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第四百九十五話

2日目 2話目の更新です。

今回は半分だけ日記パートとなります。

内容は前回の日記の続きからです。

【6日目】

研究地:リングル王国 城内 研究所

作成者:アウーラ

研究記録:

本日はウサトさんの休養日。

それに併せて私たちも城内の研究室でここ数日の記録の精査と考察を行う日だ。

リングル王国の魔法専門の研究室は故郷の見せかけだけの研究室とは比べ物にならないほどに熱意に満ちている。

城勤めの筆頭魔法使いであるウェルシー先輩を中心にし、集められた人材はものすごく優秀で、ものすごくいい人ばかりだ。

まだこの職場に勤めてから数日だけれど、先輩方が温かく迎えてくれるから私たちも安心して研究に没頭することができている。

こんなことを書くのは不謹慎かもしれないけれど、魔王軍という脅威に晒されていたからこそどこの国よりも成長を余儀なくされたこの国は騎士たちの武力だけではなく、魔法を運用する技術すらも底上げされているんだろう。

だからこそ、あらゆる視点で考察を行えるし、多くの言葉を交えて力を合わせて結論へとたどり着くこともできている。


———そんな優秀なリングル王国研究部門総出で挑んでいるにも関わらず、尽きぬ課題と謎を湯水のように与えてくるウサトさんは本当になんなんだろうか。

でも……まあ……さすがに? ここ連日でそんなぽんぽんと新技術やらなにやらが出てくることはないだろう。


【7日目】

研究地:リングル王国 救命団 訓練場

作成者:アウーラ

研究記録:

[朝] 今日はリングル王国救命団訓練場にてウサトさん、スズネさん、カズキさんの3人による模擬戦闘訓練。


[昼]







[夜]

人間って予想外の驚きが立て続けに起こると思考停止するんだなー。

記憶ではしっかり覚えているのに身動き一つできなくなるだなんてはじめてですよ、私がこんな経験をするだなんて……!!


もう理解しました!!


変に予測してもどうあっても斜め上の方向で上回ってくるので変に予測するのはやめます!!

普通あんな速さで応用と実践をやらないんです!

怪我とか、そういう不確定要素を考えながらするはずなのにすぐに実践する!!

———というより、治癒魔法使いだから怪我の心配しなくていいのか!? 思い切りがいい理由はそれですか!?

まさか失敗を恐れる必要がないのが治癒魔法の真の能力ってこと!?


【8日目】

研究地:リングル王国 救命団 訓練場

作成者:アウーラ

研究記録:

[朝]

いったん寝て落ち着きました。

今日は普通の訓練みたいです。

ぜったい普通じゃないでしょうけど。


[昼]

(比較的)普通の訓練



あれ? 私って普通と異常の境界が分からなくなってきている?


[夜]

今日はウサトさんだけではなく、救命団で訓練している人々について観察してみた。

結論だけ述べるならウサトさんが筆頭でおかしいことをしているだけで、他の面々も十分におかしい訓練をしていた。


まず救命団女性陣。

スズネさん、カンナギさん、フェルムさん、ネアさんの4人の面々。

意外にも彼女たちの平常の訓練は普通なものであった。

といってもその訓練の内容は私が知るものとは遥かにきついものだったけれど、走ったり、基礎的な訓練だとか、幾分か王道なものに見えた。

……でもカンナギさんは明らかに常軌を逸した重りを軽々と持ち上げ、同じものを持ち上げたウサトさんと軽く談笑したりと部分部分でやばかったりした。


次はナック君とキーラちゃん。

子供ということで二人の訓練もやや抑え目なもの……としてもこちらもやはり、普通の騎士以上の訓練量をしている。

基本的に見るたびに喧嘩している。

今度、キーラちゃんとフェルムさんの闇魔法について調べたいけれど、許可とかもらえないかな。


そして、最も印象に残ったのは五人の救命団員たち。

いつもウサトさんと一緒に訓練する頻度が多い五人の救命団員たちで、ものすごく怖い見た目だけれど、城勤めの魔法使いである私たちにとても礼儀正しい人たち。

その訓練の様子は壮絶。お互いを鼓舞するように声を上げ、尋常じゃない速さで地を駆けるその姿は歴戦の騎士ですら逃げ出してしまうであろうくらいにものすごい。


その中に自然とウサトさんが混ざっていて全然馴染んでいるのも地味に怖い。

時折、喧嘩をし始めてどこからともなく現れたローズさんに、全員軽々と放り投げられてぼこぼこにされている。


【9日目】

研究地:リングル王国 王城 訓練場

作成者:アウーラ

研究記録:

[朝] 本日は王城の訓練場でシグルスさんとの訓練。

ウサトさんからの提案で魔力弾回しについて記録をとる時間を設けてくださるようです。



 シグルスさんとの訓練が終わり、お昼を挟んだ後にウサトさんが魔力弾回しと他の技術の記録取りのための時間を設けてくれた。

 私たちとしても願ってもない機会だったので浮足立った気持ちで訓練場に立つ彼を囲むように記録を取る準備を進める。


「……記録といっても、大袈裟すぎませんか?」


 計測用の魔具などを設置している私たちを見たウサトさんがちょっと引いた様子でそう口にする。


「大袈裟ではありません。むしろ足りないくらいです……!!」


 それに対して、近くで指示を出していたウェルシー先輩が眼鏡をくいっ、と動かしながら食い気味に答えた。

 それに同意するように私たちも首肯する。


「え、えぇ……」

「ウサト様は自身が行っていることの重要性を分かっておりません!!」

「いや、でも魔力弾回しって結構単純ですよ?」


 ほら、と口にしながら掌に作り出した魔力弾をぐるぐると前腕周りを回転させる。

 唐突にそれを目撃してしまった魔視持ちの先輩は「ふぇひぃん」という悲鳴を上げて目を抑える。


「原理が単純なことも理解しております。ただ、それを実践しているのがウサト様ということが大きな問題なのです」

「僕だから……?」


 そう、魔力弾回しが単純に魔力回しの延長線にあるものというのは、皆分かっている。

 問題なのは、魔力弾が体表を移動するという他の誰もが実践しなかったことを、この世界で最も魔力弾回しを習熟しているであろう彼が行っていることにある。


「これがウサト様以外の第三者が貴方の技術を模して同じことを行ったとしても、それは魔力弾を体表を沿って動かしている単純なものです。やろうと思えば私にも同じことができます」


 そう言葉にしてウェルシー先輩がその手に魔力弾を作り出す。

 作り出されたのは掌ほどの大きさの水球。

 それは流れるように彼女の腕を這うように動くけれど、ウサトさんのそれに比べたら遅くぎこちない。


「魔力回しを身に着けた私でさえもこれなのです」

「おお……」

「体内の魔力操作においては常に最前線を征く貴方が行うからこそ、我々研究者が思いつかない新たな技術へ発展させていくかもしれないのです。だから、その変化を絶対に見逃さないために準備が必要なのです……!」

「は、はい」


 迫力に押され、ウサトさんが少し慄く。

 そうしている間にほとんどの準備が終わり、ようやく魔力弾回しの記録取りができるようになる。


「では、順にやっていきますね」


 ウサトさんが作り出した魔力弾を背中に回していく。

 以前は背中に綺麗に並べられていた魔力弾は、円を描くように回転しいつでも必要部位に向かっていけるように最適化され、その余りある魔力弾回しの速さに背中に緑の円環があるように錯覚させられるほどだ。


「そして、これが新たな治癒連撃拳です」


 拳を構えたウサトさんの前腕から肘に三つの魔力弾が瞬時に並ぶ。

 同時、彼が拳を突き出した瞬間、空気が弾けるような音と衝撃波が発せられる。


「っ」


 見逃すまいと、手を前にかざしながら目を凝らしていると、拳を突き出した彼の前腕には三つあったはずの魔力弾が二つに減っている。


「以前までの治癒連撃拳の弱点は籠手がないと使えないというものでした」


 拳を戻したウサトさんは語る。


「籠手がない状態で連撃拳を使えば手を傷つけてしまいます。……生身でも一撃だけなら自傷覚悟で出せはしますが、それじゃあこの技の強みである連続して炸裂することができません」

「生身で連続で使えば……」

「僕でも拳が壊れるかもしれません。……試したことはありませんけど」

「ウサト様、絶対やらないでくださいね?」


 ウェルシー先輩の言葉に「は、はい……」と押され気味に答えたウサトさん。

 治癒魔法があっても耐えられない……? いえ、系統強化の暴発という危険極まりないことを……。


「……。よく考えたらなんで系統強化を暴発させてるの……?」


 あまりにも普通の技として使っているせいで疑問にすら思わなかった。

 え、怖い!? 出てくる技術がおかしすぎて系統強化の暴発という特大の違和感に気付けなかった……!? もしかしてウェルシー先輩も麻痺しすぎて忘れているか、無意識に気づかないようにしている疑惑があるのも怖い。

 一人戦慄している間に、ウェルシー先輩がウサトさんに質問をする。


「その結果、今のような形になったと?」

「ええ、あらかじめ魔力弾を作っておけば、手を治癒コーティングで守りながら技を繰り出すことができます」


 ……複数の魔力弾を留め、状況によって使い方を変える。

 それはまさしく私たちがここ数日見た騎士団長シグルスさんの技術の一端。

 手合わせを繰り返しながら彼の技術を見て覚え、自分のものとして形にした。


「では……魔力弾回しも籠手がない状態を改善するために編み出した技、ということでしょうか?」


 ウェルシー先輩の問いにウサトさんは暫しの沈黙の後に腕を組む。

 ここまでの流れを考えれば、普通に自分の欠点を補うという目標のために試行錯誤を繰り返した結果、今の技術に行き着いたと考えるのが普通だろうけど……。


「フッ、特に考えていませんでした」

「「「……」」」

「魔力弾回し自体もその場でぱっと思いついただけなので。そもそも元になった治癒滑りからして、対魔力弾のための技なので……」


 普段、このようなことを思うことはほとんどないのですが……この方は一周回ってものすごいおバカなのでは……?

 できるからやってできてしまった、と言外に口にするウサトさんに私たちは絶句するのであった。

「治癒魔法で殴る」という一番の異常に気づけなかったアウーラでした。


今回の更新は以上となります。

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― 新着の感想 ―
背中に緑色に光る円環。 用途により打ち出したり暴発させて加速できる。 いよいよスーパーロボットみたいな機能を搭載し出したなw
他の方の感想にもある通り、「ぺ」で撃沈しました。。。 で、心の準備をしてから再読し、「ぺ」はクリアしたものの、「ふぇひぃん」で轟沈。。。 それにしても、(登場人物の中では比較的)常識人だった筈のアウ…
殴りテイマー再開してほしいです。
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