魔法ライト学園 ヴィドールの入学-
@ヴィドールside-
「おぉ! クロネコぉー!入学おめでとさーん!」
俺は距離があるクロネコに大きめの声量で賞賛の言葉を投げた。
「…おぅ!一足先に!」
―……んぅ?
気のせいかも知れないけど、俺はクロネコに違和感を感じた。
クロネコは何かあっても顔や雰囲気じゃ分かりにくいし、戦闘の時はそれこそ比じゃないくらい表に出さない。
―感情やら考えを読まれたら、"死ぬと思え"…らしい。
今の場合は戦闘じゃないもののその直後だし…距離があるから俺の勘かもしれないけど……クロネコが何かを考えてる気がした。
ただの違和感からの考えにすぎないんだけど…。
クロネコが近づいて来た事で俺は思考を止めた。
すれ違う時にパチンとハイタッチをして俺は門番の所へ向かう。
トンッ! トンッ!
「黒沼殿、合格だ。 次」
バクバク鳴る心臓に手を当てて深呼吸を繰り返す。
―不安なんだ…。入学出来るかな、って。
クロネコと旅をしていた時、俺はいつも守られていた。
戦っているクロネコの後ろ姿ばかりを見て、それが当然だった。
そう思ってたけど…そんなの当然じゃないんだ、って魔法ライト学園に行くことを決めた時にやっと気付いたんだ。
今はクロネコの前に立てなくてもいい。
せめて…横に並びたい。強くそう思った。
「…ヴィドール」
「ん?」
「…お前は強ぇよ! お前自身が気がついてないだけだ! ……頑張ってこい!」
クロネコが見透かしたようにそう言う。
自分の中で何かが弾けた気がした。
―俺…、何怖じ気づいてんだっ!?
学園に入学出来なきゃ守るも糞もねぇだろ!
…絶対に入学してやるよっ!
「クロネコ!!」
「なんだ…?」
「ちゃんと見とけよ!」
ふっと緩められたクロネコの微笑みに俺も笑う。
……ありがとう。
クロネコに心の中で言う。
門番の若い方に駆け寄る。
精神を戦闘に集中させた。
トンッ! トンッ!
「始め!」
「雷と光の精霊ジャップ、我に力を貸してくれ―!」
俺が唱えると光の粒が集って、そこから純白の虎が現れた。
ジャップの周りではビリビリと電気が弾く。
トンッ! トンッ!
「ほぅ…。 S級精霊のジャップか、美しい」
門番の爺さんの言葉に内心で頷く。
ジャップは俺と契約した雷と光の精霊だ。
その容姿はとても美しく、本とかにもよく載っていたりする。
何故俺と契約したかは分からないけど、ジャップにはいつも助けられているんだ。
「融合魔法、水霧<水>!」
ジャップの周りに霧状の水を放って弾く電気と合体させる。
水の周りを弾く電気はジャップをより美しくさせる。
「っらあ!」
戦闘が始まってからずっと俺の様子を見ていた若い門番に向け、ジャップの周りにある水と電気を放つ。
………っ!!
―…な、っ受け止めたあ!?
若い門番は避ける事もせず、そのまま俺の攻撃を食らった。
筈…なのだが、水は地面に滴り落ち電気は門番の体を弾いていたがやがて消えていく…。
「…ふぅ。 ヴィドール殿も入学おめでとうございます」
呆然としていて聞き逃しそうになったけど、はっきり聞き取れた。
「――…にゅ、入学!! ありがとおジャップ――
ッ…!!?!?」
さっきまでの疑問も考えられなくなる程舞い上がる。
考えることよりも入学出来たことの嬉しさを噛み締めたい。
そして俺は変なテンションでジャップに抱きついて感電して気を失いそうになった。