ニケ伝説 (18) 新航路。だいおういかってなんだろ
ビッケの住民に取り囲まれてしまったニケだったが……
アタシはニケ。15歳。
今はそんなに困ってないけど、宴会はすごく困ってた。
何だか櫓の上に座らされて、よくわかんないけど拝まれて……
お供え物みたいに食べ物がたくさん置かれてたりとか……
ほんとに困ってた。
でも、たくさんご飯が食べれたのはよかったのかも。
それから次の日、ドン・ベッテュルにセンタロストについて聞いてみたんだけど。
「ニケよぉーう!」
「ゼラセ」
「マジでもう行っちまうのかぁ? ビッケで楽しく暮らしたらいいだろー? なんたって女神さまなわけだしよー」
「……いや、だから、アタシは普通の人間だから……それにレイを探さないと……」
「ま、そりゃ最初っから言ってたことだしよ、センタロスト行き。ま、しかたないけどさー」
ゼラセはなんだかちょっとむくれてて。これはちょっと困ってるかも。
「は~あ。新航路の船旅でも楽しみますかねぇ~」
そう。今、アタシたちは、船の上。
帝国と話がついたから、今まで通れなかった航路が使えるようになったとかで、送ってもらえることになった。
とはいえ、一気にはいけないらしく、帝国の傘下国? の港に寄港しながら行くとかなんとか。
そのあたりはよくわからないから、海賊の人たちにお任せなんだけど。
「せっかくの女神待遇を蹴っちまうなんて、もったいないよなぁ~」
ゼラセ、まだ言ってる……
と、思ったら、がしっと肩を組まれた。顔の横に柔らかいものが当たる……。
「いいのかぁ? これ、好きなんだろ~? もう味わえなくなっちまうぞ~?」
「いや、そりゃ……柔らかくて、なんかいいけど……」
――ザバァ!!
アタシが言いかけたところで、高波が起こったみたいだった。
「お、おかしらぁ!! か、怪物でさぁ!!」
高波に驚いてたら、見張りの人が叫んでた。
「なんだとぉ?! む、ありゃ……まじぃな! 大王イカか!」
だいおういか? ってなんだろ。
「お? ニケ、出番じゃねぇか?」
ゼラセは肩を組んだまま、にやにやとしていた。
「まぁ、仕事ならするけど……」
アタシはセンタロストに連れて行ってもらう。
代わりに行きの間だけだけど、航海の安全を確保する、だっけ。そういう条件だった。
だから、ちゃんとやる。アタシは、センタロストに行って、レイのところに行くんだから。
「アイギス、タラリア、お願い」
ビュッと空を飛ぶと――
「おおっ! 我らが女神様!」 「勝利の女神様ー!」
なんだか汚い声援も飛ぶんだ……。
「おっ! 女神さまのお出ましじゃねぇかー! いっちょ頼むぜ!」
ドン・ベッテュルもなんだか嬉しそうだった。
船の少し先に、透明っぽい、船より大きな三角形の頭? と、うねうねした手? 足? が、水面から出ていた。
なんか、気持ち悪いな……。
――ザバァッ!!
水を飛ばして、船を攻撃しだしてるみたいだった。
もう少ししたら、ぶつかるかも?!
「お願い! 勝利の剣!」
光の剣を展開して、三角形に降らせると……
「……ビョブゥゥゥッ!!」
空気が抜けるみたいな音がしながら、黒い液体をまき散らせて、三角形は水に沈んでいった。
「さっすが! 我らが女神様!」 「おお、大王イカまで瞬殺たぁ……すげぇぜ!」
みんなは、やたらとはしゃいでた。
正直、そういうのもうやめてほしいかな……。
ちょっと困っちゃうから。
ニケは大王イカを知らないようだった




