たとえ魔王を倒しても
世界観は概ねテンプレの異世界中世です。
勇者はちゃんと(?)トラックに跳ねられて転生した日本人。
それは、いつもと変わらないはずの日常だった。
「なあメリー!聞いたか?村に勇者一行が来ているってよ!一緒に見に行こうぜ!」
勇者ヒデヒロとその一行。八頭龍を倒し、魔王討伐すら果たすのではと言われる英雄だ。そんな人たちが、この村に来ているという。
「もう、はしゃぎすぎよトーマ。私は神父様と教会で出迎えの準備をするから、先に行ってて。」
わたしは教会に戻り、準備を進めた。トーマだって、手伝ってくれてもいいのに...
トーマはいつも勇者一行の冒険譚を読んでいた。たった一冊しかない本を何度も、何度も。どこからか見つけてきた剣を持って、いつか自分が魔王を倒すんだと言っていた。
「旅に出るときには一緒に来てくれよ。僧侶じゃなくてシスターってのもいいよな!」
そう言ってくれたことが、すこし嬉しかった。
教会のドアが開く。勇者様を出迎えたわたしは、目の前の光景を受け入れられなかった。
「トーマ...?」
目の前には勇者の剣が突き刺さったトーマがいた。
「いや、わざとじゃねぇんだ。こいつが戦ってって言うからよ...」
勇者が色々と言っていたが、どうでもいい。急いでトーマの傷を治さないと。私は聖書を取り出し、再生の祈りを行う。
「いや...!だめ!しっかりして!」
開く瞳孔、冷えていく身体。消えていく命を、わたしはどうにもできない。
「まあ、なんだ...とりあえず教会に用があるから、漁らせてもらうよ。」
そう言うと、勇者はトーマから剣を引き抜き、教会の壺や本棚を壊し始めた。こいつの何処が勇者だというのか。目の前に広がる光景は、魔物に蹂躙される村と等しい。
「神父様!なぜ止めないのですか!?」
わたしは隣でただ見つめている神父様に叫んだ。
「...そういうものなんだ。はるか昔から。」
それ以上何も言わなかった。神父様も、村人も、そしてトーマも。
勇者一行が去った後、村にはいつもの日常が戻った。まるで何もなかったように。おそらく勇者達の魔法だろう。でも私は覚えている。
残虐の限りを尽くす魔王は、勇者一行が倒すのだろう。では、魔物の如き勇者は誰が倒すのか。たとえ魔王を倒しても、あれを勇者とは認めない。殺してやる。この手で、わたしが。あの日の修道服は、トーマと供に灰になった。
人生初の小説制作。続ける。多分。
メリー(主人公の女の子)が修道女なのは1話限りです




