ニケ伝説 (10) ハームストッド港へ
海の殺戮者を退治したニケだったが……
「おおっしゃあ! 野郎ども! 出航だぁああ!」
「おおぅ!」
アタシはニケ。15歳。
今、とても困ってる。
それというのも、少しだけ話をさかのぼるんだけど……
海の殺戮者シャーチをたくさんやっつけて。
獲物として持ち帰ったら、ビッケの邑はお祭り騒ぎになって。
で、なんだか邑中から女神サマとか言われるようになったのも困ったんだけど。
「目指すはエウローン帝国、ハームストッド港だ!!」
ドン・ベッテュルが急に言い出したんだよね。
エウローン帝国に休戦協定を突きつけにいくぜ! って。
で、アタシについてこいって。我らが勝利の女神サマは必要だって。
だからアタシは今、とても困ってる。
アタシは普通の人間なんだけどなぁー。
あーあ。レイならこんな時どうするんだろ。
傭兵団の時は……正体かくして、こそこそとやりたいようにしてたなぁ、レイ。
敵将捕まえて記憶リセットしたりなんかしてた。
あー。アタシはどうしたら……
「なんだよう、ニケ! シケたツラぁしてんなよー」
ゼラセが肩を組んできた。
……んだけど。
ゼラセは背が高くって。
ちょうどゼラセの大きな胸が……顔に……や、やわらかっ!
「空を見てみろよぉ! 絶好の航海日和だぜぇ? これも勝利の女神サマのおかげってかぁ? はっはっは!」
「ゼラセ。なんども言うけどさ、アタシ女神なんかじゃないし……あと、すごい、やわらかい。」
「お? なんだ、ニケ。アンタぁこんなもんが好きなのか? いいぜ? 好きなだけ触ってろよ。」
「えっ……? ゼラセが女神……?」
レイは女神になったとき、触ってたらちょっと嫌そうだったけど、ゼラセはいいんだ……?
「なぁに言ってやがる! アタイは海の女だよ! おら、好きに触んなぁ!」
顔に触れていたやわらかいものを手で触ってみると……ぽよぽよじゃない! ぼよんぼよんだ!
なにこれすっご! うぅ……女神級でしょこれ……
アタシのは……
はぁ~~~。
「おぅ、女神サマよ。ちぃと耳に入れときてぇんだがな、いいか?」
ゼラセのすごさを体感してたら、ドン・ベッテュルが来た。
「ん? なに?」
「今はよう、エウローン帝国はよ、チカーム教国っつー怪しげな宗教を掲げた国に攻められててな。」
チカーム教国? なにそれ?
「で、チカームのやつら、大陸内じゃとにかく方々に喧嘩吹っ掛けてるみてぇでなぁ。13年くらい前だったかにエレミヤってぇ国を滅ぼしてんだが、つい最近掴んだ情報によるとな、英雄王の国バストスまで潰したらしいんだわ。だからよう、今がチャンスなんだわ。」
「チャンス?」
「おうよ! 防波堤代わりだったバストスが滅んだんだ。帝国だって馬鹿じゃねぇ。そんな時やべぇ時に俺たちの国なんかに構ってらんねぇ、だろ?」
「ふーん。」
「だからよう、女神サマよ。港についたら頼んだぜ! いっちょ派手によ! がーっはっはっは!」
ドン・ベッテュルはそんなことを言ってた。
アタシ、なにさせられるんだろ? 飛べばいいの?
アタシは今、とても困ってる。
さて、今度の航海はいかに




