ニケ伝説 (19) ナーストロンドの港町
センタロストを目指す船旅が始まったようだが……
アタシはニケ。15歳。
今、とても困っている。
それというのも、"だいおういか"とかいう気持ち悪いのを倒してから、7日くらいの船旅をして。
そろそろ港に寄って、補給をするってことになって……
帝国傘下の国? の港に寄ったんだけど……
なんだっけ? ナーストロンド? の、港町……
に、着いたのはいいんだけど。
ドン・ベッテュルが、"協定を結んだばかりだから、港は襲わない、普通に補給だ"……みたいなことを言ってて。
ちょっと変なこと言ってるなーとは思ってたんだけど。
港について、船を降りたら、街の人はなんだかすごくそっけなくて。
話しかけても無視されたり、答えてくれても、海賊は帰れ……とか、そんなふうで。
それもちょっと困ったんだけど。
道を聞いても教えてもらえなかったのが、一番困ったかな……。
アタシ今、ここがどこかわかんなくて、すごく困ってるから。
ゼラセは、『お小遣いやるから好きなモン買ってこいよー』って、お金をくれたんだけど……
『じゃ、アタイは補給物資調達してくっからよー』って、どっか行っちゃったしな……。
はぁ……どうしようかな。
しかたないから、周りを見渡してみる。
ハームストッド要塞みたいに、武装された感じでもなくて、ビッケみたいな、木や石で建てられた建物が結構たくさん建ってて、人も割と歩いてる。
市場みたいなのもあるし、鍛冶屋みたいなところも、食事処みたいなのもあるし、普通の街って感じだけど……
「とっとと帰ってくんな!」
「そ、そんな! 待ってください!」
そんな市場の方から、ケンカしてるみたいな声がした。
「お、お願いです! 長年の付き合いじゃないですか……!」
「うるせぇ! 落ち目のアンタんとこと今更付き合うかってんだ!」
なんだかやたら怒ってる人と、その人に足蹴にされて縋りついてる人……。2人ともおじさんだな。なにしてるんだろ?
ちょっと気になったから、近付いてみた。
「うう……これでは息子に申し訳が……」
地面に倒れ込んだおじさんは、ちょっと泣いてた。
「これ、おじさんのですか?」
足元に、黄色っぽいまるいものが転がってきたから、拾っておじさんにみせた。
「あ、ああ。おじょうちゃん……ありがとう。」
落ち込んだ顔のおじさんは、アタシからまるいものを受け取ると、やっぱり暗い顔だった。
「おじさん、ケンカしてたの?」
「いや……ケンカではないんだ。商談がね、上手くいかなくてね……」
「商談?」
「ああ、私は商人なんだよ。エントコマ・シャープマンというんだ。シャープマン商会の会頭なんだが……見ての通りのありさまでね。」
そのおじさんは、悲しそうに笑っていた。
「何を売ってるの?」
「今回は食料……オレメンという果実なんだがね」
「果実!」
レイが言ってたやつだ。巨人にもらったけど、美味しかったな……。
「おじさん、アタシ、港への道がわからなくて困ってて。案内してくれたら、船の人に買ってくれないか聞いてみるけど……」
「ほ、本当かい?!」
おじさんは、アタシの手をがしっと掴んで目を血走らせていた。
ちょっとこわい。
この商人との出会いはどうなるのか……




