第百九十一話
三日目の更新です。
前話、前々話を見ていない方はまずはそちらをー。
それでは、コーガとのエンカウントでイライラを募らせるウサトをご覧ください。
魔族だったボクが救命団の一員として戦場を駆け、敵として戦っていた人間を救っている。
奇妙な話だ。
少し前の自分なら想像もつかないだろう。
「怪我人を連れてこい」
「グァー!」
黒服としての使命は、戦場での怪我人を拠点にまで運んでいくこと。
ボクの素顔が見られないように気を付けなければならないが、魔法により作り出された団服のフードを被っているおかげでばれる心配はない。
ブルリンの背のベルトに傷口を止血された騎士をしっかりと固定しながら、近くにいる騎士に話しかける。
「……ここでなにがあった?」
“回復魔法も治癒魔法も受け付けない怪我人が出ている。救援、求む”
ブルリンと共に怪我人を担ぎながら拠点へ戻ったボクと他の黒服達に、そんな報せが届いた。
大人数を運べるブルリンとボク、トングとアレクが現場へと向かうことになったのだ。
依然として空を飛び回る飛竜たちを警戒しながらも、リングル王国の騎士の一人がボクの質問に答えた。
「とてつもなく強い敵が現れたんです……。そいつの攻撃を受けると、ウサト様の治癒魔法でさえ受け付けなくなってしまって……」
「まさか……」
魔王軍にいた時、魔力の流れを断ち切る魔剣を持つとてつもなく強い魔族がいると聞いたことがあるけど、まさかそいつがいるのか?
そいつがどういう奴なのかは知らないが、持っている剣からして相当やばい奴だ。
いや、それよりも……。
「ウサトがここに来たのか?」
「はい。あの方は……この場で私達に指示を出したあと、単身で敵の元に……。今、勇者様に応援を頼んでいるところですが———」
あの異様なほどに人の良いあいつなら、これ以上の怪我人を出さないために敵を抑えに向かってもおかしくはない。
しかし、その相手は明らかに普通ではない。
騎士がウサトが向かっていったであろう方向を見る。
「……」
ウサトの向かっていった先は、戦場の最前線。
その上空では飛竜が飛び、こちら側の騎士と魔王軍の兵士たちが熾烈な争いをしている。
「おい! ボサッとしてんじゃねぇぞ、フェルム! さっさとこいつらを連れていくぞ!」
「っ、ああ! 分かってるよ!」
ボクにはボクの役割がある。
魔王軍の黒騎士としてではなく、救命団の黒服として人を救う。
本音を言うのなら、ウサトの援護に行きたい気持ちもあるが、それをしたらあいつが怒るのは分かりきっている。
今しがた戻ってきたトングの怒声に返し、ブルリンの元へ駆け寄る―――その瞬間、戦場へと背を向けたボクの背後から、とてつもない突風が吹いてきた。
「うぉっ!?」
「グルァ!?」
「なんだァ!」
体勢を崩しかけながら、なんとか戦場へと目を向ける。
ボクの視線の先には、巨大な竜巻が存在していた。
空にいる飛竜すらも叩き落とし、敵味方問わず吹き飛ばしていく暴風を発生させるそれを見て、呆然とする。
「なんだよ、あれ」
あれだけの規模の魔法は見たことがない。
というより、人為的に自然現象に等しいことができる時点で普通ではない。
竜巻が起こっている場所は——ウサトが向かっていった場所のはずだ。
「ッ、ブルリン! トングについていけ!」
「グァ!?」
「は!? お前、どこいくんだ!」
いてもたってもいられず、竜巻が起きた方向へ駆けだす。
あの竜巻で怪我をした人がたくさんいる。
気絶している人もいる。
助けを求めている人もいる。
だけど、なによりもたった一人で戦いにいったあいつのことが心配でたまらなかった。
●
最も会いたくない奴、と質問されれば真っ先にこいつを思い浮かべるだろう。
『獣』の能力を持つ闇系統の魔法を扱う男、コーガ・ディンガル。
一息で距離を詰めたコーガの突き出した爪を、僕は咄嗟に構えた籠手で受け止める。
ギャリィッ! と耳障りな金属音を響かせながら、コーガは僕の顔を覗き込むように仮面に覆われた顔を近づけた。
「ネロのおっさんと戦ってるっつって飛んできたが、随分と元気そうじゃねぇか!」
「……僕の顔を見て元気そうに見える?」
「いいや! すっげぇ嫌そうな顔だ!」
「分かってんなら来ないで欲しいな」
腸が煮えくり返る、というのは今の僕のことを言うのだろう。
仮面の上からでも分かるほどの喜色の声に、僕はイラつきのあまり血管がはちきれそうになる。
今、この脳筋魔族に構っているほど僕は暇じゃない。
「お前に構っている暇はねぇんだよパァーンチ!」
「おおぅ!?」
爪をはじき返し、拘束の呪術が込められた治癒瞬撃拳を叩き込む。
拳がめり込むほどの衝撃で後方に吹っ飛んだコーガを一瞥してから、踵を返した僕はその場を走り出す。
これで倒せるとは思っていない。
だが、怯んだ隙にこの場を離脱できればそれでいい!
「おっと、逃がさねぇぞぉ!」
「……っ!」
しかし、背後から聞こえたその声に振り返り、僕へ突き刺さらんと伸びてきた黒い帯を回避する。
舌打ちをしながらコーガを睨むと、彼は顔を覆っているマスクのみを解除し、こちらへひらひらと手を振ってきた。
「しぶといな。さっきので倒れればいいものを……」
「うわ、治癒魔法使いとは思えねぇ発言。まぁ、さっきの攻撃は俺も予想外だった。だがな――」
コーガは自信満々に自身の纏う闇の魔法を指さした。
「今の俺には効かないんだな、これが」
「……」
見たところ拘束の呪術も破られているな。
攻撃を受けた直後に力技で壊したのか?
いや、よく見るとコーガの姿も微妙に違っている? 以前とは違い、爪もよりコンパクトな形状となり、黒い帯は鬣のように背中へと流されている。
獣に近かった姿が、人間寄りになっている気がする。
「その姿は……」
「あの戦いの後、少しばかり近接用に作り直したんだよ。より速く、より頑強にな」
口ぶりからして連撃拳への対策もされているな。
まさか、僕と戦った影響でコーガの闇系統の魔法が変質したってことはないよな?
……そうであってほしくない。
「お前とは二度と会いたくなかった……」
「つれないこと言うなよ。ネロのおっさんと交戦してるって聞いて、心配して飛んできてやったのに」
「心配? お前が僕を?」
「ああ」
数秒の沈黙のあと、顔を真っ青にしたネアが翼で僕の頬をぺしぺしと叩いた。
「ウサト、こいつ気持ち悪いんだけど……」
「うん。僕も同じこと思ってる」
「普通に酷くない? こんな俺でも泣くときは泣くんだぞ?」
ネアの言う通り、マスクを被った全身黒タイツ男にそんなこと言われても微妙な気持ちになるだけだ。
しかも、心配するってのが僕が死ぬとかじゃなくて、自分と戦えなくなる心配ってのがやばすぎる。
「さ、無駄話もここまでにして、さっさとやろうか」
「……」
どうにかしてこいつを撒けないものか……。
なんとか隙をついてこの場を打開する算段を考えている僕に、コーガは意地の悪い笑みを零した。
「よし! お前が逃げたら、ここで気絶している兵士達の首をへし折ろう。勿論、一人残らずな」
「は?」
「このまま単身で拠点に突っ込んで、非戦闘員を片っ端から始末していくのもいいな」
「……」
陽気にそう呟く声色からして、その言葉が本気かどうかは分からない。
一度戦ったからこそ、コーガが戦えない人を一方的に殺す奴じゃないのは分かっている。
しかし、ヒノモトでの戦いの時と同じだ。
“もしかしたら、こいつならやりかねない”
コーガは僕との戦いを心の底から望んでいる。
そのためなら手段を選ばない。
彼がそんな行動に出るかもしれない、と思えてしまった時点で僕には逃げるという選択肢はなくなっていた。
「どうだ? やる気になっただろ?」
「……お前、やっぱり性格最悪だ」
「お前も相変わらずだよ。だからそういう馬鹿正直なところを気に入っているんだ」
コーガがマスクで頭を覆い、僕も両腕に拘束の呪術を纏わせながら拳を構える。
治癒飛拳で目潰ししてからの治癒瞬撃拳。そのまま、密着状態から治癒連撃拳を連続で繰り出し、一気に意識を奪う。
最早、出し惜しみせず最大火力で意識を刈り取る。
我ながら物騒な思考になりながら、予備動作なしでの治癒飛拳をコーガの顔面に向けて放とうとしたその時――、
『そんなバカの挑発に乗るなぁ! この脳筋バカ!』
その声と共に、側方から伸びてきた黒い帯がコーガの体に巻き付き、その動きを拘束した。
黒い帯はコーガのそれと似ているが、彼のものではない。
「おいおい、こいつはまさか……」
「この声は……!」
僕とコーガが驚きながら黒い帯が伸びてきた方向を見ると、そこには黒い団服を着た魔族の少女、フェルムが息を切らしながら、袖口から伸びた黒い帯を掴んでいた。
フェルムを見た瞬間、僕は考えるよりも先に怒声を上げてしまう。
「フェルム! なんでここに来た!」
フェルムの役割は怪我人を運び拠点へ連れていくことなのに、彼女は僕の元へ現れた。
自身の黒服としての仕事を投げ出して、この場へやってきたことに僕が怒るのは予想できていたのか、フェルムはコーガを拘束している黒い帯を握りしめながら怒鳴り声を返してくる。
「お前がやばい奴と戦ってるって聞いて助けにきたんだよ!」
「僕のことはいい! それよりも――」
「よくないだろ! バカなのか! お前!」
怒りすら感じさせるフェルムの声に僕は驚いてしまった。
感情のままに僕に怒鳴りつけた彼女は、握りしめた黒い帯を引っ張りながら、続けて僕へと声を張り上げてくる。
「いいから、そのバカ軍団長を早くぶん殴れ! 仕留めろ!」
「バカ軍団長!? お前ッ、元上司になんて――」
「ウサト! フェルムのいう通り、動きを封じられた今がチャンスよ!」
「……ああ!」
ネアにも急かされ、致し方なくコーガへと治癒連撃拳を叩き込もうとする。
しかし、拳が当たる直前にコーガ自身の纏う黒い帯が刃のように体から展開することで、フェルムの拘束を引きちぎった。
「なっ!?」
「生憎だが、フェルムより俺の魔法の方が強度が高いんでね!」
そう叫び、コーガの放った回し蹴りの直撃を受け地面へと叩きつけられる。
――ッ、不意を突かれた! まずい、追撃を避けなくちゃ……!
「危ないっ!」
そんなフェルムの声と共に、僕の腕に巻き付いた黒い帯が体を大きく引っ張った。
その次の瞬間には、僕のいた場所にコーガの振るった爪が突き刺さる。
それを目にしてすぐに転がり起きた僕はコーガから距離を取り、助けてくれたフェルムへと視線を向ける。
「フェルムがいなかったら危なかったわね……」
「ああ、こりゃ彼女を怒るに怒れないな……ん?」
なんだ? 黒い帯が巻き付いていた腕に違和感が……。
腕を見ると、そこには依然として黒い帯が巻き付いている。
それはすぐにフェルムの元へと戻っていくが、腕に巻き付いている部分の魔法だけは、僕の腕に張り付き抵抗するような反応を見せてから離れていく。
「……?」
「余所見している暇があるのか?」
「……僕はお前とは戦いたくないんだけどな……」
「そんなのは俺には関係ないしな。それに、俺はお前ともう一度戦える日を楽しみにしていたんだ。色々と準備もしてきたし、思う存分にやらせてもらおう」
地面に両手をついたコーガが身を低くする。
まるで四足の獣のような態勢でこちらを睨みつけた彼の背中から、十数本の黒い帯が展開される。
「今度の俺は、前よりも厄介だぞ?」
そう口にしたコーガの背の黒い帯が、束ねられ黒い鎌のようなものを形成する。
その数、四つ。
鎌を背中から生やし——蜘蛛のように広げたコーガは、それらを伴い僕へと襲い掛かってくる。
「なにそれ、キモ!?」
「かっこいいの間違いだろ!」
ひゅんっ! と束ねられた帯に繋がれた鎌の一つが僕の首元目掛けて大きく振られる。
ネアを庇いつつ、かがんで避けると次はコーガ自身が背中の鎌を伴って襲い掛かってきた。
「そらそらぁ!」
「ッ!」
避けられる攻撃は避け、それ以外は籠手で弾く。
せわしなく目を動かしながら、コーガの攻撃を一つずつ対処していくが、手数の差はどうしても埋めることはできない。
「タコと戦っている気分だ……!」
「俺は高速で動き回る鉄鍋と戦っている気分だよ!」
「生き物ですらねぇじゃねぇか!」
軽口を叩きながらも、コーガの攻撃は的確に僕の関節と急所を狙ってくる。
そのターゲットにはネアも含まれているのか、度々コーガの背中の鎌がネアへと向かっている。
「ぎゃー!? ウサト! 今、目の前をヒュンって!?」
「ネア、僕の世界では心頭滅却すれば火もまた涼し、という言葉がある!」
「その意味は!?」
「諦めが肝心!」
「うわーん!? 全然励ましにならなーい!」
ごめん、今めっちゃ適当言った。
しかし混乱しながらも、耐性と拘束の呪術を施してくれているネアにありがたく思いながら、コーガの胴体に肘を叩き込む。
その際に彼から頭突きを食らってしまうが、なんとか耐える。
額を切ってしまったのか、血が眉間を通り滴っていく。
「痛……ってぇなァ!」
「おぐ!?」
お返しとばかりに血にまみれた額のまま、コーガへと勢いの乗った頭突きを返す。
驚きの声を上げ、のけぞったコーガから数歩ほど距離をとった僕は、額の傷を癒した手で髪をかきあげる。
「ハハハ、あー、やっぱり楽しいな」
「だからお前と戦うのは嫌なんだ……」
「お前が嫌でも、俺は終わらせない。第二軍団長として、戦場を駆ける治癒魔法使いは倒さなきゃいけねぇっていう建前もあるから……な!」
より近接戦闘に特化させたとあってコーガの動きは前回戦った時よりも速く、とてもやりにくい。
僕の集中力もそうだけど、ネアの消耗も激しいので多少無理やりにでもコーガとは距離を取るべきだな。
そう判断し、追撃しようとするコーガの腹部に籠手に包まれた右拳を、今まで使っていない技――治癒飛拳を放つ。
「なっ!?」
まさか予備動作なしで攻撃が来るとは思っていなかったのか、治癒飛拳はそのままコーガの腹部に直撃し彼の体は後ろへ大きく退いた。
これで距離は稼いだ。
「よし、一旦距離を――」
後ろへ下がろうとした僕の足元にコーガの背から伸ばされた二つの鎌が突き刺さった。
驚きながら飛ばされたコーガを見ると、彼はのけぞりながらも背から伸びた鎌を地面に突き刺し、自身が吹き飛ぶのを無理やり堪えていた。
それどころか、僕の足元に突き刺した鎌で自分の体を引き寄せ、凄まじい勢いでこちらへ突っ込んできた。
「容易に距離を取らせると思ったら大間違いだぞ!」
「思っていた以上に厄介だな……!」
ネロ・アージェンスとは違うが、彼の背から伸びた鎌は攻撃だけではなく移動から防御にまで使える。
舌打ちをしながらコーガを迎え撃つつもりでいると、フェルムが闇魔法の黒い帯をコーガに巻き付けた。
今度は切られてもいいように、何重にも縛り付けている。
「うぐぐ……」
拘束されながらもコーガは、必死に黒い帯を掴んでいるフェルムへと視線を向けた。
「おお、他人のために動いているのか。変わったな、お前」
「うるさい!」
「あと、ウサトと同じ服って普通にびっくり」
「それは本当に黙れ!」
何か言い争いをしているけど、このままフェルムの黒い帯と合わせて、拘束の呪術と連撃拳で動きを封じる!
「さすがのお前でもこいつを十回叩き込めば効くだろォ!」
「げぇ!? ちょ、お前……!」
右腕の籠手に拘束の呪術を纏わせ治癒連撃拳の態勢へと移った僕を見て、焦ったような表情を浮かべたコーガは自身を縛り付けるフェルムの帯を背中の鎌で断ち切った。
「なっ!?」
「お前の変化は俺にとっても嬉しいが……! その技はすっげぇ痛いので食らってやれねぇな!」
「うわぁっ!?」
そのまま逆にフェルムの伸ばした帯を掴みとり、そのまま力任せに引き寄せた。
ゴムの反動のようにフェルムが引き寄せられた先にいるのは、今まさにコーガへ拳を叩き込もうとしている僕であった。
「ウ、ウサトッ」
「フェルム!?」
あれだけの勢いで地面に叩きつけられたら大怪我は免れない。
そう判断した僕は連撃拳の構えを解いて、フェルムを受け止める。
「——大丈夫か!?」
「あ、ああ」
思いのほか、衝撃が少ない。
そんなことを考えた瞬間——、彼女の体は自身の闇の魔法により作られた黒い団服に包まれた。
彼女自身、意図しないものだったのだろう。
包み込まれる寸前「え?」と声をもらした彼女の表情は、意味も分からず呆然としているように見えた。
「「「……」」」
突然の事態に、僕もネアも――コーガも硬直する。
しかし、事態はそれだけでは終わらない。
そのままスライムのような真っ黒な不定形の塊へと変わった彼女は——液状化するように崩れ、受け止めた僕の腕を伝って団服の中へと潜り込んできた。
腕から伝わるぬるりとした感触と、訳の分からない事態に僕とネアは普通に絶叫した。
「うわぁぁぁ!? フェルムゥゥ!?」
「ウサトが寄生されたぁぁぁぁ!?」
フェ、フェルムは大丈夫なのか!?
自分の魔法にのみこまれて、それであんな風になるなんて思いもしなかったんだけど!?
混乱している僕に、困惑した様子のコーガが声を発した。
「敵の俺が言うのもあれだけどさ、なにも治癒魔法で液状化させるなんて……頭おかしいと思う」
「んなはずねぇだろ! ぶん殴るぞ!」
露骨に僕から距離を取るコーガに怒鳴りつつ、冷静になるように努める。
いや、待て。この感触には覚えがある。
これは、フェルムが久しぶりに闇系統の魔法を使った時と同じだ。
彼女の魔法の一部が、僕の手にくっつきとれなくなった時のような変化が、今、この状況で起こってしまっている。
そう考えていると、僕の体に異変が起こり始める。
「ぼ、僕の腕が……」
左腕と両足がフェルムと同じ黒い魔力に覆われていく。
「ウサトの体に、フェルムの魔法が……」
左腕と両足を覆い、形成したソレは——いつしか戦った黒騎士の装備していた手甲と脚甲に近い形をしていた。
それに伴い、僕の着ている団服の裾にはフェルムの魔法と同じ黒い魔力が炎のように揺らめいており、まるでフェルムの黒い団服の一部が僕の団服と融合したような姿へと変わってしまっていた。
「なんなんだよ、これ……」
訳が分からない。
腕と両足の変化。
黒の入り混じった白い団服。
自分の腕と体の変化に、僕はコーガの存在を忘れて呆然とするしかなかった。
ようやくここまで来ました。
フェルムを救命団入りさせてから長かった……。
そしてヒロインを強化アイテムとして装備していく、ウサトという主人公。
アマコ(狐)、ネア(梟)、フェルム(魔族)というメンツ的に新手の桃太郎かなにかですかね……?
今回の更新は以上となります。
※治癒魔法の間違った使い方、第九巻についての活動報告を書きましたので興味のある方はご覧になってみてください。
今回の第九巻の表紙は、犬上先輩がセンターとなっております(強調)