ニケ伝説 (9) 海の殺戮者・・・・・・?
海賊王ドン・ベッテュルに会ったニケ。果たしてちゃんと送ってもらえるのだろうか……?
「うぉぉぉぉぉぉ!! 我らが女神サマー!」 「いけいけぇー女神サマー!!」
アタシはニケ。15歳。
今、とても困ってる。
それというのも、少しだけ話をさかのぼるんだけど……
エウローン帝国帆船を撃退して、海賊姫ゼラセに連れられて、海賊王ドン・ベッテュルに会って。
強さがハッキリしたらセンタロストに連れてってやる、的なことを言われたのはよかったんだけど。
そのあと、新しい仕事だって帆船に乗せられて……
「いけいけぇー! 飛べぇ! ニケぇ!」
「わかったよ! やるよ!」
海の殺戮者って呼ばれてる、大きな魚? みたいな生き物がたくさんいる海域に連れて来られて……
全部退治しろって言われたんだよね。
だからアタシは今、すごく困ってる。
「タラリア! お願い!」
「うおお! 空飛ぶ女神サマだぁー!」 「くあぁぁ! シビレルぜぇ!」
なんか、海賊の人たち、アタシが飛ぶとすごく騒ぐようになってきたんだ。
実はそれも困ってる。
――ザバッ! バッシャーン!
うわ、水中から飛び上がってきた魚……なんだっけ? シャーチ? 1匹1匹が帆船ぐらいあるんだけど……
どう見ても、10匹はいそうな感じ……
海の中が……なんだか黒い。
「勝利の剣! お願い!」
アタシは勝利の剣を展開する。
「うおぉぉぉぉ!」 「出たぁ! 勝利の女神サマあぁぁぁ!」
光り輝く刃が、空中を踊る。いつ見ても綺麗だと思う。
でも、背後の帆船からダミ声の歓声が聞こえる……
ううぅっ……なんか、ちょっとゾワッとする……!
――ザバッ! バッシャーン!
あぶなっ! シャーチが飛び上がって食べようとしてきた!
アタシ、レイに言われたんだ。瘦せすぎてるって。もっとたくさん食べないとダメだって。
だから、まだおいしくないと思う!
「行って! 勝利の剣!」
空中を飛んでいるシャーチに、光の刃が四方八方から襲い掛かった。
「……ギョッ……プ」
なんだか変な声を漏らしたシャーチ。
ヒューンと落ちて、バシャーンと水の中へ……
すると、仲間? がたくさん集まってきて……
死んだシャーチを食べていた。こわっ!
うーん。シャーチ、たくさんいるんだけど……
これ、一気にたくさん攻撃出来たりするのかな。
勝利の剣の本体は、軽くて振りやすい綺麗な剣だ。
いつも、本体は触らずに展開してたけど、もしかして……
スラリと剣本体を抜いて、空に掲げた。
「勝利の剣! お願い!」
バラバラバラバラと展開していく光の刃たち。
いつもよりたくさんあった。というか、多すぎて数えられなかった。
「うおおぉぉぉ! 女神サマが本気だぜ!」 「す、すげぇぇぇぇぇぇ!」
「……アタイ……死ななくてよかったわ……」
数えきれない光の刃は、残るシャーチたちを……共食いする間もない感じでやっつけた。
レイのくれた"ちーと"装備、やっぱりすごいよなぁ。
海の殺戮者をあっさりと撃破するニケだった。