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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第九章 次なる戦いへと向けて
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第二百五話

お待たせしました。

第二百五話です。

 食事を終えた僕と先輩とカズキ、それにネアとフェルムは外の訓練場へと移動した。

 なぜ訓練場かというと、アマコとナックが食器の片づけをしている間、これからの話をするついでに二人の勇者の武具を見せてもらうためだ。


「ブルリンも帰って来てないのか……」


 空っぽの厩舎を見て、そう呟いていると近くにいたネアが話しかけてくる。


「ブルリンは力があるから、あっちにまだいるそうよ」

「あっちの人達に迷惑をかけたりしないかな……」

「心配ないでしょ」


 ……まあ、大丈夫か。

 厩舎を回ってから訓練場に到着した僕は、まず最初にカズキと先輩から僕が先に王国に戻された理由を聞いていた。


「俺達がここに戻された理由は、まだ明かされていないんだ」

「王様にも、事態に備え休息をとるようにとしか言われていないしね」

「明かされていないっていうと……」


 カズキ、先輩の言葉に首を傾げる。

 事態に備えるようにか。ロイド様は次の展開を見越して僕達をここに戻したって感じなのかな?


「多分、戦いが終わったばかりの俺達を不安にさせないための判断だと思う」

「なるほど……」


 それは分かったけれど、ネアとフェルムはどうして戻ってきたんだろう?

 一緒に訓練場に来たネアとフェルムに聞いてみると、ネアが答えてくれる。


「ローズが『付き添え』だって」

「……それだけ?」

「あの女のことだから何か考えがあるんじゃないの?」

「まあ、考えなしで判断するような人じゃないからな……」


 考えた上で、理不尽かましてくることはたまにあるけども。


「今は王国からの連絡が来るまで待つしかないか……」

「だな。城の方も、戦争後の処理に追われているからすぐに謁見できるような状況じゃないし」


 戦争後だから、各王国への連絡とか物資の運用とか、処理に追われているんだろうな……。

 騎士達も出払っているから、純粋に人手が少なくなっていそうだ。

 あ、騎士と言えば……。


「レオナさんが、こっちに来てるって聞いたけれど……」


 戦いの最中、救援に来てくれたミアラークの勇者、レオナさん。

 ここに来ているのならすぐにでもお礼を伝えにいかねば、と考えていると先輩が答えてくれる。


「ああ、彼女は今城にいるよ。ここに来るときは城の人達と話をしていたけど、行けば会えると思う」

「なら城に行ったときは、挨拶しなきゃな」


 その時は、ネアとアマコも連れて行こうか。

 本当はアルクさんも一緒がいいんだけれど、彼がこっちに帰ってきているか分かっていないからな……。


「しかし、ウサト君。君がこの世界で結んできた縁は凄まじいものがあるね」

「いえ、そんなことは———ッ」


 ない、と言いかけたところで脳裏によぎる顔ぶれ。

 ハルファさん、エヴァ、ルーカス様などなど、我が強いという言葉だけじゃ足りないくらいパワフルな人達と知り合ってきた僕は、冷や汗をかきつつ先輩に頷く。


「……ま、まあ、自覚はあります」

「確かに、こいつの交友関係とか普通なものの方が少なそうね」

「言えてるな」

「……」


 君たちも普通じゃないカテゴリにいることを忘れないようにね?

 頷いているフェルムとネアをじろりと睨みつけ、溜息をついて先輩へと話しかける。


「その最たるものは、先輩ですけどね」

「んん? それはどういうことかな?」


 笑顔のまま首を傾げる先輩に、僕もにこやかに返す。


「貴女が一番、キャラが濃いです。ぶっちぎりの一番です」

「笑顔で言うことじゃないよね、それ!?」

「確かに、一理ある」

「カズキ君まで!?」


 おかしそうに笑うカズキにつられて頬を緩める。

 因みにエヴァは先輩と同率だ。

 あの子と初めて会った時のインパクトは今でも覚えているくらいに強烈だった。

 その後出会ったノルン様、レオナさん、カノコさん達も相当なものだったけども。


「話も脱線しちゃったし、そろそろ私とカズキ君の勇者の武具を見せようかな」

「そうですね」


 先輩の言葉にカズキが頷く。

 勇者の武具、に反応したネアはフクロウに変身して、僕の肩に飛び乗ってくる。

 どうやら、近くで見たいようだ。


「勇者の武具ねぇ」

「やっぱり、ネアも気になるか」

「当たり前でしょう。貴方と違って、特異な能力を備えているんだから」

「僕の籠手だって能力はあるぞ」

「あってないようなもんじゃない。魔力も通さない、硬いだけの籠手なんて」


 確かにそうだけど……。

 魔力、魔術、あらゆるものを通さない硬度を誇るだけの籠手。

 能力こそ地味だけれど、僕としては気に入っているから問題はない。


「魔力の暴発もノーリスクでできる優れものなんだぞ?」

「……それは単純に貴方自身がおかしいだけだと思う。どうして今みたいな戦い方になっちゃったんでしょうね……」


 小さなため息をつくネアに、そこまでか、と頬が引き攣る。

 そんなやり取りをしていると、カズキが訓練場の中央よりに歩み出る。

 どうやら彼が最初に武具を披露してくれるようだ。


「まずは俺からだな。ウサト、ここで少しだけ魔法を出すけど構わないかな?」

「うん、大丈夫だよ」

「よし……」


 頷いた彼は左手を前に掲げ、何かを念じるように力を籠めた。

 すると、彼の手首にあるリストバンドが光に包まれ、次の瞬間には銀色の籠手へと変化していた。

 刻まれた鱗状の波紋からは脈打つような輝きを放ち、僕の籠手と比べやや鋭利で攻撃的な形をしているように見えた。


「俺の武具は、魔力操作を促す籠手。光魔法を危険のない魔法として扱えるようにしたり、系統強化をできるようにしたりするんだ」


 そう言って、魔力弾を創り出したカズキはそれを籠手のついていない右手で触れる。

 ソフトボールのように握りしめたり、潰したりしているあたり、もしかすると硬度や弾力すらも調整することができるのかな?

 彼の魔法を見てそう考察していると、カズキは右手に持った魔力弾をこちらへ軽く放ってきた。


「ほらっ」

「おう!?」


 咄嗟に右腕の籠手を展開してキャッチする。

 返ってきたのは弾力のあるボールの感触。恐る恐る、左手で触れてみると光系統の魔法は消滅せず、普通に触ることができた。


「本当に魔力なのか、これ?」

「私も触ってみたい!」


 肩にいるネアも興味があるのか、掌にまで降りると呑気そうに翼で突き始める。

 気づけば、フェルムも目を瞬かせて僕の手元を覗き込んでいる。


「うわぁ。触っているだけなら魔力とは思えないわ……。触れたものを消滅させてしまう光魔法の簡易化ってところかしらね?」


 思わず、感嘆とした声を零していると、掌にのせた魔力弾はカズキの元へと戻っていく。

 パシッ、と軽快に魔力弾をキャッチしたカズキは、籠手の掌に魔力弾を浮かばせる。


「この魔法を使う時、色々と気に掛けなくちゃならないことが多かったけど、この籠手があればその心配もない」

「すごい、ゴムボールみたいだ……」

「ははは、それは後になって気づいたんだけど、今みたいに魔力弾に硬度と弾力を持たせることもできるから、これも何かに応用できそうだな」


 そう言って、カズキは魔力弾を地面に叩きつけ、バウンドさせている。

 魔力弾そのものに弾力を加えるなんて、考えたこともなかったな。


「カズキ、魔力弾に弾力を持たせるのって、その籠手の能力なの?」

「いや、これは魔力操作の補助による恩恵みたいなものだな。なんというか、魔力を編み込んで球体にするイメージだ」

「魔力を、編み込む……」


 編み込むというのはあくまで比喩で、実際はそれほど綿密な魔力操作によって実現される技術なのだろう。

 ……僕にもできないだろうか?

 顎に手を当てて、魔力弾を見つめていると、地面からはねかえったそれをパシッとキャッチした彼は、小さく深呼吸をする。


「そして……!」


 カズキが、掌に浮かばせた魔力弾に魔力を注ぎ込み始める。

 注ぎ込まれ、収束されていった魔力弾は輝きを増していき―――、


「———ここまでだな」


 そう呟いたカズキが、掌の魔力弾を握りつぶされたことで、魔力が宙へ霧散する。

 籠手の文様から煙が放熱するかのように、魔力の残滓があふれ出す。


「こうやって、俺も系統強化ができるようになった。まだまだ出力の調整が難しいし、使った後はしばらく籠手の機能が制限されるけどな」

「いや、それでも相当やばい感じがしたけど……」

「ああ、ぶっちゃけすっげぇ危ない。少なくとも味方がいる場所では使えないな」


 苦笑交じりにそう言葉にするカズキだが、僕から見ても彼の系統強化は群を抜いて強力なものだ。

 できることなら、彼が系統強化を使うような相手が出ないことを祈るしかないな。


「それじゃ、俺の紹介は終わりだな」

「うん。それじゃあ、次は私の番だね」


 カズキと入れ替わるように前へ歩みでた先輩。

 彼女の左手首には、黄色と黒のリボンのようなものが巻かれており、カズキの時と同じように光ると、それは鞘に納められた刀が現れる。

 左手で鞘を握りしめた先輩は、嬉しさを隠せない笑顔を僕へと向けてくる。


「私のは刀だよっ! 日本刀だよっ!」

「嬉しいのは分かりますから、少し落ち着いてください」


 どんだけ嬉しいんですか。気持ちは分かりますけれども。

 でも……今の籠手も気に入っているけど、刀もいいな。

 人を傷つける武器は手にするつもりはなかったから籠手という形になったけれど、もし僕が救命団の治癒魔法使いでなかったら、先輩のように刀の形になっていたかもしれない。


「ネア。もし、僕の武具が籠手じゃなく、刀だったら――」

「斬った相手を治す。もしくは痛みだけを与える刀かしらね」

「まだ全部言ってないんだけど」


 なにその、相手に苦痛しか与えない刀。

 あれかな? 治癒パンチの刀版かな?

 どちらにしろ、刀の扱い方を知らない僕は鞘に納めたまま鈍器として使うのは目に見えているだろうけれども。


「銘は“犬丸”っていうんだ」


 自慢気に語った先輩に、我に返りまじまじと刀を見る。

 黒色の鞘に、雷を思わせる紋様が刻まれた鍔。

 実物の刀を見るのは初めてだけれど、思ったよりも重厚な雰囲気がある。

 しかも、犬丸って銘は……。 


「なるほど、犬上先輩の“犬”をかけたわけですね? 敢えてのシンプルさで攻めた感じですか?」

「分かる? 分かっちゃう?」

「ええ、勿論です。敢えてのシンプルがいいですよね」


 うんうん、と頷く先輩に同意する。

 無駄に凝った名前をつけると後々忘れそうでもあるし。


「なんで分かるのかしら……?」

「ダサいってことは分かる。それ以外は分からん」


 僕と先輩のやり取りを見て、困惑するネアとフェルムが何かを呟いているが、今は先輩との話に集中しよう。

 今から、勇者の武具――犬丸の能力を教えてくれるようで、僕達から少し離れた先輩は柄に手をかけ、鞘から刀身を引き抜いた。

 薄い黄色い光を帯び、濡れたような光沢を放つ刀身が露わになる。

 すると、刀身から柄へ電撃が迸り、先輩の体へと流れ込みそのまま帯電する。


「私の刀は、魔力出力の補助、切れ味の強化、電撃による追加攻撃が主な能力だね。因みに、今が以前でいう雷獣モードにあたる状態だね。名付けるなら……雷獣モード2ってところかな?」


 雷獣モード2というと、運用が改善されただけではなく純粋に強化されたってことか。


「前はすっごいバチバチしていましたが……今は、かなり落ち着いていますね」

「そうだね。以前の雷獣モードは、無駄に電撃を放出していたせいで、持続時間が極端に短かったんだ。それを、この刀が解決してくれたのさ」


 刀を軽く振った先輩は、そのまま目の前から一瞬で掻き消えた。

 なんとか目で追えるが、その速さは以前よりも増し、捉えづらくなっている。

 ステップを踏むように緩急をつけて移動している先輩の姿は、まるで分身しているように錯覚する。


「すごい……」

「うわぁ。ここまでくると引くわ。人間ってここまで速く動けるのね」

「そうだね。僕とは比べ物にならないよ」

「……貴方は人間だけど、人間の枠に入ってないでしょ……?」


 微妙な表情で僕から視線を逸らしたネアに、釈然としない気持ちになりながら、元の位置に滑るように着地した先輩へと視線を戻す。

 刀を払い電撃を散らした先輩は、残心をとりながらゆっくりと刀を鞘へと納めた。

 心なしかドヤ顔で、納刀した彼女に声をかけてみる。


「先輩」

「……フッ、なにかな? 因みに私は褒めて伸びるタイプだ」

「え? えと、かっこよかったです」

「……」


 褒めるように催促したのは自分なのに、どうして照れるんですか……?

 なんだかこっちまで照れるのですが……。

 咳ばらいをして気を取り直して話しかける。


「それはそうと、練習しましたね?」

「うん!」


 うわぁ、すっごいいい笑顔。

 上機嫌に刀をリボンの状態へと戻した先輩はこちらに戻ってくる。


「さて、次はウサト君だね」

「え? 僕ですか?」

「うんうん」

「でも、僕の籠手の特性は二人とも知ってますよね?」

「あ、違うよ。私が知りたいのは——」


 目を爛爛と輝かせた先輩は、一旦言葉を区切ってから口を開いた。


「戦場で見た、白黒のウサト君のことさ!」

「シロクロ? って、ああ、あれですか!」


 そういえば、あの時「後の楽しみにする!」って言ってたな。

 すっかり忘れていたけれど、なんというか、今ここで説明することになるとは思わなかった。

魔力の暴発の次は弾力ですね。

弾力を生かした治癒スパイクとか強そう。


ウサトは直接的な攻撃力を高めるよりも、変態的な技術でなぜか攻撃力が増していきます。


次回の更新は、明日の18時を予定しております。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 意図的にダサい名前考えるのは本当に大変だと思う。 なんて残念なんだこの人。 雷の刀だから『雷刃(ライジン)』とかにしておけばもうちょっと格好ついたのに…
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