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TS? 入れ替わり? いいえ、女の身体に男の俺と女の俺が存在しています! ~俺の身体は冷蔵庫に保管中~  作者: ハムえっぐ


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第19話 世界と2人の命、どっちが大事?

 聖愛の豪邸に戻った俺たちは、リビングに集まって作戦会議を開いた。

 テーブルの上には、俺が朝作った目玉焼きとトーストが冷めたまま残っている。

 聖愛はソファに座り、武彦は腕を組んで立ったまま俺を見つめている。


「それで勇。氷華さんが本当に異世界人だったってこと、確定したわけだよね?」


 聖愛が真剣な顔で言う。

 俺は頷きながら右ポケットから指輪を取り出した。


「ああ。彼女は俺に指輪を渡せって言ってきたけど、渡したらこの世界が終わるって、もう1人の女の勇が警告してくれた。……でも、聖愛と武彦を救うためには渡すしかなかったかもしれない」


 武彦がムッとした顔で口を開く。


「勇、お前、俺たちの命と世界の命運、どっちが大事だ? 指輪を渡して世界が滅ぶなんて、そんな選択、俺たちが許すわけねえだろ」


「武彦、俺は……」


『君、戦場君の言う通りよ。君は1人で抱え込みすぎなの。聖愛も戦場君も君の仲間なんだから、もっと頼りなさい』


 勇(女)の声に俺は少し心が軽くなった。

 ……そうだ、俺は1人じゃない。


「武彦、聖愛、俺が悪かった。これからは、もっと2人に頼るよ。けど、氷華さんの目的がまだわからない。彼女が言ってた『実験場』って言葉、気にならないか?」


 聖愛が首をかしげながら答える。


「実験場って、つまり、この世界を自分の研究材料にしたいってこと? でも、氷華さん、普段はめっちゃ優しいし、料理も上手だし、そんな悪い人には見えないんだけど……」


「修道院、見た目や普段の態度で判断するのは危険だぜ。あの女、俺たちを縛って人質にしたんだ。優しいわけねえだろ」


 武彦の言葉に聖愛が少しムッとした顔をする。


「でも、氷華さんが私たちのこと、ちゃんと見ててくれたのも事実だよ。なんか、彼女、悪い人だけど、どこか悲しそうな感じがしたんだよね」


『……聖愛の言う通りね。氷華の目、私も覚えてるわ。けれど、それが彼女の目的を正当化する理由にはならないわよ』


(……そうだな。氷華が何を考えているにしても、俺たちはこの世界を守らないといけない)


 俺は指輪を握りしめながら決意を新たにした。


「とりあえず、氷華さんの次の動きを待つしかない。けど、俺たちも準備をしておくべきだ。氷華さんの魔法に対抗するには、指輪の力をもっと引き出す方法を見つけないと」


 俺がそう告げると、聖愛が目を輝かせて言ってくる。


「ねえ、勇。指輪って、もっとすごい力があるんじゃないの? 今日の戦いで氷華の魔法を跳ね返したみたいにさ」


「ああ。あの時、指輪が光って、アンドロイドの動きを遅くしたんだ。けど、あれをどうやって発動したのか、正直俺はわかっていない」


『あれは君の強い意志が指輪の力を引き出したのよ。……でも、使いすぎると君の魂が消えるかもしれないわ。気をつけて』


(魂が消える⁉ そんな危険な力なのか⁉)


『そうよ。指輪は時空を操作する鍵だけど、その代償は大きいわ。指輪を私に託した異世界人も、すでに身体が半分透明になっていた』


 ゴクリと思わず唾を飲んでしまった。


「……女の俺が言うには指輪の力は危険らしい。けど、俺たちには他に選択肢がない。氷華さんが次に何をしてくるかわからない以上、俺たちは準備をしておかないと」


「勇、俺も戦うぜ。氷華がどんな魔法を使おうが、俺の拳でぶっ飛ばしてやる」


 武彦が拳を握りしめて言ってくれた。


「武彦、ありがとう。……聖愛も俺たちのサポート、頼むよ」


 聖愛もニコッと笑う。


「もちろん! 私、勇の幼馴染だし、絶対に守るから! ……ただ、氷華さんのこと、もっと知りたいな。彼女が本当に悪い人なのか、それとも何か理由があるのか知りたいかな」


「……そうだな。氷華さんの目的が何なのか、俺たちももっと探る必要がある」


 俺たちはそう話し合いながら、夜遅くまで作戦を練った。

 でも心の中では、氷華の最後の言葉が頭から離れない。


「この世界を私の実験場にするために!」


 という言葉が、俺の頭で繰り返し鳴り響いていた。


 ***


 その夜、俺は聖愛の家の客間でベッドに横になりながら、指輪を手に持って見つめていた。

 冷たい金属の感触が、俺の心臓を締め付ける。


(炎城寺氷華、君の目的は何なんだ? この世界を実験場にしたいだけなのか? それとも、もっと深い理由があるのか?)


『君、考えすぎよ。氷華の目的が何であれ、私たちは戦うしかないの。……たしかに彼女の目は私も気になるわ。彼女、どこかで葛藤してるみたいだった』


(葛藤? 氷華が?)


『そうよ。彼女の目、私の世界を滅ぼした連中とは違う何かがあった。……まだ、それが何なのか、わからないわ』


(そうか。なら、俺たちは氷華の真意を探りながら戦うしかないな)


 俺は指輪を握りしめ、目を閉じた。

 明日はまた新しい1日が始まる。

 俺たちの戦いはまだまだ続く。


 静かな夜の中、俺の決意が闇の中に溶け込んでいった。

 

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