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「頭がホメオスタシス!」って叫んだバカな看護学生の私が、エアコンの神秘に気づいちゃった! これって現代の女体の神秘ってこと!?

カクヨムでの自主企画【三題噺「オカルト」「エアコン」「ホメオスタシス」】で書いてみました。


※人力と生成AI(Gemini)のハイブリッド作品です。

「うー、もう頭がホメオスタシス!」


 思わず口から出た謎の叫びに、隣で教科書を広げていた友達が、は? と眉をひそめた。


「何それ、新しい呪文?」


「違うよ! この『ホメオスタシス』が、もう全然頭に入ってこないの!」


「…いや、ちょっと待って。ホメオスタシスは混乱って意味じゃないからね? むしろ、一定に保とうとする働きのことだから、頭が混乱してる状態とは真逆だよ?」


 友達の冷静なツッコミに、私は少しバツが悪くなった。


「そっか…でも、ホメオスタシスが私を混乱させるんだよ…」


 私は分厚い生理学の教科書を指さし、半ばヤケクソ気味に訴えた。看護学校に入学してからのテスト前は、いつもこうだ。見たこともない専門用語の羅列に、精神がすり減っていく。


「ホメオスタシスは、日本語だと恒常性ね。体温だけじゃなくって、血糖値とか血圧とか、いろんな体の状態を、いつもベストな状態に保とうとしてくれる、私たちの体が勝手に頑張ってる仕組みのことだよ。」


「勝手に、ってのが意味わかんないんだって! だってこれ、『体温や体液のバランスを一定に保つ仕組み』って書いてあるけど、そんなこと、誰がどうやって指示してるの? 脳が? 心臓が? それとも…なんか目に見えない力が?」


 私の大げさなジェスチャーに、友達はクスッと笑った。


「目に見えない力、ね。まあ、あながち間違いじゃないかもよ? ほら、例えばさ、体育でバスケとかしたあと、めちゃくちゃ汗かくじゃん?」


「かくかく! 滝みたいに!」


「でしょ? あれって、運動して体温が上がりすぎたときに、体を冷やそうとしてるんだよ。汗が蒸発するときに熱を奪って、体温を一定に保とうとしてる。これもホメオスタシスの一つ」


「うんうん、汗が熱を奪って体を冷やすのは知ってたけど、これもホメオスタシスの一環なんだね! 改めて言われると、なるほど!」


 私は感心して、教科書に目を落とす。


「でしょ? じゃあさ、汗だくで頑張ったあと、こうしてエアコンがガンガン効いてる部屋に入ったらどうなる?」


「え、汗、引く!」


「そう! 体温が下がるから、もう熱を出す必要ないって体が判断するんだよ。で、今度は逆に、冬とかに寒すぎる場所にいたらどうなる?」


「うーん……鳥肌?」


「それもそうだけど、ブルブルって震えたりしない?」


「あ! するする! あれって、あれだよ、なんだっけ…シバリング!」


 思い出したように声を大きくすると、友達が「あたり!」と笑った。


「そう、シバリング。あれって、体が勝手に筋肉を震わせることで、熱を作ろうとしてるんだよ」


「私の体、暖房機能も付いてるってこと!?」


「そういうこと。そうやって、常に体温を37度前後に保とうとしてるのも、ホメオスタシス」


 友達の説明に、ゾワゾワと背筋に感動が走る。


「…ねえ、なんかさ、すごくない? 私たちの体って、まるで、誰かが設計した完璧なシステムみたいじゃん。全部勝手にやってくれるなんて…これってもう、『女体の神秘』だよ」


「…男にもホメオスタシスはあるからね。でも確かに、もはやオカルトだよね。だって、誰に言われるでもなく、体が勝手に頑張ってくれてるんだもん。感謝しかない」


 私たちは顔を見合わせ、その神秘的な事実にしばらく沈黙した。たかが体温調整、されど体温調整。


「でもさ」


 私がポツリとつぶやくと、友達が「ん?」と首を傾げた。


「こんなにすごいホメオスタシス機能があるのにさ、結局私たちって、夏はエアコンなしじゃ生きていけないし、冬も暖房ガンガンじゃん? この部屋だって、今26度に設定されてるし」


 私は天井のエアコンを見上げた。ごうごうと音を立てて冷気を送る、白い箱。


「私たち、体のホメオスタシス機能、あまり使ってないってことなのかな? 贅沢すぎて、体もサボっちゃってるのかな?」


 私の問いかけに、友達はしばらく考え込んで、それからニヤリと笑った。


「いや、違うよ。『人間』という一つの生命体全体で考えたら、エアコンっていう外部のシステムも取り込んで、さらに広範囲なホメオスタシスを保ってるってことなんじゃない? 私たちの快適な環境を一定に保つために、エアコンが頑張ってくれてる。これも、現代のホメオスタシスだよ」


「え、まさか!?」


 私は驚いて、もう一度エアコンを見上げた。


「じゃあ、このエアコンも、私たちが快適に勉強できるように、私たちの体温を調整しようとしてる、ホメオスタシス的な存在ってこと!?」


「そうかもね。『オート』にしたら、勝手に温度調整もしてくれるし。ほら、エアコンの送風音も、なんだか私たちを優しく見守る神秘の声に聞こえてこない?」


「うわあああ! 聞こえてきた! 『快適…保ツ…』って! なんか急に、愛着湧いてきたんだけど!」


 私は両手を合わせてエアコンに拝んでみせた。


「エアコン様! いつも私たちのホメオスタシスを助けてくれて、ありがとうございます! これでテストも乗り切れそうです!」


 友達は楽しそうに笑いながら、自分の教科書に目を戻した。私も気持ちを切り替え、エアコンからの冷気に感謝しつつ、ホメオスタシスにアンダーラインを引いた。

 うん、これなら忘れることはないだろう。たぶん。

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