表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS? 入れ替わり? いいえ、女の身体に男の俺と女の俺が存在しています! ~俺の身体は冷蔵庫に保管中~  作者: ハムえっぐ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/32

第20話 女子2人と男子1人は三角関係と呼ぶ

 朝の光が教室の窓から差し込む中、俺、相模原勇はセーラー服姿で自分の席に座っていた。

 昨日、聖愛と武彦を救うために廃ビルで氷華と戦ったせいで、学校を無断欠席してしまった。

 ……いや、待て待て。無断欠席って俺の人生初だぞ。

 無遅刻無欠席が自慢だったのに……


「……はあ、今日はちゃんと授業を受けなきゃな」


『君、昨日はよくやったわ。でも、今日はしっかり学校生活を満喫しなさい。私の成績表はオール5なんだから』


(いや、成績は関係ないだろ! それに君の成績じゃなくて俺の人生なんだよ!)


 そんな脳内会話をしていると、教室のドアがガラッと開き、担任の田中先生が入ってきた。

 50代の、ちょっと疲れた感じの数学教師だ。

 ……あれ、田中先生、なんか俺の方をチラチラ見てないか?


「相模原、ちょっと職員室に来てくれ。昨日、無断欠席した件について話がある」


「……⁉ はい、わかりました」


 俺は冷や汗をかきながら立ち上がり、職員室に向かった。……やばい、ついに来たか、無断欠席のツッコミ。


 どう説明すればいいんだよ?


「実は異世界人と戦ってました」


 なんて言えるわけないよなあ。


『君、落ち着きなさい。私の頭脳があれば、先生を納得させる言い訳くらい簡単に思いつくわよ』


(いや、頭脳は関係ないだろ! それに君の言い訳って、絶対変な方向にいく気がする……)


 職員室に着くと、田中先生が腕を組んで俺を見つめてくる。……うわあ、目が怖い。


「相模原、昨日はどうしたんだ? 無断欠席なんて、お前らしくないぞ」


「あ、あの、実は……体調が悪くて、急に倒れちゃって……」


『君、それじゃ駄目よ。もっと具体的に言いなさい。「急に腹痛が襲ってきて、トイレに籠もってました」とか』


(そんな言い訳、できるわけないだろ! ていうか女子高生がそんなこと言うの、めっちゃ変だぞ!)


「……相模原? 何をブツブツ言ってるんだ?」


「あ、いえ、なんでもないです! とにかく、体調不良で休みました。すみませんでした!」


 田中先生は少し怪訝な顔をしたが、結局は「次はちゃんと連絡しろ」とだけ言って解放してくれた。


 ……ふう、なんとか乗り切ったけど、心臓バクバクだよ。


 教室に戻ると、今度はクラスメイトたちが俺を取り囲んできた。……え? 何この空気?


「ねえ、相模原さん、昨日、聖愛ちゃんと戦場くんと一緒に無断欠席してたよね? 3人で何してたの?」


「えっ⁉ いや、それは……」


「まさか、三角関係⁉ 相模原さん、聖愛ちゃん、戦場くんの3人でドロドロの恋愛してるんじゃないの⁉」


「はあ⁉ んなわけないだろ……ないでしょ!」


 俺が慌てて否定すると、クラスメイトたちがさらに盛り上がってきた。


「でもさ、昨日3人一緒にいなかったら、無断欠席が同じ日って変だよね?」


「ていうか、戦場くんって硬派なイメージだったけど、実は相模原さんと聖愛ちゃんの間で揺れてるんじゃないの?」


「いやいや、聖愛ちゃんが相模原さんを好きで、武彦くんがライバルとか⁉」


 クラスメイトたちが一斉に笑い出した。

 ……いや、笑い事じゃない。ていうか、俺、女の身体になっているけど、中身は男なんだぞ!

 三角関係とか、ありえないから!


『はっ⁉ 三角関係⁉ 私と聖愛と戦場君が⁉ そ、そんなわけないわ! 戦場君は私だけのものよ! 親友相手でも負けないわ!』


(いや、君、落ち着け! ていうか俺の存在を忘れないでくれ!)


 脳内で女の勇が暴走を始め、俺の心臓がドキドキし始めた。

 身体は1つなんだから、影響が出るんだよなあ。

 そう思っていると、彼女が少女漫画のような妄想を始めた。


『……ああ、戦場君が私と聖愛の間で揺れて、「勇、俺にはお前しかいない!」って抱きしめてくれるシーンを想像しちゃう! ……そして聖愛が「勇、私にはBLがあるからいいわ!」って潔く身を引く……完璧なハッピーエンドね!』


(いやいや、完璧じゃないだろ! ていうか俺の存在が完全に無視されているんだけど!)


「……相模原さん? 顔真っ赤だけど、大丈夫?」


 クラスメイトの一人が心配そうに訊いてきた。……うわあ、顔が熱い。女の勇の妄想のせいだ、絶対に。


「あ、あの、大丈夫です! ちょっと考え事をしていただけで……」


「考え事って、三角関係のこと?」


「だから違うって!」


 俺が叫ぶと教室がさらに笑いに包まれた。

 ……もう、どうしていいかわからないよ。


 昼休み、俺は聖愛と武彦と一緒に購買でパンを買った後、教室の隅で3人で話していた。

 ……いや、話しているっていうより、さっきの三角関係の噂をどうするか相談している感じだ。


「勇、さっきのクラスメイトたちの話、めっちゃウザかったよね。……ていうか私と戦場くんが三角関係とか、ありえないんだけど」


 聖愛がムッとした顔で言う。武彦も仏頂面で頷いた。


「修道院の言う通りだ。俺はそんなんじゃねえ。……けど、勇、お前が女になってから、なんか変な噂が増えたな」


「……俺のせいじゃないだろ! ていうか、俺だってこんな身体になりたくてなったわけじゃないんだぞ!」


『君、落ち着きなさい。戦場君がそんな噂を気にしないって言ってるんだから、問題ないわよ。……でも、聖愛が戦場君に近づきすぎるのは許さないわ!』


(いや、君が一番問題だろ! だから頼むから、俺の存在を忘れないでくれよ!)


 そんな脳内会話をしていると、教室の入り口から上級生の女子生徒が入ってきた。

 ……ん? 誰だっけ? と思っていると、聖愛から氷華と同じクラスの人だと教えてもらった。


「あの、修道院聖愛さん、ちょっと訊きたいんだけど」


「え? 私? 何?」


 聖愛が首をかしげると、上級生が真剣な顔で話し始めた。


「昨日、炎城寺氷華さんが無断欠席してたんだけど、今日も来てないの。修道院さん、氷華さんの家でメイドをしてるって聞いてたから、何か知らないかなって」


 聖愛が目を丸くする。俺も武彦も一瞬言葉を失った。

 さて……どう説明すべきか。


「うーん、氷華さん、昨日は体調不良って言ってたけど、今日は何も聞いてないよ。……でも、氷華さんが無断欠席なんて、めっちゃ珍しいよね。いつも完璧な人なのに。わかりました。今日の放課後、確認します」


 聖愛の真剣な顔に上級生は納得してくれたようで、それ以上聞いてこなかった。


「……そうか。なら、俺たちで氷華さんの様子を見に行った方がいいかもしれないな」


 俺がそう提案すると武彦も頷いてくれた。


 放課後、俺たちは氷華が住んでいるというマンションに向かった。

 聖愛が前に氷華から聞いた住所を頼りに、街の少し離れた高級住宅街にやってきた。

 ……うわあ、めっちゃ立派なマンションだな。

 修道院家のメイドのバイトって、いくら貰っているんだ?


「……ここだな。氷華の部屋、302号室って聞いてるけど、どうやって入るんだ?」


 俺が訊くと聖愛が慣れている感じで動く。


「とりあえず、インターホンを押してみるよ。……でも、氷華さん、出てくれるかな?」


 聖愛がインターホンを押すと、少しの沈黙の後、スピーカーから冷たい声が聞こえてきた。


「……誰かしら?」


「……⁉ 氷華さん⁉ 私、聖愛です! 勇と戦場くんも一緒なんだけど、ちょっと話があって……」


「……ふふ、聖愛様、相模原勇、戦場武彦。……よく来たわね。上がってきなさい」


 ブザーが鳴り、マンションのオートロックが解除された。

 ……うわあ、なんか緊張するんだけど。

 氷華の声、相変わらず優雅だが、どこか不気味だ。


『君、気を引き締めて。彼女の目的を探るチャンスでもあるわ』


(……わかってる。けど聖愛と武彦もいるから、無茶はできないな)


 俺たちはエレベーターに乗り、302号室の前までやってきた。

 ドアが静かに開き、そこには赤い髪と青白い瞳の氷華が立っていた。

 いつもの優雅な笑みを浮かべているが、その目はまるで俺たちの心の中を覗き込むようだ。


「ふふ、ようこそ、私の家へ。……さて、今日は何を話しましょうか?」


 ……これから、何が起こるんだろう?

 心臓がドキドキする。


 俺たちは緊張しながら、氷華の部屋に足を踏み入れた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ