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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第八章 決戦、魔王軍との戦い
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第百九十三話

二話目の更新です。

前話を見ていない方はまずはそちらをー。

 犬上先輩の放った電撃は、コーガとアーミラへと真っすぐに突き進み直撃した。

 電撃が迸る音と光で、どうなっているのかは分からないが一先ずは、足止めできていると考えていいだろう。

 コーガとアーミラに攻撃が直撃したところを見届けた先輩はぐるんっ! と擬音がつきそうな勢いでこちらに振り返ると、興奮しながら僕へ詰め寄ってきた。


「ウサト君! その姿は物凄く、物凄く気になるけどッ! あえてその姿について聞かない!」

「え、は、はい……?」

「あとの楽しみにする!」


 ……いや、なんの?

 困惑する僕の返答を待たずに満面の笑みで頷いた先輩は、再びコーガとアーミラのいる方へと向きを変える。


「じゃ、いってくる!!」

「あ、はい。いってらっしゃい……じゃない!? ちょ、先輩!?」


 相変わらずのテンションで会話を切り上げた先輩は、電撃を振り払ったアーミラへと剣で斬りかかった。


「ッ、勇者か!」

「君の相手は私がさせてもらおう!」


 雷撃を纏った先輩の剣を炎を纏いながら受け止めたアーミラは、押し込まれるように、僕達から遠ざかっていく。


「あ、相変わらず嵐みたいな人ね、スズネって……」

『アーミラとコーガを分断させたのか……?』


 ネアとフェルムの呟きに僕も頷いていると、やや遅れてカズキが僕の後ろからやってくる。

 こちらに駆け寄ってきた彼は、僕の姿を見て驚きの表情を浮かべた。


「よかった……間に合った。って、すっげぇ見た目変わってる!? どうなってんだ、それ!」

「カズキ、君もここに来たのか!? どうして……」


 僕の質問にきょとんとしたカズキはまっすぐに僕と視線を合わせた。


「ウサトを助けに来た……じゃ駄目か?」

「!」


 不意の言葉に言いようのない気持ちが湧き上がる。

 なんとか感情を押さえこんで、僕は首を横に振る。


「……いいや、全然駄目じゃない。ありがとう、本当に助かった」

「俺も先輩もウサトに助けられたからお相子だよ。それに……」


 カズキの視線が電撃を受け切ったコーガへと向けられる。

 彼は僕の動きに対応するため、さらに闇魔法の衣を纏い形を変えながら僕とカズキの動きを見ている。


「軍団長が出ているとなれば、俺達勇者が出張るしかないからな……」


 確かに、軍団長が相手なら勇者であるカズキと先輩、それにハイドさんやシグルスさんが出張らなくてはいけないだろう。

 僕が戦った限り、軍団長クラスの実力者は物量でなんとかできるほど甘くはない。

 僕もネアとフェルムにサポートしてもらって、ようやく追い詰められたくらいだしね。


「で、ウサト、あそこにいるのがコーガって奴か?」

「ああ、とんでもなくタフな奴でさ。さっき散々攻撃したんだけど、効果は薄いみたい」


 体はともかく、精神的なダメージとか負っていないのだろうか?


「僕以上にしぶといかもしれないな、あいつ」

「『それはない』」


 ネアとフェルムに否定されるのは薄々分かっていた。

 そうだよね。僕もフェルムに取り付かれてから相当、防御面が強くなった自覚がある。

 小さくため息をついた僕に、カズキは笑みを零した。


「ウサトから賑やかな声がするな」

「この短い時間で、同居人みたいのが増えちゃったんだよ」

「はは、なんだそれ」


 あながち間違ってないんだよね……。

 今の僕とフェルムの状態とか解除できるよね? 考えないようにしていたけど、不安になってきた。

 軽口を叩き、気を引き締めた僕は眼前のコーガを睨みつけ、構えを取る。

 そんな僕にコーガは仮面を解除し、その素顔を晒した。


「俺は二人ががかりでも一向に構わないぞ? 勝とうが負けようが、戦えればそれでいいからな」


 どこか上機嫌な様子でコーガはそんなことを口にする。

 勝敗は度外視で、むしろ戦いそのものを欲しているってことか。


「……カズキ、二人で戦えばコーガを倒せる。一緒に戦おう」


 コーガは強敵ではあるが、僕とカズキが力を合わせれば押し切れない相手ではないはずだ。

 そう思い共闘を提案したのだけど、隣の彼は首を横に振った。


「いや、ここは俺と先輩に任せて、ウサトは他の人達を助けにいってくれ」

「え? でも……」


 カズキの言葉に思わず、彼の方を見てしまう。

 彼は僕を安心させるように笑いかけながら、続きの言葉を口にする。


「俺達なら大丈夫だ。それに、ウサトに大事な頼みがあるんだ」

「頼み?」


 頼みとはなんだろうか?

 首を傾げる僕に、カズキは前を向いたままの口を開いた。


「魔法で人を操っている魔族がいるって話を知ってるか?」

「うん、僕も操られた人に襲われたよ」


 味方を催眠し、無理やり仲間割れをさせている魔王軍の術者。

 まずその人をなんとかしなくちゃ、戦況はさらに厳しいものになるだろうけれど……どうして今、その話を出してきたのだろうか?


「そいつがいる場所をフラナが見つけた。戦場の中央付近、敵と味方の区別すら曖昧になる場所で、術者は騎士達の洗脳を行っているらしい」


 人を欺くという点で似た性質の幻影魔法を持つ彼女だからこそ、催眠を行っている魔族を見つけることができたのだろう。

 確か、僕が味方の騎士に襲われた場所も中央に近かったな。

 だとすれば、そこに潜伏して静かに仲間を増やしていたってことになるのか。


「フラナ一人に任せてしまったけど……嫌な予感がするんだ。ウサト、頼めるか?」

「分かった。僕達が助けにいく」


 即答した僕に目を丸くするカズキ。

 どちらにしろ、前線に行かなくてはならないし、僕としても味方の騎士が操られて仲間割れをしている状況を見過ごすことはできない。


「ありがとう。……フラナにも同じことを言ったけれど、気をつけてくれ」

「カズキも、あんな全身タイツ野郎に負けるんじゃないぞ」

「ああ!」


 互いに頷き、その場を駆けだす。

 僕のすぐ後ろで強烈な光と鉄を弾くような金属音が響くが、それに構わず目的の場所へと真っすぐに進んでいく。

 ローズに託され、カズキにも頼まれた。

 やることは多いけれど、それが他の誰かのためになるなら僕は全速力で前に進んでいこう。



 ウサト君が敵の第一軍団長と思わしき人物と交戦している。

 戦いの最中、その知らせを耳にしたとき、私は文字通りに血の凍るような感覚に陥ってしまった。

 それはカズキ君も同じだったのか、酷く動揺していた。

 動揺していた理由は他にもある。

 なにせ、魔王軍の最高戦力である軍団長が、たった一人で出てきているとは想像もしていなかったからだ。

 普通は数で上回る相手に一人で挑むなんて正気の沙汰ではないはずなのだが、ウサト君が相手をしていた者は、こちらの陣形の半ばまで騎士達を切り伏せながら進んできていた。

 正直、ぞっとした。

 たった一人でこちらの陣形をかき乱されたこともそうだし、そんな危険な相手とウサト君が相対していたことに。


「ウサト君がいなかったら、今頃拠点は落ちていたかもしれないね……!」


 足に部分的な電撃を纏わせながら、炎を纏うアーミラに電撃を放つ。

 剣を大きく振るい電撃を打ち消したアーミラは私の動きを目で捉え、小さく口を開いた。


「確かに、邪魔がなければ師匠は容易く貴様らの拠点を陥落させていただろうな」

「……というと、第一軍団長は、君の師匠なのかな!」

「然り」


 中距離からの電撃での攻撃を与えていくが、一向に攻撃が通らない。

 あの体に纏った炎のせいかな?

 私と似ているが、あれは防御に比重を置いているような気がする。

 私も無策で飛び込めば、致命傷は免れないだろうな。


「近づくなら、私も相応の魔力を纏わなきゃ駄目ってことか! なら!」


 一瞬だけ雷獣モードを発動させ、ウサト君でさえ対応できなかった速さでの攻撃を試みる。


「その技は……!」

「フッ!」


 相手の呟きを無視して、すれ違いざまに首元へと斬りつける。

 確実に首を捉えたが、それはアーミラが前触れなく構えた剣に当たり防がれてしまう。


「反応された……!?」

「狙いが正確すぎるのも考えものだぞ? 攻撃が正直すぎる」

「そうかい? 正直者だなんて言われることはあまりないんだけど!」


 主にウサト君関係でね……!

 盛大な自虐をしたあとに、アーミラの振り下ろした剣を避け、距離を取る。


「対人経験のなさが浮き彫りになったな……」


 野生の魔物とかの戦いなら得意なんだけど、対人、それも一定以上の実力者との戦いとなると圧倒的に経験が足りない。

 そして、目の前のアーミラは確実に私よりも多くの場数を踏んでおり、その戦い方もこちらを迎え撃つ形に変えている。


「さすがだな」

「んん?」


 アーミラからの思わぬ賞賛の言葉に足を止める。

 鎧のように纏った炎の勢いを弱めた彼女は、よく通る声で語り掛けてくる。


「お前の使っている技術、それは我流か?」

「……ああ、ある魔物の戦い方を参考にして会得したものさ」

「だとしても大したものだ」


 書状渡しの旅で遭遇した魔物、雷獣との戦いで編み出した戦闘法。

 それを褒められて嬉しくないわけではないけれど、今の状況で喜べるはずがない。


「独学でそれを可能にし、魔族のように肉体的に頑丈ではない人間が行っている時点で驚異的だ。できることなら、未完成のままで始末しておきたい」

「……それはつまり、私の雷獣モードが完成すれば、君にとって厄介なことになると思ってもいいのかな?」

「……らいじゅう……? もーど?」

「雷を纏う魔法のことだよ……!」


 普通に首を傾げられて、赤面しながら訂正する。

 ジェネレーションギャップ……! 旅の最中に何度も経験したけど、これだけは慣れない……!


「勇者の言葉は分からんな。だがそうだな……貴様の言う通り、その技術が完成すれば私達にとって脅威になる」


 その言葉を機にアーミラが身に纏った炎を燃え上がらせた。

 無駄話もここまでってことか。

 ……今のところ、アーミラの攻撃は私に当たることはないが、私の攻撃もアーミラに届く気配はない。

 でも、それも時間の問題だってのは私も彼女も分かっている。


「なら、この戦いで成長してみせれば問題ない……!」


 目の前には到達するべき境地にいる魔法の使い手がいる。

 これ以上にない見本を前にして、私のやるべきことは決まっている。

 戦いの中でアーミラの技を盗み、吸収していく。


「私が勇者だというなら、それができない道理はない!」


 いくぞ、私!

 自分を奮い立たせるように電撃を纏った私は、眼前の強敵へと向かっていく。



 コーガ、アーミラと邪魔が入ったけれど、犬上先輩とカズキがきてくれたおかげで、僕はようやく白服としての役目に戻ることができた。

 カズキに頼まれた目的の場所へ向かっていると、肩の上にいるネアが話しかけてくる。


「ウサト、まずはどうする?」

「まずは怪我人を癒しながら中央へ行こう。ネア、君なら味方を操っている人を見つけられないかな?」

「その場に行かなくちゃ分からないわ」


 まずは現場に行くことが最優先か。

 それに、僕が襲われている時のように治癒魔法使いを狙っている以上、放っておいていい問題じゃない。


『ボクもできるだけ手伝う』

「うん、一緒に助けよう」


 ようやく調子の戻ってきたフェルムの声に強く頷きながら、僕は再び戦場を駆ける。

 竜巻で吹き飛ばされ、怪我を負い気絶した人たちは黒服と後方の騎士達が助けているから、心配せずに先に行こう。

 視野を広く持ちながら、最前線へと踏みこむ。

 僕が戦っている間も戦況は熾烈さを増し、兵士同士の白兵戦も、陣形も何もない荒々しいものへと変わっていた。

 ぐるりと見まわした僕は、怪我をした騎士を見つけると、左手首から帯を延ばし絡めとると同時に引き寄せた。


『ウサト、お前の体に怪我人を固定させる』

「頼む!」


 治癒魔法を施しながら、おぶるように背中に移した騎士が団服から伸びた黒い帯により固定される。

 がっちりと騎士が背中に固定されたことを確認した僕は、思わず感嘆とした吐息を漏らしてしまう。

 すごい、両腕が自由になる。

 これならより多くの人を連れていける……!


「ウサト、あっち! 味方が囲まれてる!」

「なに!?」


 ネアが翼で示した方向を見ると集団に囲まれている三人の空色が特徴的な騎士の姿が見える。

 あれは、会談で何度か見たサマリアールの空色の鎧の騎士……!

 一人が手傷を負い、二人が庇いながら戦っているようだけど、味方から孤立した状態では長くはもたない!


「あの包囲を飛び越える!」

「は? 飛び越えるって、貴方なにするつもりぃぃ!?」

『うわぁぁ、なにやってんだ! お前ぇ!?』


 全力疾走してからの、魔力の暴発を利用した跳躍。

 それにより、空色の騎士達を包囲する魔族の兵士の頭上を飛び越え着地すると同時に、右拳を勢いよく地面へ叩きつけ、放射状の魔力による衝撃波を放つ。


「治癒転倒拳!」

「「うぉ!?」」


 突然の足への衝撃にバランスを崩し、前のめりに倒れかける兵士。

 するとフェルムが僕の左腕を盾のような形に変形させてくれたので、そのまま盾での体当たりをバランスを崩した兵士に仕掛け、包囲に穴を空ける。


「隊長! 騎士を背負ったウサト様が、目の前に落下してきました!」

「フッ、足掻くといいこともあるようだな。ゴフッ」

「隊長ぉぉぉ!?」


 なんで一番重症な人が元気そうなんだろうか。

 ……いや、部下と思われる人たちも少なからず怪我をしている。すぐにこの場から連れ出さなくちゃな。

 怪我をしている隊長さんを抱えた僕は周りを睨みつけながら、フェルムへと声をかける。


「フェルム! この二人も僕に固定してくれ!」

『え、この人数だぞ?』

「問題ない!」

『わ、分かった』


 団服から伸びた黒い帯が、状況についていけない空色の騎士に巻き付き、そのまま背中にいる騎士と同様に固定される。

 でも、騎士達の方は大丈夫だろうか?

 走り出す前に、そちらを確認してみる。


「安定感すごいです!」

「……ッ!? ……ッ!?」

「隊長がかつてない状況に言葉を失ってます!?」


 ……大丈夫そうだな! うん!

 しっかりと隊長さんを抱えた僕は、全力で地面を蹴り、先ほどなぎ倒した包囲の穴へと突き進む。


「突破します!」

「ひぇ……!?」

「人間の塊が襲ってくる!?」

「ひ、轢かれる!?」


 なぜか襲い掛からず、逃げ惑う魔王軍の兵士達。

 こちらとしては、避けてくれるだけ好都合だけども。

 すぐさま前線から離脱し、怪我人の二人と空色の騎士を下ろした僕は改めて自分の力を再確認する。


「よし、このままいくぞ」

『……ネア、ウサトってずっとこんな動きしているのか?』

「ううん、多分もっと酷くなると思う」


 副団長として、ローズの分まで僕が動く。

 それこそコーガに足止めされていた分を取り戻すつもりでいく。

 ネアとフェルムの言葉を聞き流した僕は全速力で戦場を駆け、フラナさんのいる場所へと向かうのであった。

そんな意図は全くなかったのに、ウサトがデ●フィング第三形態みたいなことになってる……。


次話の更新は明日の18時を予定としております。

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― 新着の感想 ―
[一言] どっちかと言えば肉づきの面(漫画ver.)
[一言] どんどん人外起動は極めてる
2021/12/25 22:31 名無しのウサト保護者
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