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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第一章 召喚、リングル王国
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第二十一話 

 僕と犬上先輩は無事に王国に帰ることができた。

 あの後、守衛さんとブルリンに発見された僕たちは、リングル王国から派遣された捜索隊とも合流しリングル王国に無事に帰れた。

 守衛さんは、僕と犬上先輩がはぐれたことに強い責任感を感じ、ブルリンと共に昼夜休まず探し回ってくれたらしい。もう一人の黒ローブさんは捕まえた盗賊達を連れて、一旦王国へと戻り、僕達の失踪を報告しに向かってくれた。

 守衛さんと黒ローブさんには、後でちゃんとお礼を言わないといけないな。




 リングル王国に帰った僕たちは、王様に無事を伝える為、城へと赴いた。ブルリンは守衛さんに頼んでおいた。いつの間にか仲良くなっていたからね。尚、ブルリンに触れようとして反撃された誰かさんはいたけど……。


 王様の居る大広間に犬上先輩と共に入ると、そこには王様の他に僕達が召喚された時に王様と一緒にいたセルジオと呼ばれた老人と、ローズ、シグルスさんが居た。

 護衛の衛兵がいない。それほどまでに僕たちは信頼されているという事なのかな。


「おお……ウサト……スズネ、よく、よく無事で……」


 王様は、僕たちの姿を確認すると安堵の息を漏らしながら、疲れ切ったように王座に深く座り込む。よく見ると王様の目の下に薄らと隈が浮いている。随分心配させちゃったみたいだ。

 とりあえずは、この件で苦労させてしまった謝罪を述べようと口を開こうとすると、それよりも早く犬上先輩が言葉を発した。


「御心配、おかけしました」

「いや、謝る必要はない。むしろ謝るのはこちらの方、この度は本当に苦労を掛けた。ウサトもすまなかった。私がスズネと共に訓練に参加するように言わなければ……」


 王様、人間が出来すぎて逆につらい。

 彼の嘘偽りのない言葉に僕は、しどろもどろになりながらもなんとか答える。


「いえ僕は……えと、僕は大丈夫ですよ。なんというかこう言う事には、もう慣れたようなものでしたので……」

「慣れた?」


 失言ッ。

 ここで正直に言おうものなら面倒なことになりかねない。


「ああっ、いや何でもないです!元の世界でよく森の方に行ってたんですよ!」

「そっ、そうなのか……」


 何故、僕は今ローズを庇ったのだろう。

 ……まさか、精神レベルにまでローズに調教されているというのか?

不意にローズの方に視線を向けると、案の定薄ら笑いを浮かべている女傑。

 この凄まじい敗北感……。


「くっ」

「ウサト君?」

「なんでもないです……そう、なんでもない」


 犬上先輩には気取られる訳にはいかない。


「……時にウサト、救命団での訓練は順調か?」


 ここで一番、答えにくい質問来た――――ッ!

 さっきは何とか誤魔化したというのに、まさかこのような質問が来るとは思わなんだ。……どうする、正直に言うとブルーグリズリーを相手取った時より、切羽詰っている。この場にはローズもいるし、答えようによってはこの後の展開を覚悟しなければいかない事になる。


「じゅ………順調、ですヨッ」

「そうか……実は心配しておったのだ。そうか順調か……よかった」


 心が痛い。

 僕の中の善意の心が重さを伴い僕を押しつぶしてくる。良心の呵責に苦しんでいると、王様の隣に佇んでいたセルジオさんが王様に何かを話しかける。


「ロイド王、そろそろ……」

「言われなくても分かっているぞ、セルジオ……ウサト、スズネ。お主たちも疲れておるだろう。ゆっくり休むといい」


 王様の許可を貰い、大広間から出る。

 しかし、何と言うか――――ローズは何時もと変わらなかったんだけど……セルジオさんとシグルスさんの顔が何処か険しかった。僕達が戻ってきたことに安堵している事は表情を見て分かったんだけど、その事以外で悩んでいるような気がした。


「……気のせいだったらいいんだけど」









「ウサトッ!先輩!!」

「まっ、待ってくださいカズキ様~」


「カズキにセリア様……」


 城の中を犬上先輩と歩いていると、前方から息を切らして走って来るカズキとセリア様。そういえば、カズキにも心配かけさせちゃったな。


「久しぶりカズキ」

「久しぶりじゃっ……ないだろ!起きたらウサトと、先輩がモンスターに襲われて行方不明とか……俺ッ……スゲェ心配したんだぞ!」

「あー、ごめん」


 本当に面目ない。

 犬上先輩と話していたセリア様が、僕達のやり取りを見てクスクスと見惚れるような笑みを零す。流石王女、一挙一動が優雅極まりない。


「フフフ、スズネ様達が、行方不明と聞いたカズキ様は、血相変えて走り出してしまったのですよ?」

「あっ!それは言わないでくれよ!」

「ははは、君も向こう見ずだなあ、カズキ君」


 場をにぎわすように先輩が、カズキを茶化す。

 なら僕も――――


「犬上先輩は、小猿に嫌われてましたよね」

「そっ、それは……イジワルだねウサト君は!!」

「ウサト、小猿って?」

「実はね……いぬかみゃッ――――」

「何でもないからねッ」


 犬上先輩に口を塞がれる。そこまで暴露されるのが嫌か先輩。でも後でさりげにカズキに話しておこう。

 カズキもセリア様も、僕を押さえつける先輩の焦り様に首を傾げている。しかし何を思ったのか、セリア様が僕と先輩を交互に見た後に、カズキの方に視線を移す。


「とても仲がよろしいですね」

「確かにそうだな……」


 どうやら、王女様はあらぬ勘違いをしているようだ。カズキは気付いていないようだけど―――。

 ここで、先輩が悪乗りして事態を悪化させないうちに否定しておかないとなし崩し的に大変なことになりかねない。

 実際、僕を押さえている先輩の口角が三日月のように歪んだ。


「いやないです」

「!?」


 そう言い放った僕の言葉に、ショックを受けるように後ずさる先輩。いや、だって……せめてもう少し自重してくれれば……無理か。


「そう、残念ですねー」


 全然残念そうに見えない笑顔を見せたセリア様。やはり世界は変わっても女子は恋バナが大好きなのかッ。別に恋バナじゃないけどね!


「あっ、そうだウサト。ローズさんってすごいよな~」

「藪から棒に何!?」


 まさかカズキからローズの名前が出るとは……あの人とカズキの接点はほぼないはず。

 戦々恐々としながら、カズキの次の言葉を待つ。もし「ローズさんに憧れたから、救命団に入れてください!」っていう申し出だったら、僕は気絶させてでもカズキを止めなくちゃならない。


「ウサト達を探しに行こうと飛び出したらさっ、城門の前でローズさんに取り押さえられちゃったんだよ……俺も本気で行ったのに……手も足も出なかった」

「あの人、規格外だから……」


 僕とブルリンを楽々担ぎ上げて走るし、苦労して瀕死に追い詰めた蛇を一撃で沈めるような人だから……。

 そんな彼女に対してヒーローのようなイメージを抱き始めているカズキに、僕は表情を硬直させる。

 駄目、駄目だよカズキ……あの人はヒーローちゃう、ヒーラーならぬヒールなんだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] あの人は・・・、疲労の元(主に精神) かも。
[気になる点] なんか、地味すぎる
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