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第四百八十五話

三日目、三話目の更新です。

前話を見ていない方はまずはそちらをお願いします。

 先日から地獄の獄卒も逃げ出すような苛烈な訓練が始まってしまった。

 実力者との模擬戦。

 基本、救命団ではローズとナギさんそして先輩と手合わせをし、都合が合えばカズキとシグルスさんと模擬戦をすることになっているわけだけど、やはりというべきか最も模擬戦をする頻度が多くなるであろうローズとの手合わせは、普通の訓練以上に神経を使うものとなった。

 そして、今日も引き続き訓練……というわけではなく、今日はハルファさんとキリハがルクヴィスに帰る日ということでローズに頼んで午前の訓練を休みにしてもらった。

 ハルファさんとキリハの見送りのために、僕はアマコとナックと一緒にリングル王国の城門付近の移動用の馬車が集まる広場に足を運ぶ。


「わざわざ見送りに来なくてもよかったんだけど。大袈裟じゃない?」

「別に大袈裟ではないでしょ」

「うん。友達だし」


 苦笑いするキリハに僕とアマコはそう返す。

 ナックは今は、少し離れたところでハルファさんと話しているようで、そんな彼らの周りでは学生たちも出発の準備をしている。

 遠目ではあるけれど、ナックもハルファさんを慕っているようだ。


「ハルファとナックは意外と相性いいんだね。……いや、あんたの弟子なんだから良くて当然か?」


 訓練することが好き、というとアレだけどね。

 でも、ハルファさんは学生たちに怖がられやすいらしいけれど、実際はそこまで危ない人じゃないと思うんだよなぁ。


「ハルファさんって結構ストレートな性格してると思うんだけどなぁ」

「……まあ、それはここに滞在している間嫌というほど思い知った」

「ははは」


 げんなりとするキリハを見るに、ハルファさんって結構抜けてるところがあったんだなぁって察する。


「料理はてんで駄目。模擬戦になると目が血走り始める。無自覚に煽る。自分が飯を作らないくせに文句をつける」

「……大丈夫? キリハ」

「ああ。ハルファに比べたら、キョウとサツキがどれくらい普段ちゃんとしてるのかが分かったよ」


 額に手を置き、口の端をひくつかせるキリハ。

 こ、これは相当だな。


「そういうところは違うけど、ウサトとハルファって似てる。コーガとは別の意味で」

「コーガとは別の意味ってどういうこと?」

「生態が」

「おかしくない?」


 なんでそんな珍生物の習性みたいな言い方されてんの僕?


「コーガって誰だい?」

「あー、キリハは知らないか。コーガってのは魔王軍の元第二軍団長だった奴だよ」


 そう答えると、予想外の回答だったのかキリハが引いたように後ずさる。


「ま、またとんでもな奴と知り合いなんだね……」

「結構気のいい奴だよ。時折、喧嘩を売ったり買ったりを繰り返してるけど」

「うわぁ……」


 友人というには気恥ずかしいものがあるけど、悪友って考えるとしっくりくるものがあるな。

 本音で話せる友人という意味ではカズキと似ているとも言えるけど、あっちは本音で殴り合える感じではある。

 ……話が脱線しちゃったかな?

 コーガの話はこれぐらいにして、聞きたかったことをキリハに聞こう。


「ここの訓練はどうだった?」

「厳しいけど、実りのある毎日だったよ。獣人の私のことを気にしてる人なんて全然いなかったし」

「私が普通に出歩いているから、ここじゃ獣人はそんなに珍しくないんだと思う」

「なるほど」

「あと獣人と魔族に比べたら、日中走り回ってる救命団の人たちの方がインパクトあるって理由もある」


 それに関してはアマコの言うとおりだな。

 基本的に獣人や魔族よりも日中を走り回っている救命団員の方がすごく目立っている。


「だから獣人だからって気にする人なんていない」

「あたしもそれがよく分かって、充実した毎日が過ごせたよ」

「それじゃあ、キリハはゆくゆくはリングル王国の騎士志望?」


 アマコの質問にキリハは思い悩むように腕を組む。


「ちょっと悩んでる。このまま人間の領域で騎士になるか、実家のある隠れ里に戻るかって……でもまあ……まだまだ時間があるし、ゆっくり決めていくよ」

「最終的な決定はキリハ次第だけれど、リングル王国は普通に暮らす上でもいいところだよ」

「それはもう知ってる」


 そうアマコに笑いかけるキリハ。

 そんな二人の様子を見守っていると、離れた場所にいたナックとハルファさんが戻ってくる。


「申し訳ありません。お待たせしてしまって」

「いえいえ。……ナック、ハルファさんとは話せたか?」

「はい! 次に会ったら手合わせする約束をしました!! どうしましょう!!」

「ふふふ、次に会うのが楽しみですね」

「どうしましょう!!」


 二度も言ったな。

 声は元気なのに、どうして助けを呼ぶ感じに聞こえるのだろうか。

 でも先日、ハルファさんと手合わせをしたけど、以前よりもかなり腕を上げていたからな。なんというか、カウンター主体の戦い方になっていた上に、動きを先読みするんじゃなくて誘導するようになっていた。


「ナックもまだまだ成長期だからね。本格的な訓練が始まれば否応なく強く……いや、頑丈になれるから大丈夫だ」

「ハルファさんと再会する前に死にそうなんですけど俺」

「大丈夫。僕と団長が死なせないから」

「こんなに不安になる励まし方するの貴方だけです」


 救命団にいる限り、訓練で死ぬどころか気絶することすら許されないからね。

 諦めたようにからからと笑うナックを見て、キリハはドン引きしているが、一方のハルファさんは楽しそうに笑っている。


「やはり、ここは楽しいところですね」

「ハルファさんはどうでしたか? リングル王国での生活は」


 キリハにもした質問をハルファさんにしてみる。

 すると、彼は悩むそぶりもなく頷く。


「ここでリングル王国の訓練を経験しましたが、より決意が固まりました」

「というと?」

「ルクヴィス卒業後の進路はリングル王国騎士団を希望したいと思います」


 きっちりとそう言葉にしたハルファさんにキリハが呆れる。


「まあ、分かってたけれどそんなにあっさり決めていいのかお前」

「もちろんです。元より、魔眼持ち関係なく、採用していただける時点で第一候補でもありました。それに加えて、騎士団としての魅力よりも、ウサトさんのいるここなら退屈せずに済みそうだなって思ったからです」

「「「「…あー」」」

「君たち、僕を見て納得するのはどうなの?」


 キリハ、アマコ、ナックが僕を見て声を揃えて納得するのを見て頬が引きつる。

 しかし、否定するにはあまりにも僕が日々やらかしすぎているからできない……!!


「———おっと、そろそろ出発時間ですね。キリハ」

「もうそんな時間か……」


 二人の視線の先を追えば、馬車にルクヴィスの生徒たちが集まっている。


「では、お別れの時間ですね」

「今度は、こちらからルクヴィスに遊びに行ければいいんだけれどね」

「その時は、またお手合わせをお願いします」


 ハルファさんと握手を交わす。

 それからキリハを見る。


「キョウとサツキにもよろしくね」

「ああ。あんたも元気……いや、元気じゃないときが想像できないな。それじゃあ、元気すぎないようにな」

「それはそれでどうなの?」


 思わずツッコんでしまう。

 それからアマコとナックとも別れの言葉を交わした二人はそのまま馬車へと乗り込んでいく。

 生徒全員が乗り込んだいくつもの馬車はゆっくりと走り出し、外門を潜りルクヴィスへと続く道を進んでいく。


「……よしっ!!」


 その馬車を最後まで見送ったナックが、自身の両頬を叩く。


「ウサトさん、俺今から走ってきます!!」

「ハルファさんから発破をかけられたのかな?」

「はい!! 次に会う時はあの人を驚かせるぐらいに強くなりたいと思ったので!! それじゃいってきます!!」


 勢いのままその場を走り出し、城下町の方へ向かっていくナック。

 そんな弟子の姿を見て、感慨深い気持ちになっていると隣にいるアマコが僕の服の裾を引っ張って話しかけてくる。


「ウサトはこれからどうする?」

「君を送ってから訓練再開かな? 午後は先輩とナギさんと手合わせする予定」

「じゃあ、私も見にいってもいい?」

「全然構わないよ」


 アマコも見に来るのか。

 それじゃあ、はた目から見てもらった意見とかしてもらおうかなー。

 そんなことを考えながら、その場を離れようとする―――と、ルクヴィスに行った馬車とすれ違うような形でやってきたまた別の馬車が視界に映り込む。


「……ん? あの馬車は」


 見た目はちょっと古いけれど、なんだか見慣れない色合いをしている馬車だな。


「移動用のものだね。旅行者とかがよく利用するやつ」

「へー」


 あまり見慣れない馬車に不思議に思っているとアマコが補足してくれる。

 ということはあの馬車にリングル王国に訪れた旅行者とか乗っているんだな。

 なんともなしに停止した馬車を見守っていると、開いた扉から旅行者らしき面々が下りてくる。

 ん? 女性の三人組かな? ……いや、あの人たちは……。


「あんちくしょうの故郷に別れを告げて、ついにやってきたリングル王国!!!」

「ここから始めるんだよね、あーちゃん!」

「なんだか実家より空気も新鮮!! なにもかも軽い!!」


 ものすごい見覚えのある人たちだった。

 ものすごいテンションが上がっている三人組にアマコも物珍しそうな視線を向ける。


「なんだか変わった三人組だね。……ウサト、どうしたの頭を抱えて」

「……」

「引き寄せたね?」

「アマコ、これに関しては僕は違……うはず」

「否定しきれていない時点で、ウサト関係だよね?」

「……ハイ」


 彼女たちがここに来る一端は間違いなく僕にあるので全然否定できない……。

 でも、いくらなんでもリングル王国に来るのが早すぎないか? アウーラさん。

 速さからしてフレミア王国に到着した直後に勇者をやめてこっちに来たんじゃないか?

ついにやってきてしまったフレミア王国三人娘でした。


次回の更新は明日の18時を予定しております。

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>>「大丈夫。僕と団長が死なせないから」 >>「こんなに不安になる励まし方するの貴方だけです」 ひっでえw フレミア王国三人娘来たかー。ウェルシーさん、お仲間&頭痛の種追加です。
あ〜あ。アウーラ来ちゃいましたよ。 第十七章 勇者集傑祭編の「閑話 従者の思惑」でウルアさんがこんな事言ってましたね。  「数十年、下手をすれば百年単位の魔力革新を短期間で目の当たりにされてさぞや地獄…
やったねウェルシーさん仲間(道連れ)が増えるよ
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