旅立ちの準備
「オ、オートマチックとは何ですか?」
ユウキはグリップを指差して
「ここに何発かまとめて装填しておいて、撃ったら自動的に次が銃身に装填される仕組み」
「そんなことが出来るんですか??」
「撃った時に入るスイッチで弾を装填する。装填が終わった時にそのスイッチが自動で閉じる。簡単に言うとこんな感じ」
「全然わからないです」
「魔法を使わない方の銃の部品でバネがあるはずだから、絶対作れるよ」
「センパイばっかりずるい!! わたしの弓も強化してくださいよ!!」
「君の弓は大きさと形から見て複合弓だからね……馬上で扱うのにそれ以上のものは知らないわ……ごめんね」
「ぐあ───っ無念です───」
翌日、ユウキはエイサムの責任者たる士官から呼び出しがかかった。話は、マルボークにいる直属の上官にユウキの処遇の伺いをかける手紙を伝書鳩で送ったこと。その手紙でマルボークへの招聘を具申したこと。旅路には馬を貸すので乗れないなら返事が来るまでに乗りこなせるように練習をしておくこと。の3点だった。
乗馬の経験はなかった。教官はゼファーだった。騎兵隊予備役が教官の練習は大変厳しいものになった。ユウキは毎日ボロボロにされた。
「ユウキさーん! 今日もボロボロですね!!」
アンはずいぶん気さくに話しかけてくれるようになっている。
「まぁね……、ここには治癒魔法が使える人はいないの?」
「いませんね!! 乗れるようにはなってきましたか?」
「だいぶ形にはなってきたけど、スイッチが入ると抑えが効かないっていうか……」
「ユウキさんが乗ってる子が一番大人しいんですけどね!! まあ軍馬ですからね!! 力で抑えないと!!」
「俺は平民だぁ」
そこでアンに付いてきてた感じだったエイムが
「あ、あの……ユウキ」
「どうしたのエイム?」
「思い切って言うね……私も……マルボークに一緒に行きたいの」
ユウキは(なんだこの甘々な感じは)と感じて照れくさくなった。アンは驚きすぎて変顔になっている。
「あーそれね……じつは士官さんに言ってある」
「……そうなの?」
「この前に聞いた感じだと銃を作るには使う本人がいないと駄目でしょ?連射性が高まるなら軍もそのアイデアに飛びつくはずだって、元から客人を護衛無しで送るつもりは初めからなかったらしい」
「じゃあ!」
「パトロール隊の編成をスライドさせていく感じで考えてるんだって」
「よかったーーー!」
エイムがユウキの手を握って喜ぶ。
「おやおやー?お熱いお熱い。お二人ってそういう感じだったんです?」
「いやっ、違うの!まだ何も!」
「まだ?とは?」
「も───っ」
旅立ちの日は近そうだった。
完結後のスピンオフのタイトル案
・異世界の宮廷魔術師は何度でも蘇る
・異世界のエルフ執事はストーカーにつきまとわれる
・異世界のうつけ殿は海賊王の夢を見る
読んでみたいのはどれでしょうか?当該人物はまだ登場してませんけどね。
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