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楓花は一度自宅へ戻ると赤い軽自動車を走らせて向かった。
大型スーパーに歩いても5分かかるかどうかの場所で、仕事先に向かうのも5分程度伸びる程度だろう。今の駅からは遠くなるけれど、バスに乗って行ける近い駅には新幹線も停まる。実家へ帰る飛行機に乗るにも困ることはなさそうだ。
住所の場所へ行くと、住宅の外周に柵がめぐらされていた。そう高くはないけれど目隠しにはなりそう。
門の中から菱沼さんが手を挙げてきた。
中へ入ると玄関脇に入るように促されたのでそこに車を停めた。
白くシンプルな平屋だった。家の前、車を停めたところはコンクリートで舗装されていた。
「本当に新しいお家ですね。」
「はい、中へどうぞ。」
玄関を入り、スリッパを借りた。
玄関は広くシューズクローゼットも大きい。
玄関の右横の引き戸を引くとリビングダイニングだった。
広い…明るくて白壁だった。床は明るいベージュブラウンのフローリングだった。
「こちらは、リビングダイニングです。24帖と聞いています。あと後ろをご覧ください。畳の小上がりがあり茶釜の設置もできます。」
「お茶をしていたのね…。」
「茶道具は奥の棚に入っております。」
「そうですか…。」
リビングには、キッチンの前に2人用のテーブルセットがあり、入ってすぐの場所にソファーセットがと正面にテレビがあり、その横に飾り棚があった。
このソファーセットなら、今使っているリビングのテーブルは合いそうだ。高さ調整できるので、使いやすいだろう。
飾り棚には水晶やカップなどが並んでいて、そこだけが少し人がいた感じを出していた。それ以外は、片付いていて人の色が見えなかった。
「では、こちらへこちらにトイレとバスルームそれから休憩の椅子とテーブルがあり、奥に寝室があります。」
トイレとバスルームの前の廊下が広くとられていて、2㎥近い幅があった。さらに壁側には作り付けの棚があり、一部バスルーム前の脱衣室分くらいが掃き出し窓になっていて、その前に1人掛けの椅子と小さなテーブルが置かれていた。本を読むのに良さそうだ。
窓の外には、小さな畑が広がっていた。
家庭菜園をしていたようだ。
「こちらの寝室は8帖でクローゼットもあります。ベッドはありますが、撤去が必要ならこちらで処分します。衣類などはこちらで処分しますが、他にも何か処分が必要な物はこちらで処分できます。」
「そうですか…。」
不用品は処分するから受け取ってほしいということなのだろう。
「最後に、車庫にご案内します。」
「お願いします。」
玄関の左側のドアを開けると、車庫に繋がっていた。
「こちらが車庫のシャッターの開け閉めするリモコンです。車にも取り付けてあるそうですから、出入りの時には自動的に開きます。」
「へぇ…」
車庫のシャッターが開いて、車がはっきりと見えた。
菱沼さんが明かりを点けた。
くすんだ水色と紺色の2色カラーでかわいらしい。
「あの…車の中を見てもいいですか?」
「もちろんです。」
運転席や助手席は普通の座席だった。
後ろのキャビンを開けると、奥行き30センチほどのミニキッチンとソファーがあった。
ミニキッチンの入り口側には小さな冷凍冷蔵庫が張り付いていて、上部には電子レンジとエアコン、テレビがついていた。配電盤もあるようだ。大きな蓄電池が入っているのだろう。
ソファーの上部には収納スペースがあり扉は3枚あった。
「この車はここにルーフベッドがあるので、この棒をここに渡してこちらの板をずらすとベッドになります。マットも専用の物なので、こうすると段差がなく広く使えます。ソファーも折り畳みマットレスなので、広げるとベッドになります。」
「へぇ…すごい…」
「トイレやシャワーはついていませんが、かわいい作りでしょう?」
「はい、とても素敵ですね。」
「この家と車を受け取ってもらえませんか?もちろん、固定資産税やその他いろいろと経費が掛かりますので、それで困ることのないようにこちらで手配します。」
話を聞いていただけなら「いらない」と言えたのに、実際に見てしまうとあまりにも素敵すぎて心が揺れてしまう。
家があれば、今の貯金と仕事でも確実に生きていける。
通勤距離は許容範囲だ。
今の生活を続けることには限界を感じていたので、揺らいでいた。
計画的に生きているからこそ、自分で立てている計画が無理筋だとも理解していた。
この家があれば、それだけでもかなり助かる。
「手続きはこちらでしますので、いかがでしょうか?」
「はぁ…そうですね。そこまでおっしゃるのであれば、いただこうかな…・」
「ありがとうございます。よかった。」
それから数日、名義変更の手続きなどでいくつかの書類のやり取りをした。
固定資産税はそう高くなさそうだけれど、手続きには疎いので専門家を紹介してもらった。
「では、こちらが権利書と鍵になります。相続についての税金処理はこちらでいたします。毎年の税金関係は税理士に依頼をしていますので、通常の収入書類などと合わせて渡すようにしてください。こちらが税理士の名刺です。それから、私どももできる限りサポートしますので、いつでもお気軽にお声がけください。」
「はぁ…お気遣いありがとうございます。」
「家の物で不要な物は回収しましたので、ご安心ください。」
「ありがとうございます。」
もう会うことはないと思い、挨拶をして見送った。
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