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第五百七話

あけましておめでとうございます。

2026年も『治癒魔法の間違った使い方』をよろしくお願いいたします<(_ _)>


そして2026年最初の更新となります。

 怪物を撃退し、隠れ里をカズキの魔法で隔離することに成功した。

 これで怪物の襲撃から隠れ里を守ることができるようになり、一時的な安全を確保することができた……けれど、まさかその後にハンナさんとノノさんがやってくるだなんて思いもしなかった。

 そういえばここに来る前に、魔族とエルフ族が交流するといった話があるとは聞いてはいたけれど、こんなタイミングでやってくるとは……。


「ノノ!! 私達は今、精神攻撃を受けています!! そうじゃなきゃこんなところに治癒魔法使いを名乗った変態がここにいるはずがありません!!」

「ハッ!? 確かに!!」


 誰が治癒魔法使いを名乗っている変態だ。

 僕が目の前にいるにも関わらず、自分と前で飛竜の手綱を握っているノノさんに幻影魔法を打ち込もうとしているハンナさんを止める。


「いえ、本人ですから」

「本人の方が恐ろしいから現実逃避してるんですよぉ!!」

『まあ、それはそう』

『ボク達、ここに居る方がおかしいもんな……』


 くっ、アマコとフェルムの言葉を否定できない。

 要請がなければ僕はこの場にいなかったわけなので二人が混乱するのも分かる。

 ……なんか化物と遭遇したような反応なのは納得いかないけれども。


「えぇと、なんで二人はここにいるんですか?」

「その言葉をそっくりそのまま返してあげます! あ、い、いえ!! やっぱりいいです!! 言わないで!!」


 僕に指を突きつけた後に、何かに気付いたのか拒否するように手を横に振る。


「どうせウサト君のことですからまた妙な騒ぎに巻き込まれてるんでしょ!? 事情を聞いたら私も否応なく巻き込まれる流れじゃないですか!?」

『ハンナさん、ウサトのこと分かってる。……やる』

『すげぇなこいつ。ウサトの生態を熟知している』

『あはは……ハンナさん……』


 アマコ、フェルム、関心するところはそこじゃないだろ。

 キーラは困ったように笑っているけれど、事情を説明することは確定しているけれどどうするべきか。

 ……よし。


「すぅぅぅ」

「え、アレ? なんで大きく息を吸い込むんですか? ウサトく―――」

「リングル王国にいた僕たちの元に届いた手紙。それはエルフ族からの助けを求めるものだった。僕とカズキはエルフ族の救援に向かうべく、物資と仲間たちを連れて空を飛んで隠れ里へ向かうことになったのが今日の昼の話。夜になり隠れ里に到着したころには依然として怪物共が襲撃を続けていて、僕とカズキが撃退に出て、怪物を撃退、隠れ里を魔法で隔離し安全を確保したのが今ってわけだ」

「「ぎゃあああああ!?」」


 息継ぎもせずに全部一気に説明してしまうとハンナさんとついでにノノさんが悲鳴を上げる。

 正直なところ、隠れ里を狙う脅威がどれほどのものか分からない今、味方は少しでも多い方がいい。ハンナさんは言わずもがな、ノノさんと飛竜のショーンも空を飛べるという点でも、いてくれて心強い。


「タイミングが最悪すぎます!? なんでこんな騒ぎの真っただ中に来てしまったんですか私達!? 隠れ里そのものが襲撃されていたんですか!? どちらにせよ巻き込まれていたじゃないですかこれぇ!?」

「ハンナさんって運が悪いってよく言われませんか?」


 返答は僕へのパンチだった。

 飛竜に乗りながら繰り出された拳がぺしっ、と当たり、その後に手を押さえた彼女は涙目で僕を睨んでくる。


「私の運が悪くなる時は常に貴方が傍にいることを忘れてませんかね……!!」

「僕の運が悪いのはいつものことですから……ハハッ」

「開き直らないでください……!!」


 僕のフラグ回収能力はもう駄目な方向で信頼されてしまっているくらいだからな。

 ここまで来ると諦めの境地である。


「もおおおおお!! ウサト君、問題解決する能力が無駄にいいのが本当に性質が悪すぎる!! もうこれ同行しないほうが危ない流れじゃないですかぁ!」


 頭を抱えたハンナさんが悶える。

 さっきから静かなノノさんは乾いた笑みを浮かべながら「ここでも訓練かもしれないね、ショーン」と飛竜に語りかけている。

 どうしようかと困っていると戻らない僕を心配したのか、カズキが光魔法のボードに乗ってやってくる。


「ウサト。これは……どういう状況だ? この人たちは?」

「あー……とりあえず説明しながら隠れ里まで降りようか」


 混沌とした状況になってしまったけど、ひとまず隠れ里まで降りよう。



 改めてエルフの隠れ里へ降りてみると、空からでは隠れ里があるとは分からない作りになっているように思えた。

 ツリーハウスのように大木の上に家があり、その頭上を生い茂った緑が隠している。

 最初に僕達が気づけたのは隠れ里に明かりが灯っており、隠れ里周りの木々が薙ぎ倒されたり戦闘で荒れていたからだ。

 隠れ里の中心、地上からそれなりの高さの位置に板が敷き詰められた広場のような場所に僕とカズキ、そして飛竜に乗ったハンナさんとノノさんが下りると、隠れ里に住むエルフの人々が一斉に僕達の元に集まってくる。

 当然、全員がエルフの皆さんであり、武装している人たちの他に老人や子供のような非戦闘員も多く見える。


「ウサト、最初は俺が」

「うん。任せた」


 散々暴れた僕が最初に出ると色々な誤解が生まれそうなので、ここは顔が知られているカズキに任せることにする。

 光魔法を消し去り地面に降り立ったカズキが被っていたゴーグルを外すと、こちらを伺っていたエルフの皆さんは安堵の表情を浮かべる。


「戦士カズキ!」

「やっぱりあの魔法は彼だったか!」

「よかった、彼が来てくれて……」


 カズキも以前ここで暴食の獣と呼ばれる存在を倒したことから、エルフの皆さんから信頼を寄せられているようだ。

 彼が受け入れられていることに安堵していると、人だかりの中からフラナさんが駆け寄ってくる。


「カズキ!」

「フラナ!」


 カズキの下へ駆け寄ったフラナさんが彼の手を掴み笑顔を見せる。


「助けに来てくれてありがとう。貴方達がいなかったら私達は故郷を追われていたところだった」

「無事でよかった……」


 ……間に合って本当によかった。

 なるべく急いで来たつもりではあったが、それでもギリギリな状況には変わりなかった。

 キーラとフェルムの力がなければここまで来れなかっただろう。


「フラナ、ルルガさんは?」

「お父さんもここにいるわ」


 ルルガさん……は確かエルフ族の族長を任されている人だったな。

 フラナさんのお父さんで以前、会談で顔を会わせたことがある。


「でもあの怪物に襲われて怪我をして……」

「なんだって!? 大丈夫なのか!?」

「足を怪我しただけだから重傷じゃないわ。今は他の怪我人と一緒にいるの」

「……ウサト」

「うん、この後すぐに治療に向かう」


 カズキが何を言いたいのかすぐに察して、頷いておく。

 元より怪我人を癒すことが僕の本領。むしろさっきみたいに戦うこと自体が間違っているといってもいい。

 安堵の表情を浮かべたフラナさんは次に僕の方を向いて頭を下げてくる。


「ウサトもありがとう。貴方が来てくれて本当に助かった……」

「君も無事で本当によかった。今日まで大変だったみたいだね」

「ええ、ここ数日は戦い通しで……って、あれ?」


 疲れを滲ませた表情をしたフラナさんだが、僕の後ろにいるハンナさんに気付く表情を強張らせる。

 ……そういえば、フラナさんって戦場で敵としてハンナさんに遭遇したことがあるんだよな。


「あ、貴女って魔王軍の第三軍団長の……」

「元がつきますけどね。……ハンナと申します。今回は魔王領より遣わされた使者……という立場でしたが……」


 唐突に後ろのハンナさんが僕の背中を、ぽかっ、と小突く。


「この人畜無害の皮を被った事件ホイホイに巻き込まれた哀れな被害者ですっ」

「この騒ぎの原因は僕ではないんですけど」

「原因である方が少ないのが性質が悪いんですよ!! このっ、このっ!!」


 そのまま、ぽかぽかと小突かれるが全く力が入ってない。

 その様子を見て呆気にとられたフラナさんが、涙目であろうハンナさんから僕を見る。


「え、どういうこと?」

「とりあえず、今は悪い人じゃないってことだけ分かれば大丈夫です」

「わ、分かったわ。……ウサトと関わると、こうなっちゃうのかしら……」


 こうなっちゃうってなんですかね……。

 別に僕と関わってこの人がこうなったわけじゃないから……多分。

 その誤解を解きたいけれど、今はそれ以上に優先するべきことがある。


「話を戻すけれど、この後すぐに怪我人の治療に行くから。案内してくれないか?」

「ええ、そうね」

「あ、その前にここにいる皆に僕たちのことを紹介してもらってもいいかな? 色々と誤解があるといけないから」


 さすがにさっきまで人の目を気にせず変形したりして暴れまくったから流石に紹介してもらわなきゃ、どんな認識をされるか分かったものじゃない。

 僕の言葉にフラナさんは困ったような笑みを浮かべる。


「その心配はないと思うけれど……ちゃ、ちゃんと正確に紹介できるかしら? って、待って? 達っていうことは……」

『私もいるよフラナ』

『ボクもいる』

『私もいます!』

『グルァー!!』

「……こんなに里の皆に説明することが難しいことってある……? どうやって説明すればいいのコレ……?」


 同化している二人と一匹とマントから聞こえる一人の声に頬を引きつらせる。

 客観的に見て僕から複数の人が飛び出してくるのは衝撃的どころじゃない……が、ここを守るために戦ったことに悔いはないのでエルフの人たちのドン引きは潔く受けよう。

 ブルリンの聴覚を反映させ耳を澄ませてみると、周りでこちらを伺っているエルフの人たちの囁き声が聞こえてくる。


『———でもカズキさんといるから人間なんじゃ』

『いや、人間だけは絶対にない。俺は見たぞ、彼は獣人だ。今も耳も手も獣人みたいだろう』

『でも闇魔法を使っていたわ!』

『獣人の手は普通じゃないか……?』

『それなら、彼はシシェコンラッド様の化身……か』

『魔族を二人連れているから魔族の方なのでは……?』


 とりあえず人間という可能性は考えられてなかった。

 ……フッ、今まで気づいてなかったけど普通に今もブルリンのクマ耳を反映させてしまっていたぜ……。

 これじゃあ、まず人間とは思われないわけだ。


「フラナさん。どうやら僕は里を守るためとはいえちょっとやりすぎちゃったみたいだ」

「「「ちょっと?」」」

『グァ……?』

「上から見てたけど、ちょっとではなかったな。うん」


 同化とマントの中にいる面々と後ろの魔族の二人とフラナさん、そしてカズキにもツッコまれてしまった。

 あれ? さっきの戦闘より追い詰められてない? 戦いが終わったのになんでだろうな?


「ウサト。とりあえず同化を解けばいいんじゃないか? さっきのことでウサトが里を守ってくれたのは皆分かってるから。……フラナもそれで大丈夫だろ?」

「え、ええ、彼も恩人なのは皆分かってくれているし、あまり心配しなくても大丈夫だと思う」


 ということなら、同化を解除してキーラの魔法を解除して……っと、その前にすることがあった。

 フェルムに声をかける前にカズキにもう一度話しかける。


「カズキ、同化を解除する前に持ってきたアレを出しちゃおう」

「あ、そうだな。フラナ、皆を下がらせて場所を作ってもらえないか?」

「それは構わないけれど……どうして?」


 エルフの皆さんを下がらせながら、疑問に持ったフラナさんがカズキにそう尋ねる。


「ここに来る前にロイド様が物資を用意してくれたんだ」

「物資!? それはありがたいけれど、リングル王国からここまで運んでくるのに時間がかかるでしょ?」

「いや、その心配はないんだ。……ウサト、頼む」


 カズキの声に頷いた僕はキーラに声をかけた後にマントを右に大きく広げて、地面へ滑るように横に広げる。

 すると、マントに収納していた沢山の物資が積み重なった状態で地面に続々と並べられる。

 リングル王国で用意してくれた食料や医療品などが詰められた物資。

 これさえあればしばらくの間は大丈夫なはずだ。


「「「……は?」」」

「よし、これで全部かな?」

『はい!』


 高く積み上げられた物資の山を見て、軽く一息つく。

 改めて見てもこれだけの物資を一気に運ぶことができるのは本当に凄まじい魔法だと思う。

 ついでに僕たちの荷物も出して、ここでようやく同化を解除しキーラもマントから出てくる。


「え、あ……はっ!?」


 現れた面々と積み重ねられた物資を交互に見て一瞬呆然とした顔をしたフラナさんだが、ハッとした表情の後に未だ動揺を隠せない周囲のエルフの皆さんに声を上げる。


「み、見ての通り、彼はカズキと一緒にリングル王国から来てくれた人間(・・)で治癒魔法使いウサトよ!!」

『『見ての通りとは!!!?』』』


 やけに“人間”を強調する彼女の勢いに任せた紹介にさすがにこらえ切れなかった、エルフたちのツッコミが夜の森の中に響く。

 さすがに勢いに任せすぎでは……?

見ての通りウサトは人間です(クマ耳)


今回の更新は以上となります。

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― 新着の感想 ―
※ハンナさんは一章時点で治癒パンチ(で吹っ飛ばされた魔族に衝突事故した)被害者で男難ならぬウサ難だったりします
>元より怪我人を癒すことが僕の本領。むしろさっきみたいに戦うこと自体が間違っているといってもいい。 →今更すぎて草
>もうこれ同行しないほうが危ない流れじゃないですかぁ! 命の危険を感じるジェットコースターでも安全は保障されてるからね、仕方ないね
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