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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第十一章 最終決戦、魔王都市ベルハザル
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第二百四十七話

あと半年もすれば、殴りテイマーが治癒魔法を話数で追い抜くかもしれないという驚き……。


本当にお待たせしました。

第十一章、始まります。


今回は二日に分けて二話ほど更新いたします。

 魔王と勇者が最後の戦いを行ったと言われる遺跡の中で、僕達は騒動に巻き込まれた。

 勇者の刀から生まれた意思、カンナギ。

 邪龍に汚染され魔王、魔族に対して憎悪を煽られた彼女との戦いの末、本物のカンナギ―――ナギさんと、彼女の魂が融合し、勇者の刀に邪龍により汚染された魂を切り離し、封じ込めたことで事態は収束することとなった。

 全ての騒動が終わりを迎えた。

 誰もがそう思った時、魔王が現れた。


「簡潔に言うと、魔王は力の大部分を失っているようだね」

「……あれで?」


 魔王領の中心へと差し迫った頃。

 小さな滝の近くで夜営の見張りを行っていた僕と先輩はナギさんから魔王についての話を聞いていた。

 やや引いたような反応をする先輩に、ナギさんは苦笑する。


「あれでもだよ。元々とんでもない数の魔術を扱う化物だからね。まさしく、万能ともいえる敵だったよ」

「でも、先代勇者は倒したんだろう?」

「ヒサゴはそれ以上に化物だっただけ。あいつ、なんでも封印して解放してくるから」

「なんでも……?」

「うーん」


 先輩の質問にナギさんは悩まし気に顎に手を当てる。


「湖の水をまるごと封印して水気の無い場所で水攻めしたり、魔族の兵士から生命力……というか、治癒力を封印する形で吸い取って自分のものにしたりしてた」

「待って、予想を超えたものが出てきたよ!? なにそれえぐくないかな!?」

「あー、うん。正直、今と比べるとヒサゴの戦法は外道そのものだったよ。当時は、そう言ってられる状況じゃなかったからね」


 魔王は多数の魔術を扱う万能型で、先代勇者のヒサゴさんって人は封印の光魔法を用いた一点突出型の魔法使いってことなのかな?

 話を聞くだけで、想像もできないくらいに規格外な人っぽいな。


「ヒサゴに封印されたせいか分からないけど、弱っていたとしても魔王はこの世界に君臨できるほどの力を持っている奴には変わらない。正直、この世界に来てから半年足らずの君達じゃ、荷が重い相手だろう」

「……」


 これまでかなり濃い日常を過ごしてきたことは自覚しているけど、よくよく考えれば僕達がこの世界に来てほぼ半年しか経っていないんだ。


「とりあえず、魔王のいる城に向かうまで私としてもできるだけ力を貸したいと思う」

「具体的には?」

「君達の戦い方や、魔法についての改善点や応用できる部分を教えたい」


 僕達の魔法の改善点か。

 探せば探すほど出てきそうで怖くなるな。


「カズキは光魔法の消滅の力をなくすって点をうまく扱えていない。一見、弱くなっているように思える能力も、考え方次第で強力な武器になるんだ」


 カズキ自身は自分の危険な魔法を扱えるようにしたい考えで、籠手の能力もそんな風になったと思えるけど……消滅をなくした光魔法の利点か。

 残るとすれば、カズキの類まれな魔力操作だな。

 そう考えていると、ナギさんの視線が先輩へと移る。


「スズネには、色々と教えたいこともあるしね」

「フッ、この私に技とやらを教えることができるのかな? ん?」


 なぜかここでニヒルなキャラになる先輩。

 さすがだ、ここでそんなキャラを演じる必要性がどこにもないぜ……。


「スズネには私の技の一部を教えようかなって思ってる」

「師匠と呼ばせてください」


 しかも速攻でキャラが陥落したわ。

 驚くほどの掌返しで、先輩はナギさんに頭を下げた。


「ナギさんの技っていうと、カンナギ流のこと?」

「う、うん、そうだね。本当は口に出すのも恥ずかしいんだけど」


 ナギさんは、恥ずかしそうに顔を赤くさせる。

 理由を尋ねてみると、彼女はやや躊躇しながら話してくれる。


「私って、教養とかほとんどなかったから、知識のほとんどが旅で身に着けたものと、ヒサゴに教えてもらったことしかないんだ」

「そうなんだ。と、いうとカンナギ流も?」

「うん。ジュウニシって生き物から作ったの」


 だとしたら、カンナギ流のモチーフは生き物なんだな。


「でも、まさか今の時代にまで伝わっているとは思わなかったよ……」

「今というと、僕と戦ったジンヤさんのこと?」

「あの時、君の籠手を通して見たとき、正直心臓がきゅってなった。いつのまにか自分で作った技が、流派みたいな感じで伝わっているとは思いもしないよ……」


 自分の黒歴史が後世に伝わってしまった感じなのかな?

 正直な話、ジンヤさんは僕が激昂した勢いで倒してしまったので、カンナギ流というイメージはない。

 羞恥に悶える彼女をフォローすべく、話しかける。


「かっこいいと思うよ。ね、先輩」

「うん。なにを恥じているのか全く分からないな」

「その気持ちはとっても嬉しいけど……他の人ならまだしも君達の言葉だと、どうしてこう不安になるんだろう」


 先輩と同意していると、とっても微妙な表情をされてしまった。

 なぜに……。

 ともかく、ナギさんが先輩に剣術を教えて……僕には何かあるのだろうか?


「ナギさん、僕には何かあるのかな?」


 そう尋ねると、彼女は悩まし気に腕を組む。


「正直、成長する方向がしっかりと定まっているスズネとカズキと違って、君は不規則すぎるんだよね。系統強化の暴発、弾力付与、そして魔族であるフェルムとの同化……そのどれをとっても、私の生きた時代では用いられていなかった技術なんだ」

「そ、そうなんだ……」


 まあ、僕みたいな戦い方をしている人がいるかって聞かれたら、想像はできないだろう。

 それくらい変な戦いをしているのは自覚しているつもりだ。


「私に言えることは、君はフェルムの同化を生かした戦術を理解することだね」

「フェルムとの?」

「私が思うに、君の強さは仲間と力を合わせた時にこそ発揮すると思っている。邪龍と戦った時のアマコ、サマリアールの呪いと相対した時のネア、魔王軍第二軍団長、コーガと戦った時のフェルム……君が経験してきた大きな戦いの全てにおいて、君の傍には共に戦う仲間がいた」


 そこで一旦言葉を区切った彼女は、僕と視線を合わせる。


「力を繋げ、合わせよう。君にはそれを可能にする縁と、応えてくれる仲間がいる」

「……仲間……」

「勿論、私もその一人だ。新参ではあるけどね」


 照れくさそうに笑うナギさん。

 すると、何を思ったのか無言で立ち上がった先輩が、僕の前に座っているナギさんに近づく。


「ん? どうしたのスズネ?」


 首を傾げたナギさん。

 すると、きらりと目を光らせた先輩が猛烈な勢いでナギさんに飛び掛かった。

 誰も予想だにしない不意打ちに、ナギさんの表情に混乱が溢れる。


「うひゃぁ!? いきなりなにすんのさ、スズネ!!」

「あざといぞ、カンナギ! 君は頼れる年上ギャップ系ポジションを狙っているだろうけど、そこは私の席だ! わたさん! わたさないよ!!」

「や、やめて! ちょっとそういう意味不明なことはしないでぇ! た、助けてぇ!!」

「あざとさポジションまで! このっ、このこの!!」

「うわぁぁぁぁぁ!?」


 実力的にはすごいはずなんだけど、先輩のちょっと別次元の行動力には意味をなさないみたいだ。

 先輩にもみくちゃにされ、涙目で助けを求めてくるナギさんを見て、溜息をついた僕はその場を立ち上がって、ナギさんから先輩を引きはがす。


「先輩、やめてください」

「満足した」

「目的変わってるじゃねぇかよ」


 途中から絶対、違う目的でナギさんに掴みかかってますよね?

 どこにいてもこの人は変わらないなぁとは思うけれど、一度本気で叱って張り倒すべきか悩む僕がいる。

 その後、少し時間をかけて落ち着きを取り戻したナギさんと先輩と、他愛のない会話をする。


「ふぁ……」


 少し時間が過ぎた頃、ナギさんが口元を押さえながら小さな欠伸を零した。

 夜も更けてきたので、彼女も眠くなってしまったのだろう。

 目元を擦りながら彼女はやや嬉し気に微笑んだ。


「……やっぱり眠るっていいことだよね。ヒサゴのバカに封印されている間は、眠るって感覚がなかったから大変だったんだ」

「もう一人のナギさんにとっても?」

「……うん」


 何百年も孤独な時間を過ごしてきたカンナギ。

 彼女にとっても眠るという行為自体はきっと慣れないものなのだろう。


「見張りは僕達に任せて、ナギさんは先に休んでもらっても大丈夫だよ」

「そう? じゃあ、甘えさせてもらおうかな」


 そう言った彼女が服についた砂を払いながら立ち上がる。

 そのまま後ろへと振り返り、歩きだそうとする―――が、なぜかすぐに僕へと向き直ると、眠そうな様子とはうってかわった機敏な動きで僕の隣までやってきて、腰を下ろした。


「よいしょ、と」

「え?」

「肩借りるよ」


 そう言って、僕によりかかってきた彼女はそのまま瞳を閉じる。

 数秒の静寂。

 え、どういう状況?

 規則正しい寝息を立て始めたナギさんに、ひたすらに困惑する。

 こ、このまま起こしていいのか? どうするのが正解なんだ?

 どうしていいか分からず先輩に助けを求める視線を向けると、彼女は力強く頷いてくれる。


「よし。なら、私も便乗しよう」

「くっ、そうだ。この人もこんな感じだった……!」

「もう片方の肩を差し出せ、ウサト君……!」

「どういう要求なんですかね?」


 盗賊かな?

 じりじりとナギさんとは逆サイドへと移動しようとする先輩に頬を引き攣らせる。

 さすがにこのままだと、色々と気まずいものがあるので、まだ眠りの浅い彼女をゆすって起こす。


「ナギさん……ナギさん、またもう一人の自分に引っ張られてるよ」

「え? あ、え……は!? ご、ごごごめん!」


 目を開けて僕の顔と周りを見たナギさんは顔を真っ赤にさせながら、後ずさりするように距離をとる。

 そのまま猛烈な勢いで謝りながら、焚火が当たるギリギリの場所で横になった彼女を見て苦笑する。


「楽しい人ですね、ナギさんは」

「そして強敵でもある。私と似てる」


 ……どこが?

 割と本気でそう思いながら、誤魔化すように焚火に木の枝を放り込む。


「ウサト君は……」

「はい?」

「改めて魔王や魔族について、どう思っているのかなって」


 不意の先輩の質問に少し考え込んでしまう。

 正直な話、僕の心は揺らいでいる。

 グレフさん達とキーラという存在と知り合ったことで、改めて魔族という種族そのものが悪ではないことを理解したんだ。

 このまま魔族を滅ぼすという安直な考えは出しちゃいけないと思ってる。


「戦いは避けられない、と思っています」

「そう、なのかな……」

「だけど、僕達はもう少し魔族側の事情に踏み込むべきだと……考えています」


 今から向かう場所は魔族が集まっている都市。

 そこではどのようなことが起こっているのか、この目で見る必要があると僕は考えている。

 その結果、どのような選択を迫られるかは分からないけど、魔王にたどり着く間に決して避けられないことだってのは分かり切っている。


「その時、ウサト君の女の子フォームで潜入って訳だね!」

「ははは、どうやら犬上は僕を本気で怒らせたいようだ」

「先輩すらつけてくれなくなった!?」


 多分、教えたのはネアだな。

 後でプチお仕置きをしておかなければ……!

 フェルムとの同化のデメリットを想像して、僕は今一度顔を青ざめさせるのであった。



倒した相手の生命力を吸収する形で封印して自分のものにするやべーやつ。

それが、先代勇者です。


次回の更新は明日の18時を予定しております。


※コミカライズ版、治癒魔法の間違った使い方、第五巻発売日についての活動報告を書かせていただきました。

発売予定日は今月、8月26日です。

詳しい内容については活動報告に記されております。

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― 新着の感想 ―
「ははは、どうやら犬上は僕を本気で怒らせたいようだ」 →???「もう殺すしかなくなっちゃったよ」 ってことで、いいんですよね?まぁ、ウサトの女体化は見てみたさ半分、 暴れ出さないか怖い半分で五分五分っ…
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