第三百七十話
二日目、二話目の更新となります。
前話を見ていない方はまずはそちらをー。
前半にてアマコ視点
後半からウサト視点でお送りします。
ウサトと別れて遺跡に入ってから少し時間が経った。
その間、私達は無駄な戦闘を避けてこの試練と言う名の迷宮の中を進んでいた。
「アマコ、こっちに罠ある?」
二つに分かれた道を前に私の肩に乗っているネアがもう片方の道を翼を向ける。
「……。うん、落とし穴がある」
「じゃあやっぱりこっちね」
予知魔法で見た結果を伝えると予想通りといった表情でネアが反対の方向に進むように促す。
そちらに進んでみると罠はなく、どうやら正解のルートのようだ。
「ネアさんはどこが正しい道なのか分かっているのですか?」
スムーズに道を選んでいくネアにさすがに疑問に思ったのか、傍で警戒をしていたコーガの部下、ノノさんがそんなことを尋ねた。
「正しいかはどうか分からないけど、危険かどうかは分かるようになってきたわね。ある程度の規則で配置されているようだし、なによりアマコの予知魔法で確認することができるから」
「へぇー」
「あと罠にかかったとしてもカンナギとコーガがいるから間違っても大丈夫」
「二人とも頑丈だもんね」
「頑丈でも心はあるんだぞ……?」
私の呟きにコーガがげんなりとした様子で肩を落とす。
カンナギも苦笑こそしているが納得はしているようだ。
「そもそもこの遺跡は侵入者を試す目的があるようだからヒント自体はところどころにあるのよね。ここまで朽ちてなければ謎解きも楽しめたんだろうけど……」
ネアが翼を添えた壁には特徴的な絵と文字が描かれている。
恐らくこれがネアの言うヒントなのだろう。
「でも道を間違うと大変ね」
「間違うとどうなるんだ?」
コーガの質問にネアは答える。
「大量の魔物とその中の何百年も生きた個体と戦わされたり、一方通行の行き止まりに当たったりするわ」
「うわぁ、面倒くさそうだな」
「実際面倒くさいわよ。だって道を間違えた者には死に値する試練を課しているんだもの。まあ、それでも突破した場合のことは考えているようだけど……」
今、後ろでヴィーナが小さな声で「え、楽しそう……」と呟いたのを私の耳は聞き逃さなかった。
やっぱりこの悪魔だけ色々とおかしいのでは? と思ってしまうが、その隣で聞こえていただろうエルさんが無反応なのであまり触れないでおこう。
「では副隊長は危険なのでは?」
コーガの部下の一人、セインさんがそんな疑問を口にした。
そんな言葉にネアは首を横に振る。
「そう簡単に死んだりしないわよ。今のあの人、変態染みた開発力で身体の内側の魔力操作に関しては世界一といっても過言ではないわ」
因みに外側の魔力操作は光の勇者だけどね、とまで口にしたネアは理解が及ばないと言った表情をしているセインさんへと振り返る。
「そもそもカンナギとコーガと同じで元から頑丈だし。……というより、今も元気で動き回ってるわよ」
「は、はぁ……」
使い魔の感覚で分かるのかそう言って苦笑するネア。
ウサトも大丈夫そうだし、私達も早く進まなくちゃな。
「アマコ、焦る必要はないわよ」
「うん」
「私たちは正解のルート。つまり最短の道を進んでいるの。目的地はもうすぐそこよ」
ネアの言葉に頷く。
焦りは禁物だ。
私は冷静に予知を使って皆を安全に進ませることが仕事なんだ。
●
スケルトンの数が尋常じゃないくらいに多い。
倒しても倒してもキリがないし、時折不意打ちをしてくるアウルさん達の攻撃にも気を張らなきゃいけないので状況的にはかなり面倒くさいことになっている。
「ルーネ、キーラ! あれをやるぞ!!」
『はい!』
「おう!」
『あれ!? あれってなんですか!? キーラちゃん、ルーネちゃん!? なんで私だけ分かってないんですか!?』
背中に戻した箱の中にいるハンナさんが困惑の声を上げているが、説明したところでパニックになるだけなのは分かっているのでスルーする。
マントの端を地面に突き刺すように変形させながらルーネの青黒い炎を纏う。
「キーラ、僕の合図で行く!」
『分かりました!』
「ルーネ、魔力の暴発を!」
「任せろ!!」
ルーネの魔力の暴発による超加速。
青黒い魔力が光を放ち、ロケットのような推進力となって僕の身体を前へ前へと推し進めようとする。
尋常じゃない負荷が踏ん張っている両足と地面に突き刺したマントから伝わってくるが、まだ足りない。
『え、え、怖い。なんか箱の外から、ごぉぉぉ!! とか、ぎりぎりぃ!! って音が響いてくるんですが? あっ、キーラちゃんベルトありがとう。こんなに身体を固定するような感じで……』
短い沈黙の後にハンナさんの声が震える。
『ウサト君? ……今からなにするつもりなんですか?』
「舌を噛まないように気を付けてください」
とりあえず絶望の声を口にするハンナさんに忠告しつつ全身に力をいれ前に飛び出さないように踏ん張る。
二回———三回目の暴発。
それにより最大にまでパワーを上げに上げたところで、マントを地面から離し、僕自身も全力で前へと飛び出す。
「ぬぅん!!」
溜めに溜めた勢いのまま弾かれるように加速しながら、キーラと共にマントを大きく広げるように変形。
そのまま旋回、遠心力に任せてスケルトンの大群に体当たりを叩きつけ一気に吹き飛ばす。
「ルーネ!」
「だんだんお前のやりたいことが分かってきた!! こうだな!!」
一斉に壁に叩きつけられ骨の山を作り出したところで、手の中に作り出した治癒爆裂弾にルーネの炎を纏わせ———それを思い切りスケルトンへとぶん投げる。
「黒炎治癒爆裂弾!!」
黒い炎に包まれた爆裂弾はスケルトンの山に着弾すると同時にその炎を周囲にまき散らし、延々と再生し続けるスケルトンの骨そのものを燃やし尽くす。
「ッ、悪辣な罠だな」
魂のない亡骸、というのは分かっている。
でも骨の姿という点でサマリアールの魔術師に縛り付けられていた魂たちのことを思い出してしまう。
今はあの人たちも魔術師の呪縛から解放されたけれど、同じようなものを見せられて何も思わないはずがない……!!
『ウサトさん!』
「ああ」
背後からの奇襲をキーラがマントで防ぎ、僕は振り向きざまに治癒連撃拳を叩きこむ。
拳を受けたアウルさんの同僚の一人、ギルグさんは無表情のまま地面へ叩きつけられながらもそのまま立ち上がる。
「アウルさんだけじゃなくて、皆さんとも話してみたかったな……」
でもそれは叶わない。
この人たちの魂はここにはない。
亡骸を身勝手な理由で使われ動かされているだけに過ぎない。
「ルーネ、一旦ハンナさんと一緒に」
「え、なんで? わっ」
背中の箱にルーネを放り込んだ直後に僕の身体を白い煙が覆い、次に強烈な音が叩きつけられる。
ルーネにこの攻撃は防げないので今は休憩してもらおう。
「ナルカさんに、ベスさんか」
どちらも風系統の魔法。
音と煙という違いこそあるが組まれれば問答無用で視覚と聴覚を阻害される対生物に特化した厄介なものだ。
……治癒感知を会得する前の僕だったらきっと苦戦を強いられていただろう。
「そして、ジョッシュさんの土系統の鉄の魔法」
白煙の中から触手のように伸びてくる複数の鉄の槍。
生き物のように迫るそれを避けると、次に迫るのは頭上から降り注ぐ熱湯。
「ギルグさんとクリスさんの合わせ技」
火炎系統の熱と水系統の魔法を組み合わせた範囲攻撃。
「治癒爆裂波!」
掌から衝撃波を発して熱湯を弾きつつ、近くにまで迫っていた最後の一人———小柄で目元を隠した男性、ディンさんの腕を掴み取る。
「……少しナックに似てる」
髪色が全然違うけど目元を隠しているところとか印象はそっくりだ。
そんなアホなことを呟いていると、目の前で拘束を解こうともがいているディンさんを———横から飛び出してきたアウルさんが蹴り飛ばした。
「ディン!! お前は貧弱だから率先して攻撃するんじゃない!!」
「仲間を足蹴にするとは何事ですかァ!!」
「えええええ!?」
いや、同僚のノリでやるなら分からなくもない。
むしろピンチに陥っている強面たちを見たなら僕も蹴り飛ばしてでも助けようとはするだろうし。
「治癒爆裂弾!!」
「本当に遠慮ないっすよねぇ! 君!!」
僕の投げつけた爆裂弾に対して魔力を纏わせた左手を振るうアウルさん。
普通ならそこで炸裂するはずが、どういうわけか僕の爆裂弾は左手に弾かれ逸れるように斜めへと飛んで後方で爆発してしまった。
「なっ!」
「君ばっかりが技を見せるわけじゃないっすよ!」
纏わせた衝撃魔法を流動させて、僕の治癒爆裂弾の流れに合わせた……!?
「魔力の流れを見切って、魔法で弾いて逸らした……!?」
「……。えっ、今ので種が分かったんですか?」
「さすがだ……!」
「い、いや、レアリにバレないようにこっそり教えるはずが……まあ、結果オーライか……」
治癒弾きとは違う、新たな防御方法か。
咄嗟には使いにくいだろうけど、強力な攻撃に対しての防御手段にはなりそうだ。
「じゃあ、こっからが練習ですね!」
「はい!」
互いに爆発する魔力弾を作り出し同時に投げつける。
交差し、こちらに迫るソレを魔力を纏わせた左手で触れ———そのまま流しながら斜めに逸らす。
「ッ、難しい!」
「ほら、対処しないと追いつめちゃいますよぉ!!」
宣言通りにどんどん衝撃魔法が投げつけられるが、こちらも負けずに投げつける。
周りは気にしない。
僕もアウルさんも練習がてらにスケルトンの迎撃ついでに爆裂弾を周囲にまき散らしているからだ。
「アウルゥ!? こっちに飛んできてるから!? きゃあ!?」
「すみません! 戦闘中なので下がってくださいねぇ!! ははっ!!」
「満面の笑みなのおかしくない!?」
本当に楽しそうに笑っているな……。
よほど今の悪魔に操られている状況が気にいらないようだ。
「この技、この身体になったときに編み出した技なんですよ。この身体じゃ今の今まで使う意味はそんなになかったわけですけど」
「! そう、ですか」
「ネロ・アージェンスに殺されたとき、私は彼の攻撃を防ぐことができなかった。そのせいで隊長の心に深い傷を残してしまったし、私もあっさりと死んじゃったもんですから……」
魔力を纏わせた左手を見ながら彼女は儚げに笑う。
「私と同じことにならないように生きている君にコレを教えることができてよかったです」
「アウルさん……」
「これで悔いなくあの世にいけます」
「え、いや。団長の前に貴女を引きずりだすのは決定事項なのでそれとこれとは話は別ですが?」
「いい話風に終わらせてくれませんかねぇ!? 意思が固すぎる!!」
話は分かったが、僕の最終的な目的は変わりません。
そう改めて宣言し、追加の爆裂弾を放り投げようとしたその時———治癒感知が奇妙な反応を察知する。
「ッ!」
『ウサトさん?』
「なにか来る!!」
瞬間、僕たちのいる空間の奥にある壁がバラバラになって破壊される。
砕かれるというより綺麗にバラバラに切り裂かれた壁からは、一人の魔族の少女が飛び出してくる。
「アアアアアァァァァ!!」
僕が戦った糸を使う闇魔法使いの双子の姉。
銀の長髪を振り回しながら我を失ったように周囲を切り刻みながら現れた彼女は“なにかを探すように”周囲を見回しながら、近付いてくるスケルトンを闇魔法の糸でバラバラに切り裂いていく。
「げぇ! こっちに来たわ!?」
「レアリさん! あの子、なんであんな暴走しているんですか!?」
「私もよくは知らないわよ!!」
唯一事情を知っていそうなレアリは半泣きの表情で詰め寄ってきたアウルさんに説明する。
「妹と逸れてしばらくしたらおかしくなったのよ!!」
「はぁ!? あの子、私と違って意思ないんじゃないんですか!?」
「亡骸に刻み付けられるほどの生前の強烈な想いとかが何かの拍子で出てくることがあるのよぉ! アレの場合は妹が切っ掛けだったんじゃないの!?」
なるほど。
生前互いを想いやっていたからこそ亡骸になってもその感情が暴走してしまう、か。
そう思いながらスケルトンを攻撃している双子の姉の魔族を見ていると、ぐりん、とこちらを向いた彼女がその両手を大きく振るい———、
「マズい!!」
治癒感知で察知した攻撃———すぐさま右腕を突き出し、治癒爆裂波で糸を弾き返す。
———ッ、全部は弾ききれなかったか!
残りを籠手で弾き防いでいると、近くにいるレアリとアウルさんにも闇魔法の糸が襲い掛かる。
アウルさんは衝撃魔法でうまくさばいているけど、あの悪魔は……。
「あぁ、もうレアリさん!」
「わぶ!?」
迫る闇魔法の糸に当たりそうになっていたレアリをアウルさんが突き飛ばした。
レアリは無傷で済んだようだが、アウルさんの腕に斬撃が通り、すぱんっ! とその腕が宙へと舞い上がる。
「ぎゃあー!? 腕がァ―――!?」
「アウルさん!?」
血も出ずに地面に落ちた片腕を見て絶叫するアウルさんを見て僕も焦るが、すぐに我に返った彼女が腕を拾うとそのまま断面に押し付けてくっつけてしまう。
「ふぅ、そういえば私死体でした。セーフセーフ」
セーフとは!? それは果たしてセーフと言えるのだろうか?
ぎゅっ、ぎゅっとあっさりとくっついた腕に少しだけ驚くが、今はあの暴走している双子の闇魔法使いの姉に集中しないと。
あれはスケルトン以上に危険な存在だ。
『ウサトさん、どうしますか?』
「暴走から解くためには彼女の妹を返せばいいのだろうけど……」
あの糸の範囲内に安易に無気力状態の妹さんを放り込んだらそれこそバラバラだ。
亡骸と言えども目の前で実の妹を攻撃してしまったら、さらに暴走してもおかしくない。
『闇魔法の暴走……私もあんな風になっていたんですか?』
「君のは少し違うけど、似てはいるね」
キーラの場合は自分自身を受け入れることができなかった結果、闇魔法そのものが術者の命を奪おうとしたっていう例だけど、今暴走しているあの子の闇魔法はただ力をまき散らして感情の向ける場所を探しているようにも見える。
『なんとかしましょう。あの人のためにも』
「ああ。やろう」
キーラの言葉に頷く。
同じ闇魔法使いだからこそ共感する思いもあるのだろう。
そこに相手がもう亡くなった人だからという事実は関係ない。
「とりあえず……接近するしかないか」
面倒だがそれしかない。
だとすればルーネの力を借りよう。
そう思い、背中の箱の側面を開き、ルーネを呼ぶ。
「ルーネ」
「ようやく出してくれたか。っ、おい、ハンナ! 引き留めようとするな!!」
……ハンナさんには後で滅茶苦茶謝っておこう。
背中の箱の中が安全とは言え無茶をしすぎたからな……今からまたそんな無茶をするわけだけど。
「話は聞いていた。あれはわたしとキーラと同じ魔法なんだな?」
「ああ、いけるか?」
「誰に言ってる。同じ魔法だろうがわたしには関係ない。シアへの道を邪魔するならわたし……わたし達の敵だ」
ルーネの言葉と同時に僕の右手に闇魔法の青黒い炎が灯される。
籠手を覆うように現れた炎の調子を確かめつつ、僕は前へと飛び出す。
「空を飛ぶと狙われる! 走って突っこむ!」
『では私がスケルトンから貴方を守ります!!』
マントの防御能力により僕に近づくスケルトンが薙ぎ払われていく。
僕は迷いなく、最短距離で糸を操る彼女へと接近すると———僕に気づいた彼女から膨大な量の斬撃を伴った糸が横薙ぎと共に放たれる。
「やれ! ウサト!!」
「ぬぅん!!」
それに対して大きく右腕を縦に振るい、鞭のように伸びた炎を眼前の空間に叩きつける。
延長し、勢いよく振り下ろされた青黒い炎の魔力は闇魔法の糸を一気に燃やしながら両断する。
「今だ!!」
背中のマントを変形させた箱を側方に移動させ、ハンナさんの隣で拘束していた双子の妹さんを引き寄せる。
拘束を解放し抱えるように持った僕はそのままの勢いで突っ込み……いやまずい!?
「アアアァァァァ!」
さらに苛烈になった!?
探していた妹さんを見つけて大人しくなるはずじゃないのか!? それともリンカとかルーネみたいに僕が攫ったとか思わされているのか!?
僕は大丈夫だけど妹さんに攻撃が当た―――、
「!」
妹さんに近づいた糸の斬撃が少しだけ逸れた?
いや、治癒感知では完全に当たる攻撃だったが直前で不自然に曲がった?
ッ、今それを考えている暇はないか!
「多少乱暴になるけど、すみません!!」
「———ア」
間近にまで接近したところで勢いよく妹さんを彼女に押し付ける。
糸の操作のために腕を大きく広げていた彼女は、妹さんを抱きしめるように受け止めるとそのまま力なく後ろに倒れてしまった。
「……これで、収まったか?」
『恐らくは』
こんな強引な方法でうまくいくとは……。
もう離さないとばかりに強く抱きしめられた妹さんは、これまでと変わりなく無表情のままだ。
「……本当に、この人は意識がないのか?」
攻撃が不自然に逸れた時、僕の魔力感知に一瞬だけ不自然な反応があった。
誤差とも、気のせいで済ませられるものだが、その一瞬だけ僕が抱えている妹さんの人差し指が動いたのだ。
そして、人差し指から伸びる細い魔力の糸も。
「……」
防衛本能的なものだろうか。
だけどそれだけで済ますのは少し危うい感じがする。
「ガカッ!!」
「それも、考えている暇はないか」
スケルトンもアウルさんもいる。
迫るスケルトンの攻撃を対処しようとすると、側方から飛んできた衝撃波がスケルトンを吹っ飛ばす。
「アウルさん、腕は大丈夫ですか?」
「ええ。すぐにくっつきました」
腕がすぐにくっつくとか怖いなぁ。
僕もできるかどうか怪しいけど、腕を斬られるような体験はしたくない。
そんなことを想いながらアウルさんを見ると、そこには先ほどまで近くに来なかったレアリまでもがいる。
「ち、治癒魔法使い!」
「あ?」
「ぴぃ!? そ、そんなことで悪魔である私が恐れると思って!?」
滅茶苦茶ビビっているんですが。
ローズが片翼を引きちぎった悪魔であり、恐らくアウルさん達の亡骸を盗んだ張本人である彼女を許すわけではないが……どうやら話をしたそうなので一応話を聞くことにする。
「なんですか?」
「い、いったん共闘しましょう」
「……なぜ?」
純粋な疑問を口にするとレアリは狼狽える。
「わ、私はこの先の道を知ってるわよ!」
「問題ない」
治癒感知で探っていけば前には進める。
「な、仲間の情報を売るわ!」
「たかが知れてるのでいりません」
ヴィーナさんがいるし敵方の悪魔の情報なんて信用に値しない。
そもそも仲間意識がない悪魔が自分の味方の悪魔の情報をそれほど知っているとは思えない。
「このゾンビ共もあげるわ!」
「……」
「ひぃぃ!?」
アウルさん達をもののように扱うレアリに眼力を強める。
……。どうやら本当に取引を持ちかけているようだ。
「目的は?」
「え、あ、あの……」
ものすごい勢いでへりくだり始める悪魔に僕はさらに警戒を強めると、どういうわけかレアリはガタガタと震えだしながら泣きべそをかき始めた。
「もう悪さとかしないのでここから脱出させてくださいぃ……」
「……アウルさん?」
「言わないでください。良いようにされていた自分が哀れになるので……」
悪魔ってこんなのばっかりなの……?
脳裏にヴィーナさんの姿を連想させながら僕は大きなため息をついてしまうのであった。
とうとう限界がきてしまったレアリでした。
今回の更新は以上となります。




