表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/28

第11話:二度目の密会

 食事を終え、部屋に戻った俺はまた白河にメッセージを送っていた。


『次はいつにする?』


 断じて、あいつとのエロマンガ制作が早くやりたいとかそういうわけではない。

 少しでも早くリスクを無くし、少しでも早く人生を取り戻すための合理的な選択だ。

 しかし、メッセージを送ってからしばらく経っても白河からの返事は来なかった。


「遅いな……」


 時計を見ると、時刻は23時に差し掛かろうとしていた。

 寝るにしては早いし、ああ見えて長風呂なんだろうか……。

 てか、そもそも何で俺から連絡しなきゃいけないんだよ。

 あいつの要望に応えてやってるんだから、せめて予定くらいは先に決めとけよな……。


「そういえば、前の原稿がそろそろ完成だったな……」


 あまり文句を言っても仕方がないと、カバンからタブレットを取り出す。

 あいつのせいで中断してたが、前の原稿があと2,3ページで完成だった。

 返信待ちの間に、さっさと終わらせてしまおうとアプリを立ち上げる。

 ペンを握ると、今日は普段以上に作業が捗った。


「……よし、できた」


 最後の線を引き終えて時間を確認すると、ちょうど午前零時を指していた。

 軽く伸びをしてから、出来た原稿を1ページ目から読んでいく。

 エロい。いや、かなりエロい。

 ドチャシコと言っても差し支えがない。

 自分が作り上げたエロマンガのシコリティに一定の満足はするが――


「やっぱりダメ、か……。どうしたら治ってくれるんだ、お前は……」


 俺のブツは相変わらず、無反応を貫いていた。

 その無慈悲な沈黙に深い溜め息を吐いていると、スマホが通知音を鳴らす。

 飛び跳ねるような勢いで手にとって確認するが――


「なんだ。聖奈か……」


 届いたのは白河からの返信ではなく、聖奈からのPINEのメッセージだった。


『月曜日のお昼。お弁当作っていこうと思ってるんだけど、大和も食べたい?』


 トントントンと小気味良く画面を叩いて返事を入力する。


『食べたい食べたい! 超食べたい!』

『そこまで言うなら大和の分も作ってあげる。好きな食べ物とかある?』


 即座に返ってきたメッセージに、こちらもすぐに返事をする。


『聖奈の愛情かな。それもとびっきり大きいやつ』

『ばーか!』


 言葉とは裏腹に、カップル専用のスタンプも合わせて送られてきた。

 俺はなんて幸せ者なんだろうと幸福を噛み締めていると、再びスマホが通知音を鳴らす。


『今日は?』


 たった四文字の感情を全く感じさせない短いメッセージ。

 今度は白河からだった。


『今日って随分と急だな……』

『無理ならいいけど』

『いや、予定は今のところ入れてない』


 本当のことを言うなら『誘いはあったけどまだ入れてない』が正しい。


『そう。なら同じ時間に、同じ場所で』

『分かった』


 要件だけを伝え合う淡々としたやり取り。

 しかもPINEではなく、互いにペケッターの裏アカウントを介してる。

 その奇妙さに、一人の部屋で僅かに声を出して苦笑してしまう。



 ***



 翌日、再び訪れた『レンタルルームLR』

 昨日と同じ部屋に入ると、既に白河がソファに座って待っていた。


「よう」

「おはよう」


 互いに短く挨拶を交わし、余計な会話は必要ないと準備を始めようとするが――


「昨日の新作、読ませてもらった」


 カバンからタブレットを取り出そうとしたところで、向こうから話しかけてきた。


「新作?」

「ほら、トマト先生のアカウントに投稿されたやつ」


 不意の出来事に固まっていると、更に続けて言ってくる。


「あ、ああ……あれね……」

「うん、すごく良かった。ヒロインの一人、桜綺がすごく健気で。自分は彼の運命の人じゃないと自覚してるからこそ、肉体関係を以て彼の心を引き留めようとしてるのが――」


 普段の愛想の無さが嘘のような饒舌さでエロマンガの感想が語られていく。


「……というわけで、総じてめちゃシコでした」

「そりゃどうも」


 お前のシコはどこを何する意味なんだよとツッコミかけたが、藪蛇になりそうだったので素直に称賛を受け入れる。


「……で、それを踏まえて私の方から先生に一つ提案があるんだけど」

「提案? 何だよ」


 本当に良かったと思ってくれたのか、白河の声が少し弾んでいた。

 意外と可愛いところもあるもんだな……と思った俺は直後に、この白河真白という女がどれだけ理解不能な存在なのかを思い知らされる。


「やっぱり、今日は脱ごうと思うの」


 話に全く脈絡がなくてびっくりした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ