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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第五章 水上都市ミアラーク
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第百十一話

新年あけましておめでとうございます。


そして、お待たせしました。

今年最初の更新です。

 ブルリンを背負ってミアラークの街を散策した日の夜。

 午後のアルクさんとの訓練を終えた僕は、自室の中央に置かれているソファーで体を休めながら、今日の訓練について考えていた。

 僕の訓練は、一応順調に進んでいる。

 レオナさんとの訓練で行った回避については土台からできあがっていたので、それほど難しくはない。だけど、戦闘中の姿勢の矯正、戦い方に関してはかなりの時間がいるので一朝一夕では身につけることができないだろう。

 確実に、カロンさんと戦う時までには間に合わない。

 今までは頭の中でイメージした動きに体がついてきていたけれど、このイメージに技術面が加わると、難しさは一気に跳ね上がる。

 長期的に見れば順調に進んではいるけど、短期間での習得は不可能に等しい。

 これに関しては、変に焦らず訓練していこう。


「あとは、系統強化だな」


 レオナさんの系統強化を見てから、僕は自分の系統強化を今一度見直していた。

 リングル王国を出発してからずっと練習し続けていた系統強化は、この数ヶ月で大分安定するようになっていた。

 魔力を濃い状態で維持できるようにはなったし、手を傷だらけにすることもなくなった。


「ほぼ完成している、はずなんだけどなぁ……」


 だけど、僕にはこれが治癒魔法の系統強化だという意識が持てなかった。

 何かが違うのだ。

 僕の治癒魔法は、リングル王国の診療所で見た、オルガさんのような綺麗な緑色の治癒魔法じゃない。色はかなり近くなったけれど、何かが足りない(・・・・・・・)

 僕は掌に治癒魔法の光を灯し、それをジッと見つめる。


「レオナさんに聞いてみても、答えは出なかった」


 今日、レオナさんに系統強化について聞いてみた。

 僕の未熟な系統強化を見たレオナさんは「自信をなくしてしまいそうだ……」と落ち込んでいたけれど、僕がどのように系統強化を練習しているかを聞くと、その表情を真っ青にさせた。


『君のそれは、控えめにいって頭がおかしいぞ!?』


 レオナさんのストレートな言葉に、少しへこんだのはこの際どうでもいいだろう。

 彼女曰く、系統強化とは細心の注意を払って習得するものであって、僕のように治癒魔法の効果にものをいわせて、無理矢理練習するようなものではないらしい。

 ぶっちゃけ今更なんです、と苦笑いしながら言うと、レオナさんから得体の知れないものを見るような視線を向けられてしまった。

 結局は、レオナさんが僕の治癒魔法の系統強化を見ても、何が足りないのか分からなかった。むしろ彼女からしてみれば、僕の系統強化はほぼ(・・)うまくいっているらしいが、僕としては納得できない。


「……まだまだ、一人前には程遠いなぁ」


 脳裏に浮かぶは、リングル王国にいる僕の師匠。

 僕はローズにとって、半人前の団員でしかなく、僕はまだ彼女が理想とする治癒魔法使いにはなれていない。

 その事実を改めて認識し、認めた僕はソファーから身を起こし、頬を強めに叩く。


「もっと頑張らなくちゃな!」


 弱気になるのは僕らしくない。

 救命団で学んだことは、前向きになることだ。

 地獄の先に安寧があるという、逆説的な考えで訓練を乗り越えてきた僕にかかれば、この程度の逆境は屁でもないぜ。


「ウサトは頑張りすぎだと思うけど……」

「んん!?」


 後ろからの声に驚く。

 振り返ると、呆れた表情のアマコが背後の扉の前に立っていた。


「びっくりしたじゃないか。ノックぐらいしてよ……」

「したよ。気付かなかったのは、ウサトの方だよ」


 考えに没頭していたから、ノックに気付かなかったのか。

 とりあえず、ソファーから立ち上がりアマコを部屋に入れる。


「それで、どうしたの?」

「ちょっとウサトの様子がおかしいと思って心配したんだけど……もう、大丈夫なようだね」


 心配させてしまったか。

 先日と同じように椅子に座ったアマコの言葉に、少しだけ嬉しくなる。


「ま、悩んでいても何も始まらないしね。とりあえずやれることをやろうって思っただけだよ。体を鍛えるとかね」

「やれることをやろうって思って、どうして体を鍛えるのかよく分からないけど……うん、そういうところがウサトらしいね」

「僕らしいってなんだ……」


 一体、僕はアマコからどんな認識をされているのだろうか。

 ぎこちなく笑いながら、喉から出かかった疑問を飲み込んだ僕は、話を別の話題に逸らし会話を交わす。

 アマコはどうやら僕の様子を見るために来てくれたようで、僕が心配ないと知ると、肩の力を抜いて他愛のない世間話をしてくれた。


「それで、レオナさんは大丈夫なの?」


 会話の最中、不意にアマコがそんな質問を僕にしてきた。

 予想外の質問に目を見開きながら、その質問の真意を彼女に尋ねる。


「大丈夫って?」

「あの人も、大変みたいだから……」


 大変、か。

 確かにあの人は色々な問題に悩まされているな。

 カロンさんのこと、勇者のことと……僕が思っている以上に彼女は悩み苦しんでいる。


「ファルガ様は、このままではレオナさんはカロンさんにやられてしまうって、今の彼女のなにがいけないのか分からないけど、無視しちゃいけないものだと……思う」

「……」


 思い出すは、城の地下でファルガ様がレオナさんに言った警告。


”他者に存在意義を求め依存し、自身を肯定することができぬ騎士よ。貴様は自身の存在を認めることができねば無様な死を遂げることを理解しろ”


 深く、心に響く声。

 自分を肯定することができない騎士。

 それが自身を勇者と認めることができないレオナさんのことなのは、確かだろうけど……。


「……僕がなんとかできるわけじゃないんだけどなぁ」


 僕は治癒魔法使いで、人の悩みを解決したり、心の傷を癒やせるような力はない。

 なぜか旅の中で、そういう相談や話をされることがよくあるけど、それを自分の思惑で解決に導いたことなんてない。


「やろうとしなくてもいいと、思う」

「え?」


 アマコの言葉に思わず聞き返してしまった。


「ウサトは、そのままが一番いい」

「アマコ……」


 僕は僕らしくしていればいい。

 言外にそう言われたような気がした僕は、なんだか感動してしまった。

 そうか、僕はそのままが一番らしいってことか……。


「ウサトは考えなしなところもあって、鈍感で、無神経なところもちょっとだけあるけど、そういうところが悪い部分でもあって、良い部分でもあるんだよ」

「台無しだよ!」


 どこが良い部分!?

 考えなしで鈍感で無神経って言葉に良い部分を見出すことなんてできないよ!?

 鈍感に関しては先日言われたけど、それに考えなしと無神経が加わっているし!?


「?」

「え、えぇ。なんでそこで不思議そうな顔をするの……」


 わなわなと震えている僕を見て、不思議そうな表情を浮かべるアマコに表情が引き攣る。最早、彼女の中で僕が考えなしの鈍感、無神経男ってのは決定事項なのだろうか。

 ここはしっかりと説明して、アマコの認識を改めなければ……。

 コホンとわざとらしく咳払いして、話を切り出すべくアマコに向き直る。

 しかし、その時僕の部屋の扉がコンコンと、軽く叩かれる。

 誰だろう、こんな時間に……ネアかアルクさんかな?


「ウサト様、いますでしょうか!?」


 メイドさんの声。

 穏やかな性格の彼女らしからぬ、慌てたような声に驚きつつも、僕は扉を開ける。


「どうしました?」

「た、大変です!」


 扉の先には、少し息をきらしたメイドさんの姿。

 一体なにが大変なのだろうか。

 もしや、なにかしら大変なことが起こったのだろうか? でも、外からは何も聞こえないし……一体……。

 困惑する僕をよそに、小さく深呼吸し、呼吸を落ち着けた彼女は僕の手を取って詰め寄ってきた。


「の、のる……」

「のる?」


 なにかに乗るのだろうか?

 息を切らしたメイドさんの言葉に首を傾げる。


「ノルン様が倒れてしまったんです!」

「えぇ!?」


 ミアラークの女王であるノルン様が倒れた。

 ノルン様が倒れたということは、今の今までカロンさんからミアラークを守ってきた結界が消えてしまうということ。

 結界が消えてしまえば、カロンさんはここへやってくる。

 そうなったなら、僕達は、準備ができていない状態で決戦をしなくてはいけない。

 その理解に至った僕は、焦燥しながらメイドさんにノルン様のいる場所までの案内を頼んだ。



 ノルン様が倒れたと知った僕とアマコは、メイドさんと共に急いで彼女が倒れていたという広間の方へ向かっていった。

 本来ならレオナさんも呼ぶべきだが、事態は一刻を争うので、彼女の治療ができる僕がいち早く助けにいったのだけど―――、


「全く、転んだくらいで大袈裟よ……」


 広間に辿り着いた僕達の目の前には、呆れた表情で額を押さえているノルン様の姿があった。

 倒れたと聞いていた僕は、危篤だと思っていたノルン様がけろりとした顔で玉座に座っていたため、思わず拍子抜けしてしまった。


「心配してくれるのは嬉しいけれど、せめて話を聞いてくれないかしら……。倒れたといっても、少し躓いた程度なのに、貴女ったらもう血相を変えて、助けを呼びにいくなんて……」

「も、申し訳ありません……」


 結果だけ言えば、ノルン様が倒れたというのはメイドさんの勘違いだったのだ。

 いや、倒れたこと自体はあっていたのだけど、彼女の場合はただ躓いて倒れてしまっただけで、その場面を偶然見かけたメイドさんは、ノルン様が過労のあまり倒れてしまったと勘違いして、慌てて治癒魔法使いである僕の元へ助けを求めたのだ。


「ウサトさんもアマコさんも、お騒がせして申し訳ありませんでした」

「いえ、それよりもノルン様が無事で安心しました」

「私も気にしてないから」


 深く頭を下げるメイドさんに、僕とアマコは手を横に振る。万が一という事態も想定していたので、徒労だったにしても無事で良かったと思う。

 それに、躓いて倒れたといっても、彼女は何日も不眠不休で結界を維持している身だ。ただの不注意で躓いたとは限らない。

 事実、ノルン様の顔色は悪い。

 治癒魔法で体の異常は治っているはずなのだが、どこかやつれている。体の異常ではなく、精神的に疲弊しているからやつれているように見えてしまうのだろう。

 ……一応、治癒魔法をかけてあげたほうがいいか。慰めにしかならないけど。


「ノルン様、治癒魔法をかけましょうか? 体の疲れだけなら癒やすことができますが……」

「……そう、ね。お願いしてもいいかしら」


 悩ましげに了承したノルン様は、ゆっくりとした動作で僕に手を差し出した。

 僕は、できるだけ粗相のないようにその手に触れて、治癒魔法をノルン様に施した。治癒魔法の緑色の光が、彼女の体を包み込み、疲れた体を癒やしていく。

 治癒魔法によって幾分か顔色がよくなったノルン様は、未だに心配そうにしているメイドさんを見ると、やや気まずそうに口を開いた。


「貴女も自分の仕事に戻ってもいいわよ。私は大丈夫だから、その、心配かけたわね」

「! はい!」


 笑顔で返事をしたメイドさんは、丁寧にお辞儀をすると、やや早足で広間から出て行ってしまった。

 彼女の背中を静かに見送ったノルン様は、独り言を呟くように傍らにいる僕に話しかけた。


「彼女は、この城のほとんどの仕事を行っているの」

「……ほとんど、ですか?」

「勿論全部ではないけど、この城を維持していく上で必要最低限のことをやってくれているのは確かよ。……彼女以外にも、残ってくれた城の者は皆、一人で国を守ろうとした私の為にここにいてくれているの」


 一人で国を守ろうとした。

 それがどれだけの覚悟なのか、僕には想像もつかない。

 寝る時間さえ惜しみ、今もなお国を守り続けていることは、並大抵の精神力ではない。


「彼女達に城に残ってほしくはなかったの。本心で言うならレオナにもね」

「一人で戦おうとしていたんですか?」

「それが無理なのは私が一番よく分かっていたけどね。いくらファルガ様から賜った魔具を扱えるといっても、私は”戦う者”じゃない。剣も槍も握れない私は、この場所でただただ結界を作って、現状を維持し続けるしか手段はなかったの……」


 手元の杖を見て、自嘲気味な笑みを浮かべるノルン様。

 肩を落とした彼女は、「あぁー」と気の抜けた溜息を吐くとさらに玉座に体を預け脱力した。

 その姿は女王というより、どこにでもいる普通の女性のように思えた。


「こんなことになるんなら、もうちょっと勉強とか剣の練習とかやってれば良かった。後々になって城の超面倒くさい教育を受けなかったことを後悔するとは思わなかったわー」

「え、えぇ……」


 そんな試験前の学生みたいなことを言われても、どう答えればいいか分からないのですが。

 というより、元高校生としては共感できちゃうので、余計困るんですけど。


「あの頃は私も女王というのが、どういうものかいまいち分からなかったけれど、いざなってみると……否が応でも理解させられるのよね」

「何をですか?」

「私は皆を守らなくちゃいけないってね。立場が変われば意識が変わるとはよく言ったものよ。中途半端な気持ちで女王になってしまった私は、城から見えるミアラークの街並みを見て、ようやく女王という役目の重さを自覚したのよ」

「役目の、重さ……」


 立場こそ違えど、僕も似たような経験がある。

 救命団として戦場を駆け抜けたとき、僕の双肩に戦場で戦う騎士達の命がかかっているという重荷がのしかかった。

 きっと、ノルン様も今そのような状況に置かれているのだろう。


「ファルガ様のことだって、女王になってから知らされたの」

「え、そうだったんですか?」

「そうよ。ファルガ様の存在は女王と特別な身分のものにしか明かされない。本来、他国の者である貴方達が、あの方と会うことはありえないことなのよ」


 確かに、邪龍と同等の力を持った龍は秘匿されて当然だろう。


「初めてファルガ様の声を聞いたとき、頭がおかしくなったのかと思ったわ。今と同じように玉座で休んでいたら『そこの未熟者、暇を持て余すのはいいが女王らしく振る舞え』ってどこからともなく声が聞こえてきたんですもの」

「ははは、それはビックリしますね」


 どこからともなくって、頭に響いてくる感じなのかな?

 どういう聞こえ方にしろ、地下で聞いたような声が聞こえてきたら誰でもびっくりするだろう。


「でも、私がここまで頑張れたのは、ファルガ様が助けてくれたおかげなのよ。結界を維持している時、心が折れそうになった時は決まってファルガ様が声をかけてくれたし、私に対する厳しい言葉も後々考えれば皆、私の為に言ってくれていることに気付くの」


 ……少し納得した。

 僕がここを訪れるまで、ノルン様はどうして結界を維持し続けられたか。

 ポーションにだって限界はある。それでも尚、彼女が持ち堪えられたのは、ファルガ様がノルン様のことを助けていたからなのだろう。


「ウサト、もういいわ。ありがとう」

「はい、調子はどうですか?」

「おかげさまで、大分良くなったわ」


 薄く微笑んだノルン様の言葉に頷き、彼女の手を離す。

 あくまで体の疲労を治しただけなのだが、彼女の表情に若干の明るさが戻っている。


「少し、愚痴を聞かせてしまったわね」

「いえいえ、僕も色々と思うところもありましたし、逆に僕なんかに貴方様の話し相手が務まるのかな、って心配していましたよ」

「そんなことはないわ。貴方の治癒魔法もそうだけど、こうして話しているだけでも私は十分に助けられているわ」


 今、結界の維持の為に力を尽くしているノルン様にできることは治癒魔法をかけてあげるか、せめてもの話し相手になるくらいしかない。

 それで役に立てたのなら良かった。


「さてと、アマコ、そろそろ部屋に戻ろうか」

「うん、私もそろそろ眠くなってきたし」


 アマコと顔を見合わせ、言葉を交わす。

 僕も明日に備えて寝よう、そう思いノルン様に断りをいれようとすると、彼女が僕とアマコを見ていることに気付く。


「貴方は、どうして獣人の彼女と一緒に旅をしているの?」

「アマコと、ですか?」


 突然に、ノルン様がそんなことを聞いてきた。

 その言葉に唸ると、何を思ったのかハッとしたような表情を浮かべるノルン様。


「気を悪くしないで、純粋に獣人が人間と一緒に旅をしていることが気になってね」

「ああ、そういうことですか」


 確かに普通の人なら、獣人のアマコと僕が一緒に行動していることに疑問を抱いてしまうだろう。


「うーん、アマコ」

「いいよ、話しても」


 アマコも話していいと判断してくれたので、この旅の目的の一つである”アマコの母親を助ける為に獣人の国へ向かう”ということをノルン様に話した。

 僕達の旅の目的を聞いたノルン様は、驚きに目を丸くすると、悩ましげな表情を浮かべた。


「獣人の国ね……。得心はいったけれど、私としてはおすすめできないわね」

「やっぱり、人間である僕が行くには危険すぎますか?」

「それもあるけれど……最近の獣人達の行動はおかしいのよ」


 ミアラークは獣人の国から最も近い人間の国だ。

 そんな場所を統治しているノルン様の言葉に、僕は少し不安になってしまった。


「おかしいとは?」

「以前までは、自分たちの国から出ることのなかった獣人達が、突然人間の前に姿を現わすようになったのよ」

「突然……? 人間の住む場所に現れたってことですか?」

「そこまで人間に干渉してこないらしいけど、まるで何かを探すようにしていた、という報告はあったわ」


 何かを探すようにしていた?

 盗賊や奴隷商に捕まる危険を承知の上で、人間の領域で活動するとなると……余程のものを探していたのではないか?

 腕を組み考え込んでいた僕だが、空いている方の手をアマコが握ってきたことで、我に返る。

 アマコが服の裾は引っ張ってくることはよくあるけど、手を握ってくることは珍しいので、少し驚きながらアマコの方に視線を向ける。


「どうしたのアマコ……アマコ?」

「……」


 そこには、僕の手を握ったまま俯いているアマコの姿。

 眠くて手を握った……訳じゃなさそうだな。肩も震えているし、何より僕の手を握る手に力が籠もっている。

 もしかして、獣人達が探していたのは――、


「……いや」


 今はアマコのことだ。

 彼女にとって獣人の国の話をするのは、よくないかもしれない。


「ノルン様」

「っ、ちょっと待って」

「え?」


 アマコの為に話を終わりにしようと切り出そうとすると、ノルン様がこめかみを押さえた。

 目を閉じて、黙り込んでしまった彼女は誰かの話に相づちを打つように頷いている。恐らく、ファルガ様から何か話を聞いているのだろう。

 なんとなく察して、アマコに手を握られたまま彼女を見守っていると、目を開けた彼女が真剣な表情で僕を見て口を開いた。


「……ウサト。ファルガ様が、貴方の武具が完成した、と」

「……!?」


 声を低くしたノルン様の言葉に驚く。

 ファルガ様に渡した勇者の小刀が、僕専用の武具になって戻ってくる。

 どのような形になっているか、

 どのような力を宿しているか、

 そのことを今一度思うと、期待よりも不安の感情が僕の中を占めた。

最初に、更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

2017年になりましたが、去年に引き続き更新を続けていきますので、今年も治癒魔法の間違った使い方をよろしくお願いします。


追記 活動報告にて書籍第4巻についての情報を更新いたしました。

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