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第四百二十五話 

緊急報告です!

この度本作のスピンオフコミックが配信されることになりました!


タイトルは「治癒魔法の間違った使い方~誘いの街・レストバレー~」


こちら来月8月15日より、ピッコマにて先行配信が決定!

詳しい内容についてはTwitterにて公開しておりますので、そちらをご覧いただければと思います!


そして、二日目、二話目の更新です。

前話を見ていない方はまずはそちらをー。

 レオナさんとの戦いは予想外だらけなものだった。

 彼女の技巧と魔力弾の技術もそうだが、まさか初見で治癒崩しを見切られるとは思いもしなかった。

 だけど悔しい気持ちはない。

 むしろ心の底から信頼する勇者の確固たる強さに高揚すら覚えたほどだ。

 そして———、リズの介入。

 氷で拘束され少し苛立った様子の彼女から繰り出された一撃は、容易く地面を砕き多くの礫を周囲にまき散らした。

 そして、礫はこちらにも散弾のように飛ばされてきたので対処する。


「治癒残像波」


 僕の身体から飛び出した弾力付与された残像拳が礫を防ぎ、防ぎきれなかった礫を手で全て掴みとる。

 着地と同時に、リズに礫を投げつけ彼女に肉薄する。

 礫を大刀の柄で弾いた彼女は、僕が放った拳を掌で受け止める。

 そのまま手で組み付き、力勝負へと持ち掛ける。


「力は、今の私の方が上」

「っ」


 最初の時点で力はむしろ僕の方が上だったけど、今は彼女の方が上回っている。

 ここまで力が強いと本当にナギさんみたいだ! なんらかの方法で身体を強化しているのか!?

 組み付きを外し、組手へ切り替える。

 リズも受けて立つのか、大刀を後ろへ放り投げ拳を前に突き出すような———籠手を装備していたかつての僕のような構えを取る。


「君の傍は落ち着く」

「こんな時に話すことか!?」

「そうさせているのは君のせいじゃない?」

「すげぇ言いがかりだぁ!?」


 思わずツッコんでしまうと、リズが大きく引き絞った拳が槍のように放たれる。

 まっすぐの小細工なしの一撃。

 直撃をもらったら僕でも悶絶するようなその攻撃だが、ローズと組手をしている僕にとっては慣れたもの。

 緩く構えたまま、攻撃を受け流す。


「治癒残像拳」

「無駄、その匂いは覚えた」


 残像で意識を乱そうとするが、即座に残像は掻き消され距離を取らせようとしない。


「ふん!」


 迷いのない拳を寸前で躱し、腕を極めて地面に倒す。

 しかしリズは掴まれた腕ではなく、足に力を籠め、僕の投げ技に抗いながら逆にこちらの腕を抱えるように掴んで地面に叩きつけようとしてくる。

 態勢が互いに入れ替わるように攻守が逆転し、最後に拮抗するように腕を掴みあった僕と彼女がにらみ合う。


「っ」


 こっちの動きが読まれている感じがするな。

 ハルファさんのような魔視か? 疑問に思っていると至近距離で取っ組み合っているリズが上機嫌に口を開く。


「私は鼻がいい。貴方の魔力の匂いは覚えてる」

「……魔獣の嗅覚?」

「知ってたの? 私はそういう特異な能力を持つ獣人。魔力の匂いをかぎ分ける」


 ブルリンもそうだったけど、まさかこの子耳の形からしてクマの獣人か!

 じゃあ、この子は魔力の匂いで動きを見ているのか。


「「ッ」」


 瞬間、僕とリズが同時に別のなにかに反応する。

 ッ、ここでリズばかりに集中していちゃ駄目だ!!

 僕は空いた左腕でレオナさんが放った拘束用の魔力弾を、治癒魔法弾で叩き落す。

 ———ッ、いや、違う! この魔力弾は陽動!!


「「上!」」


 僕とリズが同時に呟いた瞬間、僕とリズの頭上から、十数本の氷でできた鉄パイプほどの太さの円柱が降り注いだ。

 僕達は互いに手を離して後ろに下がると、ガガガ! 氷の円柱が地面に刺さっていく。

 上から僕達を拘束するつもりだったのか!


「邪魔」


 下がると同時に大刀を拾ったリズが氷を砕き、再び僕へ突撃してくる。 

 そして、拘束用の氷柱を背後に展開させたレオナさんも木剣を片手にやってくる。


「ならば、多人数相手の戦い方で行く!!」


 攻撃を受け流す治癒流しを止め、治癒コーティングを発動させる。

 さらにその上で魔力の弾力を落とし、どろりとした粘性のあるものへと変える。


「治癒粘着拳」


 ヴェルハザルに現れた人攫いを闇討ちする際に用いた粘性のある魔力。

 ネアの魔術込みの時は治癒吸着拳だけど、こっちも厄介さは負けていないぞ!


「オラァ!!」


 僕が投げた魔力弾をリズが手で叩き落して、べちょり、とした擬音が響く。


「なにこれ……!? っ、はずれない!! うくっ!?」


 動揺した隙に足と関節に連続で魔力弾を当て動きを封じる。

 だが、魔力自体は治癒魔法そのままで、衝撃も攻撃力もない。

 その代わり粘度を下げたことで彼女の手に纏わりつき、武器を振り回しにくくさせる。


「さらにレオナさん! 貴女にはこっちだァ!! 治癒粘着弾!!」

「っ、足元!?」


 腕を大きく振り回し遠心力でこちらに迫るレオナさんの足元目掛け魔力弾を投げつける。

 べちゃぁ!! と音を立てて液体のように地面に広がった魔力を彼女が踏むと、まるで溶けた飴のように地面と足がくっついた。


「くっ」

「攻撃力はありませんが、厄介さでは随一ですよ!!」


 そして見た目もあまりよろしくないのも自覚している。

 衝撃波も出せず、攻撃を受け流す要の治癒流しも、治癒弾きも使えないが相手の動きを阻害することに長けた技がこいつだ。


「いいの、そっちばっかり見ても!!」

「これ実質二対一ではァ!?」


 いや、従者分の六点を僕が持っているから狙われて当然なんだけど、実力者の勇者二人に同時に狙われるのは本当にキツイ!! 今はなんとか技を駆使して一対一の状況に持ち込んでいるけど二人が僕の技に慣れてきたら、本格的にピンチだ!!

 粘着する緑の魔力を片腕に纏わりつかせたまま、リズが片腕で大刀を叩きつけてくる。

 相変わらずの膂力だけど、片腕だけじゃ威力は半減だ!


「と、はいってもぉ!!」


 大刀の重さと彼女の常軌を逸した腕力を考えれば、真正面から受け止めるのもキツイ。


「そこ、腕章もらい」


 上からの一撃に大きく隙を見せた僕に、リズが手を伸ばしてくる。

 ギリギリで伸ばされた手を掴んで止めるが、彼女は構わず力を籠める。


「いくら君でも力は私の方が———」

「治癒妨害(ジャミング)

「ぁ!?」


 治癒同調でリズの魔力回しに干渉、同時に彼女の魔力を乱し———彼女が使っているなんらかの魔法を妨害する。

 フッ、と彼女の身に纏われていた透明の魔力が消え、彼女の常軌を逸した力が弱まる。


「な、なに? 私の魔法が?」


 身体強化する系統の魔法と見た!!

 魔法を強制的に止められたリズが困惑の表情を浮かべているその隙に、彼女の金の腕章を奪おうとした———ところで、レオナさんが作り出した氷柱と魔力弾が一斉に飛んでくる。


「レオナさん!?」


 リズと共に回避した直後に僕の視界に入り込んだのは、いくつもの霜でできた魔力弾と、拘束用の氷柱を展開させたレオナさんの姿。

 僕とリズが戦っている間にこれを作っていたのか!! 拘束用の魔力弾っていっても物量的に無理がないですかソレ!?

 どう見ても詰みに来ている制圧攻撃に、治癒感知のために生成しようとした魔力を、爆裂弾へと切り替える。


「オラァ!!」


 投擲された治癒爆裂弾はこちらに迫る氷の魔法に激突し、大きな爆発を引き起こす。

 衝撃波と氷の結晶が宙へと舞い上がり、相殺こそされたが———、


「———っ」


 わずかに僕の周囲に残った魔力の残滓に反応。

 生き物のような飛んでいる複数の何か―――咄嗟に身をひるがえしながら瞬間、僕の左の腕章をなにかが掠めた。


「しまった!?」


 腕章を盗られた!?

 盗られたのは一つだけだが、今のは僕の治癒感知の効果が薄れる時を狙われた!!

 すぐさま腕章を奪っていった生物を目で追うと、それは鳥のような形状をした半透明の氷の塊。それらは生き物のように羽ばたきながら、屋根の上にいる一人の女性の元へと帰っていく。


「ごめんねー! ウサトくーん! 腕章、返してもらったよー!」

「ミルファさんか!」


 レオナさんの従者、そしてカロンさんの奥さんであるミルファさん。

 レオナさんとカロンさんの同僚で、実力者なのは分かっていたけど彼女は氷を生き物のように操ることができるのか!!


「レオナー! 一旦退くわよー!」


 離れた場所で腕章をまた自身の腕に着け直したミルファさんはレオナさんの戦っている方向に視線を向けた後にこの場から離れていく。


「ミアラークの勇者、逃げるの!?」

「彼を相手に持久戦は不可能だからな!」


 うわぁ!? 引き際が鮮やか過ぎる!!

 まさかレオナさん、最初から感知範囲外から僕の隙を伺うようにミルファさんに指示していたのか!?

 僕とリズのいる場から退きながら、目くらましのように先ほど同じ氷の魔法を連続で放つレオナさん。


「行け!!」


 一斉に放たれる氷柱と魔力弾。

 対処すべくもう一度治癒爆裂弾を作ろうとしたが、それよりも先に僕の背後から飛んできた電撃を纏った三本の矢が飛来する氷柱と魔力弾の直前で、矢同士(・・・)がぶつかり合いけたたましい電撃をまき散らした。

 それにより作られた氷柱と魔力弾は全て破壊されたけど、レオナさんの姿は既にない。

 いや、それよりさっきの電撃は……!!


「混沌としてるねぇウサト君!!」

「先輩!! すみません腕章一つ奪われました!!」

「気に病むことはない!! むしろよく一つで済ませてくれた!!」


 やっぱりさっきのは先輩か!!

 エリシャとの戦いからこちらに戻ってきた先輩は、木剣ではなく小ぶりな弓と矢がいれられた矢筒を背負っていた。


「どうしたんですかその弓?」

「武器壊れちゃったから借りてきた!!」


『わ、私の弓、返してくださぁい!!』


 視界の端で街中にあったのかロープでぐるぐる巻きにされたエリシャが涙目でそう叫んでいるのが見えてしまった。

 あれ借りてきたというより奪ったというのが正しいのでは?


「てか先輩、弓使ったことあるんですか?」

「ウサト君、元の世界の学び舎に弓道部があっただろう!!」

「え、先輩弓道部だったんですか!?」


 初耳なんですけど!?


「フッ、いいや、生徒会長権限で二矢ほど試射させてもらった!! 問題ない!!」

「それを一般的に問題と言うのでは……?」


 それを問題ないと言える度胸は凄いと思うけど、大丈夫なのか本当に!?

 予想を超えて齧った程度しかやってない先輩に驚いていると、不意に矢筒から4本の矢を引き抜いた先輩が、混乱から立ち直りこちらに向かって来ようとするリズに弓矢を構え、放つ。

 だが放たれた一矢は、獣人であるリズに掴み取られてしまう。


「この程度、通じな———」


 ———が、その直後に雷獣モード0により精密化した動きにより、ほぼ間断なく放たれた三本の矢がリズにほぼ同時(・・)に直撃する。

 鏃のない矢。

 それも先端が丸く怪我を与えにくくされている矢を両肩と胸部に受けたリズは、眼を見開きながら呻く。


「うくっ……」


 苦痛に呻きながらも続けて先輩が放った矢を弾いてしまうが、先輩の矢の危険性を理解したリズは距離をとらずにそのまま接近戦に持ち込んで来ようとする。


「さすがに対応されちゃうか。初見だけだね、これが通じるのは」

「先輩、後ろからサポートお願いしま……ん!?」


 先輩の背中を二度見した後に彼女の前に飛び出し、大刀と弾力の魔力を纏わせた蹴りをぶつけて相殺させる。

 のけぞりながらも踏み込んだ僕とリズが同時に拳を突き出しもう一度激突するが、弾力の魔力を拳に纏わせたことにより、弾かれるように僕とリズの身体が反発するように離れる。


「先輩」

「うん」

「僕から見て、矢筒になんも入ってないんですけど!」

「えへへ、全部なくなっちゃった」


 可愛くはにかんで誤魔化せると思うなよ!?

 まずい! 無手の先輩じゃリズのパワーを受けられない!?


「先輩、僕の背中へ! 一旦武器を調達します!!」

「ウサト君!! ゴー!!」


 だけど、仕切り直すにはちょうどいい!!

 飛びつくように僕の背中に乗った先輩を背負い、その場を走り出そうと——、


「師匠! あそこです!!」

「おっと出遅れちまったか!」


 ———したその時、頭上から新たな乱入者の声が聞こえてくる。

 それも家屋よりも遥かに高い位置から落下してくる二つの影。


「あれは、クロードさん!?」


 彼と一緒にやってきた少女は……彼の従者か!!

 どういうわけか遥か数十メートルの高さから山なりに落下してきたクロードさんと従者の少女は、空中で不可思議な加速を繰り返しながら構えた槍を大きく翻す。


「ロア、合わせろ!」

「は、はい!」


 クロードさんと従者の少女が穂先に魔力を籠める。

 あの二人、同じ魔法系統か!?

 キンッ! と、二つの槍の穂先を合わせた二人は、同時に槍を突き出した灰色の魔力を解放する。


「む!?」

「きゃ!?」

「むぐ!」


 瞬間、その場にいるリズと、先輩を背負っている僕の身体に覚えのある強烈な圧力が襲い掛かってきた。

この時、ウサトに背負われた状態の先輩も上からの圧力の影響を受けて別の意味で大変なことになっています。


今回の更新は以上となります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 入れ替わり立ち替わりの乱戦が楽しい
[良い点] 先輩は上からの重力によりウサトに抱きつくことを、強いられているんだ!
[良い点] スピンオフコミック絶対読みます! [一言] 今度は一人で多人数を相手に余裕で立ち回るんですねわかります
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