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出発の準備-

黒髪に金色の瞳。

俺は周りからクロネコと呼ばれている。


「グロネコぉ…本気゛で行くのがよっ!」


涙目を俺に向けて泣きじゃくる男、名はヴィドールという。

彼とは幼少の頃から一緒に暮らしてきた友人だ。


「あぁ…」


グロネコって嫌な響きだ…と思いながらヴィドールから目を背け、荷造りを続ける。



「なら…っ! クロネコが行ぐんだっだら、…っ、俺も行ぐ!!」


「却下だ」



このやり取りはもう何時間も続いていた。


…だが、荷造りはそろそろ終わる。


本当に、ヴィドールとはもう会えなくなるだろう…。

あいつも分かってるからこんなに必至に纏わりついてくるんだ。


「やだっ! やだやだやだ!!」



駄々っ子の様に泣き喚くヴィドールを見ているのは辛い…。


俺もヴィドールと離れるのが寂しくない訳じゃないんだ。



ただ…


「だって…! だってごんなにょ…ぐっ、ぐろねこが!死にに行ぐよ、ようなもんじゃ…っ」


危険な場所にこいつを連れて行けないんだ。


ヴィドールはぐしゃぐしゃの顔で悔しそうに拳を握った。



俺は荷造りが終わり、立ち上がってヴィドールを見る。


肌が白く、大きな目は青色で絹のようにさらさらの髪は金髪、それがヴィドールの見た目だ。


だが…何時間も泣き、目は充血して瞼も腫れ、通るように綺麗な声は枯れてしまい、唇を噛み締めて拳を握りしめる様はとても痛々しい…。


「ヴィドール…」


ヴィドールの震える拳をゆっくり解き、歯を口内にしまわせる。



「ヴィドール。はっきり言わせてもらう。…今回はお前を連れていけない。戦闘の邪魔だ」


「っ…。 分かってんだって、そんなの俺が一番ね…」



「俺はヴィドールに、幸せに暮らしーー…」


「ざけんな!!! 勝手に俺の幸せを決めんなよっ! "それぞれに違う幸せがある"んだろ?! そう言ったお前が、俺の…お、おぇの、幸せを…、」



すごい剣幕で怒鳴りつけるヴィドールに何も言い返す気にならず、俺はただ眉間に皺を寄せてヴィドールの言葉を聞いていた。



ヴィドールは自分を落ち着けるように一息吐くと口を開いた。



「……」


「俺の幸せは、お前と旅して、笑って、死ぬ時はお前の為か一緒の戦闘で…っ!こんなの、お前に会った時から一生…変わらない…」



思いをぶちまけて軽く肩で息をするヴィドールを、俺は霞む視界で見つめる。



―ヴィドールの言葉は全身を稲妻が駆け巡るようにかなり効いた。



ヴィドールを置いてくなんて簡単だ。


だが…、簡単にこのデカい覚悟を潰してしまうのはとても気が引けたし最低なことだと思った。



…それに、ヴィドールだけじゃねぇ。



「…、俺もだ!ばかやろぉ…」


なんとなく火照っているだろう顔を見られたくなくて、ヴィドールの顔を胸に押し付けた。


「氷っ!」


「…守ってやらねぇからな」


「当然。俺が氷を守るんだっ!」


照れ隠しに言った言葉に、ヴィドールは笑って強気なことを返す。


「ふはっ! そりゃー楽しみだ」


ヴィドールとまた一緒に居られる。


俺は心が嬉しさで満たされるのを感じた。




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