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第三百七十九話

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

2022年も治癒魔法の間違った使い方をよろしくお願いします<(_ _)>


そしてお待たせいたしました。

第三百七十九話です。

 約二週間にも及ぶ探索を終え、ヴェルハザルに帰還した。

 都市の人々に出迎えられた僕たちは一時的に解散することになり、僕はコーガと共に魔王のいる元魔王城……もとい館へと向かうことになった。

 多少なりとも叱責される覚悟はしているので、やや緊張しながら魔王に魔物の領域で起こったことを報告すると———、


「もしかすると、お前は私を笑い殺そうとしているのか?」


 思っていた反応と真逆のものが飛んできた。

 ひとしきりあくどい感じで笑った魔王は、椅子のせもたれに背中を預けながら僕とコーガに口を開いた。


「私の力が奪われたことはまあ別にいいだろう。話を聞く限り、内包する魔力をほぼ使い切らせたようなものだからな。しばらくはまともに扱えんはずだ」

「しばらくしたらまた使えるんですか?」

「それなりの時間はかかるだろうがな」


 確かにカイラを倒すために魔王の魔力を使わせ続けて、あの魔王の力の断片はほぼ力を失いかけていたな。

 無力化するという意味では任務は達成していたのかもしれない。


「……だが、力が枯渇したとしても受け皿(・・・)としては使えるだろう。その可能性についても考えなくてはな」

「それはどういう……」

「お前たちが暴走した悪魔を打倒することまでが敵の計画だった、という可能性があったということだ」


 ありえない話じゃないな……。

 カイラは精神的にも錯乱状態にあったし、シアになにかしらの精神攻撃をうけていてもおかしくはない。

 ……あまり考えたくない可能性だけれど。


「闇魔法を持つ魔族とエルフの混血という存在そのものが驚きではある。恐らく迫害されていた闇魔法を持つ魔族が魔物の領域に逃げ、その末に森の奥底に住むエルフと共存した結果現れた存在だ。で、その娘とお前はなにをした?」

「……。ちっちゃい獅子になってもらい一緒に戦いました」

「コーガ」

「嘘つくなよ、ウサト。闇魔法の炎を爆発させた加速で飛びまわっていたじゃねぇか」


 横で訂正してくるコーガに呻く。

 そんな彼の補足を聞いた魔王の侍女、シエルさんが魔王に小さな声で話しかける。

 

「魔王様、炎を爆発させて加速ってなんですか? 私ちょっと意味が分からないのですが……」

「シエル。想像してみろ。火薬を抱えて炸裂させると吹き飛ばされるだろう? それだ」

「えー……」


 シエルさん、僕は何度貴女にそんな視線を向けられればいいのだろうか。


「いよいよお前に闇魔法使いを預ける計画を推進していくことも考えなくてはな」

「冗談ですよね?」

「冗談ではなくなりかけてはいるな。以前よりは少なくはなったが今でも闇魔法使いを忌避する者は多い。彼らの受け皿になる組織、ないしは場所が必要だ」


 ……え、これ本当に考えてない?

 普通に真面目に考えている魔王に僕も少しだけ焦る。


「どちらにしろ当分は先の話だ。お前にはまだまだやってもらわなければならない仕事が多すぎる」

「……そうですね」


 やるべきことが多い。

 それはそうだ。


「また話は変わるが……」


 魔王の視線が僕の右腕へと向けられる。

 正確には失った籠手にだけど。


「籠手も奪われたのか? お前ほどの奴がか?」

「光魔法の系統強化で、ですね」

「ならば籠手で済んでよかったな」


 僕も今そう思っている。

 奪われるのが僕の治癒魔法やより重大ななにかだったら大変だったからな。

 ……シアの系統強化が不完全だったからできなかっただけかもしれないが。


「籠手を奪われてなにか支障はあるか?」

「いえ」

「だろうな」


 なにが面白いのか口元に笑みを浮かべながら魔王が椅子に深く腰掛ける。


「元より神龍の武具の本質は所持者の“成長を促す”ものだ。いずれは必要となくなり、ただの便利な武具になるだけのものに過ぎん」

「ファルガ様が聞いたら怒りそうですね……」

「むしろ奴は笑うだろうよ。人間が神龍の力に頼ることもなく自らの力で進むことができる証明にもなるから、な」


 そういう考え方もあるのか。

 カズキの籠手と先輩の刀、そしてレオナさんの槍も同じようなものなのだろうか。

 いずれは武具なしでもできるようになる力———いわば可能性の先取りのようなもの。


「だがシア・ガーミオの中にいる何者かがお前の籠手を欲しがったということは、奴には自身の光魔法を補助する武具が必要だったんだろう」

「相対した限り、彼女の実力自体はそれほど高くは感じませんでした。系統強化も……無理やり発動していたようなものだったので……」

「シア・ガーミオそのものも未完成、とでもいうべきか。完成形がヒサゴのような常軌を逸した存在でないことを願うばかりだが……」


 シアの系統強化は未完成なままだった。

 無理に系統強化を行ったために傷ついた腕から血を流していた彼女の姿は今でも覚えている。


「シアを操っている存在を引きはがすことはできますか?」

「今の時点ではなんとも言えんな」


 僕の問いかけに魔王は答える。


「いくらこの私でも無条件に取り憑いた何か(・・)を引きはがすような真似はできん。まずは捕まえることが先決だ」

「……分かりました」


 多少強引でもあの時シアを捕まえるべきだったか……?

 いや、それで彼女を死なせてしまう可能性もあった。

 ……もしものことばかり考えるべきじゃないな。


「子細については改めて報告書で確認するとしよう」

「了解です」

「ん? いいや、報告書に関してはお前の補佐をしているハンナに任せてある。聞いていなかったのか?」


 そうだったのか。

 僕としても助かる話だけど、ハンナさんも一言くらい言ってくれてもいいのに。


「でも僕とコーガも報告書くらい書けますが……?」

「いや、俺は報告書下手くそだぞ」


 なんで君が第二軍団長をやれていたか疑問でしかないんだけど……?

 もしかして部下任せにしてた……?


「お前たちは少しは休息でもとっておけ。特にウサト、治癒魔法で体調だけは取り繕っても疲れているのは分かるぞ」

「……分かりますか?」

「私を誰だと思っている」


 魔王でしたねー。

 確かに彼の言う通り僕も結構疲れている。

 探索中に休息はとっていたものの気を休ませる暇がほとんどなかったからなぁ。それに、隊を預かる副隊長として緊張していたことも確かだ。


「……ではご厚意に甘えて休ませていただきます」

「うむ」


 今日はアルクさんの宿舎を利用しようか。

 さすがにコーガの部屋にお邪魔するのは気が引けるしな。

 ……っと、その前に、魔王にお願いしたいことがあったんだ。


「魔王、一つ頼みがあります」

「なんだ?」

「取り戻した遺体を納める棺を用意してほしいのですが……」


 さすがにこれは確認をとらなきゃな。

 いつまでもキーラのマントにいてもらうのも申し訳ないし、リングル王国に帰るまでアウルさんの同僚たちを安置する場所を用意しておかなくちゃ。


「ならばこちらで手配しよう」


 事情を理解してくれた魔王はシエルさんに伝言を伝える。

 それからいくつか確認をとった後に僕とコーガは魔王のいる執務室を退出した。



 魔王のいる館を出ると入口にはキーラとアマコとネア……そしてセンリ様がいた。

 多分、僕たちが帰ったことを聞いて文字通り飛んできたのだろう。

 彼女はコーガを見つけるなり満面の笑みのまま―――コーガ目掛けて飛びかかってきた。


「コーガさん!」

「危ないコーガ! 治癒ガード!!」

「ウサトてめっ!? おばぁ!?」


 即座に逃げようとするコーガの肩を掴み、センリ様の飛びかかりの軌道上に移動させる。

 そのまま彼女の抱擁を受ける彼を見届けながら、僕はアマコたちの元へ近づく。


「ごめん。待たせた」

「ううん、大丈夫」

「ナギさん達は?」

「先に宿舎に荷物を運んでいってもらった。私はここでウサトを待ってた」


 先にキーラのマントから普通の荷物は下ろしていたんだな。

 相当な量だっただろうけど、ナギさんの力なら楽勝そうだ。


「それで、魔王への報告はどうだった?」

「とりあえず笑われたよ」

「だろうね」

「笑わない方がおかしいわ」


 このアマコとネアの反応よ。

 フクロウに変身したネアが肩に乗ったところで、キーラに話しかける。


「キーラ、魔王に棺を用意してもらえたからそこに遺体を納めよう」

「はい。分かりました」

「……ごめんね。君に運ばせるようなことをして」


 いくら特殊な術を施されて人形みたいにされているとはいえ、遺体を運んでいるのだ。

 そのことにキーラは少しも不満な様子を見せず、それどころか笑みを浮かべて首を横に振る。


「ウサトさんが謝ることなんてなにもないですよ。私は大丈夫です」

「強いな、君は」

「本当にしっかりしてるわねぇ、この子」

「えへへ」


 感心したのかアマコがキーラの頭をなでる。

 それに気持ちよさそうに目を細めた彼女を見つつ、次にセンリ様にホールドされているコーガへ意識を向ける。


「おかえりなさいませ、コーガさん! この私、貴方様の帰りを一日千秋の思いで……!!」

「たった二週間ぽっちだろうがよぉ!?」

「この私を待たせた罪でもう結婚では?」

「罪に対しての罰が重すぎる……!!」


 フルスロットルだなぁ。

 しがみつくセンリ様を一生懸命引き剥がそうとしているコーガを見て苦笑いする。


「ウサトさんもおかえりなさいませ!」

「はい、ただいま帰還いたしました。僕たちが留守の間になにか変わったことでもありましたか?」


 まあ、魔王がいるのなら大きな騒ぎは起こっていないのは分かり切っているけども。


「そうですね。リングル・ニルヴァルナの派遣された人員で魔族の方々のお手伝いなどをしました」

「そうでしたか。もしかしたらウルルさんも?」

「はい。彼女も率先して魔族の方々と交流なさっていました。ふふふ、お友達にもなっちゃいました」


 王族と普通に友達になってしまうとは、やはり恐ろしいコミュ力の持ち主だな……ウルルさんは。

 でも彼女も元気そうでよかった。

 今日はアルクさん達のいる宿舎に泊まる予定なので、ウルルさんからも色々と話が聞けそうだ。


「では僕たちはこの後することがあるので……」

「おい待て、ウサト。この状況の俺を置いていくのか?」


 がっしりとセンリ様に腕を拘そ……抱きしめられたコーガが僕に助けを求めてくる。

 まったく、その気になれば振り払えるのに……素直じゃないなぁ。


「え、いや……ここで割って入っても僕じゃどうすることもできないし……」

「こういう時だけ常識人になるのやめろよ!! いつもみてぇに変なことしろ!!」


 そんな無茶な。

 ぶっちゃけると、ここでセンリ様とコーガの間を邪魔しても普通にセンリ様が荒ぶって、その末にコーガが酷い目に遭うだけなのでここは素直に彼女のしたいようにさせるのが正解だと思う。

 と、いうことで僕はコーガとセンリ様に手を振りながらその場を後にするのだった。

変な時にだけ常識人になるウサトでした。


次回の更新は明日の18時を予定しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] センコーてぇてぇなあ( *´﹀`* )
[一言] 治癒ガード万能ですね。 ネアが近くに居れば、治癒吸着拳ができたんでしょうけどね。 残念ですw >変な時にだけ常識人になるウサトでした。 戦友を見捨てるのが常識なんですかw
[良い点] 篭手を奪われたことへの感想が即答なの笑うwww ウサトの報告を聞いてみたいわw 端的に「そこは飛んで進みました」とかなのか 「○○さんに怖がられて…」とかなのか 「治癒○○を試しました」…
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