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第四百三十五話

お待たせしてしまい本当に申し訳ありません。

普通にインフルにかかって体調を崩してしまいました。


第四百三十五話です。

 なんだかんだで大所帯になってしまった訓練を終えた日の夜、僕と先輩は事前に知らされていた予定通りに城へと招待されていた。

 服装に関しては僕はいつもの団服、先輩は黒の団服を着ており、僕の身体にはフェルムとネアが同化している。


「今回もパーティ形式……いや、食事会みたいな感じなのかな?」

「ええ。でも前と比べて招待されている面々が限られているように見えます」


 到着した会場内を見るに、招待されたのは各国の勇者関連の面々とお祭りの関係者くらいかな?

 前に見たような貴族関係の方は来ていないように見える。


『なぁ、ウサト』

「フッ、分かってる」


 同化しているフェルムの声に頷き、会場内のテーブルに並べられる豪勢な食事に視線を向ける。


「この人数なら……食事を取り込めるぜ」

『おい、お前ボクをとてつもない食いしん坊だと思ってないか?』

「そんなわけないだろう」


 フェルムは食いしん坊ではない。

 だが、フェルムの生い立ちを考えると美味しいものを食べたこと自体少ないだろうから、食べられる時に食べてもらいたいのだ。


「僕は君がお腹いっぱいに食べてくれるだけで嬉しいんだ」

『お、おう……そ、そういうことなら食べちゃおっか……なぁ?』

『なんか変な方向で庇護欲見せてきたわね……気持ちは分からなくもないけれど』


 会場のこの人数ならバレないだろうし、もしバレたとしても僕の一発芸としてスルーしてくれる可能性もある。

 それくらいの奇行が許されるくらいには滅茶苦茶をしてみせた自覚はあるからな、うん。


「ウサト、来たんだ」

「リズか」


 そんなことを考えていると僕と先輩の元にリズがやってきた。

 先日と変わらない口元までをすっぽりと覆う厚手のコート、そして獣人としての耳を隠す魔具により今の彼女は特徴的なオレンジ色の髪の人間にしか見えない。


「スズネさん、ウサトさんっ」


 そして少し遅れてもう一人、リズの形式的な従者であり、妹のエリシャもやってくる。


「エリシャ、ウルアさんは?」

「先生は面倒くさがって不参加です。……あの人、体力ないのに午前中にはしゃぎすぎちゃって……」

「そ、そうなんだ……」


 長く生きているという割には体力は人並みなんだな……。


「ぐるる……この泥棒クマちゃん……!」

「むるる……犬っころ勇者……!」


 と、エリシャと話している間に早速、背後に子犬と子熊の幻影を見せる勢いで威嚇しあう勇者共。

 その様子を見て僕とエリシャは顔を見合わせてため息をつく。


「先輩ステイ」

「きゃうん」

「……」

「ウサト君。素に戻ってドン引きするのは私にも効くからやめてね?」


 普通に言うことを聞いた先輩に「マジかよこの人」みたいな視線を送り正気に戻らせる。

 顔を合わせるなり謎の威嚇をするのはどうかと思うけど、まずは気がかりだったことをリズに聞いてみるか。


「リズ、あれから手に異常はない?」


 系統強化により傷ついた腕の調子。

 治癒魔法で完全に癒したと思っていてもなにかしらの治し残しがあってもおかしくはないので、一応確かめておく。

 尋ねた僕にリズは一瞬きょとんとした顔をした後に自分の右手を指さす。


「痛いから見て?」

「……。嘘だったらしばらく口利かないけど大丈夫?」

「よく考えたら痛くなかった」


 その嘘をつく意図は……?

 なんかリズはブルリンだけではなく先輩にも似てきているようにも思えてきてしまった。

 食いつくように右手をぷらぷらとさせるリズにエリシャが何度目か分からないため息をついていると、また僕と先輩のいる会場の一画に誰かがやってくる。


「いつ見てもお前さんの周りは賑やかだなぁ、ウサト」

「あ、クロードさん」


 今度はクロードさんか。

 傍には午前中にエリシャと一緒に訓練をしていたロアもおり、先輩と僕の姿を見るなり綺麗なお辞儀を見せてくる。


「ネーシャ王国の……ウルアは今回はいねぇみたいだな」

「先生を知ってるの?」


 リズの言葉にクロードさんは苦々しい笑みを浮かべる。


「この祭りに参加する度に顔を合わせてるくれぇだ。顔なじみではあるが、苦手な部類ではあるな」

「先生ってなんでも知ったような素振り見せるから苦手にする人がいるのは分かる」

「国でも避けられてるもんね、先生」

「お前ら先生っつーわりに辛辣じゃねぇか?」


 クロードさんはウルアさんが苦手なんだな。

 彼に苦手な人物がいることにロアも驚いたように彼を見上げている。


「ウサト、ロアのことありがとうな」

「僕はあまり大したことはしてませんよ。言ったことも既にクロードさんが指摘していたところでしたし」

「俺とお前さんで同じ助言が出るっつーことは、それだけ大事なことってことだ」


 そう言ってクロードさんはロアの頭に手を置く。


「ロアもそれを強く自覚できたし、それだけでお前さんに師事させた甲斐があったっつーもんだ」

「そう言ってもらえてよかったです」

「あとよ無理のない範囲でいいんだが、明日からも見てやってくれねぇか?」


 元々レインの訓練の一環で見ているので、全然オッケーだ。


「全然構いませんよ」

「あ、ありがとうございますっ」


 ロアのお礼の言葉に頷いていると、ここで頭上から照らされる魔具の明かりが弱まり、会場内が暗くなる。

 どうやら呼び出された七つの国の勇者とその従者が揃ったようだ。

 それに合わせて、僕達の視線は会場内にある明るく照らされた壇上へと向けられる。


『カームへリオ王国、ラムダ・ラーク・カームへリオである』


 壇上に現れた白の装束を纏った王様、ラムダ様が会場内にいる僕達を見回してそう言葉にする。


『諸君、今宵はよくぞ集まってくれた。早速ではあるが、次に行われる祭典———第二の試練の子細について説明させていただこう』


「早速だね」

「ええ」


 先輩の言葉に頷き、ラムダ様の言葉に耳を傾ける。


「こりゃ、まずいな」


 すると、近くのクロードさんのそんな呟きが聞こえてくる。


「師匠。まずいって、なにがですか?」

「ラムダ王、無茶苦茶ノッてる。とんでもねぇのが出てくるぞ、ありゃ」


 無茶苦茶ノッてる……?

 見た目はそこまでテンションが上がってないように見えるけれど。

 そうしているうちに彼がどんどん試練の内容を説明していく。


『第二の試練で試されるのは知力と機転!! 第一の試練とは異なる区画にて、勇者と従者諸君には謎解きを行ってもらう!!』


「謎解き……?」

『へぇ、面白そうね』


 思いの外、戦闘に発展しなさそうな試練だな。

 いや、戦うだけが勇者ってわけじゃないからある意味当然か。


『出題問題はこの祭典期間中に民から募集した内容と、我々が用意したものを使う! 区画内に隠された問題を探し出し、解き明かすことで各自の点数へと加算される!!』


  問題を見つけ出して解いて競い合う。

 第一の試練ほどの派手さはないけれど、問題は一般から募集……一気に身近な感じになるし、僕的にはかなりいいなって思う。


『そして、第二の試練は単純に謎を解くだけの試練ではなぁぁい!!』


「ん!?」

「まーた始まった……」


 いきなりテンションを振り切らせたラムダ様に驚く。

 クロードさんも額を押さえて呆れた声を漏らしている。


『勇者たるものどのような状況でも最大限の力を発揮せねばならない!! そう、例えそれが違う従者(・・・・)と共に行動している時も!!』


 ……ん? ん!? 違う従者!?

 ざわめく僕達を確認してさらに上機嫌になったラムダ様が大仰な素振りで手を翻す。


『特別ルール!! 従者シャァァッフル!!』


 すっごい巻き舌と共に手を大きく翻した先の空間に、魔具の明かりが差し込む。

 突如として光で照らされたそこには箱型の魔具が設置されており、それに取り付けられたルーレットのような針がある円盤には各国のシンボルマークが描かれていた。


『これより各国の代表たる勇者諸君には、この魔具を用いてもらう!! そして、魔具により指示された指針に刻まれたシンボルの王国の———従者と組む!! 従者交換ッッ!! それが、第二の試練における絶対条件!!』


『フェルム、この王様、正気じゃないどころじゃないわ』

『ある意味すげーよ、この王様……』


 感嘆とした様子でそう呟いたネアとフェルム。

 だが、僕はそんな二人の言葉に反応する余裕はなかった。


『……』


 自意識過剰でなければ、この会場にいるほとんどの面々の視線が僕へと向けられている。

 特にすぐ傍にいるリズからの視線がもうすごいことになっていた。

ここで重要なのは第二の試練が謎解きというところ。


今回の更新は以上となります。

次回はなるべく早く更新する予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 従者ガチャSSRウサトを引けるのは一体誰だ!
[一言] ラムダ様の声今まで脳内変換出来てなかったけど「すっごい巻舌」の一言で急にc.v.若本規夫で再生され始めた
[一言] これは期待!! てかウサフェルがてぇてぇ。 供給過多でしにゅ!!
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