第四百三十六話
お伝えするのを遅れてしまいましたがYoutubeにて、
ウサトのCVを担当する坂田将吾様がナレーションをしてくださった『治癒魔法の間違った使い方』コミックスCMが公開されております!!
興味がある方はどうぞご覧になってみてください!
そしてお待たせしました。
第四百三十六話です。
従者シャッフル。
第二の試練における衝撃的なルールが明かされ騒然となる会場内。
従者を交換という前代未聞であろうルールを開示したカームへリオの王、ラムダ様は興奮冷めやらぬうちに続けて声を張り上げた。
「ミルヴァ王国の勇者ランザス殿は、身体的な問題を抱えているため、治癒魔法使いの従者の助けが不可欠なことから、彼に限っては特例として従者を変更しないものとする!」
ラムダ様のお言葉に会場内にいるランザスさんが申し訳なさそうに頭の後ろへ手をやるのが見える。
一方で傍にいるレインは安堵に胸を撫でおろしている。
「ランザスさんはレインと一緒か。……よかった」
彼にはレインの治癒魔法の助けが必要だ。
それに第二の試練が彼の身体に負担をかけることのない謎解きなのもいい。
「考えるべきは僕のことか……」
……多分、第二の試練のルールを聞いたこの場にいる面々が従者を交換するというものに注目しているけど、今回の試練はそれ以前の問題なことを忘れている。
「僕、謎解きが別に得意ではないんだけど……?」
小声で呟き頬を引きつらせる。
第一の試練で先輩と暴れた印象が強いせいで注目されてしまっているけど、第二の試練は力とか関係ないものなのだ。
『ウサト、謎解きとか大丈夫なの? スズネはともかく、貴方ってそういうのダメダメっぽいけど』
『え、ウサトって謎解きダメなのか?』
心配するそぶりを見せながら失礼なことを口にするネアに、フェルムが尋ねる。
『前にりばーしって遊びをした時のことを覚えてる?』
『……あー、第二の試練は駄目そうだなぁ』
本当に失礼じゃない?
僕はリバーシが壊滅的に弱いだけで閃きは冴えわたっているんだからね?
ここは先輩の考えも聞いておくか。
「ウサト君が、奪われる……!?」
「いや迫真」
先輩がガビーンと擬音がつきそうな迫真の反応を見せている。
「くッ、ウサト君ならこの場にいる勇者の従者になっても大抵なんとかしそうではあるけど、正直私は気まずい……!!」
「すっげぇ切実すぎる……」
『こいつ人との距離詰めるの下手くそだもんな……』
先輩のノリが通じない相手にはとことん相性が悪そうではある。
なので組む相手によっては彼女のいう通りものすごく気まずいことになりそう。
「ハッ!? エリシャとロアと組めればいいのでは!?」
「「……」」
我欲に走るのはいいんですけど、近くで胡乱な視線を向けているエリシャとロアに気づいてください……。
他の勇者はどうだろう、とさりげなく近くにいるクロードさんに視線を送ると、彼は思案顔で顎に手を当てて何かを呟いている、
「……なるほどなぁ。弟子仮期間ってやつか」
やべぇこの人試練関係なく僕を弟子にしようとしてる……!
従者シャッフルをお試し期間かなにかと思っていらっしゃる?
「従者交換、これはチャンス」
「一応聞いておくけれど、なんの?」
同じく近くにいるリズの呟きに思わずそう尋ねてしまう。
「ウサトを私の従者にする」
「……。リズ、僕は謎解きが得意じゃないんだ」
「? 大丈夫、私も得意じゃない。一緒だね」
謎解き以前の問題だった。
あれ!? もしかして僕の知力に期待して組もうとしている人いない!? それはそれでショックなんですけれど。
『準備は整ったようだな。では勇者諸君、第二の試練で共に戦う従者の抽選を行う』
そうこうしている内に従者を選ぶ魔具の準備が整ったようだ。
見た目はゲームセンターにあるような箱型の魔具にルーレットが取り付けられているようなもの。
設置されている魔具に光がついて起動すると同時に、ラムダ様が早速使うように促してくる。
『では最初は……フレミア王国 双魔の勇者アウーラ!!』
「ァぇっ、い、いきなり私ですかぁ!?」
突然名前を呼ばれ、肩を震わせながらアウーラさんが魔具が設置される場所へ向かう。
恐る恐るといった様子で彼女が魔具に触れると、独特の光と音の後にルーレットが点滅し———ミアラークの紋章が浮かび上がる。
『勇者アウーラの従者はミアラークから!!』
アウーラさんのお従者はミルファさんか……。
なんだか、まったく想像できない組み合わせだ。
「は、話したことない人だ……ど、どどどうしよう……」
アウーラさんはなんだかもう限界が来ているけど大丈夫だろうか?
『では次、カーフ王国、不退の勇者クロード』
「ん? 俺か。よっしゃ、やってやるか」
次はクロードさんか。
アウーラさんでやり方を見て分かっているのか、すぐに魔具に触れてルーレットを点滅させる。
出てきたのは———、
『勇者クロードの従者はガルガ王国から!!』
「おーっと、これはこれで面白れぇな」
ガルガ王国……ということは、先日の試練でたくさん引きつれていた従者たち……か?
とりあえず、ガルガ王国の勇者であるリヴァルと彼の従者へ視線を送ってみると———そこには陰鬱な雰囲気を漂わせ、無気力に壁に背を預けているリヴァルと、そんな彼を気遣うそぶりを見せている従者たちがいた。
「……」
正直、ガルガ王国のリヴァルにはどういった感情を向けていいか分からない。
第一印象自体は最悪だったけれど、なんというか……彼の言葉にはどこか投げやりなものを少し感じたから、よく分かっていないんだ。
『次はリングル王国、雷の勇者イヌカミ』
……どういう順番で呼んでいるだろうか? 公平にするためにランダムで呼んでいる感じかな?
名前を呼ばれた先輩が、意気込みながら前へと歩み出る。
「ウサト君……二枚抜きしてくる」
「どうやっても一人だけしか選べませんからね?」
「その運命を覆すのが勇者、だろう?」
かっこよく言っても実際にやったら不正扱いですからねソレ。
どこから湧いてくるか分からない自信に満ち溢れた様子で先輩が魔具へと向かい迷いのない動作で起動させる。
ルーレットが示したのは……。
『勇者イヌカミの従者はネーシャ王国から!!』
「フッ、日頃の行いが良かったから、かな?」
すげぇほぼピンポイントでエリシャを引き当ててる……。
エリシャの「え……?」という若干の困惑の混じった声が聞こえるけど普通にすごいな。……日頃の行いがいいかどうかは分からないけど。
「ガルガ王国、次世代の勇者リヴァル」
次に呼ばれたのはリヴァル。
名前を呼ばれてしばらく無反応のまま、顔を上げた彼はゆっくりとした足取りで魔具へと進む。
『あいつ、大丈夫か?』
『第一の試練が散々な結果だった……だけじゃなさそうね』
「……」
彼からは初めて顔を合わせた時のような態度の悪さも感じられない。
お酒に酔ってないから? ……今の様子からしてそれだけじゃない気もする。
彼が魔具に手を当て作動させると、明滅の後にルーレットは見慣れた国の紋章を選び出した。
『勇者リヴァルの従者はリングル王国!』
「……は?」
ん? 今、リングル王国って言った?
驚きに目を丸くしたリヴァルが呆然とこちらへ振り返り、首を傾げた僕と視線が合う。
思いもよらなかった人の従者として第二の試練に参加することになってしまったようだ。
「そ、そんな……」
結果を聞いたリズが絶望の表情で膝をついている……。
そんなに僕を従者にしたかったのこの子……?
「ムフフッ、君でなければ安心だな熊ちゃん勇者め!」
「犬っころ勇者……!! ウサトのみならず私のエリシャまで……!!」
「負けを認めるがいい。エリシャのお姉ちゃんはこの私になったのだ!!」
「おのれ、おのれ……!」
「あの、私は誰のものでもないしお姉ちゃんは一人だけなのですが……」
リズはリズでものすごいショックを受けているけど、そんな彼女を即座に先輩が煽りに入っている。
なんだか一周回って仲良しなんじゃないかこの二人。
次回、リヴァル絶叫。
次回の更新は明日の18時を予定しております。