1-8 1日目を終えて
1日目の取り組みが終わり、観客達も帰宅の途について居る中で、力士達も帰宅準備をしている。
我利ノ山部屋の力士の様子を見ようかなと思いつつ席を立った私が歩いてる途中、外素人部屋の陣地の前を通った私は目線を感じ、そちらを見ると嵩ノ将だった。
私が、足が細すぎる力士として注目した力士だ。
見ると、何故か敵意のようなものを感じる目で、話しかけてきた。
「あんた、我利山田の仲間?」
そう言われ、どう応えようかと思ってたら、
嵩「あんな弱いの何で応援してんの?」
私「弱い者が強い者を倒すのも見どころだからね」
嵩「へー、じゃあオレが倒されて喜んだんだ?」
これには、困った。嵩ノ将も注目し始めたのに誤解されてもなー。
私「確かに喜んだけど、嵩ノ将さんも我利ノ山部屋に居れば応援してるんだけどね」
嵩「オレがガリだって言うのかよ」
私「(正直に)メッチャ細い足だと思うよ」
嵩ノ将は顔を赤らめて、
嵩「おまえ、オレが気にしてる事を!」
そんな中、我利山田君が前を通りかかり、
我「何揉めてるんですか?」
気づくと辺りは人もまばらになって来ている。
各部屋の人もほぼ帰ってる中、この3人。
私「いやぁ、嵩ノ将さんを我利ノ山部屋に誘ってみたんだよ」
嵩「なっ!! お前ふざけんなよ」
我「ウチの部屋は今回の大会が終わると1人空きが出るんですよ。ウチに来ますか?」
嵩「は? そうだな、我利山田さんには負けてるから何も言えない。でも、あんたに言われるのは気に食わないね」
と、私の方を見る。
私「じゃあ私は関係なく………」
嵩「いや、あんたと勝負しよう。それで負けたら我利ノ山部屋に入ってやるよ」
え、まさかの………私が嵩ノ将と勝負?
我「それは良いですね。じゃあ、チョット待ってて下さい。責任者に土俵使う許可貰ってきます」
いやいや、私廻し着けて無いですけど……
我「はい、良いそうですよ。壊さなければって言われました」
私「私、廻し着けて無いですけど……」
我「簡易の廻しならすぐ着けます」
何か、おもちゃみたいな、マジックテープでくっつけるやつ持ってきてますけど……
私は、我利山田君に廻しを着けられた。
こんなの力入れたら、すぐ取れるんじゃないかと思うけど……
嵩「用意出来たな。おじさんやるよ」
あ、おじさん言われた。嵩ノ将やってやるよ。
我利山田君が行司だ。
我「えーっと、じゃあ細ノ山さんって事にしましょうか。取り敢えず塩投げて下さい」
私は細ノ山かい! 塩とってポイっ。
我「因みに身長体重は?」
仕切りながら聞いてくる。
私「170cm63kgです」
我「嵩ノ将さんは身長体重は?」
嵩「178cm57kg」
我「細ノ山さん、嵩ノ将さんより重いですね。
見合って見合ってー。ハッケヨイ ノコッタ!」
ぶち当たる。嵩ノ将は左手で下手を取って来た。
その手首を掴んで力を入れると下手を切れた。
焦ってるのか、嵩ノ将は突っぱってくるけど、やっぱり外素人部屋の力士だけあって素人的な突っ張りでパチパチと音だけが高く鳴って、重さは無い。
私は、そんな嵩ノ将の両手をくぐり抜けて低く懐に入り両廻しを下手で取った。
嵩「ぐっ………」
背の高い嵩ノ将が上手で両廻しを取る。
我利山田君に手の力では勝ってたはずの嵩ノ将だけど、あまり上手からの力を感じない。
あ、押してきた!
でも、低姿勢の私を押しきれないようだ。
私の視線であの細いふくらはぎの脚が逆に滑って私の圧に負けているように感じる。攻め時だ。
私は、力を入れて慎重に押していく。
嵩「くっ!」
嵩ノ将の脚は、ズルズル滑って土俵際に。彼の白い太ももの筋肉は波打ってるが、やはり高身長もあってか細身だ。
嵩「クソっ、このオヤジが」
私「あ、言ったね、子供より細い足なのに」
嵩ノ将の顔は真っ赤になったが、土俵際の勝負のせいだと思おう。
私が絶妙な力加減で土俵際力を入れると、嵩ノ将は徳俵でつま先立ちになり、必死に耐えている。
我利山田戦と同じ構図だ。
私「嵩ノ将さん、後がないですよ。その細脚が頼りですよね」
嵩ノ将は腕筋も力入っているが廻しが伸びているので、本当に脚が頼りだ。
土俵下に転落はしたくないので、下から下からチョットずつ力を入れると、太もももふくらはぎもピーンと伸び切って嵩ノ将絶対絶命まで追い込んだ。
そこで、私は色気を出して、吊り出しにしようと上に力を入れたら、私も足に疲れが来てたのか、フラフラ後ろへ土俵中央に。でも、嵩ノ将を吊っている!
けど、重いので下ろすと、すかさず嵩ノ将は低くなり私の懐に入って来た!
下手の両廻しを取られ、慌てて両上手を取る。
嵩ノ将が下手を引きつけて押してくる。
私も耐える。
嵩ノ将の攻めが一時収まる。疲れてるのだろう。
私は、左手で嵩ノ将の右手首を掴んだ。
そんなに簡単には切れないと思ったが、簡単に嵩ノ将の右下手が切れた。そのまま手首を掴む。
嵩ノ将の左下手と私の右上手。
投げを打つ!
2人共にオットットとなりつつ残す。
嵩ノ将の体勢が先ほどより浮いたが両下手をまたもや取られる。
私は、その腕をキメた。
力比べで廻しを持った嵩ノ将有利かと思ったが、私がきめ出して行くと、ズルズル嵩ノ将が滑って土俵際へ。
嵩「な、なんで………このクソが」
私「体重差なのか、その細脚の差か」
私ももう息が上がって限界!
とにかくキメる。
押す!
嵩ノ将がまた徳俵でつま先立ちになった。
こいつはその細脚でもこの体制で粘るからやっぱり好きな力士だ。
すぐ、嵩ノ将の太ももとふくらはぎがプルプル痙攣してる。
嵩ノ将は投げを打ってきたが、そのせいで態勢が崩れ2人共土俵下に。
我「勝者、細ノ山!」
2人共、土俵下で息を切らして倒れたままだ。
私は立ち上がり、嵩ノ将の腕を持って立たせる。
結構軽々立ち上がってくれた。
土俵上に戻り勝ち名乗り。
我「細ノ山ー」
土俵下に行くと、プルプルの足を引きづりながら嵩ノ将がやってきて、抱きついてきた。
嵩「すみませんでした。我利ノ山部屋に入ります」
私「私、部屋の関係者じゃないから決定権無いけどね」
と言ったらずっこけてた。
けど、一応それ以降、あの細脚で負けた嵩ノ将は何か私の部下みたいになった。
一般的にはスタイルの良いイケメンが、何故私に従っているのか? 本人達は分かっているが、その後腕相撲やっても私が圧倒した結果、力勝負と言う単純な結果で嵩ノ将が圧倒されたのだった。
嵩ノ将は最終日に負けていたが、実は私にも負けて1人1勝4敗が(5敗)になっているのだった。