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第三百九十一話

お待たせしました。

第三百九十一話です。

 二か月ぶりのリングル王国は思ったほど変わった様子もなく、僕たちを迎えてくれた。

 変わらないリングル王国の町並み……ではあるが、今日初めてやってきたキーラにとってはなにもかもが新鮮な景色に見えていることだろう。


『わぁ、ここがリングル王国ですかぁ! 人もいっぱいでおいしそうなものがたくさんあります!』

「いいところだろう?」

『はいっ!』


 アルクさん達、護衛の騎士たちと別れロイド様の待っている城に向かう道中で、キーラが弾んだ声色を発しながらリングル王国の町並みを見まわしている。

 嬉しそうにしているキーラに僕も微笑ましい気持ちになる。


「到着してすぐに救命団に帰りたいところだけど、最初に城に行ってロイド様に報告をしなくちゃな」

「じゃあ、私は先に救命団宿舎にまで向かっているよ」


 ナギさんの声に僕は彼女へ振り返る。


「それならブルリンも一緒に連れて行ってもらってもいいでしょうか?」

「構わないよ。ブルリンもいいかな?」

「グルァ~」


 ブルリンもそろそろ限界っぽいからな。

 さっきからあくびばっかりしているし、放っておいたら眠ってしまいそうだ。


「じゃあ、私もカンナギについていく」

「アマコも?」

「新しくできた救命団宿舎を見ておきたいから」


 そういえばナギさんもアマコも新しい救命団宿舎のことは知らなかったな。

 すると、アマコの視線が僕が羽織っているマントの内側へと向けられる。


「キーラはどうする? 一緒に行く?」

「いや、キーラは僕と一緒に城までついてきてもらうことになる」

「……ローズさんの部下の人たちのこと?」


 察してくれたアマコに頷く。

 キーラのマントの中には六人分の棺がある。

 皆さんをちゃんと帰さないといけないので、キーラには来てほしいのだ。

 あと、魔王からこの子を預けられたことも伝えておかねば。


「それじゃあ、先に救命団に向かっているよ」

「スズネ達に帰ってるって伝えとく」

「ああ」


 アマコ達とその場で別れながら僕たちは城へと続く大通りを進んでいく。

 このまま城へ向かってもいいだろうけど、その前にこの通りには診療所があるのでウルルさんを送っていこう。


「なんだかものすごく長い間留守にしていた気分」

「二か月ですもんね」


 診療所はいつもと変わっていなかったが、二か月も間があいていたせいか僕でも懐かしく思えてしまう。


『ウサトさん、ここは?』

「診療所だよ。僕と同じ治癒魔法使いがいる場所で、君と年の近い治癒魔法使い、ナックが今修行している場所なんだ」

『ここが……』

「まずはお兄ちゃんの安否確認だね……!!」


 帰って最初にすることがオルガさんの安否確認とは……。

 早速ウルルさんが診療所の扉を開けようとする……が、それよりも先に扉が開け放たれ、奥から黒髪の少年が顔を出す。


「あ、お客さんですか! 今、オルガさんは治療中なので少し待———ウサトさん!!?」

「ただいま、ナック。元気にしているようだね」


 ウルルさんから僕を見て目を丸くするナック。

 声がはきはきしているし、何より対応に慣れているようにも見える。

 一目見てナックが精神的にも成長していることが分かる。


「皆さん! おかえりなさい!!」

「ただいま、ナック」

「うまくやれているようで安心したよー」


 ウルルさんがナックの頭を撫でまわす。

 それにあわあわと照れている彼に苦笑しながら、ふとこの場でキーラのことを紹介しちゃおうと考える。


「今のうちに軽く紹介しようか」

「え? なにをですか?」

「救命団で預かる子がいてね。キーラ、出ておいで」


 僕は軽くマントを開き、内側をナックに見えるように晒す。

 すると、マントの内側が水面のような波紋を生み、そこからキーラが顔を出す。


「はじめまして、キーラです」

「ま、マントから女の子が出てきた!?」


 上半身だけ姿を現したキーラにナックが驚く。

 そんな彼ににこりと笑みを浮かべながら、キーラは続けて言葉を発した。


「私がウサトさんの一番の弟子です」

「は?」


 そう言い放ったキーラはまたマントの中に沈み込んでしまう。

 突然の言葉に一瞬呆然としていたナックだったが、すぐに我に返る。


「き、キーラ?」

「ふぅぅ……なるほど、そういうことですか」

「え、ナック?」


 深いため息のあとに真顔になってしまったナックに戸惑う。


「とりあえず喧嘩を売られているのは分かりました」

「今ので……?」


 僕の一番弟子とかそうじゃないとかで問題が起こっているのか……?

 話を聞こうとしてもナックもキーラもちょっと影のある笑みを浮かべて聞き出せそうにないんだけど。



 その後、やはりオルガさんは治療中で手が離せないということで、いったんその場でナックとウルルさんと別れ、僕はネアとキーラの三人で城へ入ることになった。

 最初の報告は僕だけで済むので、キーラはネアと一緒に別室で待っていてもらい僕はロイド様が用意してくださった広間に通され、報告を行う。


「二か月もの間、ご苦労であったな。ウサト」

「はい。魔王領での任、無事に達成することができました」


 城の大広間で膝をついた僕にロイド様が労いの言葉をかけてくださる。

 ロイド様以外にはセルジオ様、ウェルシーさんがいるが他には人はおらず、どうやら人払いをしているようだ。


「ウサト、魔族の少女を連れてきたようだが……?」

「あの子、キーラは魔王に救命団に預けるように依頼された闇魔法を扱う子供です」

「……魔王殿が預けるということはなにかあるのだな」

「はい」


 ロイド様のお言葉に頷く。

 救命団に預けるように言われたがキーラは魔族だ。

 ロイド様の許可なしに勝手に住まわせるわけにはいかないからな。


「キーラの闇魔法は特別なもので優れた飛行能力とほぼ際限なく物を収納できる能力を有しています」

「なんと……」


 魔法として稀有な飛行能力と物体の収納能力。

 破格ともいえる能力にロイド様だけではなくウェルシーさんも驚いている様子だ。


「それに悪魔側が目をつけ、キーラに危害が加えられる前に魔王は救命団に預けようと考えたようです」

「物体を際限なく収納……それは、また凄まじい魔法ですね」


 ウェルシーさんもキーラの魔法の希少性を理解したようだ。

 限界はあるかもしれないが少なくとも僕と行動しているときはいくらでも収納していた覚えがある。

 でも魔法を解けば収納したものも吐き出してしまうので、永久的に収納できるわけではないが……とんでもない魔法ということに変わりはない。


「この城に連れてきた理由についてですが……悪魔から取り戻した団長の部下、6人の遺体をあの子に運んでもらっているからです」

「そういうことであったか……。よくぞ彼らを取り戻し、連れ帰ってきてくれたな……」


 六人の遺体を悪魔に操られていたことはロイド様も心を痛められていたはずだ。

 だから、ここに帰すことができてよかった……けれど、アウルさんも悪魔の支配から助け出さなくちゃいけない。

 相手が相手だからかなり骨が折れそうだけど。


「おぬしの帰還に合わせてファルガ様から話があるようだ」

「ファルガ様から……はい、分かりました」

「うむ、ではウェルシー、頼む」

「かしこまりました」


 ロイド様の言葉に頷いたウェルシーさんが大広間に設置されている真新しい泉に魔力を流す。

 すると、泉に施された魔術が発動し水面が溢れるように鏡を形作り、そこに青い龍——ファルガ様の姿を映しだした。


『リングル王国に戻ったな』

「はい。ファルガ様」

『魔王領で起こったことは魔王から聞いている。……どうやら、厄介なことになっているようだな』


 厄介なこと、というのは悪魔ではなくシアのことを言っているのだろう。

 そして広間で人払いをしている理由を察する。


「籠手を奪われてしまい申し訳ありません……」


 まずはシアに籠手を奪われてしまったことを報告して謝罪する。


『気にするな。籠手以上に貴様自身の方が重要且つ希少だ』

「なんか言い方おかしくないですか……?」


 希少て。

 水鏡の先で少しだけ瞳を細めたファルガ様は軽く吐息を吐き出すように言葉を発する。


『ウサト、貴様の力は我の武具を失っても尚、陰りはない。それは悲観することではなく誇るべきことなのだ。———まさしく、人が神龍の力に頼ることなく歩みを進めたという証明に他ならないのだからな』

「……はい」


 ファルガ様の賛辞の言葉に頷く。

 神龍の力に頼ることはない、か。


『逆を言えば、神龍の力を自ら求めることは悪い因果を引き寄せることになるとも言える』

「……それが、今のシアだと?」


 ファルガ様からの返答はない。

 多分ファルガ様が漠然と感じていることなのだろうと考え、僕は話を進めることにする。


「ファルガ様は、シアの内にいる何者かに心当たりはありますか?」

『シア・ガーミオの肉体に憑りついた悪魔。ヒサゴの記憶が変容したもう一つの人格。魔術を操る別のなにか……推測はできるが確証がないのは現状だ』


 魔王の言っていたことと大体同じ感じか。

 魔王にもファルガ様にも正体を悟らせないとか、シアの中にいる誰かは相当うまい立ち回りをしているのかもしれないな。


「シアの故郷であるカームへリオに何か手がかりがないかと僕は考えています。シアから聞いた話では、彼女はヒサゴさんの遺体を見つけているということなので」

「せ、先代勇者の遺体ですか……!?」


 ウェルシーさんの驚く声を聞きながらファルガ様を見ると、彼も思案するように目を瞑っている。


「悪魔と遭遇する危険もあるので、できれば僕自身が向かいたいのですが……」

「うぅむ、ファルガ様。カームへリオに理由なくウサトを派遣させても問題ないですかな?」

『ないかあるかでいえば、ある、だな』


 ? なにかあるのだろうか?

 思いつくものがあるとすれば先輩と僕のカームへリオでの噂の件だけど……。


『お前は名が知れている上に勇者と縁が深い立ち位置にいる人間だ』

「……勇者信仰の篤いカームへリオでは身分を隠して動くのは難しいということですか?」

『ああ。かといって他の者を向かわせるにはあまりにも危険だろう。生半可な者が悪魔に影響されれば傀儡となって戻ってくる可能性すらある』


 勇者と関わりが深いから難しいのか。

 僕が単独で動いているのがバレればカームへリオになにかがあると周囲に勘繰られるし、なにより悪魔に気取られ、それか呼び寄せてしまうかもしれない。

 沈黙に包まれる広間。

 その中で何かを思いついたのかロイド様がファルガ様が映し出されている水晶に顔を向ける。


「ならば、勇者集傑祭にウサトを同行させることはどうでしょうか?」

『ふむ……なるほど、その手があったか』


 ゆうしゃしゅうけつさい……?

 首を傾げる僕にウェルシー様が教えてくれる。


「勇者集傑祭とはカームへリオで行われる祭典です」


 祭典っていうとお祭りみたいなものなのかな?


「各国の勇者の称号を持つ者を国に招待し、祝いの宴を開いて勇者への信仰と感謝をささげる祭りのようなものなんですよ」

「その勇者集傑祭というのが近々行われるということですか……?」

「本来は既に行われているはずだったのですが戦争が起こっていたので、各国が落ち着きを取り戻したことで祭典の開催が予告されたというわけなんです」


 なるほど……。

 カームへリオも力を貸してくれていたわけだから祭りとかそういうことをしている場合じゃなかったんだな。

 でも勇者集傑の同行ってことは勿論それに勇者が参加することになるんだよな……。


「勇者の同行といいますと……先輩とカズキと?」

「そのどちらかとになる。こればかりは二人の意思を確認しなければならないな」


 こちらの都合で振り回しちゃう形になってしまって申し訳ないな……。


「本来はリングル王国は参加しない方針で決めていたが、勇者の力を持つ少女の手掛かりを見つけるためだ」

「感謝します」

「いいのだ。恐らく、シア・ガーミオと悪魔の問題は放置していい問題ではない」


 ロイド様からの強い信頼を感じる。

 その信頼に応えられるように僕は今一度気を引き締めるのであった。



 ロイド様もお忙しい身なので、重要な報告だけ行い謁見は終了した。

 僕としては魔王領で部隊を鍛えたことや、ニルヴァルナ王国のセンリ様のことなどを伝えたかったのだけど、さすがに情報過多すぎるということなので改めて報告書で提出するということになった。

 その際にローズの部下達の納められた棺を一時的に安置する場所を用意してもらった。


「これで全部ですね」

「ああ、お疲れ様、キーラ」


 城内の一室。

 後で正式な手順で埋葬するというので一時的に用意されたこの部屋で、六つの棺を安置した僕は改めてそれらを確認しながら一息つく。


「さっ、そろそろ帰りましょ」

「そうだね。キーラに宿舎を案内しなくちゃ」


 キーラも慣れない場所に来て疲れているだろうから休ませてあげないとな。

 肩にいるネアの声に頷き、部屋から出よ———、


「おう、帰ってきたようだな」

「……!?」


 後ろからの突然の声に扉のある背後へと振り返る。

 そこには僕の師匠であり上司であるローズがいた。

 彼女の登場に驚きながらも背筋を伸ばす。


「団長、どうしてここに……」

「ロイド様から知らせを受けてな。こいつらを連れ帰ってきたんだってな」


 ゆっくりと部屋に歩いてきた彼女は棺に軽く触れる。

 そのまま短い沈黙と共に目を伏せた彼女は、すぐに僕を見る。


「よくやったな、ウサト」

「……ですがまだアウルさんが」


 そう言ってくれるがこの場に一人足りない事実に非常に申し訳なくなる。

 本当ならアウルさんとローズを会わせて、話をさせたかった。

 そんな考えが顔に出ていたのか呆れたため息をついたローズは———唐突に僕の頭に拳をハンマーのように叩きつけてきた。


「いっ!?」

「思いつめすぎだバカ。お節介がすぎると逆にうざってぇぞ」

「いや、そこまで言いますか……?」

「ハッ」


 肩を落とす僕の頭をがしがしと乱暴に撫でたローズは次にキーラに視線を移す。

 僕の団服の裾を掴み委縮した様子のキーラを興味深そうに見た彼女は、視線を合わせるように中腰になる。


「救命団団長、ローズだ。お前が魔王がうちに預けた小娘か?」

「は、はい……」


 肉食獣のような気配を纏うローズに、キーラは石像のように固まりながらも必死に視線をそらさないようにしている。

 十秒ほどの短い沈黙の後、上体を起こしたローズは軽いため息をついた。


「お前は本当に誰彼構わずうちに連れて来るなァ、オイ」

「そこらへんも師匠に似たんじゃないですかね」

「口が減らねぇ奴だな、全く」


 強面たちや僕を見ると、この人も僕のことをあんまり言えないと思うんだけど。


「こいつは救命団の預かりになる。訓練に参加するのもしねぇのも本人の自由だが、どうする?」

「キーラ、無理に参加しなくても———」

「やります」


 即答!? いや、素養はあるけれどもっと考えてから答えを出してもいいと思うんだけど。

 決意は固いのか、強い意志を見せたキーラは僕を見上げる。


「私、ずっとウサトさんの背中を見てきましたから。私もその道を進んでみたいんです」

「……分かった」


 言葉は違えど、今のキーラはルクヴィスでのナックの姿と重なった。

 そこまで言わせてしまったなら、僕はもう止めない。


「宿舎に連れ帰ったら案内させておけ」

「ネア、頼めるかな?」

「いいわよー」


 それじゃあキーラも訓練に参加することになるのか……。

 そこらへんはローズに任せるか。

 ナックと同様にキーラもまだ子供なので成長に合わせた訓練をさせなきゃ後々影響しちゃうからな。


「先に帰っていいぞ」

「団長は?」

「私は少しここにいる」

「了解です」


 色々と思うところもありそうだからな。

 ローズの心情を察して僕はキーラと共に部屋を出ていく。


「……すごい人でした」

「あの人が僕の師匠だよ」

「分かる気がします。ウサトさんとそっくりでしたから」


 それはどういう意味のそっくり……?

 人相? オーラが?

 とりあえず城を出る前にキーラにマントに潜ってもらい……いや、このまま空を飛んで救命団宿舎まで向かっちゃうか。

 幸い、周りに人気はないしそれほど注目されないだろ。


「よし、飛んで帰るか」

『え、いいんですか? 街中で』

「ここの人たちは日々鍛えられているから、ウサトが空飛んだ程度で騒いだりはしないわよ」

『鍛えられてるってどういうことですか……!?』


 そうと決まれば城門の前で軽くかがみ———跳躍と共に空へと舞い上がる。

 都市そのものを見下ろせる位置にまで上昇し、とどまった僕は救命団がある方向を見据え降下しながらそこへ飛んでいく。


『あそこが救命団ですか!!』

「自然があふれた良いところだよ。同僚たちもたくさんいるし、君の知っている人もいるよ」


 とりあえず着地しやすい訓練場に降りようか。

 ……ん? 訓練場に誰かいるな。


『おい、スズネなにしようとしてる』

『むふふ、ウサト君が帰ってくるとなれば私も相応の出迎えをしなければならないと思ってね……!! 独自に習得した系統劣化によるニューミラクル最強必殺モードでウサト君を驚かせてやるんだ……!!』


 先輩とフェルムか?

 ちょうどキーラのことを話せるし、彼女たちの近くに着地しよう。

 ……ん? なんだ? 遠目で見えるフェルムの影が揺らめいているような気が……。


『あれ? フェルム。君の魔法が動いているけどどうしたんだい?』

『———ッ!!? いや、ボクはなにもしてな———』


 瞬間、フェルムの足元から間欠泉のように溢れだした闇魔法の魔力が一直線に降下している僕へと向かってくる。


「ウサト!? なんでかフェルムの魔法が向かってくるわよ!?」

『ど、どどどどうしますか!? ウサトさん!?』


 慌てるネアとキーラだが僕はこの現象に見覚えがあったので冷静だった。


「あー、これはキーラの時と同じだな」

「貴方落ち着きすぎじゃない!?」


 とりあえず先輩たちの方に落下しながら掌を突き出し、フェルムの闇魔法を受け入れる。

 瞬間、闇魔法が僕の着ている団服、両腕、両足を覆い同化状態へと変化する。


「丁度いい!!」


 黒い闇魔法に包まれた四肢を確認すると同時に、魔力を込め———勢いよく地面に向けて暴発させる。

 逆噴射で衝撃を抑え、一気に減速した僕はそのまま地面に拳を打ち付けるように、先輩とフェルムの前に着陸する。


「ぬぅん!!」

「「え?」」


 完璧な着陸だな……!

 完全に威力を減衰し、砂煙すらもあげずに綺麗に着地した僕は満足しながら二人へ振り返り、軽く手を掲げて見せる。


「ただいま!!」

「あ、え、おかえり!! ……って違う!! う、ウサト君? その姿なにウサトくんなのかな!?」

「うぐぉぉぉ、とうとうボクの魔法がまるごと動きだしたぁぁぁ……!!」


 当然困惑しているようだ。

 フェルムに至っては顔を両手で覆いながら地面でもんどりうっているほどだ。


「闇魔法二つ取り込んでいよいよ人間離れしてきたわね……今まで籠手一つでやってきた空中移動がもっと複雑になったってことだし……」


 この場にコーガがいれば完璧だった……!! ってのは冗談だけど、まずはフェルムの魔法を解除し、彼女に返しながらキーラの闇魔法のマントの端を掴む。


「キーラ、ここなら出ていいよ」

『はいっ』


 まずはこの混乱を収めるべく、僕は右手でつかんだマントを開く。

 それに合わせてキーラがマントの内側から勢いよく飛び出し、挨拶する。


「お久しぶりです!! スズネさん、フェルムさん!?」

「「ええええええ!?」」

「今日から救命団でお世話になります!!」

「「ええええええ!?」」


 ……これ余計に混乱させてしまっただけか?

 いや、そういえばキーラが闇魔法のマントに入れるようになったことを知らないし、救命団に預けられるという話も多分聞かされていないのだろう。


「ウサト君、このぉ! 私が君にサプライズをする前にやってくるなんて……しかも空からやってくるなんてそんなに私に会いたかったってことなのかい!?」

「そうですね」

「え、あ、ほ、本当に……?」


 一瞬で素に戻って照れないでください。

 なんか少し見ない間に会話の打たれ弱さに磨きがかかっているような……。


「おい、ウサト。帰ってきたのはいいがどうしてキーラがここにいるんだよ」


 混乱から我に返ったフェルムの言葉に、まずはキーラが救命団に預けられることになった経緯を説明する。


「……そういうことなら、許す。別にお前が連れてきたわけじゃないからな」

「明日から私も訓練です!!」

「ウサト、お前許されると本気で思っているのか? おい」


 ねえ、5秒前と言っていること全然違うんだけど。

 一瞬で前言撤回されたんだけど。


「……待て。重要なことを忘れているぞ、フェルム」

「一応、聞いておくけどなんだ?」


 無駄にシリアスな雰囲気で呼び止めた先輩に、フェルムは訝し気に振り返る。


「キーラは女の子。つまり救命団宿舎での生活をすることになる。つまり一つ屋根の下ということだ。それがどういうことか君にも分かるはずだ」

「そうか。もう喋らなくてもいいぞ」

「くぅーん」


 ……なんというか、こういうやり取りを見ているとリングル王国に帰ってきたんだなぁって思う。

 魔王領での生活も楽しかったけれど、やっぱりここでの日常は僕にとっては一番性に合っているのかもしれないと改めて思うのであった。


久しぶりの先輩とフェルムでした。

キーラの魔法にフェルムの魔法が合わさるとさらに変な動きが可能になるウサト……。


今回の更新は以上となります。

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― 新着の感想 ―
一番弟子では無く、一番の弟子か、、。キーラも巧い事を言う(笑)
[一言] 真っ黒のイカつい全身装備に黒マント……完全に暗黒系のナニカだ というか、神龍製装備よりも闇魔法セットの方が余程チートなんだよなぁ 浮遊型飛行能力付きの収納マントに仲間で能力拡張する全身可変タ…
[良い点] 絶対スーパーヒーロー着地してる……
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