ニケ伝説 (3) 海賊国家デヴィング……?
やっと街にたどり着いたニケだが……
アタシはニケ。15歳。
今、とても困ってる。
それというのも、少しだけ話をさかのぼるんだけど……
舟? で6人の男たちに追われて、タラリアで空を飛んで逃げたのは、まぁしかたない。しかたないよね。だって追われてたし。
レイも、やばかったらすぐ逃げろって言ってたし。
だから空を飛んでたのは、しかたないんだけど。
「お、おい……こいつ、空から飛んで来なかったか?」
「ああ、俺も見た……」 「私も見たわ!」
「一体何者だ?」 「まさか……神か?」
うっかりそのまま街の人がたくさんいるところに降りたのがマズかったみたい。
そうだったー。普通人間はそんなこと出来ないんだよー。
レイに慣れすぎてたー!
レイはこんな時どうしてたっけ……?
なんか……わりと堂々としてうやむやにしてた? かも。
よし。
「あ、あの。」
「えっ?! わ、私……ですか?!」
「ここは、どこですか? なんていう国? なんていう星?」
「えっ……? あー……ここは、デヴィング……海賊国家デヴィングです。ミッドガルズの。」
「海賊……国家……? デヴィング……ミッドガルズの……」
「そうです。デヴィングの中でも、海賊王ドン・ベッテュルの治める邑、ビッケですね。」
「海賊王……ドン……ベッテュル……? ビッケ?」
聞けたは聞けたけど、全然わからない。
レイも、アースガルズに来た時ってこんな気分だったのかな……。
なんでもすぐ決めて、ちゃんと星を出て……
すごいよね。
……ん? レイ、出たんだろうけど、ちゃんと目的地には着けたのかな、そういえば。
レイ……わりと、トラブルに巻き込まれる感じだったし、無事だといいけど……
って、生きてはいるんだろうけど。
「あ……あの、も、もういいですかね?」
「あ、はい。ありがとうございました。」
女の人は、ちょっとヒクヒクしながら行ってしまった。
ふー。これからどうしようかなぁ、と広場を見渡すと……
あ! しまった。
あの人とか、あの人とか、買い物してる。
そうだ。アタシ、この世界のお金、持ってないや。
なんとかしないと!
「あ、あの……すいません!」
「え、俺……? な、なに?」
「えっと、お金を稼ぎたいんですけど……どこかすぐ働いたり出来るところとか、ないですか?!」
「あ、あー……そうだな。キミは……何者かは知らないが……よそ者だよな。だったら、そこを真っ直ぐ進んで、右手に少し大きな建物がある。海賊組合だ。行ってみな。何かしら仕事、あるはずだよ。」
「海賊組合……」
「じゃ……俺はこれで。」
男の人も、そそくさと行ってしまった。
海賊……ってなんだろ。うーん。傭兵みたいなことかなぁ?
全然わかんないけど、お金は必要だし、行くしかないよね。
海賊組合。
そんな不穏な名前だが、ニケはその意味を知らないのだった。