四期生コラボ
四期生コラボ】桃◯やるよ! アタシが余裕で一位だし〜
「オタクのみんなこんにちは〜。レインボー所属三笠光だよ★」
まずはチャンネル主であり、このコラボの発起人である三笠が挨拶を始める。
さすがにキモオタは運営から注意が入ったのか、リスナーの呼び方は少しマイルドになっていた。
コメント 初手オタク呼びなのワロタ
コメント これいいのか?
コメント もはや慣れたぞ
コメント むしろギャルにオタク呼びされるとか萌える
とまぁ、マニアックな層から一定の支持を得てるらしい。
「今日はね、四期生のみんなと初コラボってことで取れ高とかは二の次で親睦を深められたらいいかな〜。はい、じゃあ自己紹介よろしく★」
ここは前もって打ち合わせしてある。まるめろが二番手だ。
「我が名はまるめろ! 青魔族随一の魔術師にして、いずれは世界一の魔術師になるもの! くくく、この出会いは世界により定められたもの。今日が繚乱の宴とならんことを願うばかり」
「えーと、どゆこと★?」
「今日のコラボを楽しみにしていましたみたいなニュアンスじゃないか?」
俺が言うとまるめろはコクリと首を縦にふる。どうやら、合っていたようだ。
「よく分かったね」
「まあ、何となくだけどな」
コメント 何となくでもすごい
コメント 同士たちですら理解できなかったのに
コメント さすが勇者か
一応同期の配信は見れる限り見ている。そのおかげで、まるめろの中二語録は30%くらい理解できるようになった。
次は加志駒だ。
「こんれいー、加志駒令子です。私も四期生コラボ楽しみにしてました。ただ、そのせいなのかみーちゃんたちのテンションも高いから、いつもより雑音が入るかもしれないけど気にしないでね」
と言った瞬間、ガシャりという音が聞こえて来る。
「「ひぃ」」
「まあ、兆候が見えたら極力ミュートしてくれ。いちいち驚かれても面倒だし」
「ふふ、分かりました」
「ジ、ジルは怖くないのですか?」
「さすがに目の前にいたら逃げるが、通話越しなら別にそうでもないな」
コメント 通話越しでも十分怖いんですが……
コメント 無理無理無理
コメント 他の枠のリスナーは初々しいなぁ
コメント 俺らはもはやその恐怖感がクセになってるからな
コメント欄も阿鼻叫喚のようだった。一部加志駒のリスナーが達観した様子でいるが。
最後に俺だ。
「こんジル! レインボー所属ジル=ホワイトだ。名前以外特に個性はないが、よろしくな」
コメント 個性がないとは?
コメント 霊耐性と中二適性を見せたやつが言うことか?
コメント フライングしてロールプレイ放棄したやつが何か言ってら
「とりあえずフライングって言ったやつ裏こいや」
「はいはい、そこまで。今日はコラボなんだから、いつものノリでプロレス始めるなし」
「そこの2人も十分内輪ノリしてるだろ」
「2人は可愛いからおけ」
「贔屓もここまでくると清々しいな」
まあ、せっかくのコラボなのに1人で視聴者と盛り上がるなってことだろうな。当然か。
「そらじゃあ改めて、タイトルにも書いてあるけど今日は桃◯をやってくよ〜★!」
「「おお〜」」
コメント 親睦を深める??
コメント 友情が壊れる代名詞なんだがw
三笠が言ったように今日やるのは桃◯だ。
基本は人生ゲームに似ている。物件を勝って収益を得たり、指定された駅に行きお金をもらったりして、総資産が多い人間が勝利する。それにボンビーなど様々なイベントが用意されていて、最後まで勝負が分からないのが特徴で、ゲームの腕より運が鍵になるゲームだ。
その性質上、終盤に独走していた人間が一気に転落して最下位になるのもザラで、結果的に喧嘩になるなんてこともなくはない。よって友情破壊ゲーなんて揶揄されるそうだ。
今日は三年決戦モードで遊ぶ。まるめろが10年やろうなんて言いだしたが、多数決で否決となった。さすがに時間がかかりすぎるからな。
「3人は桃◯はやったことあるの★?」
「私はないかな〜」
「俺は前シリーズは家族で2、3回やったことある。最新作はない」
「へぇー、まるめろは?」
「ふっ、愚問ですね。もちろんありますとも。意思なき相手と共に何度もやっていましたとも!」
「……通訳いるか?」
「……今のはアタシでも分かったし」
コメント 泣いた
コメント あれ? 俺ガイル?
コメント 桃◯って1人プレイようのゲームですよね?
要するにぼっちだから1人でプレイしてたらしい。
どうりで打ち合わせ段階から妙にテンション高いし、10年やりたいなんて言い出すわけだ。
少ししんみりとしたら空気になったが、ゲームを始めればそんなものは忘れてしまう。
「うぇーい! 一番乗り〜★!」
「あうう……どうして私の出目は一かニばかりなんですか〜!」
「光ちゃん強いねー」
まずは三笠が駅に到着した。5億くらいの収益が入る。
三年決戦は資金一億とサイコロの数が2つになる急行周遊カードが持たされる。
三笠は最初からそれをふんだんに使い一番乗りを果たした。まるめろもそれにならってカードを使ったが出目に嫌われた。加志駒は様子見したいのかカードは使わず駅を目指していた。
「まあ、ボンビーは俺だよな」
このゲーム、駅にゴールした時駅より一番遠い人間にボンビーというお邪魔キャラが取り憑くのだ。こいつはお金を減らしたり、物件を勝手に売り払ったり、カードを割ったりとかなり邪魔なやつだ。
俺は駅に向かうよりもカードを優先していたせいで、駅から一番遠いところにいたようだ。
そして早速ボンビーのせいで金をマイナスにされた。
「あれれ〜? ジル君大丈夫? アタシがわけてあげよっか★?」
これ見よがしに煽ってくる三笠。
いわゆるプロレスというやつなので別にムカつきはしないが、せっかくのコラボだノッテやるか。
「ふっ、今の言葉覚えておけよ三笠? 後で後悔させてやる」
「ええ〜怖いなぁ〜★プププ〜!」
「絶対泣かしてやるこいつ」
コメント バッチバチやなぁ
コメント 親睦を深めるとはw
コメント こう言うのもおもろい
その後は誰かしらゴールしながら2年目の後半に差し掛かった。
現在の順位は1位三笠、2位加志駒、3位まるめろ、4位俺となってる。特に1位の三笠は1人だけ資産10億を越してぶっちぎりの1位だ。
「ふんふんふん♪」
機嫌良く鼻歌を歌う三笠。もう勝った気でいるのか、余裕である。
「あ、ゴールだ」
加志駒が新しい駅にゴールした。
歓迎する絵と共にボンビーの取り憑き先が発表される。次のターゲットは三笠だ。
「あ〜アタシか〜。まあ、これだけお金あれば少し減るぐらい……え?」
そんなことを言った時、ボンビーの様子がおかしくなった。
コメント おや?
コメント これはもしや
コメント キングボンビーきたー!
キングボンビーとはその名の通りボンビーの進化した姿だ。
なので、役割もボンビーと同じくお邪魔キャラなのだが、キングボンビーはその比じゃない。所持金は余裕でマイナス二桁億円になるどころか、カードをいらないカードに変えられたり、果てにはボンビラス星という理不尽な極みとも言える場所に飛ばされる可能性まである。
転落の危機にさすがの三笠も余裕が崩れている。
「やばいやばいやばい……あ、でも近くにまるめろいたよね?」
ボンビーはマスが重なると、その重なったプレイヤーに擦りつけることができる。
サイコロが四つになるカードを持っている三笠なら、擦りつけた上で擦りつけられない範囲まで逃げることも可能だろう。
標的にされたまるめろは分かりやすく焦る。
「嫌です! こないだください!」
「ねぇ、まるめろ。困ってる時は助け合うべきだと思わない?」
「それは助け合いじゃなくて、一方的なものでは!?」
「ええー、何のこと? 三笠馬鹿だから分かんない★」
「こ、この人は!」
惚ける三笠に、つっこむまるめろ。
騒がしくするのはいいが、次俺の番だぞ?
「なあ、三笠」
「何? 大丈夫だよ、ジル君の方には行かないから」
「いいや、そうじゃない。俺こんなカード持ってるんだがなぁ」
「はっ……」
コメント あ
コメント あ
コメント あ
俺が言っているカードとは最果てカード。その名の通り、指定したプレイヤーを最果てに飛ばすカードだ。
あとは分かるな?
「待って待って待って!」
「最初に言ったよな三笠。お前を絶対に泣かすって」
「いやージル君ってカッコいいよね! 本当に優しいと言うかああああああああああああ! ふざけんなぁジルゥゥゥ!」
「はっはっはっ! ざまぁ!」
コメント wwwwwww
コメント wwwwwww
コメント がっつり台パンwwwww
コメント 生意気ギャルをわからせるスタイル
コメント みか虐助かる
その後三笠はキングボンビーのせいで資産を全て失った。
そして3年目が終了した。
「あれ? 私の勝ち?」
1位に輝いたのは加志駒だった。加志駒は終始堅実な立ち回りで、ボンビーを一度もつかずにいたのが勝因だろう。
2位は俺。序盤こそ下の方にいたが、カード集めを意識していたおかげで後半巻き返した。
3位はまるめろ。終始運に見放されていた。新幹線カード使って全て1をだした時はさすがに吹き出してしまった。
そして最下位は三笠。まあ、敗因はキングボンビーだろうな。あのダメージのせいで半年くらいまともに動けなかったし。何とか巻き返そうとしたが及ばすと言ったところか。
「令子ちゃんおめでとー★!」
「おめでとうございます」
「おめでとう」
「みんなありがとう」
コメント 優しい世界
コメント 四期生てぇてぇ
「じゃあ、締めようかな。まず令子ちゃんから」
「はい、桃◯をプレイするのは初めてだったのですが、みんな優しくしてくれて楽しくプレイすることができました。ありがとうございます」
コメント 可愛い
コメント 清楚や
コメント 褒めてるから物音は控えてや……
「次、まるめろ」
「はい。私もすごく楽しかったです! 恥ずかしながらパーティゲームを人とやるのは初めてでして、至らない点もあったと思うのですが。また一緒にやってくれると嬉しいです」
「やるよぉ! いくらでも付き合うよ!」
少し寂しそうに言うまるめろの可愛さに三笠が堕ちた。
コメント欄はまるみかてぇてぇで溢れた。
「はい、次ジル君」
「あいよ。正直、最初コラボの話を受けた時は不安だった。全員癖が強いし、男1人だからな」
仲良くできるのか、うまくやっていけるか、変な言動をしないか。色々考えたな……。
「だが、その不安はいい意味で裏切られたよ。すごい楽しかった」
コメント あの最果てのくだりおもろかったぞ
コメント また、コラボしてほしい
「3人ともありがとう。最後にアタシかな。アタシも初めてのコラボでちょっと不安だったんだ〜。でも、すごい楽しかった★! ありがとう!」
コメント おもしろかった!
コメント この4人のコラボ不安だったけどみんな面白かった
コメント 四期生てぇてぇ
「それじゃあ、みんなのチャンネル登録とTwitterのフォローもよろしくね。またねぇ!」
「次の邂逅も楽しみにしています!」
「ばいれい〜」
「乙ジル!」
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コラボを終えた翌日の朝、ディスコードにとあるメッセージが来ていた。
まるめろ つきあっていただけませんか?
「は?」
俺は目を丸くした。