ニケ伝説 (12) ハームストッド要塞制圧!
空にいろと言われてふよふよ浮いたままのニケだが……
「おらおらおらぁ! 空を見やがれ帝国兵ども!」
「あれが俺らの勝利の女神サマよ!」
アタシはニケ。15歳。
今、とても困ってる。
それというのも、少しだけ話をさかのぼるんだけど……
海賊王ドン・ベッテュルとゼラセから、ハームストッド港要塞のバリスタをなんとかして欲しいって言われて……
全部壊したのはいいんだけど……
「空だとう? 海賊どもがっ! なーにを言ってやが……ひいっ?!」
「うおっ?! 飛んでるぞ……」 「か、神の怒り……」
ドン・ベッテュルにそのまま空にいろって言われたから、いたんだけど……
「がーっはっはっは! 恐れおののけ!」
「よっしゃ! 野郎ども! とっととふん縛るよ!」
「「おおー! 勝利の女神サマのために!」」
いや……アタシは全然……仕事だからやってるだけだし!
地上ではわけわかんないこと言われてるみたいで。
だからアタシは今、とても困ってる。
それからしばらくして。
「おーい! ニケ! 終わったぜ! 降りてきてくれー」
「あ、ゼラセ。」
ゼラセに呼ばれたから、降りていく。
「いやぁ、やっぱニケはすげぇぜ!」
ぼいんと抱きついてくるゼラセ。
……だから、ソレちょうどアタシの顔をはさむんだって!
「お? なんだその顔。ニケ、これ好きなんだろ? ほれ。」
「いや……やわらかいし、好きか嫌いかなら好きだけどさ。じゃなくて! 終わったなら、帰るの?」
「あー、そうだったわ。オヤジんとこ行くぜ!」
ゼラセに連れられて、要塞の中に入った。
「オヤジぃ! 連れてきたぜ!」
そこはなんだか高そうなものがたくさんの部屋だった。
「おう! ゼラセ。これで交渉も捗るってモンよ。がはは!」
「ひっ……!? そ、それが兵どもが騒いでいた"女神"か?」
「おうよ! さて、交渉の続きだがな。てめぇら帝国は、デヴィングのナワバリに近寄るな。ナワバリ内での略奪に文句言うな。もしてめぇらが勝手に入ってきてやられたんなら、てめぇらが悪ぃってこった。あと、デヴィングの旗掲げた船を攻撃したら、金払え。んで、これは不戦協定であって、同盟じゃあねぇ。」
「な、そんな一方的な条件……」
「あぁん? てめぇら、噂のチカームはいいんかぁ? 俺らに手ェ出してる場合かぁ?」
「くっ……チカーム教か……。奴らは久しぶりに聖女が決まったとかで、勢いづいているようだが……内陸側の話だ!」
「あぁん? てめぇは馬鹿か? 限られた資本をどこに使うかって話だろうが……。こんなのが領主たぁな。しゃあねぇ! ちと待ってろ。」
そういうと、ドン・ベッテュルはさらさらと何かを書いて……
「おい。帝都に伝令出せ。こいつを皇帝に読ませろ。さもないと、そこの女神サマが……」
「ひいっ……! わ、分かった! 誰か、伝令だ!」
「は、はいっ!」
「いいかぁー? 1週間以内だぞぉー? それまでは俺たちゃしかたねぇからここで宴会でもしててやるからよぉ! がはは!」
え、敵のど真ん中に1週間?!
アタシは今、やっぱり困ってる。
敵国要塞に泊まり込むことになってしまったようだ。




