第四百九十一話 日記回
二日目、二話目の更新となります。
久しぶりの日記回です。
ちょっといつもと違った感じでお送りいたします。
【2日目】
研究地:リングル王国 救命団 訓練場
作成者:アウーラ
研究記録:
[朝]
今日から本格的にウサトさんの訓練風景を見学させていただくにあたって、その見解などをまとめさせていただきます。
後でウェルシー先輩にも目を通していただくものなので、しっかりと私の感じたことや疑問に思ったことを書き記していきたいと思います。
報告用の別の記録を用意していますが、こちらはいつも通りにより自由な感じで。
本日は早朝から救命団に赴きウサトさんの訓練を見学させていただくことになっている。
もちろん記録の目的そのものは彼の扱う魔法と魔力技能であるけど、彼の超人的な身体能力の解明も目的である。
正直、かの有名な救命団の訓練を目にすることは滅多にない機会なのでとても楽しみ。
[昼]
この人いつまで走っているんだろう
なんで闇魔法で縛っているんだろう
なんで魔術で縛っているんだろう
なんでブルーグリズリーを背負っているんだろう
なんで平気な顔をしているんだろう
なんで彼を見て誰も疑問に思わないんだろう
[夜]
私はまだ常識にとらわれていたみたい。
カームへリオでもウサトさんは走っていたし、一日のほとんどを走っていたって不思議じゃない。
でも闇魔法で全身を縛り付け、拘束の魔術で全身を拘束し、さらにその上にブルーグリズリーを背負ったまま普通に走ってる光景を目にしたときは、私がまだウサトさんの一端しか知っていなかったことを思い知らされてしまった。
明日も救命団での訓練。
もうなにが出ても驚かないから大丈夫!!
【3日目】
研究地:リングル王国 救命団訓練場
作成者:アウーラ
研究記録:
[朝]
朝の記録です。
用意していただいた部屋の居心地は大変すばらしいものです。
なにより、故郷にいた時とは異なり今いる場所では私達三人だけではなく、志を同じくする同僚の皆様方がいらっしゃることがなにより嬉しいです。
何度も感謝を申し上げてもう聞きなれてしまったかもしれませんが、私たちを快く受け入れてくださった皆様に感謝を。
あらためて本日の研究内容についての概要。
本日は救命団での訓練となります。
本格的な模擬戦闘訓練、見にいくのがとても楽しみです。
[昼]
ひとが
ひとがとんっ
殴られて樹にぶつかってるんですよ!?
ボールみたいに樹に跳ね返ってっ
なんであれで無傷なんですか!?
訓練!??? 訓練ってなに!?
【訓練】意味:あることを鍛え、習熟させること
辞書で調べても意味不明って答えしか出ない!!
訓練ってなんですか??? 治癒魔法の人体実験か臨床試験の隠語!?
カームへリオにいたときの比じゃないことをしてませんかこれ!?
[夜]
昼間は取り乱してしまったので改めてまとめさせていただきます。
今日行われたのは、ウサトさんと彼の師である救命団団長のローズさんとの模擬戦闘訓練。
研究者としてこのような表現をするのは非常に悔しいですが、極まった肉弾戦というのは最早魔法とそん色がありませんでした。
救命団団長ローズ。
カームへリオであそこまでの出鱈目さを見せたウサトさんをああも簡単に手玉にとり、圧倒したことにとても驚かされた。
魔力操作と手数の多さではウサトさんの方が上でした。
ですが、その優位性をあっさりと上回る極まった基礎能力と、未来予知じみた戦闘勘と判断力。
なによりウサトさん曰く、彼が編み出した技術である魔力回しを習得することでさらに成長しているとのこと。
彼のあくなき向上心がどこからやってきているのかよく分かった一日でした。
【4日目】
研究地:リングル王国 救命団 訓練場
作成者:アウーラ
研究記録:
[朝]
本日も救命団での模擬戦闘訓練。
ウサトさんとスズネさんとの訓練らしい。
だんだんと慣れてきたので今日は驚かずにちゃんとしっかり見ていこう。
[昼]
はやすぎてぜんぜんみえない!!!
なんで反応できるの!?
いくつもの魔力弾がウサトさんの背中に綺麗に並ぶように留まっている?
あれは魔力弾回し?
なぜ? なんのために?
・生成した魔力弾を背中にストックしている? なぜ? シグルスさんの技の応用?
→1から魔力弾を生成する手順を飛ばすため?
→高速化させた魔力弾回しで、背中から四肢、あらゆる個所に魔力を運び状況に適した技を繰り出すことが目的?
・用途に応じて驚異的な速度で魔力弾が体表を移動し、あらゆる技を隙なく発動させようとしているんだ!!!
→攻撃を受ける箇所に回せば防御に転用! 手なら攻撃! 背中、脚なら暴発による加速!! すごい!!
・でもまだまだ未完成のようだ。
→これで未完成?
[夜]
昼間は間違ってこっちの手帳に書き記してしまった。
読み返してみると、自分がどれだけ混乱していたのかがよく分かる。
お祭りに参加していた時のスズネさんがどれだけの制限をかけられたまま動いていたのかを今日嫌というほど思い知らされてしまった。
電撃を纏った彼女が本気で動けば目で追うことすらできない。
対するウサトさんは不動の構え。
両手を掲げ、待ちの態勢に入った彼は虚空に掌を翻し打撃音を響かせていた。
新しい技術「魔力弾回し」とシグルスさんの技を応用したものについては、この手記とは別の正式なものにまとめて報告させていただく。
私たちの知覚の外で繰り広げられる攻防。それはまさしくリングル王国、いえ他国を含めて上澄みの実力者同士の戦いだった。
悔しいけれど、その戦いを見る位置にいない私達では論ずることはできないけど、想像・考察することはできる。
そもそもの話———なんでウサトさんは対応できているのか???
いや、違う。
答えは分かってる。
散布させた治癒魔法の魔力で位置を把握する治癒感知でスズネさんの動きを見ているんだろう。
―――だとしてもなんで反応できるんですか???
これはウサトさんが救命団訓練をした成果とも言えるのでしょう。
きっと、そう、多分。
―――それに反応できるウサトさんがローズさんの拳を避けられないのはなぜ!!??
あの速度で加速しているスズネさんの位置を捉えられるウサトさんがローズさんの攻撃に対応できない時があるのはどうして!?
わからないわからないわからない。
自問自答で答えを出していてもポンポンと疑問があふれてきてしまう。
毎日が未知だらけすぎて、なんだか息苦しくなって、でも明日がどんな未知が出てくるのか楽しみになってきてしまう。
こんな気持ち初めて。
【5日目】
研究地:リングル王国 救命団 訓練場
作成者:アウーラ
研究記録:
[朝]
我ながら昨夜は混乱しすぎてしまった。
今日はどんなとんでもないものが飛び出してくるかなぁ。
ワクワクと未知の過剰摂取で苦しい不思議な感覚に陥っている気がします。
[昼]
今回はカンナギさんとの模擬戦闘。
噂には聞いていた先代勇者様と共に戦った獣人族の英雄である方の戦いをこの目で見れるなんて本当に思いもしていなかった。
なにより過去の文献に記されていた獣人に伝わる『カンナギ流』をこの目でできるなんて感激だ!
その身一つで敵対する一切合切を薙ぎ倒したといわれる流派ということだけが伝わっているだけで私達人間の領域では逸話くらいしか残っていなかったのに!!
訓練後にたくさんお話しちゃった!!
イマちゃんも、エリンちゃんも熱が入って質問攻めにしてしまったことは申し訳なかったけれど、それでも質問して本当によかった!
流派の技をどうやって考えたとか、どうやって技の名前を決めたとか、絶対フレミア王国にいた時じゃ考えられない経験ができました!
午後からは救命団までお越しいただいたシグルスさんとの模擬戦闘。
午前は純粋な身体能力のぶつかりあいというものでしたが、シグルスさんとの訓練はとても静かで落ち着いたもの。
シグルスさんはウサトさんとの訓練の際に、あえて遅く動くことでより高度な駆け引きを引き出そうとしていたみたい。
そのおかげか私達の目でも二人がどのような魔力の使い方をしているのか目にすることができたけれど、やっぱり戦争を経験した人たちは魔法の応用に対する認識が私達とは根本的に異なっていると思わされてしまった。
私たちは魔法の研究のために要素を付け足し検証するもの、だとすればシグルスさんは戦争という実戦を想定し、その結果無駄をそぎ落とし最小限の魔法を最適化させようとしていること。
これは検証と改良を繰り返す私達研究者のサガというものなのでしょう。
……だとするとウサトさんはなんだろう?
[夜]
魔力回しの考案者であり、治癒魔法のエキスパートのウサトさん
ウサトさんを上回る治癒魔法使いのローズさん。
光の勇者のカズキさん。
雷の勇者のスズネさん。
獣人族の英雄カンナギさん。
リングル王国騎士団長のシグルスさん。
改めて並べて思った。
他にも魔族のフェルムさんとか人語を解する魔物のネアさんとか、獣人の方とか普通にいらっしゃいますし……よく考えなくてもリングル王国って実はとんでもない国なのでは……?
変則的すぎる日記回(?)
隠語呼ばわりされる治癒魔法使いの訓練と無自覚に黒歴史を掘り返されるカンナギでした。
今回の更新は以上となります。
ここまで読んでくださりありがとうございます。




