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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第十四章 出張救命団 魔王領編
357/574

第三百十四話

お待たせしました。

第三百十四話です。


今回は三日ほどに分けて三話ほど更新する予定です。

 先輩が救命団の訓練に参加することになった。

 それだけといえばそれだけなんだけど、彼女が救命団として訓練に参加したことはリングル王国の人々にとって、かなり驚きだったようだ。

 彼女が僕たちと一緒に街中で走っているとまさかの二度見をされてしまった。


「宿舎ももうすぐ完成ですね」

「そうだね」


 救命団から支給された訓練服に身を包んだ先輩が、軽く跳躍し飛び蹴りを放ってくる。

 それをクロスさせた腕で真正面から受け止めると、さらに空中で一回転して回し蹴りへと派生してくる。


「っとと」


 体をスウェーさせ蹴りを避ける。

 今は訓練場で先輩と組み手をしているが、先輩は刀を使わなくても手ごわい。

 一撃一撃の威力こそは少ないが、僕の予想を超えた技を常に引き出してくる……!


「じゃあ、魔法を使おうか」

「はい」


 先輩が全身に薄く電撃を纏い、僕は掌に浮かべた魔力弾を握りつぶす。

 魔力感知で感覚を広げた僕と電撃による高速移動を行う先輩は互いに、組手の速度を加速させていく。

 攻撃を目と感覚で見切り的確に防御し、先輩が技術と速さで防御の穴を通そうとする。


「そいなっ!」

「むむっ!?」


 不意に先輩が僕の腕に手を添えた瞬間、視界がぐるりと回転する。

 自分が投げられたと気づいた時には、僕は空中で体勢を変え地面に着地する。


「合気……?」

「元の世界で齧る程度には学んでいてね。まあ、ちょっとした護身術さ」


 僕の力を利用して投げたってことか。

 力一辺倒とは違い、技術の伴った技。

 まるで魔法を受けたような感覚に陥りながら、立ち上がる。


「ここまでにしましょうか」

「そうだね。君はこれから城の方にいくのかな?」

「ええ。魔王領への派遣される人員が決まったらしいので、出発前に顔を合わせるように言われたんです」


 共に魔王領へ向かう監査員、とでもいうのだろうか。

 僕のおおまかな役割は魔族についての報告と、彼らと親交と理解を深めることにある。

 リングル王国側としてもなるべく見識が広く、常識人な方が選ばれると思っているけど……まあ、それはあってみない限りは分からないか。


「それじゃあ、先輩」

「ん? どうしたのかな?」

「今、ネアとフェルムが訓練の気配を察してこの場からの逃走を図ろうとしていますけど、僕がいない間に二人のことをよろしくお願いします」

「「うぐ……!?」」


 音もなくこの場を離れようとするフェルムとネアは、呻いた声を漏らす。

 僕の魔力感知にかかれば、逃げることなぞ不可能だぞ。


「……ふっ、オッケー!!」

「ウサト! 今こいつ不純な笑みを浮かべたわよ?!」

「絶対こいつ何かするつもりだぞ!?」


 信用ないなぁ。

 この数日間、先輩はまじめに訓練をしているというのに。


「因みに何をするんですか?」

「とりあえず走った後に……二人に電気マッサージをかけてあげようかなって」

「へぇ、それはいいですね」

「よくないわ!? 身の危険しか感じないわよ!?」



 さすがに怖がりすぎでは?

 ……ああ、そういうマッサージ? があることを知らないからかな?


「貴方みたいな人間もどきは電撃食らってもケロリとしてるだろうけど、私たちは魔物に魔族なのよ!?」


 ひ、ひどい言われようだ……。

 僕も人間なんだけどなぁ。

 必死になって訴えかけてくるネアに僕は頬を引きつらせながら説明する。


「いいじゃないか、電気マッサージ。訓練の疲れとか肩こりとかとれるかもしれないよ?」

「え? 肩こり?……」

「おい、この乳お化け。なに悩んでんだよ……!! どうしてボクを哀れんだ目で見てくる……!! スズネ、お前もそんな、あっ、みたいな目でボクを見るなぁ!!」


 ……なんだかんだで二人も先輩とうまく打ち解けているな。

 早朝の走り込みでは、普通にトングたちとも話していた……というより、若干あの強面たちが慄くくらいのテンションの高さだったけれども、彼女がここでうまくやれているのならそれでいい。


「じゃ、先輩、ここは頼みます」

「いってらっしゃいだね、ウサト君!」

「はい、いってきます」


 とりあえず城へと向かう前に正装である団服に着替えに宿舎へと向かおう。

 しかし、いったい誰が派遣されるメンバーになるのか、気になるなぁ。



 早速城へと向かうとすぐに派遣される方たちが集められている訓練場へと通された。

 リングル王国の騎士さん達なら名前までは知らなくても顔は分かるので、誰が選ばれたとしても心配はないのだけど……。


「派遣される人員は何人くらい集められたんですか?」


 案内をしてくれているウェルシーさんに聞いてみる。

 口元に指をあてた魔導士さんは、すぐに親し気な笑みを浮かべて答えてくれる。


「五人ほどとなりますね」

「意外と少ないんですね……」

「元より、魔王領には人員が派遣されていますからね。今回派遣される者たちは後続として向かうわけですが……その実は、ウサト様の補助と護衛が目的なんです」

「なるほど……」


 だとすれば、人数の少なさに納得がいくな。

 まあ、僕よりもウルルさんの護衛をしてもらうことになりそうだけど。


「そして、これは急に決まったことなのですが……」

「なにかあったんですか?」

「ニルヴァルナ王国からも、人員を派遣されることになりまして」

「ニルヴァルナ……」


 脳裏によぎるは先の会談で出会ったオウカ様とハロルド様だな。


「本当に急ですね……」

「会談後、間もないことでしたからね。ですがニルヴァルナ王国は亜人差別のない国ですから、人員の派遣される国としては適任とも言えますから、魔王殿の了承を得てウサト様達と共に魔王領へ向かうことになった次第です」


 もう決定しているということなら僕からいうことは何もない。

 むしろ、心強いとも言える。


「現地では協力することにもなりそうですね」

「ええ、ウサト様なら心配はないかと思います」


 ニルヴァルナかぁ。

 ハイドさんのような人が来てくれればいいな。

 そうしていると訓練場に到着する。


「彼らが今回同行する騎士と魔導士たちです」


 ウェルシーさんが掌を向けた先を見ると、そこには僕にとっては馴染みの深い人物がそこにいることに気づく。


「アルクさーん!」


 書状渡しの旅を共にした頼れる仲間、アルクさんだ。

 彼もこちらに気づいたのか、こちらに手を振ってくれる。


「貴方がここにいるということは……」

「ええ、此度のウサト殿の遠征任務に参加させていただくことになりました」


 アルクさんが来てくれるのは心強い!

 でも……。


「行先は魔王領ですよ……?」

「承知しております。危険もあるでしょうが……なにより、貴方の力になりたいと思い此度の要請を受けました」

「アルクさん……」

「私以外の者たちも同じ思いでこの場にいます」


 するとアルクさんが他の四人を紹介してくれる。

 そのうち三人は初めて名前を知った方だけど、一人は僕も知っている人だった。


「クルミアさん、でしたよね? 書状渡しの際に先輩の旅に同行していた……」

「覚えていてくれたんですねー。はい、私も要請を受け、此度の任務に参加することとなりました。どうか、よろしくお願いしますね、ウサト殿」


 先輩の護衛をしていた騎士さんのクルミアさん。

 先輩とも仲のいい人だったし、人柄としては申し分ないだろう。

 他の方も気難しそうな人じゃないし、ひとまずは人員に関しては問題はない。


「改めて、よろしくお願いします。きっと今回の派遣は簡単にいかないことや問題も起こるかもしれませんが、それでも諦めずに使命を全うしてみせましょう」

「「「はい!」」」

「あとは、救命団からも僕を除いて一人と一体と一頭ほど人員が追加されます」

「一人と?」

「一体と?」

「一頭……?」


 あ、さすがに分かりにくかったかな?

 でもネアってフクロウ状態の時と人になっているときもあるからなぁ。


「ウサト殿、アマコ殿はヒノモトの方に一度帰郷なされたと聞いていますが、ブルリンとネア以外に誰が同行するのですか?」

「アルク君、わかるんだ……!?」


 クルミアさんがものすごく驚いているけど、まあ共に旅をし幾度の苦難を乗り越えた仲間だからね。

 僕としてもアルクさんのことは信頼しているのだ。


「ウルルさんです。彼女も僕と同じ治癒魔法使いですし、なにより人格面では最適だと団長の推薦もありました」

「そういうことでしたか。了解です」


 アルクさんたちがいればウルルさんの護衛面は盤石といえるだろう。

 もしもの事態の時は僕も彼女を守るように動くし。

 それから、派遣される魔王領についての話をしたり、いくつか話し合ったりした後に今日はその場で解散することになった。


「あ、ウサト殿ー」

「どうしましたか? クルミアさん」


 解散した後に僕に話しかけてきたクルミアさんに振り返る。


「いえ、スズネさんが救命団の所属になったと聞きましてね。どうですか? スズネさんはお元気ですか?」

「ええ、今日も元気に走りました」

「その光景が容易に想像できますねー」

「僕が治癒魔法をかけるくらい頑張って走ってくれて……一団員としては喜ばしいことです。ん? どうしましたか? クルミアさん?」


 なぜか目元を押さえているクルミアさんに首を傾げる。


「……スズネさんの涙ぐましい努力に涙がこみ上げてですね」

「?」

「相手は多分、魔王より強敵ですよ! スズネさん……!!」


 いったい先輩はなにと戦っているんだ……?

 クルミアさんの言葉に首を傾げていると、ふと何かを思いついたクルミアさんがいたずらっ子のような笑みを浮かべる。


「あ、それはそうと、私が此度の派遣に参加することをスズネさんに伝えてもらってもいいでしょうか?」

「ん? 別にかまいませんよ」

「これで、危機感でも抱いてくれればいいのですが……でも、スズネさんだからなぁー」


 話の全容は分からなかったけれど、先輩のことを心配しているのはよくわかった。

 とりあえず、クルミアさんのことは先輩にちゃんと伝えておこう。

久しぶりのアルクさん加入。

そして、ウサトに迫るニルヴァルナの影……!!


次回の更新は明日の18時を予定しております。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっとメインヒロインが帰ってきたか
[一言] センリをウサトの嫁にしないために、リルドかオウカを嫁にすれば良いのでは?
[良い点] >一人と一体と一頭 これで通じるアルクさんの染まりっぷりよ・・・
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