いだけは僕の腕を突き出したものだ。

 ならある程度力技でなんとかできるのではないか?そもそも静止した状態から撃ち出す必要などないのだ。そもそもが魔法を放つ才能が無い時点で、まともな方法で成長できる道は閉ざされているに等しい。ならば僕なりの方法でこの球体を実践レベルにまで引き上げればいいじゃないか。

 僕なりのやり方。

 つまり力技だ。


「ウサト、これはもう素質の問題だから諦めた方が良いよ。ウサトなら素でもう十分に強いんだから」


「まだ手はあるぞ……アマコ……ッ」


「え」


 再度その手に魔力を集中させ、球体を形作る。

 掌に浮かんだ球体を包むように握りしめ、上体を大きく逸らし振りかぶる。

 魔力を飛ばす才能なんて必要ない、そんなことで諦める程、往生際が良くないんだよぉ!大きく振りかぶった腕をそのまま振り下ろすと同時に魔力弾を的の方へ投げつける。


「そぉッ……ら!」


「え」


 投げつけた治癒魔法の球体は減速せず凄まじい勢いで的に激突―――せずにそのまま外れ後方に飛び、減速しないまま別の的に激突し緑色の光を散らした。

 投げる分狙いが定まらないな。ま、元の世界では球技はあまり嗜んでいなかったから命中率が低いのはしょうがない。これも鍛錬あるのみってやつだな。

 フゥと息を吐き、魔力弾が当たった場所を見る。大体二十メートルほどか、目標によってはもうちょっと遠くの的にも当たりそうだな。重さのない魔力弾を腕力に任せて投げているということもあって、あまり遠くには投げられないだろうけど。


「完璧だな」


「いやいやいや、おかしい。重さのない魔力を投げるとか……」


「これが僕だけの技、治癒魔法弾だ」


 おかしいおかしいおかしい、とメトロノームの様に体を揺らし呆然と呟いているアマコに苦笑いしつつ、ナックの方へ意識を向ける。

 先程と変わらずブルリンと一緒に走っているが、ぐらりと足をつんのめらせバランスを崩した。


「お……」


 あのペースで走っていたらそうなるか、転びそうになっている彼を見据えたまま前に跳び出す。幾分か離れていた距離を一気に詰めた僕は前のめりに倒れたナックを支える。


「大丈夫?ナック」


「ハァ……ハァ……すい、ません……」


 ……魔力は切れていない、ということは疲労で治癒魔法を行使する集中力がなくなってしまったと考えるのが自然か。彼の背中に手を当て治癒魔法を掛ける。

 荒い息のまま徐々に彼の顔色が良くなる。


「やっぱり治癒魔法と走る事を同時にするのは難しい?」


「はい、……できなくはないんです。でも気を抜くと直ぐに解けちゃって……」


「……そこは慣れだからしょうがない。僕だって一朝一夕で習得したものじゃないから焦らず丁寧にやっていこう。まだ四日ある」


 四日しかないとも言える。最悪、彼が治癒魔法を行使するのは怪我をした場合のみでそれ以外は体力に任させ回避に専念させるという戦術もあるが、それではあまりにも治癒魔法を行使している状態の隙が大きすぎる。

 ……もし間に合わなかったら。

ナックはよく頑張っている。少なくとも大事な学業を休んでくれてまで訓練に勤しんでいるのだ。訓練に臨む気持ちも本物だろう。しかし、いくら本気でも最悪の可能性というものが付き纏う。

 彼にどんな言葉を掛ければいいか言い淀んでいると、あっと声を出し訓練場の入り口あたりを見た彼につられてそちらを向く。

 向いた先には、特徴的なツインテールの少女が僕に支えられているナックを見て笑っていた。

 あの特徴的な髪、ミーナか……。彼女もこの訓練場で魔法の練習でもするのだろうかと思いきや、ナックの姿を見てニヤニヤと笑っていた彼女はそのまま踵を返して学園の中の方へ歩いて行ってしまった。


「冷やかしに来たのか、なんて子だ」


 性格悪いな。しかも見て帰るだけとは、自分は特別何もしなくても勝てるという自信の表れだろうか。

 どちらにしろ気に入らない事には変わりない。憤る気持ちを静かに鎮めながら、治癒し終わったナックの体を起こす。

 起き上がったナックは片手で顔を抑えて僕に背を向けた。


「あいつは、何時もそうなんです。俺のことをバカにして嘲って、罵って。でも俺よりも……魔法も何もかもが凄いから何も言い返せない……」


「ナック、気にする事ない」


「気にしますよ。だって……前は、此処に追い出される前はこんなんじゃなかったんですから……それが治癒魔法ってだけで、皆変わった、違ってしまった。こんな場所に居たくないのに、ここにしか帰る場所がない……」


 ……帰る場所がない?

 此処って、ルクヴィスにしかってこと?

 彼の言葉に首を傾げる僕だが、それに構わずナックは言葉を紡ぐ。まるで吐き出すようにこちらへ言葉を連ねる彼の表情が何処か悲痛な色が見て取れた。


「ウサトさん、この訓練で強くなれるんですか?……ミーナに勝てるんでしょうか?本当に……こんな俺が―――」


 そこで自分が口にしている言葉に気付いたナックは不意に黙りこんだ。

 一瞬の静寂の後に、取り繕うかのようにナックが口を開く。


「すいません。意味の分からない事を言ってしまって……さっきの言葉は気にしないでください」


 いや、気になるわ。

 何そのさもミーナとの戦いよりももっと深刻な問題抱えています的な言動。


「ウサトさんには感謝しています。でも、この二日間でやっているのはただ走るだけ……疑うのはとても失礼な事だと分かっているのですが……この訓練に、俺は意味を見出せない」


「いや―――」


 思いつめた彼の背中に僕は思わず口を押えた。

 いやそんな事でウジウジ悩んでいる暇あったら訓練しろよ、という台詞がナチュラルに飛び出してしまいそうになった自分にびっくりしてしまったからだ。

 駄目だ、ローズに毒されているぞぉ僕。流石に色々抱え込んでしまっている彼に無慈悲な言葉はあまりにも酷すぎる。

 少し深呼吸しつつも先程脳内に浮かんだ鬼畜台詞を消去し、彼を叱咤する優しい言葉に変換する。


「勝てるかどうかじゃない、勝つんだ。それにミーナは君を侮っている。これは君にとって悪いことじゃない。油断している程、隙がつきやすい。その隙を突くための攻撃力を得る為には君の体を鍛える他に手段はない。だから……頑張ろう」


「頑張る、ですか……」


 そう声を投げかけると彼はこちらに背を向けけたまま頷き、そのまま走り出した。そんな彼を複雑な思いで見送った僕は、先程の彼の言葉に引っかかるものを感じつつもさりげなく傍らでサボろうとするブルリンを起こす。


「サボるなサボるな」


「グゥ……」


「ほら、ナックに追いつけなくなるぞ」


 無理やり立ち上がらせたブルリンを押し出し、再度走らせる。走り出したブルリンとその前を走るナックの後姿を見てふと思う。

 ローズが見ていた僕とブルリンが一緒に訓練している時の光景ってこんな感じだったのかな、と。

 あの強面共の訓練風景を見ても化け物が隊列組んで走っているようにしか見えないけど、僕よりも幼い彼とブルリンが走っている光景を見ると、なんだか不思議な気持ちになる。


「師匠と弟子、か」


 ぼそりと何気なしに呟いた僕は走る彼の邪魔にならない場所に移動するのだった。







 思えば、この時気付くべきだったのかもしれない。

 彼の独白、ミーナに嘲笑われた時に見せた弱さと苦悩、それを解決するにはミーナを倒せるだけの実力を備えさせれば大丈夫だと考えていた。

 でも違っていた。

 彼の抱える闇は僕や犬上先輩が思っていた以上に辛く、残酷なものだということを。

 その事を理解したのは、訓練三日目に差し掛かる早朝の頃。

 最初は自主練習をしているかと思っていた。

 なにせキリハ達に貸して貰っている寝室にいなかったから。

 でも訓練場にもいなかった。おやおや、自主訓練に身が入り過ぎて遅れちゃったのかな?と笑いながら腕を組みブルリンと共に待つこと約一時間。

 何時まで経っても現れないナックに疑問を抱いた頃、遅れてきたアマコに訝し気に指摘されようやく気付く。



 ナックが訓練から逃げたという事実を―――。



次話もすぐさま更新致します。

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